猫は便秘になりやすい動物です。しかし、「たかが便秘」と症状をそのままにしておくと「巨大結腸症」という病気に繋がってしまいます。この病気になると、治療のために何度も通院したり、重度の場合はお腹を開いて手術をするなど、猫と飼い主の両方に負担がかかります。
そうならないためにも、この記事で巨大結腸症について一緒に学んでいきましょう。
猫の巨大結腸症ってどんな病気なの?
巨大結腸症とは、結腸が異常に拡がった状態が続く病気です。
結腸とは大腸の一部で、電解質や水分を吸収し、糞便を作って貯めておく役割があります。この結腸に長い間ウンチが留まってしまうと、結腸は常に伸びた状態になります。伸びた状態が続くことで結腸の働きが弱くなり、さらにお腹の中にウンチが溜まりやすくなるという悪循環が生まれるのです。
そして、最終的にはお腹の中がウンチだらけになってしまいます。ウンチだらけになってしまった結果、体の毒素が排出されず、食欲不振や嘔吐、脱水などの症状を引き起こし、最悪死に至るケースもある病気です。
猫の巨大結腸症、主な症状
①便秘
ウンチをする仕草はするけれどもウンチが出ない「しぶり」や、一日に何回もトイレを行ったり来たりするような行動をします。
②腹部膨満
ウンチがお腹の中に溜まりすぎてしまい、お腹が膨れてしまう状態です。
③食欲不振
お腹にウンチがたまりすぎると気持ち悪くなったり、苦しくなったりして食欲がなくなります。
④嘔吐
硬くなってしまったウンチを出そうとして無理に力むと、お腹に力が入りすぎてしまい、吐いてしまうことがあります。
⑤体重の減少
食欲不振が続くと、栄養不足の状態が続いてしまうため体重が減少していきます。
⑥脱水
腸の働きが低下すると水分を吸収することができなくなり、脱水状態になります。また、嘔吐や下痢などでも身体の水分は失われ脱水症状を引き起こします。
猫の巨大結腸症の原因は何?
猫の巨大結腸症の原因の多くは便秘です。便秘が続いた結果、少しずつ結腸に負担がかかり、発症してしまうケースが多いのです。
ここからは猫の便秘の原因を7つ解説します。
①異物の摂取
骨やグルーミングの時の毛、本来食べるべきではないものを食べてしまったことにより、消化器官に負担がかかり起こります。
②環境の変化
引っ越しや、トイレの場所の変更、新しい家族を迎え入れるなどの周辺の変化は猫にとってはストレスです。このストレスが便秘を引き起こす事があります。
③骨盤狭窄
骨盤が狭くなってしまうことで腸を圧迫し、ウンチが出しずらくなります。原因としては、骨盤骨折による後遺症や、子猫の時の栄養不足による骨盤の形成異常があります。
④脊椎疾患
脊椎の中を走る脊髄にダメージが加わって、神経症状が現れます。神経症状の中の一つに「便秘」があります。
⑤内臓疾患
腎臓病で内臓の機能が低下すると脱水症状が引き起こされます。身体が水分不足になることでウンチも固くなり、便秘になるのです。
⑥腸の腫瘍
腸に腫瘍ができると、腫瘍でウンチの通り道を塞いでしまう場合があります。そうなるとウンチの排泄がスムーズにいかずに便秘になってしまいます。
⑦結腸の神経異常
結腸の神経にトラブルが起きると、腸が動かなくなり、便秘になります。結腸の神経の異常は、便秘の原因が見当たらなかったときに疑われるもので、少々レアなケースです。
猫の巨大結腸症、どうやって診断するの?
巨大結腸症の診断方法は2つあります。
①直腸検査
お腹を触ったり、肛門から直接指を入れて腸の状態を把握する方法です。この時に、結腸が大きく拡がり、その中に硬いウンチが詰まっていないかどうかを確認します。
②X線検査
レントゲンで撮影してお腹の中を確認する診断方法です。巨大結腸症では、結腸、直腸に大量のウンチが詰まっていて大腸全体が大きく拡がっているのが確認できます。
猫の巨大結腸症、どんな治療をするの?
巨大結腸症の治療には大きく分けて2つの治療法があります。
①内科的治療
巨大結腸症であっても便秘の程度が軽めであれば、下剤や便の軟化剤(ラクツロースなど)を使って便秘の改善を図ります。
しかし、お薬で改善しない場合や、重度の便秘の場合は肛門から温水やグリセリンを注入して手でウンチを搔き出したり、浣腸剤を使って浣腸をしたりします。このウンチを掻き出す処置は嫌がる猫が多く、あまりにも嫌がる場合には全身麻酔をした状態で処置が行われることもあります。
②外科的治療法
内科的療法で改善が見られなかったり、何度も再発してしまう場合は外科的治療、つまり手術を検討します。手術は便秘の原因により違ってきますが、結腸切除術や骨盤拡大術などがあります。
・結腸切除術
拡がってしまった結腸を切除し、縫い詰める手術です。術後、数週間から数カ月は下痢や軟便が続きますが、次第に落ち着いてくる傾向にあります。
手術により、症状がかなり良くなることがありますが、腹膜炎や腸管狭窄などの合併症が起こることもあり、完全ノーリスクというわけにはいきません。手術を選択するかどうかは、再発の頻度や猫の状態などを考え、獣医師とよく相談して決める必要があります。
・骨盤拡大術
交通事故などで骨盤骨折などを起こして、狭くなってしまった骨盤腔を広げる手術です。このとき、結腸の状態によっては結腸切除術も同時に行われる場合があります。
猫の巨大結腸症、予防はできる?
巨大結腸症の予防の鍵は「便秘にさせないこと」です。ここからは猫の便秘予防に役立つ生活のコツをご紹介します。
・食事
便秘予防のためには、食物繊維が多く含まれる「高繊維食」がおすすめです。食物繊維は正常な排便を助け、腸内フローラを整えてくれるのに役立ちます。
また、水分の多いウェットフードを食事の際にドライフードと一緒に与えて、食事から水分を補給させ、ウンチの柔らかさを保つ方法もあります。
動物病院では猫の便秘用に考えられたフードもあるため、一度相談してみるのをオススメします。
・飲み水
ウンチを最適な柔らかさにしておくためには、しっかりと水分を取ってもらう必要があります。
方法としては、飲み水をこまめに入れ替え、常に新鮮な水が飲めるようにしたり、水入れを置く場所を増やしたりして、猫がいつでも水を飲みやすい環境を整えておくとよいです。しかし、それでも水を飲んでくれない猫には、ペースト状のおやつを水で薄めるなどして与えてみると飲んでくれることが多いです。
・運動
運動不足になれば猫も便秘をしやすくなります。
対策としてはたくさん遊んであげる以外にも、家具の配置を階段状にしたり、キャットタワーなどを置いて猫の上下運動を増やしてあげるとよいです。また、高いところに猫のお気に入りの場所ができると頻繁に行き来することになるので、自然と運動量も増えていきます。
まとめ
一度、巨大結腸症になってしまうと完治することは難しく、長い付き合いになります。
手術をすれば、手術費と入院費でかなり高額な費用が必要になります。お薬や処置で対処するにしても、定期的な処方や通院が必要になり、結果として費用がかさむことは避けられません。
「たかが便秘」と侮らず、すぐに解消してあげることが巨大結腸症の予防の第一歩となるのです。