猫コロナウイルスの原因、症状、治療法を徹底解説

猫の健康 「猫コロナウイルス」とは? 感染はどこから?治療法はある?

執筆/たけのこ@猫パシリ20年

近年、世界的感染が起き脅威となっている「コロナウイルス」実はこの「コロナウイルス」が人だけでなく猫にも感染することをみなさんはご存じでしょうか?今回はそんな猫のコロナウイルスに関して予防法から治療法まで詳しく解説していきます。

猫もコロナウイルスに感染する?

 

コロナウイルスと聞くと「新型コロナウイルス(COVIDー19)」だけを想像しがちですが、実はコロナウイルスにはいくつか種類があり、猫コロナウイルス(FCov)はその内の一つです。また、猫コロナウイルス(FCov)はⅠ型とⅡ型に分けられ、さらに2つのバイオタイプ(全体が同一の遺伝子型をもっている個体群)が存在します。これらは遺伝子レベルでも区別することが難しく、猫に感染した病原性で区別がつきます。

病原性の中でも最も気を付けなくてはいけないのが、猫腸コロナウイルス(FECV)猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)です。特に猫伝染性腹膜炎ウイルスは致死率が高く、猫にとっての不治の病といわれています。

 

感染はどこから?

猫のコロナウイルスの感染経路は未だ研究途中ですが、一説によると、ウイルスを持っている他の猫から生じる糞尿や唾液などを経由して感染するとされております。例えば猫同士で共用のトイレや食器、飲み水を利用している、お互いを毛繕いしている場合に感染が起こる可能性があります。

猫腸コロナウイルスは、猫同士の感染が容易です。一方、猫伝染性腹膜炎ウイルスは感染力が弱く、猫同士の感染は少ないため、猫腸コロナウイルスが猫の体内で突然変異を起こし、猫伝染性腹膜炎を発症するのではないかと考えられていますが、はっきりとした原因は解っていません。

猫同士の接触がリスクファクターと考えられるため、外猫と接触する放し飼いや複数の猫と常に接触する多頭飼いは、感染リスクが高い状況になります。

感染しやすい年齢はある?

日本で暮らす猫の約20%が猫コロナウイルスに対する抗体を持っていると言われ、年齢や性別に関係なく感染するリスクがあります。感染しても無症状の事が多く、抗体キャリアとして生活をしています。

猫伝染性腹膜炎は全ての年齢で発症しますが、1歳未満の幼齢の猫は重症化リスクが高いとされています。

猫伝染性腹膜炎、どんな症状がでるの?

猫コロナウイルスに感染しても、ほとんどが無症状ですが、猫伝染性腹膜炎になると、腹部の臓器を覆っている腹膜に炎症を起こします。症状としては、「ウェットタイプ」「ドライタイプ」に分けられます。

それぞれのタイプで症状は異なりますが、どちらにも共通して見られる症状には、

  • 元気がなくなる
  • 食欲がなくなる
  • 発熱
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 体重が減る
  • 黄疸

などがあげられます。

また、ウェットタイプ、ドライタイプの特徴的な症状としては、下記があげられます。

  • ウェットタイプ

腹水や胸水がたまり、たまった水が肺を圧迫して呼吸困難に陥ります。

  • ドライタイプ

腎臓などの様々な臓器に肉芽腫ができます。また、脳に肉芽腫ができれば、けいれんなどの神経症状や、眼にぶどう膜炎の症状である瞳孔の縮小、眼の充血、涙が出る、瞬きの回数が多くなる、眼全体がモヤがかかったように白っぽくなる、などが見られます。

猫伝染性腹膜炎にかかった猫の全てがどちらのタイプであるか厳密な分類は難しく、特にドライタイプでは病変は身体の内側で起こるため、判断が難しくなる場合もあります。

猫コロナウイルスに感染しているか調べるには?

猫コロナウイルスの感染有無を調べるには、抗体検査が一般的ですが、それ以外にも血液検査や遺伝子検査(PCR検査)を行うこともあります。腹膜炎が疑われる場合には、腹水や胸水を抜いて遺伝子検査(PCR検査)を行います。PCR検査の場合は検査結果が出るまでに1~2週間の時間がかかり、抗体検査は検査結果の有用性が疑われる場合もあります。

猫伝染性腹膜炎が疑われる場合には、レントゲン検査やエコー検査で肉芽腫がないかを確認します。

猫コロナウイルスの治療法はある?

猫コロナウイルスに感染した場合の治療は基本的にありません。というのも猫のコロナウイルスに感染しても、ほとんどの猫が無症状だからです。中には猫コロナウイルスにより軽い下痢を起こす猫もいますが、その場合でも、投薬や食事療法などを行います 

どうやって治療するの?

猫コロナウイルスが原因で下痢が続くなどが見られた場合は、投薬治療や点滴、食事療法などを行います。

ただし、猫伝染性腹膜炎を発症した場合は話が変わってきます。猫伝染性腹膜炎は完治が難しい病気のため、症状を緩和する対症療法が中心となります。

【猫伝染性腹膜炎(FIP)における対症療法例】

  • 投薬や抗生物質の投与
  • 胸水や腹水の抜去
  • 栄養保持

どの治療も効果が良いとは言えず、延命に繋がらないこともあります。

効果があるサプリメントが開発されたという話を聞いたことがあるかも知れませんが、日本国内での承認は認められていません。そのため治療費はとても高額になりますし、科学的データに基づいた検証結果も確認出来ていません。大事な愛猫が苦しむのはかわいそう、どうにかして助けてあげたい、と飼い主さんが思うのは自然な事です。もしサプリメントを試したいという事でしたら、掛かりつけ医に相談し、慎重に決めるようにしてください。

猫コロナウイルス、完治する?

治療でウイルスを完全に排除することは不可能であること、無症状が多いことから、積極的な治療は行いません。猫伝染性腹膜炎を発症した場合は、治療で回復したという症例はまれで、完治は難しいとされています。

猫コロナウイルスのワクチンはある?

猫コロナウイルスの感染予防のためのワクチンは、今のところありません。猫伝染性腹膜炎(FIP)に対するワクチンは開発されてはいますが、効果が保証されておらず、日本では流通されておりません。

猫コロナウイルスの予防法は?

猫のコロナウイルスを予防するには、飼い主さんの日頃の努力が求められます。

具体的には

・完全室内飼いの徹底

・新しい子を迎えるときには事前に検査を受ける

・猫同士の共用物(トイレ、食器、おもちゃ)などの徹底した消毒

・猫の免疫力を下げないようストレスが少ない環境づくりに注力する

・猫のコロナウイルスに感染していないか定期的に抗体検査を実施する

などが予防方法として挙げられます。

猫コロナウイルスの消毒方法は?

猫コロナウイルスは非常に弱いウイルスです。猫同士での感染は簡単に起こりますが、空気中では長時間生存することができず数時間で死滅してしまいます。通常の手洗いでも十分に消毒できるため、普段、感染対策に使用している洗剤でも十分消毒できます。

ただし、ある程度の時間は生存し猫への感染リスクも考えられるため。外猫など他所の猫に接触したら必ず手洗いなど消毒するようにしましょう。

感染した猫に触れてしまったときは?

もし、感染が疑われる猫を触ってしまった場合には、必ず手洗いを済ませてから愛猫と触れ合うようにしましょう。慎重を期すには、シャワーを浴びて着替えをしてから、愛猫とスキンシップを取ってください。

新型コロナウイルスは、猫から人への感染はある?

現在、世界各地で新型コロナウイルス (COVIDー19) が蔓延しており、猫から人への感染も危惧されていた時期もあります。結論を申し上げると【猫から人への感染するリスクは低い】とされており、報告例も未だに挙がっておりません。厚生労働省からも同様の見解が発表されているため、不必要に猫からの感染を恐れる必要はありません。

新型コロナウイルス、猫同士の感染はある?

新型コロナウイルス(COVIDー19)は猫同士で感染する、という研究結果を、東京大学とアメリカ・ウィスコンシン大学、国立国際医療研究センター、国立感染症研究所の共同チームが発表しました。

新型コロナウイルス(COVID‐19)は人間同様、猫でも呼吸器で増え、猫同士の接触で感染するということが明らかになりました。ただ、猫の場合は、感染しても無症状が多いようです。いずれにしても猫も人間同様、新型コロナウイルス(COVID-19)への感染を防ぐには、ステイホーム(完全室内飼育)が重要です。

まとめ

いかがだったでしょうか?

今回の記事の内容をまとめると以下になります。

  1. 猫コロナウイルスは猫同士の接触により感染するため放し飼いや多頭飼育は感染リスクが高い。
  2. 猫コロナウイルスは新型コロナウイルスとは別物
  3. 猫コロナウイルスには猫腸コロナウイルスと猫伝染性腹膜炎ウイルスの2種類に大別される
  4. 猫腸コロナウイルスの脅威度は低いが、猫伝染性腹膜炎(FIP)は発症した場合、治療法が確立されていないため、致死率が高い
  5. 猫腸コロナウイルスはほとんど無症状なので治療の必要性も低い
    ただし、猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症した場合は症状に応じた治療を施す必要がある。
  6. 猫用のコロナウイルスワクチンはまだ実用化されていない。
  7. 猫コロナウイルスは非常に弱いウイルスのため、通常の手洗いなどの消毒方法で十分対応可能。
  8. 新型コロナウイルスでの猫から人への感染について未だ報告例が挙げられておらず、感染する可能性は低いと考えられている

新型コロナウイルスが流行し始めた頃、

  • 新型コロナウイルスと猫のコロナウイルスは同じという誤解
  • 猫から人に感染するという勘違い

など誤った情報に振り回され、中には猫を不法投棄する人まで出始めました。猫を捨てることは法的にも道徳的にも許される行為ではありません。猫のコロナウイルスに対して、正しい知識を持って感染対策を行うようにしてください。

執筆者
猫と暮らして20年以上。猫への無知さを獣医師に叱られ猛勉強。 猫ライターとして仕事できるまでになりました。 先代猫は20歳近くで旅立ち、現在は保護猫と一緒に暮らしています。