猫の外耳炎の症状、原因、治療法、予防策を徹底解説

猫の健康 愛猫の耳が匂う、掻きむしっている…もしかして外耳炎?外耳炎の治療法、予防法を知りたい!

執筆/水科希望

はー、ウチの子の匂い最高~なんて猫吸いしていたら、何だか耳が臭い。そういえば最近、やたら耳を気にして掻いている気がする、よく見ると耳垢もたくさん出ている!そんな気になる症状はありませんか?猫の耳が臭い、耳垢が多くなった、耳を気にしている様子が見られたら、それは外耳炎かも知れません。

猫の「外耳炎」とは?

猫の耳は外耳・中耳・内耳の3つに大きく分けられ、耳の外側から鼓膜まで(鼓膜は含まない)を外耳と呼びます。その外耳が何らかの原因で炎症を起こしている状態を、外耳炎と呼び、あらゆる猫種・年齢問わず発症するものです。

中耳炎とは違うもの?

中耳炎とはその名の通り中耳が炎症を起こしている状態なので、外耳炎とは異なります。中耳は鼓膜より奥のこと(更に奥が内耳)で、外耳より神経に近い部分であるため、ここが炎症を起こすと顔面麻痺などの深刻な状態になることも。中耳炎は外耳炎からの波及によって発症することが多いため、外耳炎を疑う症状が表れたら早めに病院へ連れて行きましょう。

猫が外耳炎になる原因とは?

外耳炎を起こす原因は様々ですが、大きくまとめると耳の自浄作用が何らかの原因で滞って耳垢がたまり、細菌やダニなどが繁殖しやすい条件が整うことや、耳の中に異物が存在することで炎症を起こしてしまいます。

細菌・真菌が原因

耳道(耳の入り口から鼓膜までの音が通る道のこと)にたまった耳垢に細菌や真菌(カビ)が増殖して炎症を起こします。特にスコティッシュ・フォールド、アメリカンカールは耳の形状が特殊なので耳垢がたまりやすいため、定期的なケアが必要です。細菌・真菌が原因で炎症を起こしている場合、それぞれの特徴は、

  • 細菌が増殖→黄色い耳垢やドロッとした膿のような耳垢、膿んだ匂いがする。
  • 真菌が増殖→茶色い、黒い耳垢、独特の生臭い匂いがする。
  • 細菌・真菌が単独で大量繁殖した状態が長く続くと、両方とも繁殖して悪化する場合もあり、更に痒みが酷くなります。

特に湿気がこもると細菌・真菌が繁殖する好条件が整うので、梅雨時は悪化しやすいです。

寄生虫が原因

寄生虫というとお腹の中でウニョウニョしているイメージが強いですが、宿主に何も利益をもたらさないのに、勝手に住み着くものは全て寄生虫と呼ばれます。ミミヒゼンダニも寄生虫の1種で、寄生されると強い耳の痒み、黒いバサバサした耳垢が大量に出るなどの症状が表れます。ミミヒゼンダニは非常に感染力の強い寄生虫ですので、多頭飼いをしている場合には全ての猫・犬の治療を一緒に行いましょう。また、人にもうつることもありますがミミヒゼンダニは人の皮膚では繁殖しません。猫に寄生してしまったダニを駆除すれば、人の症状もおさまります。

外から持ち込まれることが多いので、保護したばかりの子は病院での検査が済むまでは一時的に隔離しておく方が安心です。

アレルギーや異物混入が原因

《アレルギーが原因》

体質的にアレルギーを持っている子は、それが原因で外耳炎を発症することがあります。アレルギーを持っていると粘膜などの体を守るバリア機能が弱まり、細菌や真菌に感染しやすくなるため、持っていない子に比べて発症しやすいです。また、アレルギーとは異なりますがウイルスに感染している(猫ヘルペスウイルス・猫カリシウイルスなどいわゆる猫風邪)、持病があるなど、免疫機能が低下している子も、アレルギー体質の子と同様、健康な子より発症しやすい傾向があります。

《異物混入が原因》

耳の中に異物が入り、耳道に留まって内部を刺激すると、炎症を起こして外耳炎を発症することがあります。また、異物は外から入るものだけでなく腫瘍が原因で外耳炎を発症することもあるため、早期発見と早期治療が何よりも大切です。

※アレルギーや異物混入が原因の場合、耳垢が出ないこともあります。耳を気にする様子が見られたら、直ぐに病院へ連れて行きましょう。

猫の外耳炎、どんな症状が出るの?

耳を直接痒がるだけでなく、軽症の内は頭を振る、首の辺りをかくなどの症状だけが表れることもあります。早く気づいてあげないと、外耳炎から耳の奥へ炎症が広がって悪化してしまい、外科手術が必要になることも。下記の症状が表れたら早めに受診をしましょう。

耳をかゆがる・痛がる

炎症が起こっているので耳がかゆくて堪らず、異常にかきむしったり、触られるのを嫌がったりします。また、頭をこすりつける、頭を振るなどの症状が表れることも。耳を頻繁に掻いているのを目撃していなくても、耳の周囲に細かな傷があったり、うっすら赤くなっていたりしたら、見ていないところでかきむしっている可能性が高いです。

耳の中が赤くなっていたり、耳に触るといつもより熱く感じたりすることもあります。更に、引っかき過ぎて耳介(耳たぶ)が内出血を起こし、耳血腫を引き起こすこともあるので注意が必要です。

耳から悪臭がする、耳垢が増える

耳垢に増殖した細菌や真菌の代謝物によって強い匂いが発生します。気になる匂いがあったら、外耳炎を疑いましょう。また、健康な猫の耳は自浄作用により耳垢を自然に排出するため、あったとしても耳のシワに黒いものがちょこちょこ付いている程度です。黄色い耳垢、ドロッとしている、茶色い、黒い耳垢が大量に出るなどは異常事態ですので、早めに受診しましょう。

ここで慌てて耳垢を取ろうとするのは絶対にやめて下さい。綿棒などで耳を傷つけたり耳の中の毛を中に押し込んでしまったりすると、余計に外耳炎を悪化させることになります。耳のお手入れをする際には、獣医師から正しい方法を習ってから行いましょう。

猫の外耳炎、治療法はあるの?

原因によって対処は異なりますが、まず洗浄、原因に合った点耳薬、経過観察の後、原因が取り除かれれば治療終了です。耳の自浄作用が崩れているため、自然に治ることはありません。放っておくと悪化して耳の奥へ症状が広がり、重症化すると治療が困難になるだけでなく、慢性化する危険があります。

耳道内の洗浄による治療

まずは耳の中にたまった耳垢や、細菌・真菌・ダニを取り除きます。症状が軽ければ1回の洗浄後、症状にあった薬を投与して様子を見る程度ですが、炎症が酷く、強い痛みがある場合には無理の無い範囲で洗浄した後、炎症を抑える薬を内服して様子を見ながら数回洗浄が必要になる場合もあります。耳の中をキレイにすれば良いのだ、と自己判断で洗浄することは絶対にしないで下さい。猫の耳内部の構造上、水が1度入ったら出にくい構造になっており、獣医師も耳の洗浄を極めて慎重に行います。耳の中に水が留まったままだと、中耳炎を発症する恐れがありますので、必ず獣医師の手で洗浄を行って貰うようにして下さい。シャンプーをする際などにも、耳に水が入らないよう注意が必要です。

細菌・真菌・寄生虫が原因の場合

耳の中を洗ったことで、大体キレイになりましたが細菌・真菌・寄生虫を完全に除去することはできません。再び増殖しないように、抗生剤・抗真菌剤・駆虫薬などの点耳薬を投与し、家でも毎日、指定回数点耳します。この際、見た目良くなってきたからと薬を中断することはしないで下さい。外耳炎は再発しやすい病気です。与えられた薬で完全に原因となる細菌・真菌・寄生虫が除去できるまで完治したとは言えません。

病院で検査を行い、完全に除去が確認されるまでは、猫に嫌がられても、心を強く持って薬を与えましょう。頑張ったご褒美に美味しいおやつや、うんと褒めてあげるのも忘れずに。

アレルギーが原因の場合

アレルギーが原因の場合、洗浄や細菌・真菌・寄生虫駆除などの処置を行いながらアレルゲン(アレルギー反応を起こす物質)の特定を行います。食物アレルギーが原因の場合が多いですが、ハウスダストが原因のアレルギーであった場合、生活環境の改善も一緒に行います。

それでもなお症状の改善が見られない場合は、症状を緩和させるステロイド剤を使用する、徐々にアレルゲンに慣らしていく「減感作療法」を試すなどの治療を獣医師から提案されることもあります。猫の状態に合わせて、最適な治療法を獣医師と相談しながら選びましょう。

耳血腫を起こしている場合

外耳炎による耳の掻きすぎなどが原因で、耳たぶに内出血を起こしてしまうことを耳血腫と呼びますが、その場合はたまった血液を注射によって抜いたり、切開したりして血の塊を取り除きます。処置後の耳を掻いてしまわないように、治るまでエリザベスカラーを装着します。エリザベスカラーが嫌いな子にとっては苦難ですが、柔らかいフェルト素材の物やドーナツのようなかわいい物まで種類も豊富にありますので、獣医師と相談しながらできるだけ快適に過ごせるものを選んであげて下さい。

治療期間はどれくらい?

治療期間は、軽度であれば1~2週間で落ち着くことが多いです。症状が軽度でも、ミミヒゼンダニが原因の場合、卵の状態だと駆虫薬が効かず、成虫になるまで3~4週間かかるため、経過観察に1ヶ月以上かかることもあります。

原因が特定できないと再発しやすく、何度も繰り返す内に慢性化してしまうこともあり、その場合は数ヶ月~生涯に渡ってケアが必要なこともあります。あまりにも原因が特定できず何度も再発する場合には、外耳炎を専門として診ている病院もありますので、その治療に長けたセカンドオピニオンも検討しましょう。

愛猫を外耳炎にしないための予防法

分かりやすいミミヒゼンダニから猫を守るためには、ダニを持ち込まないことが一番です。その他の病気や事故から守るためにも、完全室内飼いをしましょう。細菌・真菌の増殖から守るためには、耳の中に湿気がこもらないようにすることが大切です。梅雨時は特に室内の湿度管理も徹底しましょう。50~60%程度が適切です。他の病気とも共通ですが、早期発見のために日頃の観察によって「いつもと何が違うか?」に気付くことが大切です。

耳の状態を観察しよう

耳の観察と言っても、気構えて「見るぞ!」と気合いを入れていると勘の良い猫は逃げてしまうため、膝の上で寛いでいる時、なでなでしている時になど一緒に確認する方がお互いストレスになりません。匂い・汚れ・赤くなっていないか、耳の周りに細かい傷などが無いか、チェックしましょう。簡単な汚れなら、軽く拭き取ってあげるのも良いですが、コットンなど柔らかいものを指に巻き付けて、そっと拭いて下さい。ゴシゴシ強くこすったり、綿棒を使ってケアしたりすると、耳の中を傷つけてしまい、ケアのつもりがかえって外耳炎の原因を作ってしまいます。

まとめ

猫の耳は、とても大切な役割を果たしています。猫は家族の足音、エンジン音を聞き分けてお出迎えをしてくれると言われているくらい、非常に耳が良く、外界からの情報を聴覚に頼っています。また、イカ耳など感情がよく表れるところでもあります。その大事な耳の調子が悪いと、それはもう大変なストレスです。発見が早ければ早いほど治療期間も短くて済みますので、日頃からよく観察して早くいつもとの違いに気づけるようにしましょう。

執筆者
東京出身、長野県在住のアパレル勤務兼ライター。 仕事に燃えに燃えていたが、ある日ふと「人ってストレスで死ぬんだよなぁ」と思い、絶対に叶えたい夢を一つ現実のものとする。 久しぶりに猫と暮らしたい、その夢を叶えたら次々に夢という名の野望が出てきて一歩一歩叶えている最中。 現在、猫と暮らす猫のための家を建てたい、最終的に小説家兼ライターに肩書きを変えたいという野望に燃えている。