猫がコードを噛んで感電した!症状、応急処置、防止策を解説

猫の健康 電気コード、コンセント、猫の感電に注意!室内飼育での感電防止対策・応急処置を解説!

執筆/神木詩野

屋外に出かける猫は自動車事故や喧嘩など、常に危険と隣り合わせですが、実は室内飼育にも思わぬ危険が潜んでいます。その1つが私たちの生活に必要不可欠となっている電化製品による猫の「感電事故」です。今回は、どのようなものが感電する可能性があるのか、どのような対策をすれば良いかなどを、詳しく解説していきます。

猫が感電したときの症状は?

猫が感電したときの症状は?

感電とは、電化製品を動かしている電流に触れ、生体内に電流が流れることです。生体内に電流が流れたことによって受ける傷害のことを電撃傷と呼びます。強い電流を体に受けると、最悪の場合死に至ります。

感電すると電気が体を通り、その際に熱が生じ、電気が通った道筋がやけどになります。例えば猫が電気コードを噛んで感電した場合ですと、口、舌、喉、顔周りの皮膚、内蔵、筋肉などにやけどが生じるのです。神経や血管、筋肉などは電流が流れやすく、感電による傷害が起こりやすい箇所です。猫の身体が水などの液体で濡れている時は電流が流れやすく、より強い衝撃を受けることもあります。電流の強さが強いほど、電流に触れた時間が長いほど、感電によるダメージは大きくなるのです。電気コードを齧るなど電流に触れた箇所が口だった場合や、強い電流を受けて内臓や筋肉にダメージがあっても見た目で判断することが難しく、すぐには異常に気づかないこともあります。

軽度の場合:しびれが出る程度

人間は、1mAで電気が軽く流れるのを感じる程度、5mAで痛みを覚える程度、10mAを超えると我慢できない痛みを感じるとされていますが、猫は人間よりも小さいので、受ける刺激はより一層強くなると考えられます。もし猫の身体にピリっとしびれる程度の電流が走ったとしても、猫は何が起きたのか解らず、パニックになって飛び跳ねたり、走り回ったりすることがあります。パニックになった猫を無理やり捕まえようとすると、余計に走り回ってしまったり、飼い主がケガをする恐れもあります。まずは落ち着かせてから、やけどの状態を確認するようにしてください。感電の理由が電気コードを噛んだということでしたら、口の周りと口の中を注意深くチェックしてください。感電直後は口の中や舌が赤く腫れあがる、爛れるなどの症状が出ることがあります。

重度の場合:意識不明になることもある!

人間の場合、20mA以上の電流を身体に受けると麻痺状態で動けなくなり、50mA以上の電流であれば命の危険にさらされると言われています。私たちより身体の小さい猫が20mA以上の電流を受けてしまうと、一瞬で取り返しのつかないことになると考えてください。畑のまわりにある害獣侵入防止対策の電気柵に猫が触れてしまうと、強い電流が体内を流れ、麻痺して動けなくなる可能性があります。動けなくなった状態だと、身体に電気が走り続け、長い時間感電し続けてしまうのです。また、高電圧の電線などに触れた場合には、一瞬で心停止してしまう可能性もあります。

猫が感電し、微小血管がダメージを受けると肺水腫になる可能性があります。肺水腫は、肺の中の肺胞と呼ばれる血液のガス交換を担う組織に、水が溜まってしまうことを指します。肺は空気を取り込む臓器なので、肺水腫になると呼吸困難や不整脈を引き起こす恐れがあります。

感電した直後は特に問題なさそうに見えても、後々になって症状が出てくることもあります。感電し、筋肉の硬直や神経の損傷や麻痺があると歩行不全の症状が出たり、神経損傷によりしびれや運動障害が後遺症として残ることもあります。電気コードに齧った後がある、コンセントの近くで倒れている等、猫が感電した可能性があり、下記のような症状が見られたら、直ぐに動物病院を受診してください。

  • しびれ
  • やけど
  • ぐったりしている
  • 足を引きずっている・フラフラしている
  • 意識喪失
  • 心臓発作心停止
  • 不整脈

上記のような症状がなく、特に変わった様子が見受けられなくても、猫が感電した・感電の可能性がある場合には、念のため動物病院を受診することをおすすめします。

猫の感電、応急処置は出来る?

猫の感電、応急処置は出来る?

猫が感電しているのを発見しても、慌てずに落ち着いて行動しましょう。感電している猫にうっかり触れてしまうと、飼い主も感電してしまう可能性があるので、慎重に対応してください。

家での応急処置

猫が感電したとみられる現場を発見した場合、まずは何よりも先に「電気の供給を止める」ということを覚えておいてください。

電化製品の電源を切り、感電したと思われる場所、例えば電気コードなら断線した箇所に触らないように、コンセントから抜いてください。電化製品自体が濡れている場合は、下手に触ると危険なので、これ以上被害を増やさないために、ブレーカーを落としてください。また、猫が感電したショックで排尿をする場合がありますが、液体は電気を通しやすく、感電する恐れがあるので触らないように注意しましょう。

次に、猫を安全な場所へ移動させましょう。この時、素手で触ると猫を通して飼い主が感電する恐れがあるので、ゴム製の手袋など電気を通さない素材のものを使い、猫を移動させてください。

安全な場所へ猫を移動させたら、猫の状態を確認しましょう。この時、猫は感電の刺激によってパニックに陥っていることもあるので、優しく触ってあげてください。あまり雑にさわると、パニック状態の猫が暴れる・引っ掻く・嚙みつくなど、二次被害を引き起こすことにもなるので注意してください。

まず、心臓は動いているか、呼吸をしているかを確認します。問題ないようでしたら外傷がないか、口の中にやけどを負っていないかを確認しましょう。やけどを負っている場合はタオルなどで包んだ氷で、火傷した部位を冷やしながら、早急に動物病院へ向かいましょう。もし、心臓や呼吸が止まっている場合は、心臓マッサージや人工呼吸が必要となりますが、素人が行うのは危険なので、直ぐに動物病院へ連れて行きましょう。

感電した直後は体調に問題がなさそうでも、数日後に症状が現れる場合もあります。元気だし、やけどや外傷も見当たらないから様子見をしようと思いがちですが、感電したその日のうちに動物病院を受診することをおすすめします。

猫の感電、どんな治療をするの?

猫の感電、どんな治療をするの?

関電による状態の違いによって治療法が異なります。軽度の場合、重症の場合に分けて説明をします。

やけどの場合は?

軽いやけどの場合は、動物病院で抗生物質や抗炎症剤の投与をします。口の中をやけどで気をつけなくてはいけないのが、感染が起こりやすいということです。そのため、感染防止と痛みの緩和のため、抗生物質や痛み止めを投与します。舌や唇などに火傷を負っており、食事をするのが困難な場合は、鼻にカテーテルを通して栄養補給を行わなければならないこともあります。経過観察のため軽傷でも数日間、深刻なやけどですと1~2週間の入院が必要になる場合もあります。

ショック状態の場合は?

ショック状態に陥っており、意識が混濁しているような場合は、早急に心肺蘇生を行う必要があります。意識はあるが血圧が低い、感電のショックで血液の循環が滞っている、呼吸が浅い(または早い)場合は症状が改善するまで、入院して点滴治療や酸素室で様子をみることもあります。

電気コード、コンセント etc 猫の感電こんなものが危険!

電気コード、コンセント etc 猫の感電こんなものが危険!

家の中には猫の感電事故に繋がる電化製品がたくさんあります。猫にとって、どういったものが感電につながるのかを見ていきましょう。

電気コード

猫は、狩猟本能を生まれつき備えており、細くウネウネとしたひも状のものは狩りの対象である小動物に見えるため電気コードに興味をもってしまいます。最初は前脚で手繰り寄せたりして遊んでいるうちに、ついつい興奮して電気コードに齧りついてしまいます。

電気コードは、電流が流れている配線をゴムや塩化ビニールなどの絶縁体で包んだものですが、電気コードの外側のカバーを誤って噛みちぎり、中の配線に触れることで感電が起きます。特に、歯の生え変わり時期の子猫は、歯にむずがゆさを覚え何でも噛んでしまいます。また、1~3歳頃の若猫は好奇心旺盛な時期なので、オモチャに見立ててじゃれてしまうことがあります。子猫や若猫を飼育されている方は、特に注意が必要です。

飼い主が在宅でお仕事をする機会が増えた最近では、パソコンのケーブルを噛んでしまう、長い電気コードを束ねているナイロンの結束バンドをおもちゃにしていて、誤って電気コード本体を噛んでしまうなど、事故が相次いでいます。また、ドライヤーや掃除機など、飼い主が使用している電化製品の動く電気コードにじゃれてしまい、感電することがあります。冬場になると電気カーペットやこたつなどの暖房器具の電気コードを猫が齧り、感電するケースが増加するので注意が必要です。

コンセント

コンセントは、コンセント内部に触れたりしなければ、感電するリスクはそこまでありません。しかし、濡れた状態でコンセントやプラグに触れると感電するリスクが高まります。また、小さいお子様がいらっしゃるご家庭では、お子様が誤ってコンセントにピンやクリップなどの金属製の物を差し込んでしまい、感電するというケースがあります。猫は好奇心旺盛な動物です。お子様がコンセントに金属物を差し込んでいるのを傍で見ていて、一緒に感電してしまうという危険性もあります。

漏電

電化製品やコードが水などの液体で濡れて、漏電してしまうと感電するリスクがあります。洗面所やお風呂場などでは要注意です。洗面台で使用したドライヤーやヘアーアイロンをそのまま放置してしまい、誤って猫が水の中に落として感電するという恐れがあります。

屋外での感電

外飼いの猫は、屋外での感電のリスクがあります。飼い主の目の届かない範囲なので、感電を防ぐことは難しく、感電によって死に至るリスクが高まります。

送配電用のケーブルや送電鉄塔などは、高電圧の電流に触れてしまい、感電する危険性があります。また、畑や果樹園で害獣対策として設置している電気柵は、動物を死なせるほどの威力はありませんが、猫が感電して気絶する恐れがあります。なるべく、猫だけで外に出すことはしない方がいいでしょう。

愛猫を感電から守るために

愛猫を感電から守るために

愛猫に、電気コードやコンセントを触らないように叱っても、飼い主の話を理解してもらうのは難しいでしょう。そこで、猫を感電の危険から遠ざけるために、飼い主側が対策を立てておく必要があります。

使用していないコンセントは抜いておく

使用中ではない電化製品のプラグは、コンセントからなるべく抜いておきましょう。電源が入っておらず使用していない間でも、コンセントにさしている間は電流は流れています。愛猫が噛んで感電しないために、そして節電のためにも、コンセントから抜くということは徹底してください。

猫の目を引かない工夫をする

電気コードの存在を猫が意識しないように、設置場所を工夫しましょう。床を這っていたり、天井から垂れ下がっているような電気コードは、猫にとって魅力的なおもちゃに見えてしまいます。電気コードは、カーペットの裏側に隠す、壁に沿わせて固定するなどの工夫をして、猫の目に映らないように対策をしましょう。また、テレビやデスクトップパソコンの裏など配線がたくさんある場所は、猫の目に留まらないように配線を一つにまとめて収納ボックスに仕舞うなどの工夫をしましょう。

電気コードにカバーをつけよう

ホームセンターなどで購入できる市販のコード専用のカバーを取り付けて、猫が齧っても電気コードが断線しないよう保護しましょう。

コンセントカバーをつけよう

コンセントの穴に前脚を突っ込んでしまうと、感電する恐れがあります。使用していないコンセントの穴は、市販のコンセントカバーを付け、猫が触って感電するのを防止するために閉じておきましょう。

飼い主のいない時間はケージの中で

飼い主のいない間に、電気コードをおもちゃとして遊んでいる場合があるかも知れません。また、外出中に猫が感電しまったら発見が遅れ、処置が手遅れになってしまう恐れがあります。外出中など飼い主の目の届かない時間は、猫をケージの中に入れて過ごさせると安心です。

他のおもちゃでコードに目を向けさせない

電気コードをおもちゃだと勘違いし、じゃれて遊んでいるうちに感電してしまったというケースが多くあります。そこで、電気コードにじゃれる素振りを見せたら、おもちゃを使って猫の気を逸らせましょう。動かない電気コードよりも、飼い主が動かしてくれる猫じゃらしなどのオモチャの方が楽しいと認識すれば、電気コードを齧るという問題行動はなくなる筈です。猫のストレス発散のためにも、電気コードから気を逸らせるためにも、積極的に猫と遊ぶ機会を増やしましょう。

電化製品は劣化や破損がないように

経年劣化やねじれ、負荷がかるなどして断線し、電源コードの導線がむき出しになっている状態は非常に危険です。うっかり導線部分に触れてしまい感電してしまうこともあります。これは、猫にとっても人間にとっても非常に危険なので、定期的にチェックして必要であれば買い替えましょう。

まとめ

私たちの生活に欠かすことのできない電化製品によって引き起こされる感電は、家の中で過ごす猫にとっては、身近に存在している危険です。感電は、最悪の場合は愛猫の命を奪ってしまう可能性があります。愛猫が危険にさらされないように、身の回りの電気コードが猫の手に届かないところにあるだろうか、電気コードの老朽化はしていないかなどを今一度確認して予防を徹底していきましょう。

執筆者
札幌生まれ首都圏育ち。 大学で北海道に戻り、シカやキツネ、リスが身近にいる自然豊かな場所で生活していました。 大学卒業後、北海道に残り、牧場に就職。 現在は地元に戻り、北海道で拾った元野良猫2匹と生活しています。 趣味は絵を描くことで、よく動物の絵を描いています。