猫のうんちに鮮血や粘膜が混じる血便は病気のサイン!

猫の健康 愛猫が血便をした!原因や対策を知り慌てずに対処しよう!

執筆/ごまさば

猫のウンチに血がついていたら飼い主さんは驚きますよね。そんな時は慌てずウンチの状態を確認して病院に連れて行くのが望ましいですが、血便が出たときに潜む病気や対処の仕方について一緒にみていきましょう。

猫の血便、種類と危険度は?

猫の血便の多くは鮮血が付着している赤い血便と、鮮血がみられない黒い血便があり、一見違うように見えますがいずれも血便と考えます。また、血便に白い粘液が混ざっている状態のものもあります。これは、大腸で炎症が起こると血液と一緒に腸壁の粘膜が剥がれて出てくるためです。黒っぽい血便と一緒に下痢になることもあります。

血便の危険度は、鮮血でも黒い便でも変わらないのですみやかに動物病院に連れて行きましょう。粘膜が混ざった鮮血の血便であれば、大腸に問題がある結腸炎や直腸炎の可能性があるので特に緊急性が高くなります。表面だけが黒い便は胆汁色素や腸内環境の問題が多く、便の中まで黒色なら大腸よりも上部の消化管である胃や小腸の中で出血している可能性があると判断できます。

便が黒っぽい

猫がどす黒い便(タール状の便)をした場合は血便の可能性があります。この黒い便はメレナと呼び、胃や小腸に出血が見られる場合に消化器官内で血液が酸化して、黒いタール状の便になります。表面だけが黒い便の場合は、腸内環境の影響や胆汁色素の影響も考えられます。

また、黒い血便と一緒に下痢が出る場合は、膵臓や肝臓の疾患や腫瘍などの病気も疑われます。出血している場所が違うだけで、緊急性は鮮血が付いている血便と同じなので、もしこのような血便が出ていたら、すぐ動物病院へ連れて行きましょう。

鮮血混じりの便

便に鮮血が混じっている場合は、肛門近くや大腸の前半部分での出血の可能性があります。また、出血性胃腸炎の場合は、赤い下痢が出ることもあります。血便以前に下痢が続いた場合も、直腸の粘膜から出血し結果便に鮮血がつくことがあります。

免疫力が低い子猫だと、血便と一緒に下痢や嘔吐を伴うこともありますが早期に検査を受けることで回復します。

また、水を飲むのが少ない猫は、水分量が低下し硬くなった便が消化器官を傷つけて血便を出すこともあるので、この場合は便秘改善の処置が必要になります。他には肛門付近の炎症やケガで鮮血が便につくこともあります。

表面に血の付いた便

表面に血液が付着している便の場合は、肛門近くや直腸など大腸の後半部分からの出血が考えられます。

猫たちも環境の変化やストレス、また換毛期のために毛づくろいした大量の毛がお腹の中にたまりヘアボールを起こすことにより便秘になりますが、硬い便を出すときに肛門の一部が切れてしまい、切れ痔の状態で出血し便に血が付着します。

お尻から出血が止まらないように見える

一見お尻から出血しているように見えることもありますが、この場合の多くが血便でなく血尿である可能性が高いです。膀胱炎や尿道閉塞を起こすと、うんちをきばる姿勢で鮮血が出るためお尻からの出血とみえます。

また、肛門腺が炎症を起こすと肛門嚢破裂が起きますが、この場合もお尻からの出血と見えます。いずれにしてもすぐに動物病院に連れていってください。

猫の血便、原因は?

血便の原因には病気やケガや誤飲等によるものが考えられます。便秘や異物誤飲により便が硬くなり直腸や肛門を傷つけたり、また毛づくろいによって飲み込んだヘアボールが関係して血便が出る場合もあります。

病気によるものだと、下痢が続くことにより粘膜が傷つき出血したり、細菌やウイルス感染による感染性腸疾患、食物アレルギーや腸に腫瘍ができた場合も考えられます。

  

原因① 病気

消化器官の炎症や腫瘍などの病気の症状のひとつとして血便が出る場合があります。血便以外の体調の変化や症状がないか確認しましょう。

詳しくは後述しますが、胃炎や胃腸炎の場合、白っぽい粘膜や粘液が付着した液体状の血便が出ることがあります。胃腸炎が進行すると、真っ赤な下痢や嘔吐も伴います。また消化器官内にできたポリープや腫瘍により、表面に血液が付着した状態の血便が出る場合があります。

原因② 寄生虫

鉤虫やトキソプラズマなどの寄生虫が原因で血便が出ることもあります。

「猫鉤虫(ねここうちゅう」と呼ばれる1~2cmの白い糸状の寄生虫が腸の中に寄生して鋭い歯で小腸に噛み付きます。この鉤虫の数が増えるとタール状の黒い血便が見られることがあり、子猫が感染した場合には症状が重くなりがちで、タール状の黒い便だけではなく潜血便が出ることもあります。

また、トキソプラズマに感染した場合は、猫の免疫力が低下していると血便がみられます。

原因③ 誤飲

猫が何かしらの異物を誤飲し、胃腸が傷ついたことで出血し、血便が出ることもあります。また、誤飲したものが便に混入し、便が硬くなるため排泄時に直腸や肛門を傷つけて少量の鮮血がつくこともあります。

グルーミングの際に飲み込んだ毛が詰まって起こるヘアポールがきっかけで便に少量の鮮血がついたり、おしりを拭いた際にうっすらと鮮血がついたりすることがあります。

原因④ ストレス

環境の変化に敏感な猫は、ストレスにより胃腸が荒れたり便秘になった結果、血便が出ることがあります。

引っ越し、来客等の大きな変化だけではなく、日常的なトイレの環境や寝床環境、また大きな音やにおい、飼い主さんと触れ合う時間の変化等によってもストレスを感じてしまう猫もいるので、ストレスケアをしっかりしてあげましょう。

血便から疑われる病気

胃腸炎、腫瘍、寄生虫によるものなど様々な病気が血便にあらわれることがあります。

胃腸炎

胃腸炎が原因でも血便になります。細菌性胃腸炎やウイルス性胃腸炎、アレルギー性の胃腸炎などがあります。細菌感染によるものだと下痢や軟便、嘔吐も同時にみられることがあります。

細菌感染のサルモネラ菌は健康な猫の場合にはあまり問題になりませんが、免疫力が弱い子猫や老猫だと症状が重篤化する場合があります。ウイルス性胃腸炎では猫パルボウイルスによるものが有名で症状として下痢や血便を伴います。

また、血便と一緒に粘液が出る時は腸が炎症を起こしていると考えられます。症状が深刻な場合は鮮血の下痢をすることもあります。

腫瘍

悪性腫瘍やポリープが腸内にできていると、それが原因で出血し血便が出ることがあります。特に小腸にできる腫瘍は悪性の可能性が高いので、血便以外にも下痢や嘔吐、体重減少などの症状が多くみられます。腫瘍のできている部位や大きさによって血便の見た目や頻度が変わってきます。

寄生虫感染

寄生虫が原因で起こる血便もあります。そのひとつである猫鉤虫と呼ばれる1~2cmの寄生虫が小腸に寄生することで起こる「猫鉤虫症」では、鉤虫が小腸の壁にかみついて血を吸い、その時に血液が固まりにくくなる物質を出すため、タール状の黒い血便や鮮血便が見られることがあります。

猫汎白血球減少症

猫パルボウイルスに感染することで起こる病気を猫汎白血球減少症といいます。

腸でウイルスが増えると嘔吐や下痢を引き起こし、それがさらに進むと小腸や大腸で出血が起こり、消化されて黒くなった血を多量に含む黒い下痢や、黒い血便が出ます。

このウイルスに感染している猫の糞便などに含まれる猫パルボウイルスを口から摂取することで感染し、血便や下痢のほか、嘔吐、発熱、食欲不振等の症状がみられます。特に子猫が発症した場合は重篤になることが多いので注意が必要です。

愛猫が血便をしたときは?

猫が血便をしているときは、重篤な病気が隠れていることもあるので、放置せずに鮮血であっても黒い便であっても必ず動物病院へ連れていきましょう。すぐさま命に係わる病気でなくても、さまざまな理由で血便になるので獣医に相談し、適切な対処をしてください。

すぐに診察を!

鮮血であっても黒い便であっても、血便の他に吐き気や食欲不振、だるさなどの症状がでていないか確認し、すぐに受診することをおすすめします。子猫が血便をした場合は、ウイルス感染の可能性もあります。

老猫ではリンパ腫など消化管にできた腫瘍が原因で血便がでることもあります。血便は明らかな体の異常であり、重篤な症状のサインになります。血便かどうか判断できないときでも獣医さんが判断してくれるので、普段と違う便に気づいたら速やかに受診してください。

血便は捨てずに診てもらう

便は診断に必要な情報源となるので、受診の際は便をラップにくるむか口が密閉できる袋や容器に入れて、きるだけ空気に触れないようにして持っていきましょう。その際に便を撮影して獣医さんに見せるなどするとよいでしょう。持っていく便はなるべく排便後3時間以内が理想です。

血便が続くときは

血便が続くと猫の体力を奪っていくので、安静にできる環境を整えてあげてください。また便の様子を観察することで同じ原因で出血しているのか、それとも別の要因で違う場所から出血したのか判断の目安になります。

まとめ

便は猫の健康バロメーターをはかる上で、非常に大きな役割を持っています。常日頃からトイレの様子や体調をチェックし、血便をしたとき、すぐに気付いて対応してあげられるように見守ってあげてください。

血便の原因となる寄生虫やウイルスや細菌に感染しないよう、猫は外に出さず完全室内飼いをすることでも予防できます。ですが、完全室内飼育をしていても人間がウィルスを持ち込んでしまうことがあります。血便を発症するパルボウィルス感染症は治療薬がなく、ワクチン接種でしか感染を防ぐことができません。そのため、年に一度は任意のワクチンを接種しましょう。そして血便がみられたら、他の症状をあわせて獣医さんに診てもらうようにしましょう。

執筆者
猫飼い歴6年。 ブリショとマンチカン2匹の猫とドタバタでモフモフの日常を過ごしています。 キャットケアスペシャリスト資格あり。 いつか猫さまに関わる仕事にどっぷり浸かりたいので日々勉強中です。