猫を飼われているみなさんは「猫伝染性腹膜炎(FIP)」という病気を聞いたことがあるでしょうか?
実はこの病気、猫にとって不治の病とされており、残念ながら現在の獣医学では完治させることが難しい病気となります。今回は猫の危険な病気「猫伝染性腹膜炎(FIP)」について解説していきます。
「猫伝染性腹膜炎(FIP)」ってどんな病気?
猫伝染性腹膜炎(FIP)とは、猫の体内で「猫コロナウイルス」から突然変異した「FIPウイルス」によって引き起こされる感染症の一つです。1歳未満の子猫に発症例が多く、腹膜という体内の部位に炎症を引き起こします。初期症状として「発熱」「食欲不振」があり、発症すると数日、遅くても数週間で死に至ります。
「猫伝染性腹膜炎(FIP)」の原因は何?
猫伝染性腹膜炎(FIP)の主な発症原因は体内での「猫腸コロナウイルス」が「FIPウイルス」という強毒性のウイルスに突然変異することです。ここでは猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因について詳しく解説していきます。
猫腸コロナウイルスに感染して発症する病気
猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因は「猫腸コロナウイルス」が猫に感染し体内で「FIPウイルス」へと突然変異してしまうことで発症します。「猫腸コロナウイルス」は感染力が極めて弱いため、猫伝染性腹膜炎が猫同士でうつる可能性は低いと考えられております。
「それでは猫腸コロナウイルスに感染させなければいいのでは?」
上記のように思われる方も多いかもしれませんが、残念ながら日本国内の猫のほとんどは既に猫コロナウイルスに感染しております。そのため猫伝染性腹膜炎(FIP)は感染経路を塞いだとしても完全に発症を防ぐことは難しいと考えられております。
新型コロナウイルスとは違う病気?
猫コロナウイルスは世界的感染を引き起こしている新型コロナウイルスとは全く別のウイルスです。人間を脅かす新型コロナウイルスがCOVID-19という種類ですが、猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因ウイルス猫コロナウイルスはFCoVとなります。
「猫伝染性腹膜炎(FIP)」にかかるとどんな症状が出るの?
猫伝染性腹膜炎(FIP)には2種類あり、ウェットタイプとドライタイプに分類されます。どちらも初期症状は共通して、ぐったり元気をなくし食欲不振や体重減少を引き起こします。
ウェットタイプの症状とは?
猫伝染性腹膜炎(FIP)のウェットタイプとは、症状として腹水や胸水が発生し、外見からも判別できます。
腹部や胸部に水が溜まることにより肺が圧迫され呼吸困難を引き起こします。後述するドライタイプよりも病状の進行が早く、発生する頻度も高めです。
ドライタイプの症状とは?
猫伝染性腹膜炎(FIP)のドライタイプは腎臓や肝臓などの内臓に肉芽腫を形成します。
眼や脳にも炎症を引き起こす可能性があり、ぶどう膜炎や神経障害なども起きえます。ウェットタイプと比較し、外見から判別しにくいため早期発見は困難です。
「猫伝染性腹膜炎(FIP)」の診断方法はある?
猫伝染性腹膜炎(FIP)の検査には
- 血液検査
- PCR検査(遺伝子検査)
- X線検査
などがあります。
ウェットタイプの場合は、腹水や血液などの抗体検査・PCR検査などで診断します。ただし、診断結果が出るまでに時間がかかります。対してドライタイプの際は、肉芽腫が発見されれば検査が可能ですが、そうでない場合は診断が難しいケースがあります。
「猫伝染性腹膜炎(FIP)」の治療法はあるの?
猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療方法は、主に対症療法であり症状の緩和のために行われます。
- ステロイドで炎症を抑制
- インターフェロンを注射しウイルス活動の抑制
- 腹水・胸水を減らすための利尿剤投与
などが挙げられます。ただし、いずれもあくまで症状の緩和しかできないため、FIPウイルスを消滅させることはできません。
「猫伝染性腹膜炎(FIP)」は完治する病気?
前述した通り、猫伝染性腹膜炎(FIP)は現在の獣医学では寛解させることはできない【猫にとっての不治の病】とされており、発症したらほとんどの場合、死に至ります。
ただし、猫伝染性腹膜炎(FIP)に関する研究は日々進められており、新薬の開発も進みつつあります。まだ正規運用の目途は立っておりませんが、いつか近い将来、獣医学が猫伝染性腹膜炎(FIP)を克服できる日が来る可能性はあります。
愛猫を「猫伝染性腹膜炎(FIP)」から守るために…予防法はあるの?
猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症を完全に防ぐことは難しいとされています。
FIPウイルスに変貌する猫腸コロナウイルスは、ほとんどの猫がすでに感染しており、どの猫にも発症する可能性があります。猫伝染性腹膜炎(FIP)のワクチンも、まだ実用に至っていません。ただ、猫コロナウイルスをFIPウイルスに変化させ発症させやすくする要因に、免疫力とストレスが関与していると予想されています。
- 1歳前後の猫
- 純血猫
- 多頭飼育の環境
- 免疫力が低下する猫免疫不全ウイルスや白血病ウイルスに感染している
上記の条件に当てはまる猫には可能な限り、完全室内飼いとしストレスを減らす努力が求められます。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回の内容をまとめると以下になります。
- 猫伝染性腹膜炎(FIP)とは猫にとって不治の病の一つ。
- 発症は「猫コロナウイルス」が体内で「FIPウイルス」に突然変異すること。
- 多くの猫が「猫コロナウイルス」に感染しており、完全に発症を防ぐことは難しい。
- 猫コロナウイルスと新型コロナウイルスは別物。
- 猫伝染性腹膜炎(FIP)には腹水などが起こるウェットタイプと内臓に肉芽腫が形成されるドライタイプがある。
- 猫伝染性腹膜炎(FIP)の検査は血液検査やPCR検査などがある。
- 現在の獣医学では猫伝染性腹膜炎(FIP)は寛解できず、取れる治療も症状を緩和する対症療法のみである。
- 予防方法としては完全室内飼いを徹底しストレスを可能な限り減らすこと。
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、ほとんどが1歳前後の若い子猫が発症します。完全な予防自体が難しいとはいえ、日頃から可能な限り猫のコンディションとストレス管理することが、取りうる唯一の対策となります。
猫を飼われている方はこの機会に、ぜひ猫の生活環境を見直してみてください。