猫がかかりやすい病気、症状、原因、治療法を徹底解説

猫の健康 猫がかかりやすい病気リスト!病名・原因・治療法を解説

執筆/水科希望

楽しい猫との暮らしも、猫が病気になってしまったらと考えると、心配で堪りません。人なら「この薬を飲んだら病気が治るから頑張ろう」と理解できることも、猫にとっては「具合が悪いのになんでこんなにマズイもの飲ませるの?」といったところでしょう。身体機能の低下による慢性疾患などは防ぎようがありませんが、日頃から気を付けていることで予防できることもたくさんあります。かわいい家族を病気から守るためにも、まずは知ることから始めましょう。

年齢でかかりやすい病気があるって本当?

年齢ごとに体調管理の注意点が異なるのは人と一緒です。子猫の内は病への抵抗力が備わっていない、体が未発達であることで注意が必要で、シニアになっていくと身体機能が低下することで筋肉や内臓の衰えが見られます。若い猫も子猫やシニアほどではないですが、具合が悪いのを隠すのが上手いので日頃の観察や記録がとても大切です。

子猫(~1歳)

子猫は人の子供と一緒で未発達な体に、抵抗力も低いためさまざまな病気にかかる可能性があります。特に注意したいのは下痢です。ほんの少しの下痢でも脱水を起こしてしまうため、下痢の症状が見られたら即座に病院へ連れて行きましょう。結膜炎、外耳炎、嘔吐、膀胱炎などの病気や、猫エイズ・猫白血病・猫伝染性鼻炎気管炎(いわゆる猫カゼ)などのウイルスに感染、回虫・コクシジウムなどの寄生虫に感染している場合もあり、成猫ならば軽く済む症状も子猫が感染すると重篤な症状を発症することも多いため、充分な体調管理が必要です。

若猫(~7歳)

子猫から成長し、十分に体ができあがって病気への抵抗力も強い状態です。ですが、猫はストレスに弱く、原因不明の病気の大半がストレスに起因していると言っても過言ではありません。繊細な子になるとトイレの位置がほんの少しずれただけでも気にしてストレスを感じる場合もあります。

成猫が病気で病院に行く理由の多くは、膀胱炎、嘔吐、結膜炎、下痢、皮膚病、などです。特に泌尿器系の病気はどの年齢でも注意が必要です。また、去勢・避妊手術後はホルモンバランスの影響で食欲が増進し、肥満に繋がりやすくなります。

プレシニア(7歳~9歳)

7歳からはシニアの入り口と言われています。この頃からフードを切り替えて年齢に備えることも視野に入れましょう。念のため定期健康診断を1年に1回から半年に1回にすると、病気の早期発見になるので安心です。プレシニアになると、膀胱炎、嘔吐、外耳炎、結膜炎といった病気以外にも、慢性腎臓病、甲状腺機能亢進症などシニア特有の体の機能が弱ってくることで発症する病気の心配も出てきます。

シニア(10歳~)

シニアも、プレシニアと同様に、体の機能が弱ってくることで発症する病気が多く見られるようになります。また、胃腸の働きが弱まるため胃腸炎を発症する恐れもあり、慢性腎臓病のステージが進行していることも多いでしょう。1日でも長く健康寿命を延ばすためにも、ストレスのない環境を整え、弱った体力に合わせて狭いエリアでお気に入りの寝床やゆっくりお水を飲める場所、移動するためにステップを増やしてあげるなどのバリアフリーな配慮も必要になります。

猫がかかりやすい病気一覧

猫の七大疾患をご存じでしょうか。諸説ありますが猫の七大疾患は、腎臓病・糖尿病・尿路結石・腫瘍・甲状腺機能亢進症・炎症性腸疾患(IBD)・肥大型心筋症・肥満とする獣医師が多くいらっしゃいます。腎臓病のようになぜ発症するのかメカニズムが解っていない病気や、肥大型心筋症のように先天性の疾病もありますが、猫の病気のほとんどが、飼い主の日々のケアで防げるものが多いのです。

猫がかかりやすい病気の症状・原因・治療方法・予防方法などをまとめました。かかりやすい病気も、日頃の備えで防げるものが多いです。そして、その備えは決して難しい技術を要するものではありません。大切な家族のために、まずはどんな病気があって、どうやって予防していけば良いか確認していきましょう。

皮膚の病気

皮膚炎

【症状】

毛が抜ける、かさぶたができる、毛が脂っぽくなる、かゆがる、発疹が出る、など、被毛で覆われていて分かりにくいですが、なでている時に違和感があって気づくことが多いです。

【原因】

アレルギー、菌の感染、ストレス性の過剰な毛づくろい、寄生虫(ダニ・ノミ)、などが原因で発症します。

【治療方法】

まずは原因を特定します。特定した原因に合わせた治療を行っていきますが、どれが原因であっても発見が遅れると治療が長引きますので、少しでもおかしいと思ったら獣医師に相談しましょう。心配し過ぎですよ、と笑われるくらいでちょうど良いと思って下さい。

【予防方法】

特にノミ・ダニが原因の場合は予防薬があるので定期的に投与することで予防できます。また、定期的なブラッシングや優しくなでるコミュニケーション、マッサージなどを行う時に皮膚や被毛の変化に気づくことが多いので早期発見につながります。

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口腔内の病気

歯周病・歯肉炎

【症状】

歯茎が赤い(通常はピンク色、歯を縁取るように赤くなる)、出血、口臭、よだれが多くなる、歯がぐらつく、痛みにより食欲低下(猫の口腔内は痛みを強く感じると言われている)など。重度の歯周病になると歯の根元周りに細菌が入り込んで骨を溶かし、穴を開けてしまうこともあります。発見が遅れるほど治療方法が猫の体にとって負担となるものになっていきます。歯石が無くても口臭がある場合には早めに病院で診て貰いましょう。

【原因】

歯垢や歯石内の細菌が原因となって発症。ウイルス感染や免疫力の低下が原因で体内の抵抗力が落ちて発症する場合もあります。口の中に留まらず、細菌が血流に乗って運ばれて心臓・腎臓・肝臓の病気の原因になる可能性もあります。

【治療方法】

放置していて自然に治ることは絶対にありません。炎症の進行状態によって歯石の除去、炎症を抑える抗炎症剤の投与などを行います。進行状態によっては抜歯しか選択肢が残らないこともあり、口腔内の治療には全身麻酔が必要です。持病のない健康な子であっても全身麻酔には負担がかかるため、早めに気づいて対処することが大切です。

【予防方法】

人と同じで、歯みがきが1番の予防です。1度歯の周辺組織が壊れてしまうと完全に元に戻ることはないため、子猫の内から歯みがきできるようにトレーニングをしましょう。毎日が理想的ですが、歯垢が歯石になる前に除去できれば良いので、難しい場合は2~3日に1回でも続けることが大切です。また、歯みがきが難しい場合は歯垢・歯石予防に特化したフードに変える、デンタルケアスプレーやジェルなどを使って口腔内環境を整えてあげましょう。

免疫力の低下が原因で炎症を起こすこともあるため、激しく体調に変化がないように、体調の管理も大切です。

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泌尿器の病気

膀胱炎

【症状】

何度もトイレに行く、尿が少ししか出ない又は全く出ていない、血尿が出たなどの症状が表れたら、膀胱炎の可能性が高いです。特に、尿が全く出ない状態は命の危険がありますので、迷わず連れて行って対処して貰いましょう。

【原因】

原因は大きく、細菌性・結石・原因不明に分かれます。人や犬は細菌性膀胱炎(膀胱に細菌が入り込んで炎症を起こす)が多いですが、猫は突発性膀胱炎になる可能性が高く、原因の大半はストレスと言われています。1度かかると再発する可能性も高いため、原因に合わせた治療と対処を守りましょう。

【治療方法】

軽度なら1週間ほどの内服薬、消炎剤の注射などで治まります。細菌が原因の場合は抗生剤を処方されることもあります。膀胱内をキレイにする目的でたくさんの水分を摂る必要があり、場合によっては皮下補液が必要なこともあります。

【予防方法】

日頃のトイレチェックが肝心です。回数、1回の量、排尿姿勢を取ってからスムーズに出ているか、痛そうな様子はないか、気をつけて確認しましょう。特に寒い時期は要注意です。水を飲む量が減り、尿が濃くなりすぎて結石ができてしまう可能性が高まります。いつも飲んでいる水の量を把握しておき、特に寒さが気になる季節には、飲水量が減っていないか注意しましょう。水が飲めていないようでしたら、水分を多く含むウェットフードや鶏肉をゆでた汁を与え、水を飲めるように工夫が必要です。

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尿石症

【症状】

尿の回数が多すぎる、血尿が出る、発熱、食欲がない、尿をしているときに痛そう、しきりに陰部をなめるなど。結石の大きさにもよりますが、尿道などに詰まって尿の排出を阻害してしまうと、体内に尿内の毒が巡って命の危険があります。排尿時の気になる症状が表れたら、迷わず病院へ連れて行って下さい。

【原因】

尿に含まれる成分が結晶化し、腎臓や膀胱などを含む尿の通り道で結石になってしまいます。

【治療方法】

結石が大きく症状が重い場合、尿道カテーテルによる治療が行われます。結石が小さい場合には内科的治療で対処し、phコントロール薬と療法食(尿のphを整えて、尿内の結晶を溶かす)などの対処を行います。

【予防方法】

膀胱炎と同じようにトイレの確認や水を飲む量の確認、水をたくさん飲める工夫をしてあげて下さい。

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消化器系の病気

下痢

下痢とは便の水分量がいつもより増した状態のことを指します。消化不良などで急性の下痢になる場合や、何らかの病気が原因で下痢をすることがあります。

【原因】

ウイルスや細菌、寄生虫の感染によるもの、消化吸収不良、食物アレルギー、異物によるもの、他の病気によるもの、ストレスなどが考えられます。特に下記の場合は速やかに病院へ行くケースです。

  • 元気がなく、ぐったりしている
  • 食欲が無く、水も飲まない
  • 血便・黒色便・粘液便・ドロドロの便が出ている
  • 下痢が続き、脱水している
  • 嘔吐もある
  • 長期間続いている

下痢を引き起こす病気もありますので、自己判断に頼らず直ぐに獣医師の判断を仰ぎましょう。

【予防方法】

原因によって様々ですが、ストレスのない環境で生活して貰うことも大切です。寄生虫・細菌・ウイルスが原因の場合は、感染源と接触しないこと、食物アレルギーが原因の場合はアレルゲンの特定を行ってその子にあったフードに切り替えることで防ぐことができます。日頃から便の様子を観察しておくと異常に早く気づいて対処できます。

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胃腸炎

【症状】

消化器の粘膜が炎症を起こしている状態です。吐き気、下痢、食欲低下などを引き起こし、嘔吐や下痢により脱水症状を起こすこともあります。嘔吐や下痢、食欲低下などは他の病気が潜んでいることもあるため、症状が出た場合は早めに病院へ行きましょう。

【原因】

原因はさまざまで、誤飲やストレス、感染症や中毒などが考えられます。

【治療方法】

原因となっている感染症や中毒に対処していきます。誤飲の場合は飲み込んだものを取り出すために外科的手術が必要になることもあり、非常に猫の体に負担がかかりますので日頃から猫が口に入れことができるものは全てしまっておくように注意が必要です。

【予防】

猫にとって害のある食べ物、飲み物、誤飲につながる物は全て撤去しましょう。誤飲とは異なりますが、長毛の子は毛づくろいで飲み込んだ毛が消化管にたまって胃腸炎や胃炎を起こすこともあります。毎日のブラッシングで予防しましょう。

猫はよく吐く動物ですが、普段から嘔吐する前、最中、後の様子、嘔吐物の内容も確認しておき、何回も吐くなどの異常があれば直ぐに病院へ連れて行きましょう。

腎臓病

腎臓の機能が長い年月をかけて徐々に低下していくことで起こる病気です。高齢猫がかかるイメージの強い病気ですが、年齢に関係無く発症するため若い猫でも注意が必要です。

【症状】

突然ぐったりする、嘔吐、意識の低下、呼吸が荒い、排尿がない、などは急性腎不全と呼ばれる緊急性の高い症状です。速やかに病院へ連れて行きましょう。

慢性腎臓病の場合は進行が緩やかですが、水をたくさん飲むようになった、食欲低下、体重減少、尿の色が薄い、元気がない、嘔吐、口臭、便秘、被毛にツヤが無いなどの症状が表れます。

【原因】

急性腎不全の場合は循環器系の異常、急性腎炎、ユリなどの腎毒性のあるものの摂取、尿が排出できないなど急激に腎臓に負担がかかることによって発生します。慢性腎臓病の場合は徐々に腎臓が炎症を起こしていくことによって引き起こされますが、原因はまだハッキリと解明されていません。

【治療方法】

腎臓病を根本的に治す治療方法はありません。失われた腎機能は2度と回復せず、治療は腎機能の低下を遅らせることに留まります。進行を遅らせるための投薬を継続的に行い、腎臓に負担をかけない療法食、充分な水分補給などを獣医師と共に飼い主が行います。

【予防方法】

現状は進行を遅らせることしかできないため、早期発見が何よりも猫の命を救います。定期的な健康診断はもちろん、日頃のトイレチェックを行って早く異常に気づけるよう心がけましょう。

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糖尿病

糖尿病は膵臓から分泌されるインスリン作用不足による病気です。病状の進行と共に白内障や腎疾患、肝疾患など、多くの合併症を伴うことが多いので注意が必要です。

【症状】

初期症状としては、飲水量の増加、尿量の増加、食欲があるのに痩せていくなどがあります。症状が進行すると、嘔吐や下痢、重症になると神経障害や昏睡などを起こして死に至ることもあります。糖尿病は合併症を伴うことが多いため、他にも白内障や腎疾患、肝疾患、細菌感染症などの症状が表れることがあります。

【原因】

遺伝、免疫疾患、ウイルス感染などが原因で膵臓のインスリンを分泌する細胞が破壊されてしまい、インスリンの分泌が不足する、体の細胞がインスリンに対して反応しにくくなる、肥満、ストレス、偏った食事、加齢などによって発症します。

【治療】

血糖値のコントロールが治療の主体です。軽度の場合は食事療法や運動療法などを行いますが、血糖値の管理ができない場合はインスリンの投与や経口血糖降下薬などの投与を並行して行います。その他、併発した病気への治療も同時に行います。

【予防方法】

食事による生活習慣病でもありますので、偏った食事にならないよう、しっかりと良いフードを選んで食べさせて下さい。ストレスが引き金となって糖尿病を発症することもあるため、猫がストレスに感じることを取り除いて快適に過ごせるよう努めましょう。早期発見のため、定期的な健康診断を行うと共に自宅では水を飲む量、尿の量をよく観察しましょう。

腸閉塞

腸閉塞(イレウス)とは、なんらかの理由で腸が詰まってしまい、消化から排泄の機能が正常に行われていない状態を言います。主に機械的腸閉塞と機能的腸閉塞に分けられ、機械的腸閉塞には、単純性腸閉塞と絞扼性腸閉塞があります。

【症状】

腸閉塞を起こしていると、嘔吐、腹部の膨らみ、便秘などの症状がみられます。

【原因】

機械的腸閉塞(単純性腸閉塞)

外部からの刺激によって腸管の形が変形して起こる機械的腸閉塞であるケースがほとんどです。

  • 誤飲誤食
  • 毛球症
  • 腫瘍
  • 寄生虫

機械的腸閉塞(絞扼性腸閉塞)

比較的症例が少ないのですが、腸炎や腹膜炎など消化器官の炎症や、薬の副作用などで腸管が麻痺・痙攣してしまい、腸の動きが低下して起こります。

【治療】

腸閉塞を起こしている原因によって治療法は異なりますが、外科手術による治療が多くを占めます。誤飲や毛球症では開腹手術で異物を取り除きますが、腸管の壊死や腸重責が見られた場合にはその部分を切除して縫合するという大掛かりな手術になることもあります。腫瘍が原因の場合には、腫瘍部分の切除と抗がん剤治療、寄生虫が原因であれば駆除薬の投与となります。

【予防】

猫の腸閉塞で一番多い原因が、誤飲誤食や毛球症による機械的腸閉塞です。これらは飼い主の注意によってある程度予防することが可能です。猫が誤飲しやすいものは猫の手が届かない場所に保管する、日々のブラッシングや毛玉ケアのフードでお腹に毛が溜まるのを防ぐ、定期的な寄生虫駆除などが予防法になります。

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心臓の病気

心臓病

心臓病の中でも最も多いのは心筋症です。心筋症は心臓の筋肉がうまく機能しなくなる病気の1つです。循環器不全だけでなく、心筋症が原因で血栓(血のかたまり)ができることがあり、それが血管内に飛び出すと血流を遮断してしまい心臓とは違うところで症状が出ることもあります。後ろ足の根元の血管で詰まる場合が多く、後ろ足のマヒや壊死を起こします。

【症状】

呼吸がしにくく苦しそう、心拍数が多い、元気が無い、疲れやすくて動いたら直ぐに休んでしまう、食欲低下など。重くなると繰り返し失神してしまうこともあります。

【原因】

猫の心筋症の中でも多いのは肥大型心筋症(心臓の筋肉が大きくなってしまい、血液が入る部屋が狭くなってしまう)で、その原因は遺伝的なものであると言われていますが、ハッキリと解明されていません。

【治療方法】

心筋そのものの機能を回復することはできません。心臓の負担を減らす薬の投与や、血を固まりにくくする薬で血栓ができないようにする内服薬による緩和治療を行います。

【予防方法】

やはり早期発見が何よりも大切ですので、定期的に健康診断を受けることが大切です。猫は具合が悪いのを隠すのが上手く、気づいた時には手遅れということもあります。日頃から健康管理のために若いからと油断せず、必ず1年に1回の健康診断を受けるようにしましょう。

ホルモンの病気

甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモン(体の代謝を活発にするホルモン)が過剰に分泌されることで発症します。

【症状】

活発過ぎて落ち着きがない、噛む、絶えず鳴く、水を飲む量が異常に多い、食欲は増しているのに痩せていく、嘔吐、下痢、呼吸が早い、脱毛、毛艶が無くなるなど。中高年の猫に多い病気です。

【原因】

甲状腺ホルモンが必要以上に作られてしまうことで発症。腫瘍化してしまうこともあります。

【治療方法】

抗甲状腺薬(甲状腺の働きを抑える)を投与することで働きを抑制します。根本的な治療ではないため、生涯かけて投薬が必要です。状態によっては甲状腺を外科手術で取り除くこともありますが、この場合は甲状腺ホルモン薬をやはり生涯にかけて投与する必要があります。

【予防方法】

早期発見と、早期治療のために定期的な健康診断が必須です。セミシニア(7才~)くらいから、健康診断を半年に1回行って早期発見に努めましょう。猫の普段の様子を伝えられるように、日頃から動画などで記録を撮っておくと獣医師に様子を伝えやすくなります。水を飲む量や尿量の確認も気になる時だけでなく健康な状態の場合も知っておくと比較ができて異常に気づきやすくなります。

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全身の病気

腫瘍

【原因】

腫瘍(がん)の原因はストレスによる免疫力の低下や慢性的な炎症、生活習慣や、免疫力が低下する感染症、加齢による遺伝子変異の積み重ねなどがあります。腫瘍は良性と悪性に分けられますが、良性腫瘍は転移することがなく、大きくなる速度もゆっくりです。悪性腫瘍は増大速度が速く、周囲の組織に広がり、体のあちこちに転移してしまいます。

【症状】

体の表面に発生した腫瘍は、しこりを見つけて早期発見できることが多いですが、内臓に発生している腫瘍は初期だと症状が少なく、気づきにくいです。食欲がない、下痢、嘔吐、やせてくる、血便、血尿、呼吸が苦しくなるなど他の病気に似た症状が表れます。様子がおかしい時には病院で血液検査や画像検査を行ってもらいましょう。

【治療方法】

主な治療方法は、

  • 手術により外科的にがん細胞を切除する
  • 抗がん剤を用いる化学療法(血液のがんに対して有効)
  • 放射線を照射してがんを小さくする放射線療法
  • 免疫を司るリンパ球にがん細胞を攻撃させて治療する免疫療

の4つの治療法があります。それぞれメリット・デメリットがあり、腫瘍が発生した箇所やその子の状態によって獣医師と相談しながら決めていきます。

【予防方法】

メスの場合、避妊手術をすることで乳腺腫瘍を予防できます。また、猫白血病ウイルスを保持する猫と接触しないよう、完全室内飼いをすることで他の病気も防げます。また、海外の研究でたばこの煙によって猫や犬のがん発症率が大幅に高くなることが分かっています。副流煙を吸うことはもちろん、たばこの煙がついた毛を舐めることでガンの原因になるため、たばこを吸っている方は猫と暮らす前に禁煙をお勧めします。他の病気と同じく、早期発見と早期治療が大切ですので、定期的な健康診断を受けましょう。

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猫の感染症にも気を付けて!

猫の感染症はウイルスによって引き起こされます。いずれも一生ウイルスの保持者となり、免疫力が下がった時に再発し、病気によっては発症したら数週間で死に至る可能性もある恐ろしいものです。ワクチン接種によって感染防止できるものもありますので、定期的な健康診断と共に必ずワクチン接種を行いましょう。

猫エイズ(FIV)

エイズとは、後天性免疫不全症候群といって、生まれ持っていた免疫(病気に抵抗する力)が失われていく病気です。猫から人、人から猫に感染することはありません。FIVウイルスはほとんどの場合ウイルスに感染している猫に噛まれることで唾液に含まれるウイルスが傷口から感染します。発症までの潜伏期間は無症状なことも多く、一生発症しないこともあります。

【症状】

発熱、下痢、リンパ節腫脹、食欲不振、よだれが増える、口を気にする、鼻水、体重減少、口内炎など。後述する猫白血病にも感染している場合、FIV単体より症状が増えることもあります。

【原因】

FIVウイルスに感染する。噛み傷などの傷口からの感染が主ですが、母猫がウイルスを保持していると、母子感染する場合もあります。

【治療方法】

FIVウイルスを完全に根絶させる治療法は現在ありません。そのため、症状に合わせた対処療法を行います。猫エイズを発症する猫は大半が口内炎を発症し、口内炎によって食欲減退、体重減少とますます状態を悪化させていくため、抗生剤、抗炎症剤、インターフェロンなどの炎症を抑える薬で口内炎を緩和します。

【予防方法】

予防方法はウイルスに感染しないことです。ワクチンを接種し、完全室内飼いでウイルスを保持している猫との接触を避けましょう。FIVウイルスを保持している猫は他の猫から隔離します。菌を運ばないように人もFIVウイルスを保持している猫と接触した後はよく手を洗って消毒しましょう。

すでにウイルスを保持している猫も、ストレスの少ない環境下でのんびり過ごすことで発症の確立を下げることができます。できる限り快適に過ごせる環境を作ってあげましょう。

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猫白血病ウイルス(FeLV)

白血病とは血液のがんのことです。白血病だけでなく、免疫不全・貧血・リンパ腫など、他の病気を引き起こす原因にもなります。発症すると完治は難しく、数ヶ月~数年で死に至る感染症ですが、全ての猫が発症する訳ではなく、感染していても年齢や健康状態によって免疫機能が強ければ、感染初期に体から排除またはウイルスの増殖を抑えられる場合もあります。

【症状】

感染初期、全身のリンパ節が腫れ、発熱します。この初期一過性(2週間~数ヶ月)で免疫機能が強ければ感染が終わる場合もあります。持続するとリンパ腫、白血病などの血液の腫瘍、貧血、腎炎、口内炎、流産、死産などの症状が出ます。

【原因】

母猫がウイルスを保持している場合、胎盤を介して感染、授乳によっても子猫に感染します。唾液に大量のウイルスが含まれているため、舐める、じゃれる、喧嘩、食器の共用などでも感染してしまうため注意が必要です。

【治療方法】

ウイルスを完全排除する治療薬は現在のところありません。免疫力を高めるためにストレスの少ない環境を整え、食事療法を行います。リンパ腫、白血病を発病した場合は抗がん剤治療、インターフェロンや抗生物質投与などの対処療法を行います。

【予防方法】

ウイルスに感染しないことです。ワクチンの接種によって予防が可能なので定期的に接種を行って下さい。完全室内飼いで感染猫との接触を避けましょう。

感染している猫の場合は、ストレスによって免疫力が低下するのを防ぎます多頭飼いをしている場合、感染猫は別の部屋などに隔離をして接触を避け、ケージや食器の消毒を行い、お世話をした後は必ず手を洗って着替えるなど感染源を持ち込まないように注意しましょう。

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猫伝染性腹膜炎(FIP)

1才未満の猫に見られやすい症状で、発症すると数日から数ヶ月で死に至る可能性が高い感染症です。胃や肝臓など臓器の表面と、それらの臓器が収まっている腹腔を包んでいる膜である腹膜に炎症が起こります。ウイルスに感染しても発症しないこともありますが、1度発症すると完治することが難しい病気です。

【症状】

発熱、食欲不振、黄疸、腹水、胸水、などがみられます。

【原因】

猫コロナウイルスの一部が突然変異をおこすとFIPを引き起こす病原性を持つようになると考えられています。猫コロナウイルスは感染した猫の糞便や尿、分泌物と共に排出され、これらに触れることで口や鼻から感染します。

【治療方法】

FIPは有効な治療方法も発症のメカニズムもよく分かっていません。海外では新薬も出ていますが、日本では承認されていません(2021年1月時点)そのため、発症した症状への対処療法が主な治療になります。ステロイド剤、点滴、利尿剤などの内科的治療が主な対処です。

【予防方法】

完全室内飼育でなるべく外猫との接触を避け、猫コロナウイルスに感染しないようにするなど、感染しないことが前提です。海外ではワクチンがありますが、日本では認定されておらず有効性がハッキリしていません。感染しないよう徹底すると共に、ストレスのかからない快適な環境作りも大切です。

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猫コロナウイルス(FCoV)

猫コロナウイルスは日本でも多くの猫が保有しているウイルスで、多くの場合感染していても症状を起こすことのないウイルスです。しかし、コロナウイルスはまれに下痢などの消化器症状を引き起こす他、感染した猫の一部が前述した猫伝染性腹膜炎を発症する場合があり、その場合の致死率は非常に高いです。

【症状】

猫コロナウイルスに感染しても無症状であることが多いですが、下痢が続いてしまうことがあります。

【原因】

猫コロナウイルスに感染することです。感染経路は明らかになっていませんが、糞便や唾液中のウイルスが口や鼻を介して感染すると考えられています。

【治療方法】

猫コロナウイルスに関しては、それだけが原因で重篤な症状になることはほぼありません。他の疾患や下痢の症状に合わせて薬の投与や脱水を防ぐための点滴、食事療法などの対症療法を行います。治療によってウイルスを完全に排除することはできません。

【予防方法】

猫コロナウイルスを予防するワクチンはありません。猫から猫にうつっていくため、感染猫との接触を避けることが1番の予防です。完全室内飼いをし、新たな同居猫を迎える場合は事前検査を受けて感染がないことを確認しましょう。

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猫伝染性鼻気管炎(FVR)

呼吸器にウイルスが感染することで咳、くしゃみなど人の風邪によく似た症状を見せる病気で、猫風邪と呼ばれています。代表的なのは猫伝染性鼻気管炎(原因はヘルペスウイルス)と、猫カリシウイルス感染症です。

【症状】

風邪というだけあって、鼻汁、くしゃみ、鼻詰まりなどの鼻炎症状、発熱、食欲不振、病状が悪化すると肺炎にまで波及する場合があります。また、結膜炎、口内炎を併発することもあります。症状が軽い場合は数日で回復することもありますが、子猫が重症な状態になった場合、高熱と食欲不振により命に関わることもあります。

【原因】

猫ヘルペスウイルスに感染することによって引き起こされます。ウイルスに感染している猫との接触や空気感染により、2~10日程の潜伏期間を経て発症します。1度感染した猫は回復後もウイルスが体内に潜み、ストレスを感じたり免疫力が低下したりすると再発することがあります。

【治療方法】

ヘルペスウイルスを完全に排除する治療はありません。症状に応じて抗生物質やインターフェロンの投与など対症療法を行います。また、ストレスの少ない環境を整えて免疫力を高めることで再発を防ぎます。

【予防方法】

ワクチンの接種により予防ができます。感染した猫との接触を避け、完全室内飼いをしましょう。発症した猫も、ワクチンを接種することで抗体が作られ、再発を抑えることが可能です。

猫汎白血球減少症ウイルス(FPLV)

子猫(特に2~6ヶ月)が感染し発症すると非常に重篤な症状に陥る場合があり、致死率の高い恐ろしい感染症です。成猫にも感染しますが、成猫では症状が軽いか症状が全く出ないことが多いため、子猫にとって致命的な病気であると言えます。病原体のウイルスは非常に感染力が高いため、適切な感染症対策が必要になります。

【症状】

発症しやすい子猫にワクチン接種歴がない、またはワクチンプログラムが完了していない場合、以下の症状が表れたら猫汎白血球減少症の可能性を考えましょう。

  • 元気や食欲が無い
  • 嘔吐、下痢、脱水症状
  • 白血球数の減少

白血球の減少については血液検査で直ぐに分かりますので、病院で検査を行いましょう。

【原因】

猫パルボウイルスに感染することで発症します。パルボウイルスは感染力が強く、自然環境中で長期間感染力を維持できるため、根絶が難しいウイルスです。その上、効果のある消毒薬が限られており、塩素系消毒薬やグルタルアルデヒドと呼ばれるタイプを用いる必要があります。

感染経路は鼻や口を介して体内に侵入します。発症して症状が改善された後もしばらくは糞便などからウイルスが検出され、多頭飼育をしている場合、徹底的な感染予防対策を行わないと次々に感染していってしまいます。

【治療方法】

猫汎白血球減少症は発症すると急激に進行して一気に衰弱し、死に至る可能性の高い病気です。しかし、有効な特効薬は無いため、栄養補給や点滴といった支持療法(重篤な疾患や命を脅かす疾患の持つ患者の生活の質を改善するために行われるケア)が主体となり、乗り越えるのを待つことになります。1週間ほどで終息し回復に向かうため、その間に衰弱せず回復まで耐える、その子の強さに賭ける他ありません。

症状に合わせて支持療法も異なり、栄養補給が必要な場合は静脈点滴、白血球が著しく少ない場合は輸血を行うことも。回復に向かっている時も、全力で病気と闘うため体力を消耗しています。体調が回復するまで消化に良く栄養価の高い食事を、獣医師の指示に従って与えましょう。

【予防方法】

パルボウイルスに感染しないことが最大の予防方法です。感染している猫に接触させない、多頭飼いしている猫が発症した場合は部屋を分けるなどの隔離を行い、徹底的な消毒対策で感染拡大を防ぎましょう。

子猫が重篤化しやすい病気!?「猫汎白血球減少症」とは?

クラミドフィラフェリス感染症(猫クラミジア感染症)

猫カゼによく似た、鼻水や咳、くしゃみといった呼吸器症状が出る感染症です。猫以外にも、人や他の哺乳類、鳥類にも感染することがあるため、注意が必要です。

【症状】

結膜炎を起こし、目周辺の腫れや膿のような黄色っぽい目ヤニが出るのが特徴です。片目から両目に波及し、鼻水、くしゃみ、咳などの症状が数週間に渡り続き、長期化するケースも多いです。

【原因】

猫クラミジアという細菌に感染することによって起こります。感染した猫の口・鼻・目からの分泌物、糞便などに菌が存在し、それらの飛沫や経口によって感染します。

【治療方法】

クラミジアに有効な抗生剤の投与を2週間以上続けます。症状に応じて、目ヤニをきれいに拭き取ってから点眼薬、鼻の症状が強い時は点鼻薬、点滴などの対処療法も行います。

【予防方法】

ワクチン接種で予防できます。猫のワクチンにはいくつか種類がありますが、猫の状態に応じて適したものをかかりつけの獣医師と相談して決めましょう。一般的には3種混合ワクチン(猫伝染性鼻気管炎・猫カリシウイルス感染症・猫汎白血球減少症を予防できる)ですが、生活環境やその子の状態によって最適なワクチンは異なります。

猫の「クラミジア感染症」とは?症状は?治療法や予防法はある?

まとめ

猫の病気は原因が不明なものも多いです。そもそも、人や動物が何故病気になるのか、という根本的な原因についてもまだ解明されていません。それでも、猫が元気に長生きする秘訣は長寿猫が教えてくれます。

環境の変化が大きくなく、ストレスが少なくて楽しい家で、体に良いごはんを美味しく食べて、新鮮なお水がいつでも飲めて、一緒に遊んでくれる大好きな飼い主がいること。のびのびと暮らすことが猫にとっても人にとっても元気の秘訣と言えるでしょう。猫と一緒に人も健康に元気に過ごしたいものです。

執筆者
東京出身、長野県在住のアパレル勤務兼ライター。 仕事に燃えに燃えていたが、ある日ふと「人ってストレスで死ぬんだよなぁ」と思い、絶対に叶えたい夢を一つ現実のものとする。 久しぶりに猫と暮らしたい、その夢を叶えたら次々に夢という名の野望が出てきて一歩一歩叶えている最中。 現在、猫と暮らす猫のための家を建てたい、最終的に小説家兼ライターに肩書きを変えたいという野望に燃えている。