猫のワクチンは必要?費用や接種時期について徹底解説

猫の健康 愛猫にワクチン接種していますか?猫にもワクチンが必要な理由を解説!

執筆/たけのこ@猫パシリ20年

新型コロナウイルスのワクチン接種が日本でも行われるようになり、ワクチンに対する意識は高くなってきました。そんなワクチンですが、実は猫にも感染症対策として摂取する必要があります。

ワクチンの重要性を知らず、摂取しないでいると危険性が高い感染症に罹患し症状も悪化しやすくなってしまいます。

今回は、猫のワクチン接種の詳細と「どうして必要なのか?」について解説していきます。大事な愛猫に健康で長生きしてもらいたいとお考えの方は、ぜひ最後までお読みください。

完全室内飼育の猫でもワクチン接種は必要なの?

完全室内飼育の猫でもワクチン接種は必要なの?

「自分の愛猫は完全室内飼育だからワクチン接種は必要ない」と思われる方もおりますが、あくまで「低リスク」なだけであって全く感染リスクがないというわけではありません。完全室内飼育であっても、「人の出入りの際、衣服や身体に感染源を持ち込んでしまう」、「多頭飼育」、「脱走時に他所の猫と接触する」などのリスクがあります。猫のワクチン接種は法律に規定こそされていませんが、猫の健康を思うなら一度動物病院に相談しておきましょう。

多くの動物病院がWSAVA(※)ガイドラインに基づいたワクチネーションプログラムを推奨しています。https://wsava.org/wp-content/uploads/2020/01/WSAVA-vaccination-guidelines-2015-Japanese.pdf

猫のワクチンとは?

猫のワクチンとは?

そもそもワクチンとは、対象ウイルス・病原体を弱毒・無毒化させたものを体内に摂取させることで免疫を獲得させ感染症を予防するためのものとなります。

猫のワクチンは、大きく分けて以下の3種類に分けられます。

コアワクチン:感染・重症化リスクの高い病気に一定の効果があるため、すべての猫に摂取が推奨されています。猫ウイルス性気管支炎、猫パルボウイルス感染症、猫カリシウイルス感染症の予防を目的としています。

ノンコアワクチン:環境や必要性に応じて摂取するべきワクチンの種類で、猫白血病ウイルス感染症(FeLV)、猫エイズ(FIV)、クラミジア感染症の予防を目的としています。

非推奨:上記、ワクチンの種類に該当せず、科学的根拠が不足しているため世界小動物獣医師会(WSAVA)が推奨していないワクチンのことで、猫伝染性腹膜炎(FIP)ワクチンが該当します。

基本的に動物病院で摂取する機会があるのは「コアワクチン」、もしくは「ノンコアワクチン」の2種類となります。

具体的にどのような感染症に対するワクチンなのか詳しく解説していきます。

ワクチンで防げる病気には何がある?

猫のワクチン接種で防げる感染症は7種類あります。

① 猫ウイルス性気管支炎(コア)

「猫ヘルペス感染症」ともいいます。風邪のような症状から、重篤化することで肺炎を引き起こす危険があります。

② 猫パルボウイルス感染症(コア)

「猫汎白血球減少症」ともいい、急激な症状の進行と高い致死率が特徴です。体力がない子猫に多く発症します。

③ 猫カリシウイルス感染症(コア)

「猫ウイルス性鼻気管支炎」と似た症状を引き起こし、口腔内(舌や口内)に潰瘍ができるケースもあります。

④ 猫白血病ウイルス感染症

猫白血病ウイルスに感染している猫の唾液や排泄物などから感染します。重篤化することで白血病以外にリンパ腫も引き起こす可能性があります。

⑤ クラミジア感染症

猫クラミジアに感染している猫から感染拡大します。発症初期に「片目に炎症」、「鼻水やくしゃみなど風邪のような症状」などが起こるのが特徴です。病状が進行することで、気管支炎・肺炎を引き起こし、命を落とす危険があります。

⑥ 猫エイズ

「猫免疫不全ウイルス感染症」ともいいます。主にウイルスに感染している猫からケンカなどをキッカケに感染します。

他感染症と異なり、ウイルスに感染しても発症さえしなければ問題にならず、感染に気付かないケースもあります。感染した際は、発熱・リンパ腺の腫れなどを引き起こしますが、こちらも多くの場合は数週間経過することで沈静化します。ただし、老化やケガなどが原因で免疫力が低下している場合、発症する可能性が高まり、「免疫不全」を引き起こします。

⑦ 狂犬病(ノンコア)

狂犬病ウイルスに感染している犬・猫またはコウモリなどの野生動物に噛まれるなどで感染します。猫の狂犬病症状はいくつかあり、「鬱状態のようになる」、「攻撃的になり暴れるようになる」、「身体のいたる所に麻痺症状」などが引き起こされます。

動物病院で摂取してもらえる「3種混合ワクチン」とは上記①~③の感染症に対する複合コアワクチンとなります。

⑦の狂犬病に関して「犬だけの病気ではないの?」と思われるかもしれませんが、犬以外の哺乳類(人間や猫も含む)に感染し、一部地域でも感染しているため「ノンコアワクチン」に分類されています。

3種混合ワクチンと5種混合ワクチン、違いはあるの?

3種混合ワクチンと5種混合ワクチン、違いはあるの?

初めて猫にワクチン接種を受けさせるために病院に行くと、3種混合ワクチンか5種混合ワクチンどちらにするか聞かれることがあります。以下を参考に、ご自身の猫にはどちらが向いているかご確認ください。

3種混合
ワクチン
5種混合
ワクチン
単独WSAVA
非推奨
猫ウイルス性鼻気管炎
猫カリシウイルス感染症
猫汎白血球減少症(パルボウイルス感染症)
クラミジア感染症
猫白血病ウイルス感染症(FeLV)
猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ・FIV)
狂犬病
猫伝染性腹膜炎(FIP)

基本的には3種混合ワクチンで大丈夫とされています。5種混合ワクチンは、多頭飼育で白血病ウイルス陽性の猫がいる場合自由に家の外に出る場合、とされています。

猫のワクチン、費用はいくら?

猫のワクチン、費用はいくら?

動物病院によって金額は異なりますが、3種混合ワクチンですと3,000円~5,000円くらい、5種混合ワクチンの場合で5,000~8,000円くらいのようです。ワクチン接種はあくまでも「健康な状態で」「感染症予防のため」となるため、ほとんどのペット保険がペット保険適用外となっています。

猫のワクチン接種を受ける前に

猫のワクチン接種を受ける前に

ここまで読まれた方は「早くワクチン接種しないと!」と焦ってしまうかもしれませんが、少しお待ちください。猫のワクチン接種には、他にも押さえておくべき大事なポイントがあります。急いで動物病院に連れて行っても、打てない場合があるので猫のワクチン接種に関して詳しく学んでおきましょう。

ワクチン接種が受けられる年齢は?

猫のワクチン接種は「生後2~3ヶ月の子猫」からが望ましいです。この時期になると母猫の母乳から獲得した免疫(抗体)が失われてしまうため、重要性が高くなります。

ただし、子猫の免疫(抗体)が喪失時期には個体差があり、残っているタイミングでワクチンを打っても効果が薄いため、複数回ワクチンを接種します。一般的には生後2~3ヶ月で1回目のワクチンを打ち、その後、追加で1~2回のワクチン接種となります。

ワクチン接種に適切な時期はあるの?

猫のワクチン接種をいつまでにするべきかに関して、共通して適切とされる時期はありません。健康状態(体重・既往歴など)を把握しているかかりつけの獣医師と相談して接種時期を決定します。

ワクチンを接種する前に気をつけることはある?

ワクチン接種は猫の身体に負担もかけるため、体調がよくない場合は接種できません。猫のワクチン接種の前に必ず下記の項目をチェックしておきましょう。

☐体調不良(嘔吐・下痢など)はないか?

☐妊娠していないか?

☐獣医師に申告していない持病や服用中の薬剤はないか?

猫のワクチン、接種の頻度はどれくらい?

犬が毎年1回狂犬病ワクチンの接種を義務付けられているのとは違い、猫のワクチン接種には明確な頻度やスケジュールはありませんが、ワクチンは単発ではなく継続して接種するべき予防対策です。日本では1年に1回の接種を推奨していますが、世界小動物獣医師会(WSAVA)のガイドラインでは3年に1回で良いとしています。

ワクチン接種の頻度やタイミングは、その猫の健康状態や生活環境、獣医師の考え方の違いにより異なりますので、掛かりつけの獣医師と相談して決めたほうが良いでしょう。また、猫がワクチンを接種して抗体が作られるまで、約2~3週間はかかることも覚えておいてください。

猫のワクチンはどうやって接種するの?

猫のワクチンは小型注射器を用いて皮膚下もしくは筋肉に注射します。接種場所は背中の中心部が一般的ですが、腹部や足に打つ場合もあります。

これって、ワクチンの副作用?接種後に気をつけておきたいこと

これって、ワクチンの副作用?接種後に気をつけておきたいこと

ワクチンの接種で不安なのが「副作用」です。

ワクチン接種後は軽い感染症にかかったような状態になります。ワクチン接種後はいつも以上に愛猫の様子に気を配り、心配なことがあれば直ぐに獣医師に相談をしましょう。

接種した当日はこう過ごそう

ワクチンを接種した後は、安静に過ごさせることが大切です。

接種後24時間は特に注意深く様子を見守るようにしてください。なぜなら、ワクチンの副反応は接種後24時間以内に現れることが多いためです。ワクチン接種は愛猫の体調変化を見守れるよう、時間的な余裕がある日に行うようにしてください。出来れば接種後1週間前後はストレスの少ない環境で、興奮してしまうような激しい遊びや運動は避け、ストレスを与えてしまうシャンプーもやめましょう。

ワクチン接種後、猫の身体に免疫が作られるまでには2~3週間程度の時間が必要です。そのため、その期間は他の猫との接触は避ける、新しい子を迎え入れない、旅行や帰省に連れていく、またはペットホテルに預けるなど、感染の恐れがある行動は避けてください。

ワクチンを打った部位にしこりがある?

発生頻度はとても低いですが、猫の中にはワクチン注射部に「しこり(肉芽腫)」ができる場合があります。大抵は日数経過で小さくなっていきますが、縮んでいかない場合、獣医師による詳しい診断が必要となります。しこりができたら動物病院に報告しておきましょう。

もしかして…こんな症状はワクチンの副反応かも?

ワクチンを打ってから「熱がある」「ぐったりしている」「だるそう」などの様子が見られたら副作用を疑いましょう。ワクチン接種の副作用で多いのは、以下のような症状です。

☐ 嘔吐や下痢

☐ 顔が腫れている

☐ 呼吸困難

☐ 身体を痒がる

☐ 蕁麻疹

特にワクチン接種後すぐに、呼吸困難・嘔吐・チアノーゼなどの症状が出た場合、アナフィラキシーショック(アレルギー反応)である可能性が高く、早急な処置が必要になります。アナフィラキシーショックは接種後30分以内に発生します。接種して30分近くは動物病院で待機もしくは、すぐに連れていける状態にしておきましょう。

体調の変化で気になることがあったら病院へ行こう

前述した通り、ワクチン接種は猫を軽い感染症に罹患した状態にさせるため、身体に与える負担も小さくありません。副作用以外に何かいつもと異なる点に気付いたら、素人判断で大丈夫だろうと決めつけず、動物病院で診察してもらいましょう。

猫のワクチン、もし接種しなかったらどうなる?

猫のワクチン、もし接種しなかったらどうなる?

ワクチン接種をしたからといって、必ず感染症の発症を防げるわけではありませんが、ワクチンを打たないもしくは打ち忘れた場合、猫が感染症に対して免疫を持たない状態となります。

法律で規定されているわけでもないため、あくまでも任意の予防対策となりますが、最近では、ペットホテルに預ける時やペット可の賃貸物件に入居の際、「ワクチン接種証明書の提出」が含まれていることもあります。また、ペット保険に加入の際にはワクチン接種は義務付けられており、保険加入後にワクチン接種を怠ったために感染症にかかってしまった場合には、保険金が下りないこともあります。

接種しないで感染症にかかったらどうなる?

仮にワクチンを接種しないと、「感染症発症リスク」と「重篤化リスク」が高まり、ワクチン接種をした猫に比べ、健康寿命が短くなります。

3種混合ワクチンで予防できる「猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス感染症)」「猫カリシウイルス感染症」「猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス症)」は感染力が高く、致死率も高い感染症です。未接種の場合、重篤化の危険性や、最悪の場合には命を落としてしまう可能性があります。

猫にとって特に危険な感染症とは

3種混合ワクチンに含まれる「猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス感染症)」「猫カリシウイルス感染症」「猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス症)」の他に、「猫白血病ウイルス感染症(FeLV)」「猫免疫不全ウイルス感染症(FIV、猫エイズウイルス)」は猫にとって不治の病といわれ、致死率の非常に高い感染症です。

これらの感染症は、感染している猫との接触やケンカで感染しますが、FeLVでは母子感染もあります。感染を防ぐためには完全室内飼いにすることが望ましいですが、前述した通り、外から持ち込まれてしまう可能性もあります。もし仮に感染してしまい発症した場合に重篤化しないことを考えると、ワクチン接種が望ましいといえます。

「猫免疫不全ウイルス感染症(FIV、猫エイズウイルス)」は単体でのワクチン接種となりますが、「猫白血病ウイルス感染症(FeLV)」は5種混合ワクチンに含まれています。外出する猫や、多頭飼い、ブリーディングを行っている飼い主は、少なくても5種混合ワクチンの接種を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

猫のワクチン接種は、「完全室内飼育だと必要性が低い」と思われがちですが、実際は猫を長生きさせるためにも非常に重要な予防対策となります。

猫の感染症ではかかってからの治療に限界があるため、かからないための対策の方が重要となります。感染症にかかってから後悔しても遅いので、早めにワクチン接種の相談を獣医師にしてみてください。

執筆者
猫と暮らして20年以上。猫への無知さを獣医師に叱られ猛勉強。 猫ライターとして仕事できるまでになりました。 先代猫は20歳近くで旅立ち、現在は保護猫と一緒に暮らしています。