猫の里親になるにはどうすれば良い?譲渡方法、注意点を解説

猫との暮らし 猫の里親になりたい!里親募集中の猫に出会う方法、注意点を解説!

執筆/水科希望

昔、実家で飼っていたけれど、久しぶりに猫と暮らしたい。または今まで経験が無いけれど、猫が大好きで一緒に暮らしてみたい。

猫との暮らしを考えている方たちは、どこから猫を迎え入れようと思っているのでしょうか。ペットショップ?ブリーダー?選択肢の中に、保護猫も加えてみませんか?

保護猫ってどうやって探せば良いのか解らない。保護猫と暮らすには手続きが難しそう。そんな「保護猫と暮らしたいけれど、どうすれば良いの?」という疑問にお答えします!

猫の里親になる方法

保護猫と暮らすためには、多くの条件を満たす必要があります。その多くはご自身のプライベートに踏み込んだ質問もあり、中には不快に感じる方もいるでしょう。しかし、大事に保護された猫の幸せを願えばこその条件や質問なのです。しっかりとその責任を果たしましょう。

猫の里親ってなに?

猫の里親とは飼い主がいない猫の新しい家族です。保健所・動物愛護センター・猫の保護団体・個人ボランティアの元で一時的に保護され、新しい家族を探している猫は今もたくさんいます。主に、何らかの理由で飼い主を失った、負傷又は病気になった野良猫、野良猫が産んだ子猫などで、猫達を保護している方々は少しでも多くの幸せをつかんで欲しいと願っています。

猫の里親になるための方法は?

里親募集サイトや、保護している団体・ボランティアのホームページやブログなど、手軽に探し始めることができます。もし気に入った猫がいたら、里親募集サイトや団体ホームページから問い合わせをします。問い合わせた後、保護団体やボランティアの担当者から、里親になるための条件について詳しく説明があります。説明は対面形式が一般的ですが、最近ではオンライン形式でも行っています。そして、実際に猫と対面する機会が設けられます。

もしも、過剰に対面を拒む、猫に会わせてくれないなど不審な点が見られたら、里親希望者から譲渡金を騙し取る目的の詐欺である場合もあります。インターネットを窓口にしている里親募集サイトでは、実際の事例も含めて注意喚起していますので、十分に確認しましょう。

譲渡会に参加する

保健所・動物愛護センター・猫の保護団体などが主催する譲渡会は、基本的に事前申し込み制であることが多いようです。家族を探している猫達と直接対面でき、実際に養育しているボランティアから話を聞いたり、猫の性格によっては撫でたり抱っこさせて貰えたりします。譲渡会で運命を感じる子がいたとしても、直接連れ帰ることはできません。面談や書類審査、譲渡前の講習会を義務付けている場合が多いからです。

また、譲渡会に参加したからといって、必ず里親にならなくてはいけない、その場で一緒に暮らす猫を決めなくてはいけない、ということはありません。何度か足を運んで一緒に暮らす猫を決める方や、帰宅後に「どうしてもあの子が気になる!」と申し込まれる方もいらっしゃるようです。

里親を募集している猫カフェに行く

通常の猫カフェと異なり、猫スタッフが保護猫です。一目ぼれしたり、猫から気に入って頂けたりしたら申し込んで家族になれます。保護猫カフェ、譲渡型猫カフェと呼ばれており、遊びに行っても無理矢理猫の売り込みはされませんので、猫に触れあいたいだけの方にもお勧めです。時間制で料金がかかる、寄付金制にしている、など店舗によって料金制度も異なりますので、事前に確認してから行きましょう。猫スタッフが各所で思い思いに過ごしていますので、動きやすい服装が好ましいです。多くの猫カフェ同様、店舗で購入したおやつがあると、一躍モテモテになれます。

里親を募集している動物病院に問い合わせる

病院が里親を募集していることもあります。猫の保護団体・個人と協力している、又は病院自体が猫の保護を行って募集している、猫を保護した個人に頼まれている、など様々なケースがあります。特に病院自体が猫の保護を行っている場合、その子の治療経緯などを把握していますので、今後かかりつけ医として心強い味方となってくれます。

里親になれるのはどんな人?

猫を生涯に渡って幸せにでき、経済力がある、心身共に健康な人です。特に保護猫の場合、飼い主と辛い別れ方をしている、母猫とはぐれてしまったなど、悲しい過去を乗り越えており、保護している団体でもボランティア個人でも「必ず幸せにしてくれる人を!」と強く望んでいます。その強い願いによって、条件が厳しいと感じる人も多いでしょう。

保護猫の里親から敬遠されがちなのは、

  • 一人暮らしで保証人がいない
  • 高齢者のみの家庭で保証人がいない
  • 赤ちゃん・6才以下の小さい子がいる
  • 出産を控えている
  • 同棲中のカップル
  • 留守時間が長い

など、猫の生活を保証できない方は条件が合わず断られることもあります。

更に団体によっては、

  • アンケートを含む書類提出・面談
  • 自宅訪問(猫が暮らす環境確認)
  • 譲渡後、ワクチン接種の証明書、避妊・去勢手術の証明書提出
  • 同じく譲渡後、マイクロチップを装着し、証明書提出

など、事前確認を慎重に行い、譲渡後にも条件が付く場合もあります。団体ごとに定める決まりをしっかり守れることも、里親になるための必須条件となります。

条件はある?

保護団体などにより異なりますが、

  • 完全室内飼育を徹底(それに伴い、脱走対策の徹底)
  • 最後まで責任と愛情を持って一緒に暮らすことができる
  • かかりつけの動物病院で、適切な治療と定期健康診断・ワクチン接種を行い、健康管理をする
  • 先住猫・犬がいる場合、避妊・去勢手術が済んでいる
  • 賃貸の場合、ペット可の物件である(証明する書類のコピーを提出する)
  • 身分証明書・勤務先電話番号・在職証明書の提出ができる
  • 猫の様子を定期的に保護主に写真・動画で知らせる
  • 引っ越し・転勤予定が無い
  • 万が一の時、猫を引き受ける保証人がいる
  • 家族全員が猫と暮らすことに同意している

などが条件として多いです。細かくアンケートなどでも確認されますので、嘘偽り無く答えましょう。条件が厳しく細かいのは、里親になりたいと猫を騙し取って虐待したり、実験動物として売買したりする詐欺が後を立たないためです。大切に育てて、今度こそ幸せになって欲しいと願っていた子が、苦しんだあげく死んでしまう未来を望む人はいません。自分が信頼できる人間であることを証明するために必要な条件です。一つ一つ確実に答えましょう。

運命の出会い!里親として引き取るまでの流れ

インターネット、譲渡会、猫カフェなどの窓口から一緒に暮らしてくれる猫を探し、この子だ!と決めたら、条件に合わせて必要な書類の提出を行ってからトライアル飼育に入ります。トライアル飼育で相互に問題が無ければ、正式譲渡の手続きをします。譲渡後にも保護団体によってはワクチン接種証明書の提出、子猫の場合は避妊・去勢手術完了の証明書の提出を義務化しているところもあります。

STEP1 探す

保護猫と出会える場所は様々ですが、個人ボランティアや保護猫カフェ、保健所でもSNSを通じて保護猫の様子を発信していることが多くあります。日頃の様子や、保護猫の性格など詳しく紹介していますので、ぜひ確認してみましょう。譲渡会に出ると大半の猫は緊張してゲージの隅っこにいるだけです。普段の様子とは異なりますので、のびのび暮らしている様子を確認しておきましょう。

また、猫と暮らすのが初めてという方には、子猫よりも成猫がお勧めです。成猫はすでに性格もしっかり固まっており、子猫よりイタズラの心配も少なく、安心です。懐かないのでは、と不安に思う方も多いですが、成猫でもゆっくりと信頼関係を築くことができます。人なつっこい性格の成猫なら、より早く信頼関係を築くことができるでしょう。

STEP2 出会う

いわゆる「ビビッときた!」という感覚は人それぞれですが、やはり一緒に暮らしたいと思える子は特別なものです。筆者は猫が好き過ぎて皆かわいくてどの子か1匹を選ぶことできず、探し始めてから出会うまでに時間がかかりました。この子が運命の子だ!と思うのは、恋に落ちるようにそれは一瞬のできごとです。

皆かわいくて選べないとお困りの方は、保護主との相性を考えるのも良いでしょう。保護主は猫との生活において大ベテランなので、困った時に頼れる心強い存在です。特に猫と暮らすのが初めて、少しのことでも相談できる、何かあった時には頼れるベテラン保護主は、力強い味方になります。

STEP3 トライアル飼育

まずは猫との相性、または先住猫・犬との相性を確認するためのトライアル期間が設けられます。だいたい2週間から1ヶ月程度が一般的です。トライアルスタート=猫との暮らしが始まることなので、事前に猫を迎えるための準備を整えておきましょう。

また、トライアル期間中の様子を3日~1週間に1度、写真などで報告するよう義務付けられることもあります。

《準備しておくもの》

  • トイレ(お気に入りの砂、形状を聞いておく、使っていた砂を分けて貰う)
  • フード(今食べているフードも聞いておく、おやつの種類も色々準備)
  • 食器(フード用、水用の食器。プラスチック製よりも陶器など傷付きにくいものが良い)
  • キャリーケース(体の大きさに合った、頑丈なものが好ましい)
  • ゲージ(子猫の場合はお留守番用、成猫でも落ち着ける場所として用意)
  • ベッド・爪とぎ・おもちゃなど、生活に必要なもの

※お手入れ用品(爪切り・ブラッシング用ブラシなど)は後から準備しても大丈夫ですが、上記のものは最低限用意しておくと安心です。

《室内環境を整える》

  • 脱走防止対策をする
  • 爪とぎ防止対策をする
  • 家中の危険な場所をチェックして、改善する

特に脱走防止対策は絶対です!トライアル期間中に脱走してしまう例が多く、戻らない子もいます。完全室内飼育をするために脱走防止対策は極めて重要で、対策が整っていない場合、トライアルが中止になる場合もあります。初めて猫と暮らすため、どこを対策したら良いか分からないという時は、実際に保護主や猫カフェの店員に家に来て貰い、対策が必要な箇所を指摘して貰いましょう。

STEP4 手続きをする

トライアル完了時点で、双方に問題が無ければ正式譲渡の手続きをします。個人のボランティアであっても、正式な契約書類を交わすことになりますので、大切に保管しましょう。

  • 必要書類の提出(賃貸の場合、ペット可物件であることを証明する書類のコピーなど)
  • 譲渡契約書を交わす
  • 保護されていた間の医療明細・ワクチン接種証明書
  • 譲渡にあたって必要な経費を支払う(医療費・交通費含む)

などが手続きの際に必要な書類になりますが、団体によって多少の違いはあります。また、必要書類の提出はトライアル開始前に行う場合もあります。

《出会いからウチの子になるまで、筆者の場合》

筆者が今一緒に暮らしている子は保護猫ですが、実際に体験した流れを参考までにお伝えします。

  • ウチの子とは違う別の子の問い合わせから譲渡会に行き、直接保護主さんと話をして意気投合。インスタグラムやLINEで交流を深めていく。この時点で猫と暮らせる環境であるか確認するアンケートなどは完了していた。
  • 保護主さんが次に保護した子の個性的過ぎる性格にやられて、前のめりにお見合いを申し込む。
  • お見合いに行って、ますます大好きになり、猫との暮らし方や注意点(特に脱走対策について丁寧に教えて頂き、実際に保護猫部屋に設置された脱走防止扉を見学&撮影)を詳しく伝授して頂く。帰り道、浮かれて猫タワーやベッドを購入する。
  • ペット可物件であることを証明する書類のコピーを提出すると共に、自宅の見取り図を送り、危険な箇所の指摘をして頂く。
  • 完成した脱走防止柵の写真と、設置したエアコン(エアコンが無かったため購入)の撮影をしてメールを送り、トライアルを待つ。
  • ウチの子を届けて頂き、更に家をチェック。「トライアル無しで大丈夫です!」という太鼓判を貰っていきなり正式譲渡の書類を交わす。
  • 譲渡金に寄付金を多少上乗せしてお渡しする。

という流れで譲渡に至りましたが、結構珍しいケースのようです。保護主さんとの信頼関係があったおかげで、譲渡後も相談に乗って頂くことができてとても心強い存在です。ウチの子が面白かわいすぎて、1週間に1度で良い写真報告を毎日、動画もつけて送っていました。

里親で引き取ったときにかかる費用は?

それぞれ異なりますが、保護猫にかかった医療費や、自宅まで猫を届ける際の交通費が支払いに含まれます。インターネットの里親募集サイトの場合、譲渡に必要な金額の提示と内訳が掲載されていますので、そちらも確認しましょう。3万~6万円程度かかる場合が多いようです。

猫との暮らし、どんなことにお金がかかる?

猫1匹あたりの年間支出は約16万円と言われており(アニコム損害保険会社「ペットにかける年間支出調査2020」より引用)月間で約1万5千円必要になります。また、猫の平均寿命15年で換算すると、猫1匹の生涯にかかる支出は約240万円です。特に医療費に関しては保険がきかない治療などもあり、一気に10万円単位かかる場合もあります。

現状、猫が生涯暮らすのに必要最低金額分の貯金があり、猫の生活費として月々1万5千円、将来的な医療費を考えた貯金が可能な経済力が必要といえます。

これは1匹の猫が何不自由なく生活を送ることができ、病気にかかった時にも最高の医療を受けられる、という一例です。身近で猫と暮らしている方がいたら、「何にどれだけかかるのか?」を実際に聞いてみると参考になります。

まとめ

筆者の猫も保護猫でしたが、今は当家のわがまま姫として君臨しています。初日は朝4時に叩き起こされたり(一緒に暮らす内に5時半~6時で落ち着きました)遊ぶのが好き過ぎて寝ていても叩き起こされたりしますが幸せです。1匹でも多くの猫が最高の家族と出会って、猫だけでなく家族丸ごと幸せになれるよう、多少なりともお力になることができましたら幸いです。

執筆者
東京出身、長野県在住のアパレル勤務兼ライター。 仕事に燃えに燃えていたが、ある日ふと「人ってストレスで死ぬんだよなぁ」と思い、絶対に叶えたい夢を一つ現実のものとする。 久しぶりに猫と暮らしたい、その夢を叶えたら次々に夢という名の野望が出てきて一歩一歩叶えている最中。 現在、猫と暮らす猫のための家を建てたい、最終的に小説家兼ライターに肩書きを変えたいという野望に燃えている。