猫と一緒に暮らしていると、猫が吐いている姿を見ることは多いでしょう。お腹の中に溜まった毛玉を吐く、勢いよくご飯を食べた直後フードを吐くなど、様子見でも良い場合もありますが、繰り返し吐くという場合は、病気が隠れている可能性があります。この記事では猫の嘔吐の理由、病院に連れていく必要がある症状を詳しくご説明します。
すぐに病院に連れていくべき『危険な嘔吐』のサインとは?
猫が吐く原因はさまざまな理由がありますが、中にはすぐに病院に連れていくべき『危険な嘔吐』のサインがあります。今からご紹介する嘔吐物が、愛猫から見つかった場合はすぐに病院に連れていきましょう。
吐いたものが茶色い場合
黒っぽい茶色のものを吐いた場合には、胃や腸など内臓から出血している可能性があります。出血した直後の血液は赤色ですが、時間が経つことで酸化し、赤茶色に変化します。
嘔吐物が黒っぽい茶色であったり、赤茶色だった場合には、重度の潰瘍や腫瘍の可能性があります。早急に病院に連れていきましょう。
ピンク色の液体を吐く
歯肉炎や口腔内の腫瘍がある場合、口の中で出血が起こり、ピンク色の液体を吐くことがあります。
口腔内の疾患だけでなく、肺の中に液体がたまって呼吸困難になる肺水症になっている場合があります。肺水症は心臓病が原因で血液の循環が上手くいかないことによりなる病気なので、命の危険があります。すぐに動物病院を受診してください。
何度も繰り返し吐く、毎日吐く場合
胃液や胆汁だけだとしても、1日に何度も吐く、毎日のように吐く、という場合には、消化器系の病気が隠れている可能性があります。他にも誤飲の可能性も考えられます。様子見は止めて、早めに動物病院を受診しましょう。
吐こうとしているのに吐けない様子の場合
吐こうとしているのに吐けない場合、毛球症や誤飲が原因で腸閉塞になっている可能性が考えられます。時間が経つほどに消化器に与えるダメージは大きくなるので、直ぐに動物病院に連れて行きましょう。
あわせて読みたい:大事な愛猫を「腸閉塞」から守ろう!原因は?症状は?予防はできる?
嘔吐物に虫が混じっている
小さな虫やハエなどの場合は、猫が狩りの対象にしてそのまま飲みこんでしまった可能性が高いのですが、白くて細長いそうめんのようなものを吐き出したときは、「猫回虫」という寄生虫がいる可能性があります。猫回虫は小腸に寄生し、軽い下痢や体重減少を引き起こすことがあります。人間にも感染することがあるので、注意が必要です。
あわせて読みたい:愛猫のトイレに白い糸!!もしかして「回虫症」?人にもうつるって本当?
嘔吐と同時に他の症状もある場合
嘔吐と同時に他の症状もある場合は、病気の可能性が高いと考えられます。症状ごとに考えられる病気を紹介いたしますので、猫の嘔吐が気になる方は覚えておきましょう。
- 食欲不振・体重減少・多飲多尿の症状⇒腎不全
- 下痢・脱水症状⇒膵炎
- 黄疸・腹水の症状⇒肝炎
- 下痢・多飲多尿の症状⇒甲状腺機能亢進症
- 下痢・発熱・けいれんなどの症状⇒中毒症状
- 便秘⇒腸閉塞・巨大結腸症 ※腸閉塞や巨大結腸症になっていなくても、ウンチをいきんで吐くという場合もあります。
- おしっこが出ない⇒尿道閉塞・結石症・水腎症
症状ごとに病気の種類はさまざまなので、嘔吐物とあわせて症状もしっかりと確認することが重要になります。原因となる病気によっては、早期発見・早期治療をしないと、命を危険に脅かすものや、完治が難しく一生涯付き合わざるを得ないものもあります。猫が吐くと同時に上述したような症状があるのでしたら、様子見はせずに、直ぐに病院に連れて行くことをおすすめします。
あわせて読みたい:猫にとって不治の病「腎臓病(腎不全)」ステージごとの治療法は?予防は可能?
あわせて読みたい:シニア猫は要注意!猫の甲状腺機能亢進症とは?治療法はあるの?
あわせて読みたい:猫のウンチがでない!排便が辛そう!これって便秘なの?
あわせて読みたい:猫の便秘は放置NG!便秘の悪化から巨大結腸症に!治療法は?予防はできる?
あわせて読みたい:猫の「尿結石(尿路結石症)」こんな症状に気をつけて!原因は?どんな治療をするの?
あわせて読みたい:尿路が塞がることでおきる猫の「水腎症」ってどんな病気?症状は?治療はできる?
猫はよく吐く生き物?その理由は?
ネコ科の動物は狩りをして暮らしています。虎やライオンなどの大型ネコ科動物は大きな獲物を狩りますが、猫の祖先とされているリビアヤマネコの狩りの対象は、ウサギ・ネズミ・鳥・カエル・魚などの小さな生き物です。猫の歯は裂肉歯というハサミのようは構造のため、狩った獲物を飲み込めるサイズまで切り、丸のみに近い状態で飲み込みます。また、猫の唾液には消化酵素が含まれておらず、食道に到着してやっと消化が始まります。猫の食道は地面と平行してついており、食道の筋肉が動いて胃へと食べ物を送る仕組みになっています。しかし食道の前面は横紋筋という意図的に動かせる筋肉で構成されていますが、後方は平滑筋という意識的に動かせない筋肉でできています。そのため、勢いよく食べたり、たくさんの量を一気に食べると、食道後方で渋滞が起こります。渋滞解消のために、詰まったものを吐いているのです。
また、猫の一日のルーティンは睡眠・食事・毛づくろいといわれる程、グルーミングに充てる時間は長く、ある研究では一日平均3.6~4時間という結果がでた位です。身体を清潔に保つためのグルーミングですが、猫の舌には棘状の無数の突起がついているため、抜け落ちた毛が舌の突起に絡まり、飲み込んでしまいます。飲み込んだ毛は排便時にでることもありますが、胃の中で固まってしまいます。(ヘアボール)胃の中にヘアボールという異物があることで不快感を感じ、毛玉を吐いて体調を整えます。
猫が吐いたら、ものや色を確かめよう
嘔吐した猫の異変にいち早く気づく方法として、吐いた物をよく観察することが重要となります。なかには緊急性の高くないものもありますが、直ぐに動物病院を受診すべきものもあります。
毛玉
猫は自分の身体を清潔に保つため、グルーミングを行います。グルーミングの際、抜け毛を飲み込んでしまい、胃の中にたまった毛を吐くことがあります。特に換毛期には毛玉を吐くということが多くなります。他にも長毛種の猫や、多頭飼育で他の猫のグルーミングを行ってあげるような猫は、日常的に吐くことがあります。吐いたものが毛玉だけなら緊急性はありません。
しかし一方で、今までグルーミングの回数が少なかった猫が、必要以上にグルーミングを行い毛玉を吐くという事でしたら、注意が必要です。猫は不安や不満を感じているときにグルーミングをすることから、何らかのストレスを感じている可能性があります。
あわせて読みたい:愛猫のストレスサインを見逃さないで!ストレスの原因・解消方法を徹底解説!
猫草を吐く
猫草が大好きなのに、食べると決まって吐くという猫もいます。猫草の先端は尖っているので、胃の粘膜を刺激して、毛玉を吐きだす助けをしていると考えられています。そのためあまり心配はないとされていますが、わざわざ吐くという身体に負担のかかる行為をさせる必要はありません。毛玉対策フードを与える、定期的にブラッシングをして飲み込む毛の量を減らすなど、猫草以外の対策を試してください。
黄色い液体を吐く
黄色い液体を吐く場合は、お腹が空きすぎて胃の運動が低下している時です。胃の運動が低下すると、黄色い液体(胆汁)を吐くことがあります。これは本来、腸に流れるはずの胆汁が胃に逆流してしまっている状態です。胃腸が空っぽな状態が長時間にならないよう、食事を何回かに分けて与えてあげると良いでしょう。
ただし、胃炎や腸炎の可能性もありますので、吐く回数が多いようでしたら、自己判断をせずに動物病院を受診しましょう。
透明の液体や白い泡を吐く
胃液のような透明の液体、白い泡を吐く場合は胃液が逆流している状態です。胆汁を吐くときと同じように、お腹が空きすぎると胃液を吐くことがあります。胃液を吐いた後にごはんを食べて、元気そうにしていれば心配いりません。
しかし、嘔吐を繰り返している場合は病気が隠れている可能性があります。また、消化できないものを飲み込んでしまった「誤飲」の可能性もあるので、病院で診てもらうことをおすすめします。
あわせて読みたい:ビニール・紐・マスク…猫が誤飲してしまった!対処法は?予防法はある?
血が混じった嘔吐物
呼吸器で出血してから時間が経った場合、黒っぽい茶色の液体を吐くことがあります。ただし、呼吸器が出血元である事例はまれで、ほとんどが口腔内出血や咽頭部の出血、食道内出血が原因であることが多く、その場合には鮮やかな赤色の血を吐きます。まずは血の色を観察して、どこで出血しているのか確認をしてください。病院を受診するときには、吐いた血をスマホなどで撮影し、獣医師に見せると診断が早くなります。
異物が混じった嘔吐物
「誤飲」の場合、飲み込んだもの、またはその一部を吐くことがあります。誤飲の原因で多いのは、おもちゃ、ゴム、マスクの紐、ビニール、小さなクリップなどがあります。全て吐き出してその後はケロっとしていることもありますが、胃や腸の中に残留物がある場合や、胃壁や腸管が傷ついている場合もありますので、動物病院を受診しましょう。できれば吐いた物を持っていく、またはスマホなどで撮影をして、獣医師に見せるようにしてください。
まとめ
猫が吐く理由と、症状についてご紹介してきましたがいかがでしたか?猫は吐くことが多いので、今まであまり気に留めなかった方もいらっしゃるかもしれません。しかし、なかには事故や疾病が原因の可能性があるので、元気がないと感じたり、いつもと様子が違うと感じたら、早めに獣医師に診てもらうことが大切です。猫が苦しむことなく、大きな病気から守れるよう、日頃から些細な変化に気づいていきたいですね。愛猫との素敵な暮らしを守っていきましょう。