水腎症という病気を知っていますか?腎臓から膀胱に尿を送る尿管が、尿結石や腫瘍、または外傷などの原因によって塞がったことによって、猫の腎臓が肥大してしまう病気です。猫が何度もトイレに行ったり、食欲がないと感じたときはこの病気の可能性があります。ここでは、水腎症の原因や予防法について一緒にみていきましょう。
猫の水腎症はどんな病気?
水腎症は、尿管や尿道が何らかの理由で塞がってしまい、体外に排出されるはずの尿が腎臓内部に溜まってしまう病気です。腎臓内部に溜まった尿により、腎臓の組織が圧迫されてしまうことで、腎臓本来の機能が正常に行われなくなります。また、溜まった尿により腎臓が膨らみ、大きくなってしまいます。
水腎症には「片側性水腎症」と「両側性水腎症」があります。水腎症の多くが、左右ある腎臓の片側だけが水腎症になる「片側性」ですが、まれに「両側性」といわれる両方の腎臓が水腎症になる場合もあります。
ゆっくりと片側だけに尿が溜まる片側性水腎症になった場合には、無症状の事が多いとされています。一方、両側性の場合には、重度の腎不全になってしまい、命の危険性があります。
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猫の水腎症の症状は?
水腎症の症状は、尿の異常や食欲不振、嘔吐などさまざです。症状をひとつずつみていきましょう。
猫のお腹が膨れている
水腎症になった猫では、お腹が膨れてみえることがあり、触ってみるとシコリのような物があるように感じる場合があります。これは排出できず溜まってしまった尿で腎臓が張っているためです。
猫の尿に血が混ざる・食欲がない
尿路結石によって引き起こされた水腎症の場合、尿に血が混ざる血尿や、頻尿などの症状がみられます。また、元気がなくなる、食欲がなくなるなどの症状が現れることもあります。
無症状の場合もある
片側の腎臓だけが水腎症になった場合は、もう片方の腎臓が機能するため無症状のことが多く、嘔吐、軽度の食欲不振、元気がないなどの症状がみられる場合もありますが、どれも数日で回復する一過性のため、病気が見落とされがちです。
重篤な症状になってしまうと
腎臓の両方で水腎症の症状が出た場合や、もう片方の腎機能も何らかの原因で失われてしまった場合には急性腎不全となり、数日以内に尿毒症に陥り重篤な症状になってしまいます。主な症状としては、多飲多尿、食事を受け付けなくなる、嘔吐、痩せてくるなどがあります。
さらに尿毒症が進むと、尿毒素が血液に入り込み、口内炎・胃炎・嘔吐・食欲不振などの症状がみられます。また、脳神経に作用してけいれん発作を引き起こし、最終的には命を落とすこともあります。
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猫の水腎症の原因は?
水腎症には先天性と後天性があり、先天性では腎臓や尿管の奇形によって起こりますが、後天性の場合は尿路結石や腫瘍などによる腎臓や尿管の閉塞です。その中でも結石による尿路閉塞が最も多い原因です。
結石で最も多いのはシュウ酸カルシウム結石ですが、結石が出来る原因は遺伝、体質、フードによるもの、飲水量、肥満からくるもの、代謝異常などと言われていますが、詳細は解っていません。猫の尿管は直径1ミリ程度ととても細く、極小の結石でも閉塞を起こす原因となります。
腫瘍の原因の多くが、尿管が開く場所に出来る「移行上皮癌」という悪性腫瘍です。
そのほかに事故による外傷などで尿管を閉塞させたことによるものや、手術後の後遺症などによっても水腎症を発症することもあります。子猫の水腎症の原因の多くが、先天性によるものです。
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猫の水腎症の診断は?
水腎症の診断には、触診、超音波検査、レントゲン検査で、その中でも超音波検査が最も有効とされています。超音波検査では、腎盂と呼ばれる腎臓と尿管の接続部分で尿がたまる場所の拡張を確認します。閉塞している尿管の場所によっては、尿管のどこが詰まっているのか、同時に確認できることもあります。一般的な方法としては、猫の下腹部に超音波をあてた状態で採尿し、腎機能障害の程度を確認するために血液検査を行います。また、閉塞の原因を探るためにレントゲン検査を行い、「静脈性尿路造影」を用いて水腎症の進行状況や腎臓の機能を確認します。
猫の水腎症の治療方法は?
水腎症の治療の目的は、塞がった尿路を正常な状態に戻し、尿が通るようにすることですが、水腎症の進行具合によって内容が変わります。
原因が尿路結石で、腎臓の機能回復が望める場合には、手術や食餌療法で結石除去を行います。手術は、尿管を切開し縫合する方法や、「尿管膀胱バイパス術」と呼ばれる閉塞している部位の手前で尿管を切り膀胱につなげる手術、人口のカテーテルをバイパス経路として用いる「腎臓―膀胱バイパス術(SUBシステム)」があります。どの方法を選んだとしても、猫の尿管はとても細く、手術の難易度は非常に高いといわれています。そのため、専門医のいる病院を紹介されることがあります。
水腎症が進んでしまい、腎臓の機能回復が望めない、もしくは感染症を起こしている場合で、片方の腎臓の機能が良好であれば、水腎症になっている腎臓を摘出することもあります。水腎症が原因で急性腎不全を起こしている場合や、腫瘍や事故による閉塞の場合には、原因や症状にあわせた治療・手術を行うことになります。
閉塞が部分的である場合や片側性で症状が軽い場合には、抗炎症薬や痛み止めの薬による治療で経過観察を行うこともあります。
猫が水腎症にならないための予防法はあるの?
水腎症にならないための予防は、原因となる尿路結石のメカニズムに不明な点が多いため、難しいのが実情です。しかしながら、水腎症に限らず腎臓の疾患は、発見のタイミングで治療法や予後が変わります。水腎症の場合ですと、発見が遅れることで水腎症が進み、腎臓の機能を失う腎不全になってしまうと、完治することはありません。お腹をさわるとしこりを感じる、お腹がふっくらしてきた、元気がない、食欲がない、トイレの回数が増えたが1回のオシッコの量が少ないなど、気になる症状があれば、早めに動物病院を受診しましょう。
また、肥満や飲水量が少ない猫の場合は、水腎症の原因である尿路結石のリスクが高いといえます。体重管理や飲水量の管理、尿のチェックを行いましょう。飲水量に関しては、何か所か水飲み場を作るだけで、飲水量が格段に上がるという研究結果も出ています。尿のチェックも簡単にできるリトマス試験紙タイプのチェッカーやキットが市販されていますので、試してみるのも良いでしょう。
水腎症の早期発見のために、年に1回は超音波検査、レントゲン検査、尿検査を含めた定期健康診断を受けるようにしましょう。
まとめ
水腎症はなかなか症状に気づきにくい疾患ですが、両方の腎臓で発症し重篤な症状になると数日で命の危険があるとても怖い病気です。
腎機能は一度失うと取り戻せないので、日ごろから猫の様子をみて少しでも異常を感じたら、すぐに動物病院に連れていきましょう。