猫の白血病は治る?症状は?残りの寿命を生きる方法を徹底解説

猫の健康 猫から猫にうつる猫白血病ウイルス(FeLV)感染症とは? 治療法は?予防はできる?

執筆/佐藤 華

「猫白血病ウイルス感染症(FeLV)」はとても厄介な病気です。気付かない内に猫白血病ウイルスに感染し、病状が進行しており、寿命が短くなってしまう可能性もあります。ぜひ、この記事を参考に愛猫の感染対策&治療に取り組んでみてください。

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)ってどんな病気?

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)とは、ウイルスキャリアの猫から他の猫に感染拡大していく病気です。「白血病」とありますが引き起こす症状は、「白血病」「免疫不全」「貧血」「リンパ腫」と多岐に渡ります。これらの「FeLV関連疾患」を発症すると、完治することは稀で、短い場合で数ヶ月、長くても数年で命を落としてしまう怖い感染症です。

ただし、初期感染の段階で猫が持つ免疫機能がしっかりと働いた場合、ウイルスが排除されることもありますが、1歳未満の免疫がしっかりと確立されていない子猫は、ウイルスが排除されにくく発症するリスクが高いとされています。仮に発症しなくても猫白血病ウイルスには潜伏期間があるため、数か月間は経過観察する必要があります。

感染経路について

猫白血病ウイルスは「猫白血病ウイルス」を保持している猫の唾液や鼻汁などの体液、糞便や尿などの排せつ物を介し感染します。特に感染の原因として多いのが、猫同士の喧嘩での咬傷、猫同士のグルーミングです。他にも、食器やトイレの共有、母子感染(胎盤や乳汁を介して起こる感染)や母猫が子猫をなめることでウイルス感染をする場合もあります。

猫白血病ウイルス自体は自然環境化では不安定で、数分から数時間で感染力を失います。また、消毒薬への抵抗力も弱く、70%エタノール、塩素系漂白剤、加熱処理、洗剤などで死滅します。しかし、ペットシートやトイレなどの湿った環境化では、感染力の保持がやや長いとされています。

猫から人や他の動物にうつることはある?

猫白血病ウイルスは猫から人への感染は報告されていません。また犬や小鳥など他の動物も同様に感染しません。

愛猫が感染しているのか調べるには

猫白血病ウイルスの検査方法は「血液検査」となります。検査は潜伏期間を考慮し、感染が疑われる地点から1か月前後経過してから行います。明らかに感染猫と接触していると判明している場合も、ある程度日数が経過してから検査に連れていく必要があります。また血液検査の結果では「感染しているかどうか」までしか判明せず、前もってどの症状が発症するかは予想することができません。

感染を確認する検査には、「テキストキット検査」「PCR検査」「IFA検査」がありますが、最も一般的なのは動物病院内で直ぐに検査結果が解る「簡易検査キット(スナップ検査)」です。

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)には3つのタイプがある

ひとことで「猫白血病ウイルス感染症」といっても感染には3つのタイプがあり、どのタイプに感染するかはその猫の免疫機能によって異なると考えられています。また、タイプによって予後も異なり、陰転(猫白血病ウイルス感染症陽性反応から陰性に変わること)するタイプもあります。

持続性ウイルス血症

生後4カ月以内の子猫が猫白血病ウイルスに感染した場合、持続性ウイルス血症を起こし、持続感染猫になる確率が高いとされています。免疫力が低下している成猫が感染した場合にも、持続感染になることがあります。持続性ウイルス血症となった感染猫は、猫白血病ウイルス感染症(FeLV)に関連した様々な疾患を発症することが多く、6週齢以下の子猫で70~100%、8~12週齢では30~50%、1歳以上では10~20%の猫が持続感染猫になるという報告もあります。

一過性感染

感染初期に猫の体内で免疫機能が働いた場合、ウイルスを完全に排除することができ、ウイルス検査では陰転(陽性反応が出ていたが、陰性になること)します。一過性感染だった場合には、猫白血病ウイルス感染症(FeLV)関連の疾患は認められず、ウイルスに対する抵抗性が高くなり、感染しにくくなります。

一過性感染の場合1~16週で陰転しますが、16週以上陽性反応が出た場合は、持続性ウイルス血症と診断されます。また、潜伏感染の疑いもあるため、陰転したあとも引き続き経過観察が必要になります。

潜伏感染

ウイルスが骨髄やリンパ節にまで達すると免疫反応がでて、ウイルス検査では陰転する場合があります。しかし、一過性感染とは違い完全に体内から排除されたわけではありません。潜伏感染のままで一生を終える場合もありますが、ストレスやステロイド剤の投与など、何かのきっかけで体内で眠っていた猫白血病ウイルスが活性化、持続感染になってしまう可能性があります。

猫白血病ウイルスに感染したらどんな症状が出るの?

「白血病」と名前が付いており、怖い印象があるためどんな症状が出てしまうのか不安かと思います。ここからは猫白血病ウイルスに感染することで引き起こされる症状について触れていきます。

感染初期症状

猫白血病ウイルスに感染後2~4週間で、下記のような初期症状が現れます。

  • 発熱
  • 元気がなくなる
  • リンパ節が腫れる
  • 白血球減少、血小板減少
  • 貧血

それ以外にも、嘔吐・食欲不振・体重減少などの症状が見られる場合もあります。

感染しても、一過性で終わる場合も

上記の初期症状は一定期間を経過することで一度鎮静化します。この際、猫の体内で猫白血病ウイルスが増殖せず消滅した場合、感染症が一過性(一度きり)で終わる場合があります。このように猫の免疫状況によってウイルスが減少し検査結果が陽性から陰性に変動することを「陰転」といいます。

猫白血病ウイルスが陰転し一過性で終わるのは1歳以上の成猫に多くみられます。ただし、検査結果が陰転しても、まだウイルスが潜伏している可能性もあります。念のため1年以内に再検査されることを推奨します。

持続感染になった場合の症状とは

上記のように一過性で終わらなかった場合は持続感染となります。持続感染となると症状が深刻化しやすく、感染してから3年以内に下記のような症状が出ます。

  • リンパ腫
  • 白血病
  • 腎炎
  • 口内炎
  • 腎炎
  • 流産・死産

これらは急に症状としてでることも多く、飼い主が気づいた時には進行しているということもあります。

他の猫に感染を広めないために

前述した通り、猫白血病ウイルスは猫間での感染となります。感染を広げないためにも、他の猫と接触させないことが必要です。

多頭飼育下では、感染猫は部屋を分け、他の猫と接触させない工夫が必要です。感染猫のケアをした後は、石鹸を用いた手洗い、手指のアルコール消毒をしっかりと行ってください。特に食器やトイレの掃除後は、消毒を徹底しましょう。また、感染していない同居猫が使用する可能性も視野に、感染猫が使用している食器は毎食後、ベッドや布類はこまめに消毒を行うようにしましょう。

猫白血病ウイルス関連疾患とは?

「白血病ウイルス」と名付けられておりますが、実はこの感染症では「白血病」以外の疾患も引き起こされる危険があります。ここからは引き起こされる関連疾患を5つ解説します。

白血病

白血病とは血液がんの一種で血液中の白血球が正常に作られなくなってしまう疾患です。結果として免疫力が低下し、本来であれば防げる病原体に身体が負けてしまうようになります。特に体力がまだ弱い子猫は危篤状態に陥る危険があります。

リンパ腫

白血球の中でも免疫機能を司っているリンパ球ががん組織化してしまう疾患です。猫白血病ウイルスによって発症するリンパ腫の症状には「脱毛が起きる」、「下痢や嘔吐を伴う」、「体表面にあるリンパ節が腫れる」などが挙げられます。リンパ腫の症状は発生する臓器の部分によっても異なり以下の4パターンに分類されます。

【縦隔型リンパ腫】

  胸の中にリンパ腫が出来る。

  主な症状:胸水が溜まる、咳、呼吸困難など

【皮膚型リンパ腫】

  皮膚病のような湿疹が広範囲にわたってできる。

  主な症状:湿疹、脱毛など

【消化器型リンパ腫】

  腸などの消化器にリンパ腫ができる。腸閉塞を併発する場合もある。

  主な症状:下痢、嘔吐、食欲不振、体重減少など

【多中心型リンパ腫】

  体表(顎、脇の下、内股、膝の裏など)のリンパ節が腫れる

  主な症状:発熱、元気低下、呼吸困難など

特に多いのが胸水を伴うリンパ腫です。「胸水」とは胸の臓器(肺や心臓)近くにある空間に液体が溜まってしまう状態です。呼吸が荒くなる(呼吸困難)、嘔吐や下痢、チアノーゼ(口唇や手先が青紫色に変色する)などを引き起こし体力と免疫力が低下してしまいます。リンパ腫が重症化すると、免疫不全、食欲の低下、体重の大幅な減少などの症状も見られるようになります。

治療方法は抗がん剤を使用する化学療法になるため、治療は長期にわたり、副作用が出ることもあります。また、化学療法と並行で、対症療法でも症状を緩和させていきます。リンパ腫は他の要因でも発症する恐れがある疾患ですが、ウイルス感染で引き起こされることも多いため注意しておきましょう。

貧血

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)では血液に関する疾患が引き起こされます。それに伴い正常に血液が作られなくなる、もしくは既存の血液(赤血球)が壊れていってしまうため貧血となってしまいます。猫白血病ウイルス感染症で発生する貧血は、根本的な解決が難しいため慢性的に続いてしまいます。対症療法としては薬剤による化学療法や輸血で対応します。

余談ですが実は猫にも血液型が存在します。大半の猫がA型の血液型ですが、稀にB型、さらに希少なケースではAB型も存在します。人間と異なり、O型の血液型は存在しません。ここで注意したいのが「希少な血液型だからいいこと」ではない点です。実は輸血に必要な血液はどれでもいいわけではなく、同じ血液型でなければ拒絶反応を引き起こしてしまいます。そのため、B型、A型の猫の輸血確保が困難となり治療が遅延する恐れもあります。猫の血液型は動物病院で調べられますので、猫白血病ウイルス感染症(FeLV)の検査と同時に判明させておくことをオススメします。

口内炎

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)において「口内炎」は非常に頻発して発生する疾患です。免疫力が低下しているため、猫の口腔内に常在している細菌への抵抗力も低下することで口内炎を発症してしまいます。

「口内炎だったら問題ないのでは?」と思われるかも知れません。たしかに他の関連疾患と比較すると、直接的な危険度は高くないように思えます。しかし口内炎には猫にとって無視できない問題「食欲低下」を引き起こします。例えば私たちが口内炎を発症した際、痛くても我慢して食事しますが、猫の場合だと食べるのがツライけれど無理してでも食べようとはならないため、食事量が減少しさらに免疫力が低下してしまいます。猫白血病ウイルス感染症において免疫力低下を抑えることは重要であるため、口内炎は非常に厄介な疾患となります。

猫の口内炎の対症療法では、抗生物質や鎮痛剤を投与しますが、貧血と同様に根本的な問題解決ができないため「治りにくい」もしくは「慢性的に続いてしまう」ケースがほとんどです。

腎炎

「腎炎」とは腎臓にて発生する炎症のことです。

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)では腎炎の中でも腎臓にある糸球体という組織で発生する炎症「糸球体腎炎」が発生することがあります。免疫力低下によって対処しきれなかったウイルスや細菌が腎臓内の糸球体付着することで炎症が起きてしまいます。糸球体腎炎では腎不全を伴うため、「多飲多尿」や「食欲低下」を引き起こし、さらに体力がなくなってしまいます。ただし、猫白血病ウイルス感染症(FeLV)における腎炎の発生確率は高くないため、一般的な症状ではありません。

対症療法には脱水を防ぐための点滴や腎臓の負担軽減に配慮した療法食を用いての食事療法などが挙げられます。

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)治療法はあるの?

残念ながら猫白血病ウイルス感染症(FeLV)の根本的な解決を促す治療方法は確立されておらず、症状に対しての治療(対処療法)を行うことになります。

対処療法としては、抗生物質や抗がん剤の投与の他に、猫自身の免疫力を助けるためのインターフェロンを用いることもあります。貧血が酷い場合には輸血、脱水が疑われるのであれば水分、電解質の補給を目的とする点滴を行います。

また、無症状の場合や潜伏感染が疑われる際は、栄養バランスの取れた食事をしっかりと与え、ストレスが少ない環境での飼育管理をすることが大切です。

猫自身の免疫を助けるインターフェロン製剤とは

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)の対症療法にて「インターフェロン製剤」を用いることもあります。

聞きなれない単語だと思いますが、この「インターフェロン製剤」とは簡単に言うと「ウイルスの増殖を抑える薬剤」となります。猫白血病ウイルス感染症(FeLV)においては、初期症状の緩和や対症療法にて使用されることがあります。猫用のインターフェロン製剤は「インターキャット」が認可されてます。

ただし、インターフェロン製剤はウイルスを死滅させ感染症を根本から解決する薬剤ではなく、明確に効果があるとされているのは「ネコカリシウイルス感染症」です。そのため猫白血病ウイルスに対しての効果は個体差があります。また、猫によっては副作用が大きく出てしまう子もいるため使用する際は獣医師と相談をしたうえで決める必要があります。

愛猫を猫白血病ウイルス感染症(FeLV)から守る予防法は?

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)は治療による解決が難しい病気です。そのため最も有効な対策としては、感染を予防することになります。

ワクチン接種

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)にはワクチンがあります。ここで注意したいのがワクチン接種は、感染症発症を防ぐための物ではなく、「感染してしまった場合の症状悪化を抑える」目的になります。そのため100%発症を防げるわけではないので、ご家庭での予防対策も徹底させなければなりません。

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)のワクチンは「4種混合」から含まれます。動物病院で摂取を推奨されることが多い「3種混合ワクチン」には含まれておりませんのでご注意ください。

例外として、すでに感染し陽性反応を示している猫には発症抑制や感染の進行遅延などは見込めないため、摂取する必要がありません。

完全室内飼育

室内で飼育する猫であれば他所の猫と関わる機会がないし大丈夫だろうと思いがちですが、必ず安全という訳ではありません。室内飼育で課題となる点に「脱走」があります。脱走とは室内飼いの猫が飼い主の隙をついて家から外に逃げ出してしまう行動をいいます。実際、飼い主が少し目を離した隙に家から飛び出てしまった猫たちが後を絶ちません。ここで心配なのは他の外猫、野良猫などに遭遇し接触してしまうことです。特に脱走した猫はどこで何をしていたか分からないため感染してしまった事実にも気付けない可能性もあります。

外での感染を防ぐためにも、ケージの活用や脱走防止扉の配置など、脱走対策を万全に行い完全室内飼いを徹底しましょう。

多頭飼育の場合

ご家庭内で2匹以上の猫を飼われている場合は、どちらも猫白血病ウイルスに感染していないか検査しておく重要性が増します。猫白血病ウイルスのキャリアであり、他の猫と生活スペースを共有していると、高確率でウイルス感染が広がってしまいます。

多頭飼育での予防策では、とにかく感染している猫から他の猫を隔離することが重要です。食器やトイレなども別々にし、誤って共有することがないように洗浄・消毒をこまめに行いましょう。

また猫白血病ウイルスは、胎盤内や出産後の母乳を介して感染する、母子感染も起こります。母子感染の場合、子猫が生まれる前に流産してしまうケースや、出産後早期に死亡してしまう危険があります。猫白血病ウイルスに感染している、または感染の疑いが濃い場合には避妊手術を行い、猫の身体に負担をかけないようにしましょう。

愛猫が猫白血病ウイルスキャリアになったら

もし愛猫が猫白血病ウイルスキャリアになってしまった場合は、初期の対応としてウイルスに負けないよう猫の免疫力を高めることを優先します。

猫の白血病ウイルス感染症(FeLV)を防ぐためには「ストレス」への配慮も重要となってきます。猫にとって「ストレス」と「免疫力」は大きく関係しており、劣悪な飼育環境では猫のストレスが増大し免疫力も低下しがちです。「猫が安心できるスペース作り」「仲の悪い猫との隔離」「避妊・去勢手術」など猫に合った環境整備しましょう。

持続感染へ移行してしまった場合も上記は重要です。それに加え発症した関連疾患に対応した対症療法を施し、可能な限り猫の負担を軽減させていきます。

まとめ

いかがだったでしょうか?

猫白血病ウイルス感染症は非常に危険な感染症です。発症し病状が継続してしまうと免疫力低下による疾患を引き起こしてしまいます。免疫力低下によって「猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)」や「猫伝染性腹膜炎(FIP)」などの他の感染症に罹患してしまう恐れもあります。

繰り返しになりますが、猫白血病ウイルス感染症において重要なのは治療よりも予防となります。ワクチン接種やストレスが少ない環境で暮らすだけでも、猫白血病ウイルス感染症の対策となります。

多頭飼育の方だけでなく、一匹だけを室内飼育している方も、万が一に備えこの機会にウイルス検査してみてはいかがでしょうか。

執筆者
会社員を経て、念願叶いライターとしてデビューしました。 猫4匹、犬1匹、人間ふたりの大家族なので、笑いと事件が絶えない毎日です。 読者の皆さまのお役に立てるような記事を執筆出来るよう、日々精進してまいります!