猫の喘息の症状、原因、治療法、発作の時の対処法を徹底解説

猫の健康 猫も「喘息」になる?猫の「喘息」の症状は?治療法はある?

執筆/bonfan

日本国内で、喘息を抱えている人は400万人を超えるといわれています。喘息患者の数は、過去30年間で増加傾向にあり、国民病のひとつとして数えられています。身近に喘息患者がいる方や、ご自分が喘息持ちだという方はご存知でしょうが、発作を起こした状態は大変に苦しく、重い症状の方は死に至ることもある病気です。

猫や動物の毛や羽、糞便がもとで喘息を発症する原因となる事はご存知の方も多いと思いますが、猫自身も喘息になることをご存知でしょうか?愛猫が喘息をわずらっていても、猫喘息についての知識がないと気づくことができないかもしれません。猫喘息は若年期(2~3歳)から中年期(4~8歳)で発症しやすく、中年期では軽度から中度の症状ですみますが、若年で発症すると重症化しやすいといわれています。

この記事では、猫が喘息を起こしている時の症状と、猫喘息の治療法について詳しくご説明いたしますので、ぜひご一読ください。

猫の「喘息」どんな症状が出る?

猫喘息を起こしていると、次のような症状が見られます。症状によっては重篤なレベルだと、早急に処置をしなければ命にかかわる危険性も考えられます。

主な症状は咳

猫喘息の主な症状は咳です。体を小さくして頭を下げ、胴体の筋肉を動かし、「ヒンヒン」お腹から息を吐くような音で咳をします。嘔吐する前のえずきにも少々似ていますが、もう少し静かにするような感じです。実際に咳の刺激で嘔吐してしまう猫もいます。

猫のくしゃみや嘔吐は割と目にする光景ですが、咳は見慣れない方も多いかと思います。ネット上には猫が咳をしている様子の動画もあるので、わかりにくいという方は一度ご覧になってみるとよいでしょう。

ヒューヒューと鳴る呼吸音、喘鳴(ぜんめい)とは

炎症を起こした気道は狭くなり、空気が通りにくい状態になっているので呼吸する度にヒューヒュー、ゼーゼーと音が鳴ります。痰が絡んでいる状態とはまた違い隙間風のような音です。注意して聞いていないと聞こえないかもしれませんが、この状態の時は息苦しさを感じているはずなので、呼吸回数が頻回ではないか、いつもと比べてぐったりとしていないかなど、そのほかの健康状態も確認してあげましょう。

呼吸の回数が増える、疲れやすくなる

先述したように、気道が圧迫されていると酸素がうまく取り込めず、浅い呼吸を頻回にするようになります。心肺機能が低下するため疲れやすくなり、じっとしている時間も長くなってきます。

口呼吸をするチアノーゼ状態には要注意!

猫は普通、口を閉じたまま鼻呼吸をする動物です。猫が犬のように口を開けて呼吸をしていたら、とても苦しい状況だと考えられます。酸素がうまく取り込めず、体に十分な酸素が行き渡っていないと、チアノーゼを起こす危険性があります。

チアノーゼは、血中の酸素濃度が足りなくなることで歯茎や目の周りの粘膜、皮膚が白っぽくなったり青紫色に変色します。放置しておくとショック状態となり、命を落とす危険なサインです。

喘息と診断された猫は、強い喘息の発作を起こすと気道がふさがってしまい、チアノーゼを起こすことがあります。チアノーゼの症状が現われていたら、緊急に対応する必要があります。即時に動物病院に連絡、受診しましょう

「猫喘息」の原因はなに?

喘息は、慢性的な気道の炎症が原因で引き起こされる病気です。気道粘膜が炎症を起こして狭くなり、空気の通り道を圧迫して喘息の症状を引き起きこします。常に気道が炎症を起こしている状態で、アレルギー反応など少しの刺激で発作を起こすと、急激な気管の収縮で酸素を取り込めなくなり、息苦しさや咳、喘鳴を引き起こします。猫は動物の中でも唯一喘息を自然発症するとされており、その原因や症状も非常に人間の喘息と似たものと考えられています。

猫の喘息の主な原因はアレルギー

猫が喘息を発症する場合、主にアレルギー反応によるものとされています。猫にとってアレルゲンとなるのは、食べ物、ハウスダスト(ノミダニやチリ、カビなど)ブタクサ、スギなどの花粉のほか、たばこの煙や香水、芳香剤、消臭スプレーなどの化学物質です。猫砂から巻き上がるホコリもアレルゲンとなる可能性もあります。

また、人間同様に季節の変わり目や急激な気候変動、生活環境の変化による心理的ストレスも、喘息を起こす原因とも考えられています。

猫の「喘息」治療法はある?

猫喘息は、確実な診断が出るような検査があるわけではありません。聴診や、症状、血液検査、レントゲン検査で肺、気管支の状態を確認した上で、喘息の治療薬を投与して症状が改善されるようであれば、喘息であると診断されます。

気道に内視鏡を通して肺や気管支の状態を確認する、気管支鏡や気管支肺胞洗浄検査という検査もありますが、獣医療ではまだ一般的でなく、実施できる動物病院も限られています。また、全身麻酔で行われるので、咳が長く続いていたり呼吸器に異常が見られる場合には危険とされ、行われません。

慢性的な気管支炎が起きている場合は、息苦しさを緩和するために気道を広げる気管支拡張剤や、炎症を抑えるステロイド剤を投与して状態を見ます。投薬は内服薬、注射薬、吸入薬とあります。注射や吸入するタイプの方が即効性もあるので症状がひどい場合はより有効です。ネブライザー(吸入器)やペット用の酸素ゲージなども用いられます。

一時的なストレスなどで喘息が現れている場合は、ストレスの原因がなくなれば、症状は改善します。しかし、アレルギーの場合は体質の問題ですので、完治するのは難しいでしょう。

発作が起きない限りは、症状が表立って見えない事もあります。治療で咳や喘鳴がなくなったからといって、飼い主の判断で投薬をやめたりしないようにしましょう。

喘息発作時の緊急対応策

普段から喘息の治療を行なっていても、何かのきっかけで発作を起こすこともあります。健康に過ごしていた猫でも、突然ひどい発作を起こすかもしれません。苦しそうに口呼吸していたり、チアノーゼの状態が現れていたりするようなら大変危険な状態です。早急に対処しないと手遅れになる可能性もあるのですぐに動物病院を受診しましょう。

気管支拡張剤やステロイドを投与し、狭くなった気道の症状を緩和する処置を行うほか、血液中の酸素濃度を戻すために酸素吸入を行います。重症度によっては入院して数日がかりの場合もありますが、大抵はこの処置で症状は治ります。

すでに喘息と診断されている猫の場合は、緊急事態に備えご家庭でネブライザーや酸素ケージなどを用意しておくと安心です。吸入器の場合は猫が嫌がることもあるので、使い方もきちんと獣医師に相談しておきましょう。

喘息の発作を減らすための治療法

喘息と診断された場合、気道や気管支には慢性的な炎症が起きている状態です。発作が起こらないようにするためには、継続して治療を続けていく必要があります。

ご家庭で投薬する場合、気管支拡張剤と、抗炎症作用、免疫抑制作用のあるステロイド剤を定期的に投与するのが主な治療法です。ご家庭で使用するのは内服薬か、吸入薬、またはネブライザーがあれば気管支拡張剤とステロイド剤をまとめて投与することもできます。ステロイド剤を長期間内服で使用すると、副作用を引き起こす危険性が高くなるので、吸入器やネブライザーのような気道に直接薬を付着させるステロイド剤の方が喘息治療には好ましいとさています。吸入薬は噴射して霧状になったステロイド剤を、猫の鼻や口にマスクをあてがって吸入させる方法なので、マスクに慣れるよう使い方を本番の前に練習しておくとよいでしょう。

猫の喘息、予防するためには?

喘息にならないための予防法というのは、残念ながら確立しておりません。喘息の原因である気管支が炎症を引き起こすリスクを下げるために、極力ストレスのない生活と、アレルギーの原因となり得るものを排除することが、最も有効な手段です。

たばこの煙や芳香剤、消臭スプレーなどの匂いのある化学物質の使用を避けることや、ノミダニの定期的な駆虫、こまめな掃除、空気清浄機をつけて花粉やハウスダスト対策をとるのも効果的でしょう。食べ物によるアレルギーの可能性もあるので、初めて食べるものに関しては、少量を健康な時に試してから与えるようにすると安心です。

呼吸器系に異常がある時、迅速に対応するためには健康な時の呼吸回数を把握しておくと、早めに気づくことかできます。猫の安静時に胸が上下する回数で呼吸数がカウントできます。平均は安静時で20〜40回、寝ている時で15〜20回ほどです。これを目安に比べてみて、異常を感じるようならその時の様子を動画に残しておいて、獣医師に相談するのもよいでしょう。

まとめ

猫が喘息になってしまい、息苦しくしていても猫の咳やチアノーゼの症状などの知識がなければ気付けない可能性もあります。

愛猫の健康を守れるのは、飼い主さんだけです。すこやかな暮らしのためにも常日頃から、愛猫の健康状態に気を配り、異常を感じた時はすみやかに、動物病院を受診できるようにしておきましょう。

執筆者
2児を持つワーキングマザーです。 パートナーと愛猫♂の4人と1匹家族です。 一つの物事でも常に多角的にとらえ客観的な視点で物事を伝えらたらと思っています!