猫の膀胱炎の症状、原因、治療法、予防対策を徹底解説

猫の健康 猫は「膀胱炎」になりやすい?膀胱炎の症状・治療法を知り愛猫を守ろう!

執筆/佐藤 華

「猫はおしっこトラブルになりやすい」と聞いたことはありませんか?これは事実で、猫は犬よりもおしっこのトラブルを抱えやすい動物です。そのため、「おしっこの健康に配慮」「下部尿路に適したバランス」など、日常的におしっこに対するケアを行えるようなキャットフードが数多くあります。

この記事では猫のおしっこトラブルの1つ「膀胱炎」について解説していきます。

猫の「膀胱炎」とは?

猫の「膀胱炎」とは?

膀胱炎とは、体の中でおしっこを貯める役割の「膀胱」という臓器が炎症を起こしている状態です。炎症を引き起こす原因は様々ですが、猫の膀胱炎は以下の2つに分けられます。

・細菌性膀胱炎

・特発性膀胱炎

ここからはこの2つの膀胱炎について詳しく解説します。

細菌性膀胱炎とは?

細菌性膀胱炎とは、細菌感染により膀胱に炎症が起きてしまう膀胱炎のことです。細菌自体は膀胱内に存在はしていないのですが、皮膚に存在する黄色ブドウ球菌や大腸菌などが何かのきっかけで尿道口から侵入し、尿道を通じて膀胱に達することで膀胱粘膜を刺激して膀胱内の細胞にダメージを与えます。

また、ウレアーゼという尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解する酵素が作り出すウレアーゼ産生菌が増殖することで、尿のpHが高くなりアルカリ性の尿になってしまいます。このことにより、リン酸アンモニアマグネシウムやストルバイトと呼ばれる結晶が尿に出現、大量に作られることで結晶が集まり結石になり、尿道を詰まらせる原因にもなります。

特発性膀胱炎とは?

いろいろな検査を行っても原因が突き止められない膀胱炎のことです。猫の膀胱炎の約半分(10歳以下場合は55-75%)が特発性膀胱炎にあたると言われています。

その原因として考えられるのは、ストレス膀胱粘膜の生理学的異常などです。ストレスの原因として、トイレが汚れている、多頭飼いで他の猫がトイレを使用していて自分のタイミングでおしっこができない、などが挙げられます。

突発性膀胱炎の場合は、細菌が検出されることはなく、結晶や結石も検出されません。比較的年齢の若い猫で多く見られる傾向にあるといわれ、雌雄による差がないとされています。

猫の膀胱炎は再発しやすいって本当?

猫の膀胱炎は残念ながら再発することが多く見られます。細菌性膀胱炎のように原因が特定できるものであれば、適切な投薬治療で改善することもありますが、泌尿器の構造やトイレの状態などから、再び発症してしまう場合もあります。特発性膀胱炎の場合は、はっきりした原因が解らないため、対策が取りづらいということがあります。

再発を繰り返す場合には、尿検査の他にレントゲン撮影や腹部エコー検査、細菌培養、腎機能そのものを評価する検査など、精密的に調べる必要があります。

猫の「膀胱炎」の症状は?

猫の「膀胱炎」の症状は?

猫は膀胱炎になりやすい動物ですが、その症状は軽度なものから重度なものまで様々です。ここからは、症状の度合いを軽度→重度の流れで紹介していきます。

・おしっこに血が混じっている(おしっこが赤い)

そわそわと落ち着きがなくなる

・頻繁にトイレに出入りをする

・トイレに長い時間いるが少ししかおしっこをしていない

トイレ以外の場所におしっこを数滴漏らす(尿淋摘)

陰部をしきりに気にする(舐めたり、ひどい時には嚙んでしまったりする)

・おしっこの際に痛がる(排尿痛)

・おしっこが出ない

特にこれらの症状の中でも、おしっこが少ししか出ていなかったり、全く出ていない場合は、すぐさま病院に行って適切な処置を受ける必要があります。

また上の状態に続き、元気や食欲がなくなる嘔吐などの症状が見られた場合は一日たりとも様子を見ている猶予はありません。腎後性腎不全を起こしている可能性が極めて高いので一刻も早く病院を受診し、処置を受けてください。腎後性腎不全は急性腎不全の1つで、急性腎不全をそのままにしてしまうと、腎臓に大きなダメージを与えてしまいます。そして、傷ついてしまった腎臓の機能は回復しません。

尿の不調

主な症状のひとつとして頻尿があります。膀胱や尿道が炎症し刺激が加わることで、尿意を頻繁に感じます。そのため何度もトイレに行くことになるのですが、1回のおしっこの量が少ない、切れが悪くおしっこの姿勢をとり続けるなどの症状が見られます。

また、膀胱や尿道で出血が生じ、血尿が出ることもあります。血尿といってもピンク色から鮮血のような赤、濃い茶色、緑掛かったものなど、尿の色は様々です。重度の細菌性膀胱炎の場合には、尿の中に膿が混じる膿尿が出ることがあります。膿尿はドロッとした膿状の尿や、濁ったような色の尿が出ることもあります。

尿管や尿道で結晶が出来ている場合には、おしっこがキラキラ光っているという事もあります。

いずれの場合にも、尿の匂いが強くなることがありますので、愛猫のおしっこの色がいつもと違う、いつもより匂いがきついなど感じたら、早めに獣医師の診断を受けてください。

男の子で注意するべき「尿道閉塞」とは

尿道閉塞とは、尿道(おしっこを膀胱から体の外まで運ぶ管)が尿の中に存在する結晶や血液細胞などによって、閉塞(詰まって塞がる)してしまっている状態のことです。この尿道閉塞は女の子よりも男の子に多い傾向があります。その理由とて考えられるのは、泌尿器の構造の違いです。男の子は女の子に比べ、尿道が長くおしっこの出口の穴(尿道口)が狭いため尿道閉塞を起こしやすいと言われています。

尿道閉塞の場合、膀胱炎と同様、何度もトイレに行きます。尿道が塞がっているためおしっこが出ない、もしくは少量しか出せず、膀胱に尿が溜まったままの状態になってしまいます。この状態を放置すると、「急性腎障害」になり、最悪の場合は死に至ることもあります。

尿道閉塞にかかった猫の多くがおしっこのトラブル以外に、食欲がなくなる、何度も嘔吐する、お腹を触れるのを嫌がる・痛がる、などの症状が出ます。

猫の「膀胱炎」の原因とは?

猫の「膀胱炎」の原因とは?

猫の膀胱炎の原因は、細菌、尿石、濃縮した尿が膀胱粘膜を刺激している、そしてストレスが挙げられます。

本来膀胱にはいない筈の細菌が、身体的構造によるものや、何かのきっかけで大腸菌が尿道や尿管に入り込み感染を起こすことで膀胱炎になってしまったり、尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解する酵素が作り出すウレアーゼ産生菌が増殖、尿のpHが高くなり結晶が尿に出現、結晶が結石になり尿道を詰まらせ膀胱炎になる、ということもあります。

また、猫はもともと飲む水の量が少なく、濃い尿を作り出すため、尿の中に含まれる老廃物などによる刺激が強くなる傾向になります。猫の身体の構造上、ある程度は尿の中に含まれる刺激物を許容できるようになっていますが、おしっこの回数が少なく長時間膀胱に尿を溜めてしまうことで、膀胱炎になってしまうと考えられています。

猫の特徴以外にも、膀胱炎の引き金になるのではないかと考えられているのがストレスです。猫はストレスを感じやすい動物と言われており、生活環境の変化、トイレが汚れている、新しく仲間入りした猫がいる(逆に、今まで一緒に暮らしていた子が突然いなくなる)、自宅近くで工事が始まった、などが要因で突発性膀胱炎になる可能性があります。他にも、引越しや帰省などで住み慣れない環境に連れて来られたという場合にも、ストレスからおしっこを我慢してしまい、結果的に突発性膀胱炎を引き起こすということもあります。

猫の「膀胱炎」の治療はどうする?治療薬は

猫の「膀胱炎」の治療はどうする?治療薬は?

膀胱炎の治療は、おしっこがでているかいないかで大きく変わってきます。

おしっこが出ていない場合であれば、すぐに詰まりの解除を行います。そして同時に、血液検査や超音波検査、レントゲン検査や造影検査、尿検査や心電図検査などをその子に応じて行い、検査の結果に基づいて以後の最適な治療法を考え、実施していきます。

おしっこが出ている場合は、身体検査(・視診(外貌のチェック)・触診(身体にできもの等ないか触って確認)・体重・体温・脈拍・心拍・呼吸数・ボディーコンディションスコア(栄養評価)など動物の状態により検査項目は増減する)に加え、尿検査(圧迫排尿やカテーテルによる導尿による採尿)、超音波検査、レントゲン検査などを行います。これらの検査結果に基づいて以後の最適な治療法を考え、実施していきます。

猫の膀胱炎は治療をしなければ悪化の一途を辿ることがほとんどです。そのため、異常に気が付いたらすぐに動物病院に相談することをお勧めします。

細菌性膀胱炎

細菌性膀胱炎の場合に行う治療は、最初にその細菌に対して有効である抗生物質や抗菌剤を使います。

有効な薬剤を選ぶために、おしっこを細菌検査にかけ、検査の結果を見て有効な薬剤を投与していきます。薬の投与は、飲み薬や注射などで行われます。

薬の効果によって症状が治まったように見えますが、膀胱の中に細菌が残っていることがあるので、自己判断で薬の投与を止めることはやめてください。確実に細菌を除去するためにも薬の使用は、獣医師からの指示を守り用法・用量を守ることが重要です。そのため、完治まで粘り強く治療を行っていきましょう。

また、尿の中に結晶が見つかった場合には、それに対応した療養食が処方されることがあります。ストルバイト尿結石は尿のpHがアルカリ性に傾くことで生成され、シュウ酸カルシウム尿結石は酸性に傾くことで生成されるため、投薬の種類はもちろん療養食もことなるため、獣医師からの指示を守ってください。

特発性膀胱炎

特発性膀胱炎の場合に行う治療は、最初に尿検査によって他の膀胱炎の可能性がないかをしっかりと見極める必要があります。しかし、原因が不明が不明であったり、再発する可能性が高いことから、治療が長引くことがあります。膀胱の炎症を抑えるための抗炎症薬の投与、おしっこに配慮した療養食への切り替えなどが行われます。

猫の「膀胱炎」を予防するためには?

猫の「膀胱炎」を予防するためには?

猫にとって、膀胱炎はなりやすいうえに治療に時間がかかり、再発も珍しくないとても厄介な病気です。そのため、膀胱炎になる前に予防をしたいと考える飼い主さんも多いと思います。ここからは、猫の膀胱炎の予防・再発防止について解説します。

清潔なトイレとストレスのない環境

猫の膀胱炎の予防にとって大切なのはおしっこを我慢しないことです。そのためには、清潔なトイレとストレスのない環境が重要になってきます。

ここでは清潔なトイレのためのコツとストレスのない環境の作り方について紹介します。

・清潔なトイレ

清潔なトイレのためには何と言ってもこまめな掃除が欠かせません。猫によっては一回使用したトイレではしたくないっとトイレを我慢してしまう猫もいます。

また、トイレそのものの配置場所や個数もポイントです。トイレの数は猫の頭数+1(多頭飼いなら頭数+2)で用意するといいでしょう。その理由は、トイレの場所が多いと「したい」と感じたときにすぐトイレを済ませることができるからです。また、長時間の外出や予定外の残業などで猫のトイレ掃除が行えなかった場合でも、予備があることによってトイレの清潔を保ちやすくなります。

本来、排泄時というのは無防備になるので、動物にとっては気が気でない時間です。特に猫はデリケートな動物のため、人が出入りする玄関の横や、洗濯機やドライヤーなどの家電製品を使うことの多い脱衣所や洗面所では、落ち着いて用が足せなくなります。トイレの場所は、「静かで」「風通しの良い(換気が出来る」そして飼い主さんの目が届きやすく、出来れば部屋のコーナーや壁際などに設置するのが良いでしょう。どうしてもそのような場所の確保が難しい場合は、カーテンなどの目隠しを設けてあげるだけでも違ってきます。

・ストレスのない環境

ストレスのない環境のためには十分な運動スペースと適度なスキンシップが大切です。

まず、十分な運動スペースですが猫は犬とは違い上下運動を好む動物です。そのため、キャットタワーやキャットウォークなどで上下運動ができる空間を作ることが重要です。しかし、賃貸でキャットウォークなどを設置できない場合には、家具の配置を階段状にしたり、ラックの一部を猫専用にすることでも上下運動の場所を用意できます。

次に適度なスキンシップですが、これはブラッシングや一緒に遊ぶことも含まれています。適度なスキンシップの内容は猫それぞれに違うので一概には言えませんが、猫じゃらしなどで一緒に遊んであげればその分運動量も増えて、ストレス解消・肥満防止につながります。

ブラッシングはいらなくなった毛を取り除くことで、毛玉の吐き戻し軽減や、スムーズな毛の生え代わりに繋がります。また、触れ合うことで体の異変にいち早く気が付き、病気の早期発見にも役立ちます。

猫によっては構われるのがあまり好きではない、ひとりでそっとして置いて欲しいという子もいるので、愛猫の望むスキンシップの内容や程度を飼い主が汲み取ってあげることが大切です。

まとめ

膀胱炎は老若男女問わず全ての猫に起こりえる病気の1つです。治療法はあるとはいえ、いざなってしまうと猫と飼い主の両方に負担がかかってしまうのは避けられません。そのために、異変に気が付いたらすぐに動物病院に相談するのはもちろんのこと、毎日の小さな習慣で愛猫を膀胱炎のリスクから守ってあげてください。

執筆者
会社員を経て、念願叶いライターとしてデビューしました。 猫4匹、犬1匹、人間ふたりの大家族なので、笑いと事件が絶えない毎日です。 読者の皆さまのお役に立てるような記事を執筆出来るよう、日々精進してまいります!