猫にアロマオイルは大丈夫?危険といわれる理由を徹底解説

猫との暮らし 猫にアロマは大丈夫?アロマがもたらすかもしれない危険とは?

執筆/水科希望

自然由来、植物由来成分配合と書かれていると、それだけで体に良さそうな印象を受けますね。ですが、猫と暮らしている方には注意が必要です。猫にとって毒性のある植物はたくさんあり、人用の製品には「猫にとって安全である」とは書かれていません。身近なリラックス手段であるアロマや化粧品などにも含まれている、良い香りの成分。それは、本当に猫にとって安全なのでしょうか?小さな家族のために、ぜひ確認してみて下さい。

アロマってなに?どんな効果があるの?

アロマってなに?人間にとってどんな効果があるの?

アロマとは正式にはアロマテラピー(アロマ=芳香、テラピー=療法)と言います。植物や果実から採油した精油(エッセンシャルオイル)に含まれる薬効成分は、人間が本来持っている自然治癒力を高めてくれると言われています。香りによる療法は、心と身体両方を同時に癒やすことで相乗効果が得られ、病気になる前に免疫力を高めて予防する効果があるとされています。

嗅覚から取り入れることで得られるメリット

香りは記憶と紐付いていて、覚えのある香りと共に記憶が蘇ることがあります。それは、嗅覚を司る脳神経が、記憶を担当している部位でもあるからです。嗅覚から良い香りを取り入れると、香りの分子は電気信号として鼻の奥にある嗅神経に到達し、人間の本能を司る大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)に伝わります。大脳辺縁系は記憶と感情、自律神経やホルモン、免疫の調整を司っている部位です。そこへ良い香りを届けることで脳をリラックスさせストレスを取り除くことで、自律神経などの自己免疫機能が向上し、病気になりにくくなるという効果が期待できます。

皮膚から取り入れることで得られるメリット

精油の分子構造はとても小さいので吸収しやすく、皮膚に浸透した後毛細血管を通り、体の各所に行き渡って効果を発揮します。アロマは速効性の認められた薬では無いので、病気を治すことはできません。あくまで、自己免疫力を高めて回復を助ける働きをするものです。

リラックス効果のあるアロマ、猫に使って良い?

人間にとってリラックス効果のあるアロマ、猫に使って良い?猫へのデメリットは?

人にとって良いことばかりのアロマですが、猫にとっては毒も同然のもの。アロマオイルを舐めてしまった猫が死亡した例や、毎日アロマを炊いていたら一緒に住んでいた猫の肝臓に異常な数値が出た例などがあります。植物でできているとは言え、精油は自然な状態の花や葉の成分を100~1000倍に凝縮したものです。ラベンダーの精油を1mg作るために1.5㎏の花が必要になると言われています。つまり、中毒を起こす可能性のある植物がたくさんある猫にとって、精油は毒を煮詰めたものと言って過言では無いでしょう。

人が使う場合でも直接舐めたり、肌に付けたりするのは良くないとされています。現在(2022年2月)猫にとって安全であると科学的に実証されている精油は存在していません。猫への使用は絶対に避けましょう。

なぜ猫にアロマはNGなの?

なぜ猫にアロマはNGなの?猫にとってアロマは危険と言われる理由を解説。

大事な家族のように接していたとしても、人と猫は違う動物です。特に食生活が違えば必要な栄養素、消化器官の働きや解毒の体内システムも異なります。一緒に暮らしている以上、自分達と猫の体の仕組みが異なること、その差によって生まれる危険性を把握しておきましょう。

猫は完全肉食動物だから

猫は人や犬とは異なり、生きていく上で植物性の栄養をほとんど必要としない、完全肉食獣です。そのため、体内に植物を消化したり分解したりする機能がほとんどありません。必要な植物性の栄養は、草食動物の腸内で消化されたものを食べることで摂取してきたのです。他の動物なら問題無い植物由来成分も、代謝ができずに体内に留まり続け、蓄積された毒性物質による中毒症状を起こすことがあります。

また、体内に入った毒性物質を分解するのは肝臓ですが、猫の場合この毒物代謝に必要な酵素(グルクロン酸転位酵素)を体内で十分に作ることができません。体内で解毒ができないため、中毒を起こす可能性が高くなります。更に、毒物代謝のため、肝臓に負担がかかると腎臓機能にも影響が及び、腎機能低下を引き起こすこともあります。猫にとって毒性があると言われているもの、危険のあるものは避けるのが賢明です。

猫は芳香分子に反応するから

人や他の哺乳類には無害な芳香分子「モノテルペン炭化水素類」に、猫は過剰に反応してしまいます。モノテルペン炭化水素類が含まれた物の中でも、特に柑橘類が猫は大の苦手です。他、危険が大きい成分が含まれる植物をまとめると、多くの精油が該当します。

  • リモネン《猫が分解できない成分。みかんの皮にも多く含まれています》

レモン・オレンジ・グレープフルーツ・ベルガモットなど

  • ケトン類《傷を癒やし、粘液分泌を抑える働きをする。ただし強い粘性があるため体内に蓄積されやすく、人が使用する場合でも高濃度での使用や内服、長期間での使用は危険と言われている》

ローズマリー・セージ・ヒソップ・ペパーミント・キャラウェイ・ラベンダーなど

  • フェノール類《良い効果もリスクも強く表われる成分。人が使用する場合も肝臓に対して毒性があり、皮膚刺激が強いため、低濃度で短期間の使用が推奨されています。消毒作用や抗菌作用が強く、リップクリームなどにも使われています》

オレガノ・クローブ・シナモン・タイム・バジル・ミルラ・パチュリなど

  • ピネン《松、杉、檜の葉などに多く含まれる香り成分です。人にとってはリラックス効果があります》

ユーカリ・パイン・サイプレス・ジュニパー・フランキンセンスなど

精油は1つの植物からも幾つもの種類があり、それぞれ名前が異なります。ここに載っていない植物なら大丈夫かと言うと、前述通り猫にとって危険が無いと科学的に実証された精油はありません。ここでは特に危険と言われている成分を含む精油を紹介しました。猫と暮らす以上、アロマテラピーは避けた方が良いでしょう。

猫は皮膚が薄いから

人同様、猫の皮膚は表皮・真皮・皮下組織の三層構造になっています。その内の表皮は体外からの異物や菌などの侵入を防ぐ機能がありますが、猫の表皮は人の半分以下しかありません。ほんの少しのアロマ成分でも体内に吸収してしまいやすく、外部からの刺激を受けやすいのです。人が使用する際も精油の原液をそのまま使用するのは危険と言われているくらいですので、猫が精油に触れてしまったら瞬く間に影響が出てしまいます。絶対に近づけないようにしましょう。

猫のこんな症状、もしかしたら原因はアロマかも?

猫のこんな症状、もしかしたら原因はアロマかも?アロマが原因の中毒症状を解説します。

アロマが原因と思われる中毒症状が見られたら、直ぐに動物病院で治療を受けましょう。猫の健康状態や持病によっては命に関わる場合もあり、速やかな治療が必要です。症状は摂取状況により様々ですが、以下のような症状が出ることがあります。

  • 食欲不振
  • ぐったりしている
  • 元気が無い
  • よだれが止まらない
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 目をショボショボさせている、涙を流す
  • 皮膚の腫れ、痒み
  • 発疹
  • 筋肉の震え
  • 低体温
  • 攻撃的になる、

猫は頻繁に毛づくろいをするので、空気中に漂う成分が毛に付くと、毛づくろいで体内に摂取してしまいます。猫に対してアロマオイルを使わないことはもちろん、猫のいない別室でアロマオイルを使ったとしても、その室内を完全洗浄してから室内に猫を入れるなど万全の注意が必要になります。

アロマオイルだけじゃない!こんなものにも猫に危険な成分が含まれている可能性が!

アロマオイルだけじゃない!こんな商品にも猫に危険な成分が含まれている!

精油は危ないから気を付けよう、毒性のある植物を飾らないようにしようと注意していても、私達の身の回りにはたくさんの植物由来成分が含まれるものが存在しています。人にとっては安全で自然な良い香りがするため、化粧品や洗剤、清掃用品にまで及んでいます。日頃使っている物も注意して確認してみましょう。

  • エッセンシャルオイル

エッセンシャルオイルは天然成分100%の精油です。植物の香りに似せて人工的に作られた物もありますが、それらとは全くの別物です。アロマランプやディフューザー、加湿器もエッセンシャルオイルを入れて楽しむ製品がありますが、猫にとっては空気中に強い香りの毒がばらまかれている状態になってしまいます。猫のためにも湿度管理は大切ですが、加湿器にエッセンシャルオイルを使用するのは避けましょう。

  • ハンドクリーム・ボディクリーム

ハンドクリームやボディクリームには香りを楽しむ製品が多くあります。ハンドクリームを塗った手で猫を撫でても大丈夫か、不安に思う飼い主さんもいらっしゃるでしょう。人にとっては肌を潤す有効成分でも、猫にとっては分解できない毒性成分を含むものが多くあります。1番安全で安心なのはワセリンや馬油などです。

  • 化粧水

スキンケア後に、猫が顔を舐めてくることがありませんか?実は猫にとって美味しそうな油分が化粧水には含まれているからなのです。とっても可愛いですが、化粧水には精油以外にもアルコール類が含まれています。アルコール=肝臓とお酒が好きな方なら連想するかと思いますが、正にその通り。猫も肝臓に負担がかかります。毎回舐められて心配な方は、猫が舐めてしまう化粧品を持って動物病院で相談してみましょう。猫と暮らす人も安心な化粧水も販売されています。肌に合うようでしたら、変更してみるのも良いでしょう。

  • シャンプー

人用シャンプーの香料も心配ですが、猫用シャンプーやノミ防除用商品に含まれていることがあるティーツリー成分は、使用後に猫が体調を崩してしまった例があります。ティーツリーは糖尿病など特殊な疾患を持つ猫や肝臓が未発達な子猫にとって1%以下の配合量でも危険であると言われています。

  • 香水

香水は精油をアルコールなどで希釈し、香りを調整したものです。つまり、猫にとっては分解できないものばかりで構成されています。猫がいる室内で使用することは避け、猫が使う部屋で香水を吹き付けるのも避けた方が良いでしょう。室内に残った香水が猫の毛に付着し、毛づくろいで舐めてしまう可能性があります。外出時、外に出てから吹き付ける方が安心です。

日常で使う物の中にもアロマ成分や猫にとって危険なものを含む製品が多数存在しています。

  • 掃除用品・除菌消臭スプレー・台所用洗剤・食器用洗剤

特に台所用・食器用洗剤にはオレンジやレモンなどのシトラス成分が配合されているものが多いため、注意が必要です。猫の食器を洗うときには、シトラスやミントなどの猫に危険と言われている成分が含まれた洗剤は使用しないようにしましょう。

  • 蚊取り線香・殺虫剤

蚊取り線香の主成分である除虫菊は猫にとって害が無いと言われていますが、除虫菊では無く化学物質を使用しているものもあります。使用する場合はペットにも安心と明記されているタイプを換気しながら使うとより安心です。

  • 洗濯用洗剤・柔軟剤・芳香剤

アロマ成分を含む洗剤や柔軟剤も多く、室内干しを猫のいる部屋でするのは避けた方が良いでしょう。できればアロマ成分が含まれていない商品を選んで変更すると良いでしょう。特に猫ベッドや猫用毛布などを選択するときには、香料入りの洗剤や柔軟剤は使わないようにしましょう。また、ウールサッキングをする猫と暮らしているのであれば、飼い主さんの衣服の洗濯は無香料の物を選ぶようにしてください。

  • 猫のトイレ砂

猫専用に販売されているものですので、猫の健康を害するものでは無いと信じたいところですが香りを付けた砂は避けた方が良いでしょう。猫を良く観察していると、トイレの後に足裏を舐めていたり、トイレ砂に鼻をくっつけて匂いを嗅いでいたりすることを見かけると思います。香料入りの猫砂の場合、それが少量だとしても、身体に良くないとされる成分を吸い込んだり舐めてしまったりするのです。特に危険とされるラベンダーは、香料入りの猫砂に使われていることが多いです。

また、猫は体調を崩しているとおしっこの色が変わったり、匂いが変わったりします。体調不良に素早く気づくといった面でも、無香料で色が変化しないものが安心です。

  

まとめ

ここまで読むと「猫と暮らすのって大変、こんなに気にすることあるの?」と思われるかも知れませんが、異なる種族と一緒に暮らしているのですから相手の特性を深く理解することも大切です。自分にとって良くても、相手にとって害があるものを知っておくことでお互いに気持ち良く暮らすことができるでしょう。猫と暮らしている以上、アロマテラピーを楽しむことはできませんが、実は猫ってとっても良い香りなのです。香りの変化は健康管理にも重要だからと理屈をこねて、ウチの子が許してくれる範囲で猫さまアロマテラピーを楽しみましょう!これぞ猫さまと暮らす特権です。

執筆者
東京出身、長野県在住のアパレル勤務兼ライター。 仕事に燃えに燃えていたが、ある日ふと「人ってストレスで死ぬんだよなぁ」と思い、絶対に叶えたい夢を一つ現実のものとする。 久しぶりに猫と暮らしたい、その夢を叶えたら次々に夢という名の野望が出てきて一歩一歩叶えている最中。 現在、猫と暮らす猫のための家を建てたい、最終的に小説家兼ライターに肩書きを変えたいという野望に燃えている。