あなたの大切な家族である猫が、下痢をしてグッタリしている。そんな症状が出たら、もしかしたらジアルジア症かも知れません。
猫の「ジアルジア症」ってどんな病気?
ジアルジア、という原虫に寄生されることによって引き起こされる感染症です。感染力は非常に強く、一匹の猫が発症すると周囲の犬猫にも移る可能性が高いため、早めの治療と清掃、消毒などの対処が必要になります。予防のワクチンはありません。
目にも見えない小さなジアルジアが、愛猫を苦しめます。詳しく見ていきましょう。
子猫が発症しやすいって本当?
大人の猫より、子猫の方が発症しやすいと言われています。
子猫は、まだ体が十分に発達しておらず、病気に対する抵抗力も弱いため、症状がハッキリと表れます。反対に成猫は無症状か軽い下痢で済むことがありますが、周りへの感染力が高いので速やかな対処が必要です。
猫の「ジアルジア症」その原因は?
ジアルジアの卵を口にすることで寄生されます。その後小腸にたどり着いた卵が、殻を破ると小腸から栄養を横取りし始め、下痢などの症状を引き起こします。この二つの形態を詳しく確認していきましょう。
ふたつの形態があるジアルジア
ジアルジアには、成長過程によって二つの形態があります。
- シスト
シストとは、卵に相当する状態です。殻をかぶったひきこもり状態なので、自ら動きだすことはありません。動かないクセに感染力は非常に強いです。
ジアルジアに寄生された猫の糞便から排出され、次の宿主の体内に入るまで水の中なら3ヶ月ほど生き延びます。
- 栄養型
栄養型とは、小腸に寄生したシストが殻を脱ぎ捨てて本気を出した状態のことです。
ここから、ジアルジアは勝手に猫の栄養を横取りし、自分の過ごしやすいように小腸を改造し、増殖繁殖する、と好き放題やるため、寄生された猫は下痢と共に吐き気や腹痛まで起こしてしまうことがあり、当然元気を無くします。
人も、下痢の腹痛は辛いですよね。小さな家族に、そんな辛い思いをさせたくありません。早く治療に臨み、全力でサポートしましょう!
ヒトにもうつる可能性はある?
ヒトにもうつる可能性がありますので十分に注意が必要ですが、基本的な、
- 糞便を片付けた後は手を洗う
- 室内や猫トイレの清掃後は手を洗う
- ご飯の支度や食べる前に手を洗う
などの対策で予防できます。経口感染なので、シストを口に入れないことを徹底して注意しましょう。
どんな症状が出たら「ジアルジア症」なの?
真っ先に表れる症状は、下痢です。これから説明する症状が表れたら、速やかに便を集めて病院へ連れて行きましょう。
下痢
ジアルジアの主な症状は、下痢です。水っぽい、泥状、ゼリー状の便など、健康的な便とは異なるものであったときは、体調不良を疑いましょう。下痢の症状が続くと、余分に水分が出て行ってしまうため脱水症状を起こして元気が無くなってしまいます。ヒトから見たほんの少しの水分を失っただけで、特に子猫には命取りです。
体重減少
ジアルジアが寄生するのは、小腸です。小腸は、栄養の吸収が一番大事な仕事ですが、体内に吸収されるはずの栄養がジアルジアに横取りされます。そのため、十分な栄養をとることができない上に、下痢によって腹痛を起こすこともあるので、食欲が無くなって更に栄養不足、そして体重減少につながります。
「ジアルジア症」はどうやって治療する?
寄生虫が原因なので、お腹から追い出してしまえば大丈夫ですが、自然消滅は絶対にしません。それどころか、根絶するまで大変な手間がかかります。
まずは病院で検便検査を受けましょう。
検査で寄生しているか確認
検査方法には、大きく二つの方法があります。
- 検便
- 抗原検査
以上の二つです。それぞれ、詳しく見ていきましょう。
- 検便
その名の通り、便を調べます。確実な検出のために注意するポイントは、
- 排出されて30分以内の新鮮な便を持って行く
- 乾燥しないよう、ビニール袋に密閉する(乾燥すると検出できない寄生虫もいるため)
- 特に、ゼリー状の部分からの発見率が高いため、この部分を必ずかき集める
以上の3点です。検便をした結果、何も見つからずに下痢の対処だけして貰ったけれど回復しない場合、次の検査に移ります。
- 抗原検査
抗原検査のメリットは何と言っても、「時間が経過した便でも検出可能」であること。更に、抗原検査は検便よりも検出率が高いのです。
メリットの多い抗原検査ですが、デメリットは値段が高いこと。病院によって値段は変わりますが、だいたい検便の3倍位の費用が掛かる場合があります。早く発見するためにも、できれば抗原検査もセットで行う方が良いでしょう。
駆除薬を投与
検査の結果ジアルジアの感染が認められると、駆除薬で猫のお腹からジアルジアを追い出します。駆除薬は、とても苦くてマズいようで、猫によっては泡を吹いてしまって飲ませるのに苦労することがあります。薬も1種類ではありませんので、直ぐに獣医師に相談しましょう。
また、薬で駆除すると同時にシストを残さず根絶することが最も重要です。シストは大変頑丈ですが、熱と乾燥には弱いため、煮沸消毒、スチームアイロンやスチーマー(70度以上の蒸気が出るもの)が有効です。消毒が必要なものは、トイレはもちろん、ベッドや毛布、食器、室内の全て、とにかく猫が触れる場所は全て消毒が必要になります。
- トイレは便をしたら毎回→熱湯消毒(70度以上のお湯で10分)する。その上で、砂やシートを毎回全て取り替える
- ベッドや猫が使用している毛布タオルなど布製品全て→煮沸消毒(100度のお湯で3分)またはスチームアイロンで消毒
- 食器→煮沸消毒または熱湯消毒
- 猫が生活している室内の床、カーテン、キャットタワーなど全て→スチームクリーナーで消毒
これらの場所以外にも気になるところは徹底的に消毒をしましょう。やってやり過ぎることは無いのです。
※食器洗いや掃除で使用したスポンジ、雑巾は毎回捨てる方が安心です。熱湯消毒ができないもの(おもちゃや段ボール製の爪とぎなど)は、いったん処分しましょう。落ち着いたら、また買ってあげて下さい。
完全にお腹からジアルジアが根絶されるまで毎日続けることなので、取り入れやすい方法で根気強く実施しましょう!
怖い「ジアルジア症」予防法ってあるの?
子猫の段階で、すでにジアルジア原虫がお腹に寄生していることが多いため、自宅で完璧に寄生を予防することは難しいです。そのため、定期的な健康診断で確認していきましょう。
定期的な検便で確認
猫の健康診断は年に1回は必ず行いましょう。健康診断の内容に検便が含まれていますので、そこで確認できます。特にお迎えしたばかりの猫は必ず健康診断を行い、結果が分かるまで先住猫や犬との接触は避けましょう。
まとめ
子猫にとっての命取り、下痢を引き起こすジアルジアですが、決して治らない病気ではありません。大事な家族が苦しまないように私たちにできることは、たくさんあります!
- 直ぐに病院で検査してもらう
- 駆除薬を与え、再感染を防ぐための徹底的な消毒と清掃をする
- 駆除後も、定期健診を受ける
そして一番頑張っている、かわいい家族を、うーんと!ほめてあげてくださいね!