子猫の下痢はコクシジウム症?症状、消毒方法を知り対処しよう

猫の健康 子猫の下痢には要注意!猫の感染症「コクシジウム症」駆除はできる?有効な消毒方法はある?

執筆/春麦

コクシジウム症という病気を聞いたことはあるでしょうか?あまり聞き慣れない名前かもしれませんが、どのご家庭の猫にも発症する可能性がある病気なのです。今回はそのような実はあまり知られていない、身近にあるコクシジウム症について、症状や治療法、予防について詳しく解説します。

猫の「コクシジウム症」ってどんな病気?

コクシジウム症はコクシジウムと呼ばれる原虫が腸に寄生する感染症で、免疫が未成熟な子猫が感染すると症状が出やすい疾患です。子猫以外にも免疫力が低下した猫も発症しやすいといわれています。子猫の保護活動を行なっている団体や繁殖施設のような多頭飼育をしている環境では、感染率が高いとされています。

コクシジウム症は猫同士での感染がほとんどで、猫から人や犬に感染することは滅多にありません。

感染すると出る症状は?

コクシジウムは感染直後に症状が出るわけではなく、3日~6日程度の潜伏期間を経て発症します。発症初期にはタール状または水のような下痢を起こし、食欲低下や元気がなくなる、嘔吐などの症状がみられます。重症化すると粘り気のある血便がでます。

子猫の下痢には要注意!早めの診察がカギ

子猫ではワクチンを摂取する際の検便時に発見されるケースや、頻繁に下痢を起こしたのをきっかけに通院した際に発見されるケースが多いようです。コクシジウム症の症状が現れるのは通常であれば感染7日目以降とされていますが、子猫では3〜4日で下痢などの症状が現れることがあります。子猫の下痢は脱水症状や栄養失調、体重減少、免疫力低下を起こし、最悪の場合は死に繋がることもあるので、早めに動物病院に連れていくことをお勧めします。また、嘔吐や軟便、血便が出た際にも注意が必要です。

コクシジウム症の原因は?どこから感染する?

主な感染経路はコクシジウムとの接触になります。コクシジウムとは1つの寄生虫グループで、数種の原虫を総じてコクシジウムと呼称されているのですが、このコクシジウムが体内に入ることでコクシジウム症に感染してしまいます。

コクシジウム症に感染した猫の糞便には、オーシストという卵型の原虫が含まれています。それは肉眼では見えないほど小さく、顕微鏡を用いなければ確認できません。そのような糞を口にしてしまうと感染してしまいます。他にも、コクシジウムが付着した猫へのグルーミング、トイレ・ベッド・おもちゃ・食器などの共有、コクシジウムに感染した猫が触れたケージへの接触などによって感染してします。

身体のどこに感染する?

コクシジウムは主に腸の細胞に感染し寄生・増殖し、細胞の中で分裂を繰り返すことで数を増やします。最終的には細胞外へ出た後に糞便中に排泄されます。コクシジウムに寄生された猫の腸は細胞を破壊されてしまうため、腸の状態も悪くなってしまいます。

成猫は無症状が多い?

コクシジウムは基本的には病原性が低く、成猫は基本的には十分な免疫力が備わっているためコクシジウムに感染しても発症することがない場合が多い、と言われています。しかし、ストレスなどにより免疫力が低下すると成猫でも発症してしまう場合があるので注意が必要です。

猫の「コクシジウム症」治療法はある?

現在は投薬によるコクシジウムの駆除を行う方法が主流です。投薬後は糞便検査により体内からコクシジウムが駆除されたかを確認する必要がありますが、1度の検査では完全に駆除されたかを判断することはできないため、定期的に数回の検査を行う必要があります。そのため治療期間は長くなることもあります。

また、下痢や嘔吐などにより猫の体力が消耗してしまっている場合は、栄養給餌や整腸剤投薬などを行う必要があります。

コクシジウムの効果的な消毒方法はある?

コクシジウムのオーシストは感染力は有していないのですが、約24時間後には感染力を有する形となってしまうため、感染猫の糞便は速やかに適切に処理することが大切です。

また、オーシストはアルコールや塩素系などの一般的な消毒薬は効きません。効果的な消毒方法は熱湯消毒となり、60℃であれば30分、80℃以上であれば1分程で死滅するといわれていますが、完全に死滅させることを目的とするならば100℃の熱湯を用いると良いでしょう。床面やケージを定期的に100℃の熱湯で消毒することは難しいと思いますが、その場合は、アイロンのスチームが効果的です。ただし、畳の縁、壁紙の材質によっては溶けることがあります。また、フローリングは変色の可能性があるので注意が必要です。

コクシジウムに感染している猫が使った食器、ベッド、おもちゃは定期的に熱湯消毒を行い、トイレも排便後は砂を全て廃棄し、熱湯消毒を行ってください。その時、猫用トイレだと廃棄する砂が大量になってしまうので、100均で売っている大き目のタッパーや水切りラックを使うと砂も少量ですみますし、トイレに使った容器もこまめに変えられるので便利です。

掃除は最低でも毎日、出来れば1日のうち数回に分けて、徹底的に行うようにしてください。

猫の「コクシジウム症」予防はできる?

コクシジウム症はウィルスによる感染症では無いため、ワクチンのような予防法はありません。そのため、感染源となるコクシジウムとの接触を防ぐことが何よりも予防につながります。コクシジウムのような寄生虫には「生活環」と呼ばれる周期のようなものがあり、コクシジウムは便として排出される際にオーシストと呼ばれる、卵のような状態で排出されます。このオーシストの状態では感染力は有していないのですが、約24時間後には感染力を有する形となってしまうため、感染猫の糞便は速やかに適切に処理することが大切です。

例えば子猫を新たに家に迎え入れる際は、すでにコクシジウムに感染している場合があるので、糞便の検査を数回行ない、寄生虫が検出されないか確認すると良いでしょう。また、先住猫がいる場合は新しい子猫に感染がないことを確認してから先住猫と接触させるのをお勧めします。仮に子猫に下痢などの症状が現れていなかったとしても、潜伏期間を経て発症する場合もあるので注意が必要です。

多頭飼育している環境でコクシジウムに感染してしまった場合は、その猫を隔離し、糞便は速やかに処理する必要があります。コクシジウムに感染した猫と未感染の猫が同じトイレを共有していると、コクシジウムがうつる可能性があるため気をつける必要があります。感染猫が触れたケージやベッド、オモチャから他の猫に感染したという報告もあります。オーシストは普通の消毒液では死滅しないため、熱湯を用いて消毒することをお勧めします。

まとめ

子猫に多いとされているコクシジウム症ですが、日頃から猫の体調管理を損なわなければ発症を防ぐことができる病気です。しかし新たに子猫を迎え入れる時には注意が必要な病気のため、猫のためにも一度動物病院へ連れて行き糞便の検査を行なってもらいましょう。

執筆者
保護猫の里親2年生です。三毛と茶トラに日々振り回されています。