体がやわらかくケガとは無縁なイメージの猫ですが、骨折のリスクはあります。安全に見える家の中でも、意外なところに危険が潜んでいることも。また、骨折により神経を傷つけてしまった場合は、後遺症などが残る可能性もあります。手遅れにならないよう、原因や治療法について正しい知識を身につけておくと良いでしょう。今回は、猫の骨折について詳しく説明します。
猫の「骨折」の原因とは
交通事故や落下事故など、骨折の原因はさまざま。不慮の事故だけでなく、着地時の体勢によって骨折につながる恐れもあるので、家の中でも注意が必要です。
意外!低い場所からの落下が危ない?
身体能力に優れている猫は、タンスの上からテーブルの縁まで、家中あらゆる場所を自由自在に登ることができます。高い場所からの落下は、着地するまでの間に受け身体勢を作る余裕がありますが、低い場所での落下は対応しきれず、骨折につながることも。一見危険に見えるタンスやキャットタワーよりも、床との距離が近いソファやテーブルなどからの落下の方が、実は危ないのです。
猫の骨折、前足のほうが多い?
上から下へと着地する際、最初に地面へ着地するのは前足です。着地時の体勢や地面の状況によっては、前足に強い負担がかかり、骨折へとつながることも。そのため、落下や着地事故では後ろ足よりも前足の方が骨折しやすく、注意が必要です。室内飼いの猫であっても、前足を痛がっていたり歩けない素振りを見せた時は、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
骨折した猫の症状とは?
足や顎、骨盤など、骨折した部位によって症状は違います。猫の異変にすぐに気づいてあげられるよう、正しい知識と判断力が必要になります。尚、事故に遭った場合は、骨折と同時に呼吸困難や痙攣を起こすことも。無理に対処しようとせず、動物病院の指示を仰ぎましょう。
骨折部位の痛みや腫れ
骨折部位によっては、数時間程度で赤く腫れあがって痛がることもあります。無理に触ろうとすると嫌がり、攻撃される場合もあるので、慎重に様子を見ましょう。
気づくのが難しい猫の骨折、判断ポイントとは?
人間と同じように、骨折をすると内出血をして皮膚の色が変わることがあります。全身が毛で覆われた猫は判断が難しいですが、普段と違う症状がないか、良く観察するようにしましょう。足の骨折であれば、痛みにより足を地面につけないなどかばった歩き方をしますし、骨盤骨折であれば、歩行困難になることもあります。また、顎の骨折の場合、顔の腫れなどで気づくこともありますが、飲食が困難になることも。普段食欲のある猫が急にフードを食べなくなった場合は、要注意です。
猫の骨折、どう治療するの?完治できる?
年齢や骨の状態によって、治療法はさまざまです。骨折部位によっては手術が必要な場合もあるため、完治へ向けて最適な治療法を選びましょう。
ギプスをつけるのが主な治療法
軽度の骨折なら、手術を行わずにギプス装着での治療が可能。骨折により、離れてしまった骨や筋肉を再びくっつけるため、外側から固定する方法です。骨の状態にもよりますが、平均約1か月間ギプスを装着したまま過ごします。ギプスのみでの治療が難しい場合には、以下のような外科的手術を行うこともあります。
・プレート法とは
骨折部位を切開し、金属のプレートを当て、ネジで留める方法
・髄内ピン法とは
骨髄に金属のピンを通し、骨折部位を支える。固定のため、ギプスも一緒に使用することが多い。
・創外固定法とは
ネジの付いた金属製のピンを体の外側から打ち込み、骨を固定させる方法
プレートやピンを入れた場所をさらに安定させるため、外科的手術を行った際もギプスを装着することがあります。骨が完全に癒合したのち、ギプスの取り外しが可能となります。
猫は骨の再生能力が高い?でも放置しないで!
折れた骨を再び生成しようと活躍する細胞により、若年期の猫ほど、骨の再生能力は優れています。しかし、骨が変形した状態のまま自然治癒した場合、あとから障害が出てくることもあるため、避けた方が良いでしょう。高齢期になった時、歩行が難しくなったり、慢性的な骨の痛みへとつながることもあります。無理に自然治癒しようとせず、病院でしっかりと治療するのがおすすめです。
治療期間中、愛猫をどうお世話したらいい?
治療期間中は、普段と違う体の変化にストレスをためる猫も多いはず。トイレや食事など、猫が快適に過ごせるよう飼い主さんの手助けも必要です。顎の骨折や食欲のない猫には、いつものキャットフードをふやかしてあげたり、食べやすいウェットフードや流動食を与えても良いでしょう。
治療中に気になるトイレのこと
骨折の治療をした際、ギプスを付けたり、傷口保護のためエリザベスカラーを付ける猫も多いでしょう。カバーや屋根の付いたトイレでは出入りしづらいので、カバーなどを取り外し、トイレの上半分を解放させるのがおすすめです。足を骨折している場合は、段差の低いトイレを使うことで足への負担も軽減できるでしょう。
猫の骨折、死に至ることも?
骨折によって骨内部の臓器が傷ついた場合、命にかかわる危険性があります。頭蓋骨を骨折した際、頭蓋骨内部にある脳が損傷することで、脳に障害が生じたり最悪死に至ることも。また、胸骨部の内部には心臓や肺などの臓器があるため、骨折によって強い衝撃がかかった場合は危険です。足などの骨折においても、骨が皮膚から突き出る開放骨折をした場合は、感染症などにより命にかかわることもあるので注意が必要です。
まとめ
大切な愛猫が、骨折によって辛い思いをする姿は見たくないですよね。人間と同じように、骨折は猫にとっても心身ともに大きなストレスを与えます。万が一骨折してしまった際は、早期の発見と適切な治療が鍵となります。痛みを表情に出さない猫もいるので、骨折に気づきにくい場合もあるでしょう。手遅れにならないためにも、普段からスキンシップをとったり、信頼関係を築いておくことが大切です。