視界がぼやける、目がかすむ。年を取ったらしかたないのかな、と感じる目の症状。実は猫にも表れます。猫は優れた聴覚・嗅覚があるため、視覚に多少の障害があっても生活に支障が無い場合が多く、発見が遅れてしまいます。おかしいなと思った時には、かなり進行してしまっていることもある、白内障。猫の快適な生活を守るためにも、早期発見のポイントを抑えておきましょう!
人とは違う猫の白内障とは?
白内障とは、目の中の水晶体(※)の一部または全体が白く混濁することで光が通らなくなり、視力が低下する目の病気です。人の場合は加齢に伴って発症すると言われている白内障ですが、猫の場合は加齢以外の原因で発症することが多いと言われています。
(※)厚くなったり薄くなったりしてピントを合わせる、カメラのレンズのような役割がある目の組織。
猫の白内障の原因とは?
猫の白内障の原因は、主に外傷によるものが多いと言われています。他、ブドウ膜炎などの目の病気から併発、糖尿病などの全身性の病気、遺伝などが原因と考えられています。
先天性白内障とは
まれですが、遺伝に関連した先天性白内障を発症する場合があります。かかりやすいと言われている猫種で、2才くらいまでに発症した場合は先天性白内障であると考えられます。
先天性白内障になりやすい猫種はある?
シャム・バーマン・ペルシャ・ヒマラヤンなどの猫種で、先天性白内障の発症例があります。
後天性白内障とは
猫の白内障の大部分は、怪我や病気などの要因によって発症する後天性白内障です。それぞれにまとめると、
- 目の外傷・目に異物が入る
水晶体が損傷することによって発症
- 眼内の炎症からの併発
ブドウ膜炎など、炎症を起こす目の病気が進行すると併発する場合がある
- 糖尿病
犬によく見られるが、猫の発症例は少なく、進行も遅いと言われています
- 子猫の低アルギニン食・中毒物摂取(ナフタリンなど)・放射線治療の副作用
などの原因が考えられます。
信仰前に気付いてあげたい、猫の白内障の症状とは?
猫は聴覚・嗅覚が優れているため、目が少し見えにくい程度では行動に変化が見られないことも多いです。また、初期症状では猫の目を見てもほとんど分からないため「目が見えにくいのかな?」と思われる行動が見られたら、直ぐに病院で検査をして貰いましょう。
初期段階の白内障は、病院による検査でしか発見することができません。日頃から猫の様子をよく見ておきましょう。
目やに・涙が出る
原因が外傷や、炎症などの病気の場合、白目の充血・目やに・涙が出るなど、目の異常が見られます。白内障自体には痛みなどの違和感はありませんが、重度になり他の目の病気で炎症を起こしてしまうと、痛み・痒み・充血が起こり、失明の危険が高まります。目の病気は数日で重篤化する場合もあるので、異常があれば直ぐに病院へ連れて行きましょう。
目が白く濁って見える
白内障の名前通り、瞳孔(黒目の中心)が白く濁って見えます。そのまま放置してしまうと、水晶体全体に白濁が広がり、失明に至ります。人の目で濁っているのを確認できる段階は、すでに白内障が進行している状態です。速やかに病院で治療を受けましょう。
歩いているときにふらつく、ぶつかる
白内障で目が濁り始めると、視界が狭くぼやけて見えるため、距離感がつかめずに物にぶつかったり、歩く時も慎重になったりします。他にも、以下のような行動が見られます。
- 薄暗いところであまり動かない
- 物音に敏感になる
- 小さなことで異常に驚く
- 壁伝いに歩いている
- いつもだったらパッと飛び乗る場所なのに何度も距離を計っている
- 目が合わない
など、猫の行動はほんの小さな変化でしかありません。ですが、その中に重篤な病が隠れていることもありますので、日頃の様子をよく確認しましょう。過去に撮った動画と比較してみるのも気づくきっかけになります。
白内障を初期症状で発見するのは難しいことですが、早ければ早いほど失明の確率が下がります。行動の変化には白内障以外の病気が隠れていることもあります。早期発見につながりますので、猫とスキンシップを取りながら、おかしな様子はないか確認しましょう。
愛猫が白内障になってしまったときの治療法は?
初期症状の場合は服薬・点眼薬などの内科的治療、進行してしまった白内障に対しては、手術による外科治療が行われます。根本的な治療方法は手術になりますが、あらゆるリスクを伴うため慎重に健康状態の確認などが必要です。
点眼薬などの内科的な治療
白内障の進行を遅らせることを目的として行います。残念ながら1度失われた視力は点眼薬では回復しません。白内障の進行を遅らせながら、原因となっている病気の治療を合わせておこなっていきます。進行のスピードは個々で異なるため、定期的な検査で進行状況の確認をしながら治療を進めます。根本的な治療方法ではありませんが、極めて初期症状の段階では点眼薬が効果的なこともあります。
手術などの外科的な治療
濁った水晶体を砕いて取り除き、代わりに人工のレンズを目の中に挿入することで、視力回復が期待できます。人の場合は局所麻酔を行って実施し、日帰り退院も可能な手術ですが、猫の場合は全身麻酔が必要な大がかりな手術となり、術後経過観察のため、1週間程度の入院が必須です。
進行してしまった白内障には、点眼薬による改善は見込めません。視力の低下によって生活に支障が出る場合、手術を行うことで視力を取り戻すことができますが、デメリットもあります。
- 特殊な手術のため、専門医への紹介が必要
眼科を専門としている獣医師でなければ不可能な、難しい手術です。
- 全身麻酔による命の危険
全身性の持病がある・高齢であるなど、麻酔による命の危険が健康な猫よりも高く、リスクの方が高い場合は手術を断念することもあります。
- 成功確率は100%ではない
どれほどの名医が執刀したとしても確率は100%ではありません。完全に視力を取り戻せない・いっそう濁って悪化してしまう・レンズを正しい位置に固定できない、など期待通りの結果が得られないこともあります。
- 莫大な費用がかかる
病院によって異なりますが、手術を行うだけでも片目10万~40万ほどかかります。これは手術のみの費用で、更に手術に耐えうるかの術前検査費用、術後の入院費、薬代なども含めると莫大な費用がかかることになります。
手術は選択肢の1つです。猫によっては病院がストレスで、通院が原因で体調不良を起こしたり、どうしても投薬が難しかったりもします。その子にとってどの選択が最適であるか、信頼できるかかりつけの獣医師とよく相談して治療方針を定めましょう。
愛猫を白内障から守る予防方法は?
白内障の発症を完全に予防することは難しいですが、発症リスクの軽減と早期発見に努めることが予防になります。
ケンカや事故などの発生リスクを減らす
ケンカによる外傷、事故による眼球の損傷などを抑えることで予防します。完全室内飼いを徹底して外猫とのケンカに巻き込まれない、事故に合わない環境を作りましょう。多頭飼いの場合はケンカになってお互いに怪我をするまで衝突しないよう、それぞれが逃げ込んで安心できる場所を作ってあげて下さい。また、こまめに爪切りをしておくことで怪我の予防にもつながります。
定期的な検査で早期発見を目指す
白内障は発症してから時間と共に徐々に進行する病気です。重篤になると眼底にまで問題が起きてしまい、手術をしても視力が戻らなくなってしまいます。早期発見のため、家庭でも目の観察を行いますが、初期症状を見つけられるのは病院での検査のみです。特に先天性白内障の心配がある猫種や、6才以上のプレシニアの猫は念のため、健康診断に目の検査を加えておくと安心です。
まとめ
白内障は加齢に伴い進行する病気で、やむを得ないと思われるかも知れませんが、早期発見できれば進行を緩やかにできます。また、すでに目が白い状態でも放置せずに定期的な検査を行いましょう。白内障だけでなく、どんな病気も早期発見・早期治療がとても大切です。それを踏まえ、猫も人も定期健康診断を必ず受けて、健康に不安の無い日々を過ごしたいものですね。