おうちの猫に、健康診断を受けさせていますか?中には人間でも面倒だと受けていない方もいらっしゃいますが、健康診断は健康管理だけでなく、隠れた病気の早期発見にも繋がる大切なことです。しかし、猫に健康診断を受けさせたことのない方は、内容がわからず不安だという方もいらっしゃるのではないでしょうか?この記事では、猫の健康診断について詳しく解説してまいりますので、ぜひご一読ください。
猫に健康診断は必要?
猫たちは、具合が悪くても飼い主さんに言葉で伝えることはもちろんできませんし、体の不調を隠す傾向のある動物なので、病気の発見が遅れてしまうこともあるでしょう。健康診断を受けることは、愛猫と長く健康に過ごすためには必要なことです。
猫の健康診断、何歳から受けた方が良い?
猫は生後1年から1年半で成猫となります。その後は人間の寿命で換算すると、1年で4歳ずつ歳をとる計算となります。
生後1年までは、出生後の予防接種や避妊去勢などと合わせ、なにかと動物病院にかかることもあります。その都度簡単な健康診断で構わないので、チェックできるとよいでしょう。成猫となる1年以降からは、より本格的な健康診断を受けることが推奨されています。目安は猫によって様々ですが、遅くとも中高年となる6〜7才の頃には受けるべきでしょう。
日頃から動物病院に行くことに慣れさせておくと、いざという時にも、猫自身に負担なく通院できますから、やはり早めに受けることがおすすめです。
猫の健康診断、1年に何回受けた方が良い?
人間と同じように、1年に1回の健康診断を受けたとしても、人間の寿命で換算すれば4年に1回程度となります。成猫では年に1回ワクチン接種のタイミングなどに合わせて健康診断も受けられるとスムーズです。
中高年以上の猫は、より病気のリスクも高まりますので、半年に1回、もしくは猫の健康状態によってはそれ以上必要となる場合もあります。猫が高年となってきたら、かかりつけの動物病院と相談して、どのくらいの頻度で受けるべきかを決めるのがよいでしょう。
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猫の健康診断、検査項目は?
猫の健康診断には、一般的に受ける検査項目と、加齢や健康状態によっては必要となってくるオプションの検査項目があります。
一般検査項目
- 身体検査
聴診や触診、視診など内科的検査と体重測定します。心音や呼吸の状態、内臓の動き、目、鼻、耳など体全体と皮膚や被毛の状態をチェックします。
- 血液検査
採取した血液を検査して、血液の成分から健康状態を調べます。血球検査と生化学検査とあり、血液中の数値や形状から、身体検査だけでは分かりにくい内臓の病気が判明することがあります。
- 糞便検査
主に自宅で採取した便を持参して行います。顕微鏡検査で細菌、寄生虫やその卵などがいないかをチェックします。
- 尿検査
尿内の鮮血、ph、たんぱくなどの数値を測ります。尿を持参するのが一般的ですが、繊細な性格の猫の場合、採尿は難しく自宅では困難な場合には、病院で行うこともあります。
オプション検査項目
- 口腔内検査
歯や歯肉の状態を確認します。病院によっては、一般検査項目の身体検査の一環として調べてくれるところや、オプションの歯科検診として別項目となるところなど様々です。健康診断を受ける前に、獣医師に確認しましょう。
- レントゲン検査
X線によって体の内部を写し出します。内臓の大きさや形状、位置、関節の状態を確認します。
- CT・MRI検査
電磁波やX線の360度照射により、より精密な体内の状態を調べることができます。大掛かりな装置の為、どこの病院でもできるわけではありません。老齢の猫や持病のある猫など、比較的病気リスクの高い猫におすすめされる項目となっています。
- 超音波検査(エコー検査)
超音波で、レントゲンではわかりにくい臓器の大きさや形状、内部構造などを確認します。
- 心電図
体に電極を取り付けて、心臓が発する電気信号をとらえ、波形として観察する検査です。人間の健康診断では一般的な検査のひとつで、心臓の動き方に異常がないか確認します。
健康診断で解ること
身体検査では、肥満度や皮膚疾患、歯周病や歯肉炎などの口腔内トラブル、栄養状態など目に見てわかる健康状態を確認できます。血液検査や糞便、尿検査では、寄生虫の有無や泌尿器の異常、猫がかかりやすい糖尿病、腎臓病といった病気も判明します。
オプション項目は、獣医師と相談しそれぞれ猫の健康状態や、年齢、猫種によって必要であると判断された項目を、受診するとよいでしょう。腫瘍やガン、脳炎、心不全など、大きな病気が見つかる可能性があります。
猫の健康診断、気を付けることはある?
健康診断を初めて受ける猫や、特に病院が苦手な猫、飼い主さんが気になっている健康状態など、受診前後に気を付けておくべきことがいくつかあります。
健康診断までにしておくこと
健康診断を受けるにあたり、予約がなくては受診できない病院もありますので、まずは受診する予定の動物病院に連絡しましょう。その際、当日持っていく必要のある便や尿などの説明や、オプション、費用の確認もしておくと当日安心です。人間の場合、健康診断前に飲食をしないよう制限されますが、猫の場合は検査内容や病院によって異なりますので、こちらも確認しておきましょう。
便や尿を持参する場合、時間が経ってしまった状態だと、正確な数値が取れないことがあるので、基本的には当日採取が好ましいです。採尿は、猫の性格によっては困難な場合もありますので、病院で採尿用のキットが用意されている場合もありますが、販売されている採尿シートやシリンジなどで、事前に練習しておくのもよいでしょう。どうしても自宅で採尿が難しかった場合には、病院でカテーテルを挿入して採取します。
病院慣れしていない猫は特に、健康診断でも暴れてしまったり興奮状態になってしまうことも考えられます。可能な限りストレスなく受診するためにも、キャリーに慣れさせておくことや、暴れた時に獣医師も含め飼い主さんもケガをしないように、爪を切っておくこともおすすめです。
健康診断後に気を付けること
特に病院嫌いの猫や、人見知りな性格の猫にとって、健康診断そのものが大きなストレスとなったり、恐怖として印象づいてしまうと、今後定期的に受診をするのにも、毎回大変な苦労を伴うことになります。受診後にはご褒美におやつを与えたり、たくさん遊んであげたり、愛猫を十分に労ってあげましょう。
普段の生活で猫の健康管理をしよう
健康診断を受けることで、猫の健康状態を細かく確認することができますが、常日頃から共に生活する飼い主だからこそできる、猫の健康管理も大切です。普段の食事や排泄の様子を確認する事、スキンシップの中でできる健康管理もあります。
食事の管理
元気な成猫であれば、1日に必要な摂取カロリーは体重×50〜80キロカロリーといわれています。5キロの猫であれば、およそ250〜400キロカロリーです。(あくまで目安であり、猫の年齢や性別、去勢や避妊の状況によっても異なります。)総合栄養食と記載のあるキャットフードは、それだけで猫に必要な栄養素がバランスよく取れます。一言で「総合栄養食」といっても、腎臓ケア・膀胱ケア・毛玉ケア・口腔内のケア・肥満防止・消化が良いなど、様々なフードが市販されていますが、子猫、成猫、シニア猫と、成長にあわせて必要なカロリーや栄養も少し変わってくるので、ライフステージにあったフードを選ぶようにしてください。ウェットやドライのフードの他に、おやつをあげている飼い主さんもいらっしゃるでしょうが、それぞれに適量となる目安も記載されていますので、カロリーオーバーには注意してください。
また、完全肉食である猫には、グレインフリー(穀物不使用)のフードが良いという話も聞きますが、これに関しては学術的なエビデンスはありません。穀物アレルギーの子でしたら、グレインフリーのキャットフードを食べた方が良いですが、アレルギーのない子でしたら、良質なたんぱく質は積極的に取った方が良いという意見もあります。穀物に含まれる植物性たんぱく質は、動物性たんぱく質と結びつき、猫が生きるために必要なエネルギーへと変化します。うちの子に何が良いのか判断に悩むのでしたら、獣医師に相談してみると良いでしょう。その子の体調にあったフードを提案してくれると思います。
飲水の管理
全ての生き物にとって、飲み水は健康維持には欠かせません。特に猫は泌尿器にトラブルを起こしやすい生き物なので、飲水は複数の場所に用意し、常に新鮮な水を飲める環境用意をすることが大切です。
フードが混じってしまったりすると、夏場は特に雑菌が繁殖しやすくなってしまうので、こまめに交換し衛生面に気を付けましょう。自動給水機を導入するのもおすすめです。
猫の飲み水は水道水が適していますが、ミネラルウォーターを与える場合は、硬水でなく軟水を与えるようにしましょう。硬水はミネラルが豊富なので、尿路結石を引き起こしやすくなるので、与えないようにしてください。
飲水の量が減った、極端に増えたなども病気の兆候が疑われますので、気づいた場合には、獣医師に相談しましょう。
トイレの管理
猫にとっても排便・排尿は健康のバロメーターです。愛猫がトイレを使ったらすぐに掃除をするなど、清潔に保つよう心掛けてください。猫ひとりのお留守番の時間が長く、常にトイレ掃除をするのが難しいという場合には、システムトイレを使うと良いでしょう。ただし、猫にも好みのトイレがあり、トイレが気に入らないと排尿を我慢してしまう子もいます。トイレの形、砂の種類など、愛猫の好みを探り、お気に入りを見つけてください。
また、トイレの数は1匹につきプラス1個が理想とされています。1匹で暮らす子の場合、1か所のトイレが汚くても、もう片方が綺麗であれば我慢をせずに使えるからです。ただ、多頭飼育の場合、猫の数+1を用意するのは難しいかも知れませんが、最低でも猫の数分のトイレを用意するようにしましょう。
トイレ掃除の時に特に気をつけたいのは、おしっこの回数(固まる猫砂ですと、1日何個の塊が出来ているかで確認ができます)おしっこの色(システムトイレですと、紙のシートを敷いて使うものが多いので、チェックが容易です)便の硬さです。時間が経っていたとしても、軟便や下痢はおしっこの塊のような形で残っています。健康で元気な時におしっこの量、回数、便の回数をチェックしておくと、排便・排尿トラブルが起きたときに直ぐに気づくことができます。
運動の管理
毎日お散歩に連れていける犬とは違い、猫の運動管理は難しいと思われるかも知れません。活発な子猫や若猫でしたら、ひとりで部屋を走り回って運動をしていますが、おとなしい子やシニア猫の場合には、どうすれば良いでしょうか。
キャットウォークやキャットタワーを設置してあげることが、運動量確保のための最善策ですが、安価な物ではありませんし、住宅環境を考えると設置が難しいという場合もあるでしょう。そのような時には家具の配置を工夫するのもひとつの手です。途中で段ボール箱やお気に入りのベッドを設置したり、窓の横に家具を配置して外が見れるようにすると、キャットウォーク兼キャットタワーになり、愛猫のお気に入りの場所になるでしょう。
また、1日最低でも1回、10分~15分の時間を確保して、愛猫と思い切り遊んであげましょう。羽や獣毛がついたじゃらしで狩りに見立てた遊びをする、部屋を暗くしてレーザーポインターや懐中電灯の光で追いかけっこをするなど、愛猫と一緒に遊びを楽しんでください。運動量が確保できるかだけでなく、ストレス発散になりますし、スキンシップの時間が増えると愛猫との距離がもっと近づきます。
お手入れで出来る猫の健康チェック
毎日のお手入れの時に、健康チェックを取り入れると、少しの変化でも気付くことが可能になり、病気の早期発見につながります。お手入れの時にチェックしたいのは、以下の項目になります。
- ブラッシング
痛がる場所、極端に嫌がる場所はないか
腫れ、シコリ、炎症、脱毛などの皮膚の異常はないか
大量のフケが出ていないか
ノミやダニなどの外部寄生虫はいないか
- 耳掃除
耳のニオイ
炎症がないか
耳垢の色
- 歯磨き
口臭の有無
歯茎の色、腫れ
出来ればお手入れの時間帯や場所を決めておき、お手入れ後に同じ時間帯、同じ場所、同じ格好の愛猫の写真をスマホなどで撮っておくと良いでしょう。写真を観返して異変に気付くこともありますし、病院にかかったときに獣医師への説明で使用できます。
まとめ
医療の発達した現代では、動物の予防医学も急速に進化しています。特に猫の高齢化に伴い最も発症しやすいとされる腎不全も、解明の糸口が開きつつあります。
定期的に健康診断を受けることは、病気の早期発見に繋がり、愛猫と長く健やかに過ごすためには欠かせないといえるでしょう。家族の一員である愛猫にも、定期的な健康診断を受けさせてあげることをおすすめします。