猫に「玉ねぎ」が危険な理由とは?もし猫が食べた場合、どう対処したらいい?

猫と食事 猫に「玉ねぎ」が危険な理由とは?もし猫が食べた場合、どう対処したらいい?

執筆/佐藤 華

猫に絶対に与えてはいけない、食べてたことで命を危険にさらしてしまう可能性のある食材に、玉ねぎがあります。「玉ねぎ」がなぜ猫ににとって危険なのか、もし食べてしまったときはどう対処すればよいのかを説明します。

猫は玉ねぎを食べると危険!その理由とは

猫は玉ねぎを食べてはいけない!その理由とは

なぜ、猫は玉ねぎを食べてはいけないのでしょうか。その理由について詳しくお伝えいたします。

玉ねぎに含まれる成分が原因

玉ねぎに含まれる「有機チオ硫酸化合物」は、人間が摂取することで抗がん作用・血栓予防・免疫力アップなどの効果が期待できる身体に良い成分ですが、猫や犬は「有機チオ硫酸化合物」を消化する酵素を持ち合わせていません。そのため、赤血球に含まれるヘモグロビンを酸化させ、溶血性貧血(※)を引き起こします。「有機チオ硫酸化合物」は玉ねぎだけではなく、長ネギ、ニラ、ニンニク、ラッキョウ、ワケギ、ノビル、ユリ根などネギ類全般に含まれています。

また、「有機チオ硫酸化合物」は加熱してもその毒性は残ります。ネギ類を使う料理(ハンバーグ、カレー、牛丼、野菜炒め、焼きそば等)以外にも、スープ、ドレッシング、ソース、味噌汁などのネギのエキスが含まれるものにも注意してください。玉ねぎやネギ類を除けば大丈夫ということはないので、シチュー・すき焼き・焼肉・鍋物の具(肉・魚など)も決して与えないでください。

溶血性貧血とは
溶血性貧血とは赤血球が破壊されることでおこる貧血の事です。
症状:貧血・黄疸・血尿・目や口腔内が青白くなる など
ネギ類を接種してから1日、長い場合は数日で症状が現れ、慢性化すると肝機能が著しく低下します。

玉ねぎの臭いが手についた…これくらいなら大丈夫? 

玉ねぎを調理した後の匂いがついた手で猫を触った場合、猫が玉ねぎを食べてしまったときに比べると、中毒になる可能性は低くなります。ただし、手に匂いがついているということは、猫に悪いとされる成分「有機チオ硫酸化合物が残留していることになります。猫は犬と比べて「有機チオ硫酸化合物」への反応が敏感であるといわれており、少量を口にしただけでも中毒症状を起こしてしまう可能性があります。玉ねぎなどのネギ類を調理した後は、しっかりと石鹸で手を洗ってください。

また、玉ねぎを調理中に猫がそばに来ることも、出来れば避けた方が良いでしょう。玉ねぎを切っていると目に染みて痛いという経験があると思いますが、これは玉ねぎに含まれる「硫化アリル」という成分が関係しています。「有機チオ硫酸化合物」とは異なる成分ですが、猫の身体に良い成分ではありません。玉ねぎを含むネギ類を調理するときには、キッチンに猫を入れない工夫をしてください。

猫が玉ねぎを食べた!こんな症状に気をつけて!

猫が玉ねぎを食べた!こんな症状に気をつけて!

万が一、猫が玉ねぎを食べてしまった場合、赤血球が破壊されるため中毒症状を引き起こし、最悪の場合は重症化することもあります。よくあらわれる症状は貧血ですが、他にも下記のような症状があらわれます。

  • 貧血
  • めまい
  • 口の中や目の粘膜が白っぽくなる
  • 意識を失う、気絶する
  • 血尿(赤~茶色)
  • 食欲不振
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 呼吸が早くなる、または呼吸促拍(呼吸が早くなり苦しそうな様子)
  • 頻脈(心拍数が増加している)
  • 急性腎障害

また、慢性化してしまうと、黄疸や肝機能低下が引き起こされる可能性があります。特に心拍数の増加や呼吸が早くなり苦しそうな症状が見られたら、様子見はせずにすぐに動物病院を受診してください。

玉ねぎにより引き起こされる中毒症状は、食べてしまった量によっても異なるのですが、食べた直後は出ずに数日たってから症状が出ることもあります。もし玉ねぎを食べてしまった可能性がある場合には、数日間は猫の体調を観察しましょう。

猫の玉ねぎ中毒、どれくらいの量を食べたらでる?

猫の玉ねぎ中毒、どれくらいの量を食べたらでる?

体重1kgあたり、およそ5gの玉ねぎで中毒症状が出ると言われています。猫種によっても異なりますが、猫の一般的な平均体重は3.6kgから4.5kgといわれているので、18g~22.5gの玉ねぎを食べると中毒症状がでる可能性があります。通常サイズ(直径8センチ)の玉ねぎの重さが約224gなので、わずかな量でも危険であることが解ります。

例えば体重2kgの子猫が玉ねぎを食べてしまった場合、中毒症状を起こしてしまう摂取量は以下の通りです。

  • 玉ねぎ(1個あたり約200g) 1/20個
  • 長ネギ(1本あたり約100g) 1/10本
  • ニラ(1束あたり約100g) 1/10本
  • ニンニク(1片あたり約10g) 1片

ただし、中毒を起こす量は個体差があり、ほんの少量食べただけ、舐めただけでも中毒症状がでる場合もあります。

なお、ハンバーグや牛丼1食分で玉ねぎ約50gが標準的な量です。

もしも猫が玉ねぎを食べた・舐めたら、応急処置は?

もしも猫が玉ねぎを食べた・舐めたら応急処置はできる?
もし猫が玉ねぎを食べてしまったら、直ぐに吐かせることが重要です。自宅で出来る応急処置はあるのでしょうか。

応急処置はどうしたらいい?

玉ねぎを食べたり舐めたりした直後であれば、すぐに吐かせて、口の周りをよく洗ってください。吐かせる方法は、舌の奥を押すと吐きやすくなります。

ただし、素人が処置をするのは非常に危険です。無理に猫の口に指を入れると、嫌がって噛みつく、暴れるなどをして、飼い主本人が怪我をする恐れがあります。玉ねぎを食べてしまった、ドレッシングやソースなど玉ねぎを使った物を舐めてしまったという場合には、症状が出ていなくても直ぐに動物病院に連絡をしましょう。かかりつけ医の診療時間外であれば、夜間救急に連絡をして、玉ねぎを食べてしまったことを伝え、処置方法を聞いてください。動物病院を受診するときには、いつ、どのくらいの量を食べてしまったのか、詳しく伝えるようにしてください。もし嘔吐や下痢をしているのなら、ビニール袋に入れて持参するようにしてください。

特に注意して頂きたいのが、「猫 吐かせる」などでネット検索すると出てくる方法です。水をたくさん飲ませる、背中を強くたたく、さかさまにして揺する、塩やオキシドールを飲ませるなど出てきますが、これらは全て間違った方法です。塩やオキシドールは、腎臓、胃粘膜、消化器などを傷つけ、玉ねぎ中毒以外の重篤な症状が出てしまう可能性もあります。素人判断では行わず、必ず獣医師に指示を仰ぐようにしてください。

猫の玉ねぎ中毒、治療法はあるの?

猫が玉ねぎを食べて中毒になったら治療はできるの?

玉ねぎを食べてしまったことに気付いたら、直ぐに動物病院に連れて行ってください。食べたのは少しだけだから大丈夫、吐き出したから大丈夫と思わず、直ぐに診てもらうことで猫の命を救うことができます。

動物病院ではどんな治療をする?

「有機チオ硫酸化合物」には解毒剤はないため、対処療法がメインになります。玉ねぎが胃の中にある場合には、静脈に薬を入れて吐かせる「催吐処置」を行います。催吐処置は胃の中にある場合のみ有効で、小腸へと流れてしまった後では処置が出来ません。そのため、一般的に玉ねぎを食べた後、4時間程度であれば対応が出来るといわれています。処置のあとは胃炎防止の薬が処方されます。処置が終わったからと安心するのではなく、経過観察もしっかりと行い、何か変わった様子が見られたら獣医師に相談をしてください。

小腸へと移動して催吐処置が出来ない場合には、下剤で残っている成分を体外に出すという処置を行う場合があります。また、すでに中毒症状がでているといった場合には、ステロイド剤や抗酸化剤で赤血球の破壊を阻止する処置が行われます。重度の貧血症状が出ている時には輸血や点滴治療が必要になります。

自然によくなるの?

猫が玉ねぎを食べた場合、自然に回復することはありませんので、必ず動物病院へ連れて行きましょう。できるだけ早く処置をすると、回復が早くなります。食べたのは少しだけだから大丈夫だろう、特に症状は出ていないから様子見をしようと放置すると、命に関わる重篤な状態になる可能性がありますので注意が必要です。

動物病院に連れて行く際は事前に電話をし、玉ねぎを食べてしまったことを伝えてください。そして、気づいてから1時間以内には連れて行くようにしましょう。愛猫の緊急事態のとき、夜間や休日でも診療している救急病院や、すぐ行けるよう近所に動物病院はないかなど事前に探しておくと安心です。

猫が玉ねぎを食べないための対策

猫が玉ねぎを食べないための対策

玉ねぎだけでなく、人の食べ物は猫にとって有害な物も存在します。大事な愛猫を守るために、私たち飼い主が取るべき対策方法をご紹介いたします。

保管場所を見直そう

猫と暮らしている方はよくご存じでしょうが、高い場所、狭い場所など猫はどこにでも行くことが可能です。一般的に頭が入れば通れるといいますが、器用な猫の場合は、手が入るスキマさえあれば、自力でこじ開けられます。そのため、猫が自力で開けられない冷蔵庫の野菜室に保管するのが良いでしょう。ただし、冷蔵庫を開けられる猫も中にはいるので、ベビーガードとして販売している冷蔵庫専用のドアロックを使用すると安心です。

また、冷蔵庫に玉ねぎを入れたくないという方は、キッチンの上部収納など、足場がない扉のある棚などに保存するようにしましょう。

調理中に気を付けること

キッチンの入口にパーテーションを設置、開口部がある場合は侵入防止柵を取付けるなど、猫をキッチンにいれないことが一番の対策になります。しかし、家の間取りや構造上難しいこともあるでしょう。その場合は、猫にとって危険なものを取り扱っているという意識を持ちながら調理するしか術がありません。

もし、玉ねぎが床に落ちてしまったらすぐに拾ってください。玉ねぎにスパイスがついていると、スパイスの香りに興味を持ち猫が近づいてくる可能性があります。玉ねぎなどのネギ類だけでなく、猫に与えてはいけないものは他にもあります。調理中や食事中は、猫にとって危険なものがあることを意識し、細心の注意を払ってください。

人間の食べ物、少しくらいなら大丈夫?

玉ねぎは加熱しても「有機チオ硫酸化合物」が消えることはありません。玉ねぎはあらゆる使い方ができて便利なので、さまざまな料理に活用されています。例をあげると、牛丼・スープ・ソース・トマトソース・ドレッシング・肉じゃが・ハンバーグ・味噌汁・焼きそば等、多くの料理に使われています。牛丼、肉じゃが、ハンバーグでは1食分約50gの玉ねぎが使われています。玉ねぎそのものは勿論、玉ねぎやネギと一緒に煮込んだ料理(シチュー、すき焼き、鍋物など)に入っている肉類、魚介類も絶対に与えてはいけません。

ドライであれウェットであれ猫専用のフードは、猫にとって必要な栄養素を摂取できるように作られています。欲しそうにじっと見つめられたり、可愛い声でおねだりされると、ついついあげてしまいたくなりますが、危険から猫を守るために、人間の食べ物は与えないようにしましょう。

まとめ

人間にとっては、美味しくて便利、そして健康にも良い玉ねぎですが、猫にとってはとても危険な食材で、少量食べただけ・舐めただけでも中毒症状が出る可能性があります。思わぬ危険から愛猫を守れるよう、日頃から玉ねぎなどのネギ類の扱いには十分注意してください。もしも猫が玉ねぎを食べてしまったら、様子見はせずに必ず動物病院を受診してください。大事な愛猫を守れるのは、飼い主であるあなただけです。

執筆者
会社員を経て、念願叶いライターとしてデビューしました。 猫4匹、犬1匹、人間ふたりの大家族なので、笑いと事件が絶えない毎日です。 読者の皆さまのお役に立てるような記事を執筆出来るよう、日々精進してまいります!