猫の便秘の原因、対策、改善策を徹底解説

猫の健康 猫のウンチがでない!排便が辛そう!これって便秘なの?

執筆/佐藤 華

お腹が張って痛い。頑張ってもなかなか出ない。人間でも辛い便秘ですが、猫も便秘になります。便秘の際に気になるのは、どのような解決策や予防策があるのかです。今回は愛猫のウンチが出ないときや、排便が辛そうなときの対策をご紹介いたします。

猫を飼っている方や、これから猫を飼う予定のある方は必見ですよ。

猫の便秘の定義は?

猫の便秘の定義は?

猫も人と同じように、排便のサイクルはその子によって異なります。毎日定期的にウンチをする子もいれば、数日間ごとの決まったサイクルで排便する子もいます。何日間出ていないから便秘という定義はありませんが、決まったサイクルで排便をしているのに急に便が出なくなった、トイレで頑張っているけれどウンチが出ない、などの症状があれば、便秘の可能性が高くなります。

また、毎日排便はあるが、固くコロコロとしたウンチを少量しかしない、という場合も便秘です。

猫が便秘になる原因とは?

猫が便秘になる原因とは?

猫が便秘になる原因には、一般的に給水量が少ない、フードの問題、運動不足や病気が隠れていることが挙げられます。便秘を放置しておくと、巨大結腸症という重症化すると死に至る怖い病気になる可能性もあります。

フードを変えた

猫が便秘になる原因1つめは、「フードを変えた」です。

猫は人間と同じように、食べるものにより便の状態が変わります。もし他のフードに切り替えた、複数のフードをいろいろと与えているということであれば、それが原因でウンチが固くなっている可能性があります。

運動不足

猫が便秘になる原因2つめは、「運動不足」です。

運動不足で消化器の動きが悪くなると、便秘になることあります。病気やケガで運動ができない場合以外は、日頃から運動をさせてください。猫じゃらしやおもちゃで15分程度遊ぶだけでも、運動不足解消になります。

環境の変化

猫が便秘になる原因3つめは、「環境の変化」です。

引っ越しのような環境の変化は、ストレスによって排便を我慢してしまい便秘になります。また、トイレの置き場所や容器、突然砂の種類を変えることも猫は嫌がるでしょう。砂の種類を変えたいときは、5:1の比率で今までの砂と新たな砂を混ぜて使ってみるなど、少しずつ慣らしていくようにしましょう。安心して排便できる環境にすると、愛猫の便秘予防にもつながります。

便秘を引き起こす病気

猫が便秘になる原因4つめは、「便秘を引き起こす病気」です。

便秘を引き起こす病気に、巨大結腸症やその他の炎症疾患があげられます。巨大結腸症とは大腸神経の異常が原因となり、大腸の運動が正常に行われず便がたまり、腸が大きく膨らむ病気のことです。炎症性疾患で考えられるのは、もともと腸の動きが悪く排便しづらくなる場合や、交通事故のような外傷による神経障害が考えられます。獣医師とよく相談の上、症状にあった対策をしましょう。

薬の副作用

猫が便秘になる原因5つめは、「薬の副作用」です。

麻薬系の鎮痛薬や利尿剤などは、副作用で便秘を起こすことがあります。自己判断で薬を与えるのではなく、獣医師の指示を守り容量を守って使用しましょう。

誤飲

猫が便秘になる原因6つめは、「誤飲」です。

おもちゃのような異物を誤飲することにより、便秘が起きることがあります。誤飲の便秘の場合は、飲み込んだ異物が大腸の中で詰まり、後からできた便が溜まり排便が出にくくなっている状態です。この状態では便秘であることよりも、異物による腸管損傷の危険性が問題となります。早急に病院に連れて行かなければなりません。

遺伝の影響

猫が便秘になる原因7つめは、「遺伝の影響」です。

排便サイクルに影響が出る遺伝は、骨格・腸の長さなど体の特徴が原因となります。例えば、尻尾のない猫として知られるマンクスは、先天的異常である尾骨の影響で腸に障害が起き、便秘になりやすいといわれています。

飲水量が不足

猫が便秘になる原因8つめは、「飲水量不足」です。

猫はもともと飲水量が少ない動物ですが、体質によっては便が硬くなってしまいます。そして、排せつ時に痛みを伴うため、排便しづらくなるという悪循環です。便秘気味の場合はわずかでも飲水量を増やせるよう、ぬるま湯やウェットフードをあげるなどの工夫をするとよいでしょう。

猫の便秘の症状

猫の便秘の症状

排便の頻度や量には個体差があるので「何日以上排便がないと便秘である」という定義はありませんが、一般的に2日以上排便がない場合は便秘の可能性が高いと考えられます。

また、排便はあるものの1日に何度も排便をしたり、便の切れが悪くなったりしている場合は便秘の可能性があります。これは1度で便をスッキリと排出できないことで、腸内に便が残っているためです。

便秘によって腸内に大量の便が詰まっている場合、普段より長く力んでいるのになかなか便が出ないことを「排便困難」といいます。力むことで身体に余計な力がかかり、嘔吐をしてしまう場合もあります。

健康な猫の便は水分量を含んでいるため艶がありますが、便秘になると便の水分が腸に吸収されるため、表面が乾燥した硬い便が出るようになります。これには食事の内容が影響している場合もありますが、硬くて短いコロコロとした便が何日も続く場合は便秘の可能性が高いでしょう。

トイレで猫の様子がいつもと違う…こんなときは病院へ行こう

トイレで猫の様子がいつもと違う…こんなときは病院へ行こう

猫の様子がいつもと違ったり、以下のような異変を感じたら、すぐに病院へ連れていきましょう。

  • 突然排便の間が空くようになった
  • 排泄したい様子はあるものの、まったく出ずに苦しんでいる
  • 極度に排便量が少なく、お腹が膨らんでいる
  • 食欲が落ちて嘔吐するようになった
  • 下腹部を触ると固い塊のような感触がある

猫の「便秘」の治療方法は?

猫の「便秘」の治療方法は?

動物病院では、まず触診やレントゲンで溜まっている便の量や消化器に異常がないかを確認し、便秘の原因を引き起こしている病気の治療を行います。

  • 内科的治療

お薬でコントロールできる軽い便秘の場合や、原因となる病気が見当たらず突発性の便秘と診断された場合には、療養食の指導、内服薬や整腸剤の投与、浣腸での処置を行います。薬だけではウンチが出づらい場合は浣腸や緩下薬(かんげやく)を投与し、「摘便」を行います。「摘便」は獣医師が肛門から指を入れて、腸内に溜まっている便を掻きだす処置です。猫にとっても痛く苦しい治療のため、嫌がって動いたり暴れたりする場合には、麻酔下で処置を行うこともあります。

  • 外科的治療

慢性的な便秘から、腸が伸びてしまっている「巨大結腸症」を起こしている場合には、伸びた結腸を切除し、短く縫い合わせる外科的手術を行う事もあります。手術後は正常に排便が出来るようになりますが、体質によっては便秘を再発してしまうこともあります。また、術後の合併症として、慢性的な下痢になってしまうこともあります。

猫を便秘にしないための予防法はある?

猫を便秘にしないための予防法はある?

大事な愛猫が便秘で苦しむのは見たくないものです。便秘にさせないためにも、予防対策をしっかりと行いましょう。

飲水量を増やす

便秘にしないための予防法1つめは、「飲水量を増やす」です。

猫が積極的に水分を取れるような環境や、食事内容を工夫することが必要になります。水飲み場を1ヶ所から3ヶ所に増やすだけで、飲水量が1.5倍に増えたという報告がありますので、ぜひ試してみてください。また、循環型の給水器が好きな子や、ウォーターボールでないと飲まないという子もいます。水飲み場を増やす時には、循環型、ウォーターボールなど、様々な種類のものを置いてあげることで飲水量を増やすことも出来ます。飲水量が減る冬場には、ぬるま湯を与える、ウェットフードを与えるなども効果的です。

運動ができる環境づくり

便秘にしないための予防法2つめは、「運動ができる環境づくり」です。

猫は平らな場所での運動よりも、昇降の運動を好みます。キャットタワーを使ってみたり、家具の配置を工夫したりするなどして、立体的な運動ができる環境づくりをしてあげましょう。

フードを見直す

便秘にしないための予防法3つめは、「フードを見直す」です。

高繊維質のキャットフードは、便秘解消に効果的な場合もあります。ただ、便秘のタイプによっては高繊維質のフードを与えることで更に悪化してしまう事もあるので、必ず獣医師に相談しましょう。

飲料水をあまり飲まない場合は、猫用のスープを与えたり、水分を多く含んだウェットフードを与えたりするとよいでしょう。また、飲料水とフードの両方見直すとさらに効果があります。

毛玉のケアも必要

便秘にしないための予防法4つめは、「毛玉のケア」です。

グルーミングで飲み込んでしまった毛が腸にたまってしまい、便秘を引き起こすこともあります。日ごろからブラッシングをするなど、毛玉ケアをしてあげましょう。

毛玉のケアでよく使用されるアイテムとして、猫草があげられます。その理由は、猫草は食物繊維を多く含んだイネ科の植物で、猫が飲み込んだ毛玉を吐き出しやすくする効果があるためです。ただし、猫は猫草を消化できないため、重度の便秘時に与えると、腸に詰まって便秘を悪化させる恐れもあります。与える際は猫の状態をよく見て、便秘時は控えるようにしてください。

猫の便秘、通院以外のケアはできる?

猫の便秘、通院以外のケアはできる?

投薬や病院での強制排便は、猫に負担をかけてしまいます。そこで、自宅でも出来るケアをご紹介します。

マッサージの方法は?

腸の動きを助けるマッサージは、飼い主と愛猫のスキンシップにもなります。手軽にできますので、ぜひ試してください。

  • リラックスさせる

マッサージは猫も飼い主も、リラックスした状態で行うことが大切です。猫がくつろいでいるときに優しく頭をなでてあげましょう。気持ち良さそうにしていたら、前足から背中、しっぽから後足の順で優しくなでていきます。

  • そっと脇腹を揉む

つづいて、そっと脇腹を揉んであげましょう。お腹全体を揉むことで腸を刺激することができます。ただし、強い力で押すと猫が痛がりますので、優しく触れるように気をつけてください。

  • 時計回りにお腹をなでる

猫がリラックスしてきたら横向きか仰向けにして、指先でお腹に「の」の字を描きながら時計回りに優しくなでます。お腹を触られるのを嫌がる子は、後足の付け根を背中側から優しく揉んであげましょう。

乳酸菌製剤を与えたいときは?

乳酸菌製剤を与えたいときは、まず獣医師と相談しましょう。

乳酸菌製剤は人間だけでなく、猫への整腸作用を見込み処方されることがありますが、その効果は便秘の原因によって違います。決して飼い主の判断で与えず、使用したい場合は獣医師と相談しましょう。

オリーブオイルが効くって本当?

オリーブオイルは小腸や大腸で吸収されにくく、便を柔らかくしたり、潤滑油の働きをしたりして排便を円滑にしてくれます。そのため便秘の解消に有効ですが、自己判断で使用せず、獣医師に相談してください。

サプリメントは与えてもいい?

サプリメントは与えてもよいですが、あくまで健康サポートが目的なので、日々の予防対策の一環として考えたほうがいいでしょう。病院で処方してくれる場合もあるので、詳しくは獣医師に相談してください。

人間用の便秘薬はあげてもいい?

人間用便秘薬の使用についてですが、決して自己判断で使用しないでください。これは便秘のときだけではありません。「愛猫が苦しんでいるので、早くなんとかしないと」と思っても、人間用の便秘薬や浣腸を飼い主の判断で使用することは禁止です。中でも人間用の浣腸を使用すると、重度の脱水症状を起こす場合があります。

薬を使用する場合は、必ず獣医師に処方されたものを与えてください。

まとめ

便秘は人間でもなるので、たかが便秘と考えがちですが、放置してしまうと愛猫を苦しめることになります。いつもと違うと異変を感じたら、直ぐに病院に連れて行きましょう。そして、大事な愛猫を便秘にさせないためにも、日頃の生活環境から注意することが大切になります。愛猫が健やかに過ごせるよう、気をつけてあげましょう。

執筆者
会社員を経て、念願叶いライターとしてデビューしました。 猫4匹、犬1匹、人間ふたりの大家族なので、笑いと事件が絶えない毎日です。 読者の皆さまのお役に立てるような記事を執筆出来るよう、日々精進してまいります!