猫との引越しについて、注意点やストレスが少ない移動方法を解説

猫との暮らし 猫とのお引っ越し!引越し前・引越し後の注意点を徹底解説!

執筆/神木詩野

進学、就職、結婚、転勤などで、どうしても引っ越しをしなければならないことがあります。猫に限らず、ペットとの引っ越しは様々な問題があります。猫は、環境の変化にとても敏感な生き物なので、引っ越しは大きなストレスになってしまうこともあります。そこで、大事な家族である猫との引っ越しについての注意事項を見ていきましょう。

猫との引越しに必要な手続きとは

犬を飼育している場合は、住んでいる市区町村に届け出をする必要がありますが、猫の場合はありません。では、猫と引越しをするときには、必要な手続きはないと考えて良いのでしょうか。

マイクロチップの住所変更

近年、迷子対策の一環として、猫にもマイクロチップを装着する飼い主が増えています。愛猫にマイクロチップを埋め込んでいるのでしたら、忘れずに「登録住所の変更」を行ってください。変更手続きの登録窓口は日本獣医師会ですが、オンラインでも行なえます。

https://www.aipo.jp/apply/

最寄りの動物病院を確認しておこう!

急に猫の体調が悪くなったときのために、引っ越し先の最寄りの動物病院の場所を把握しておきましょう。どこが良いか解らないという場合は、現在の掛かりつけ医の相談してください。提携病院がある場合は紹介をしてくれますし、事前にカルテを共有してくれるので、引越し後も安心ができます。提携病院がない場合でも、日本で開業している獣医師は皆、日本獣医師会の会員なので、新居の近くにある病院の情報など教えてくれると思います。

また、猫はストレスから体調を崩すことが多いので、引越し後に急な体調不良を起こすことも考えらえます。夜間救急や休日も診療してくれる病院を調べておくと、何かあっても直ぐに対応ができます。

引越し準備~引越し前夜 準備しておくものと注意点

引越しが決まったら、引越し業者の手配や荷物の梱包、新居までの交通手段をどうするかなど、決めなくてはいけないことがたくさんあると思います。その中には、大事な愛猫についての項目も含まれているでしょう。

引越し前に準備しておくものはある?

まず、猫を移動するときに必要なケージやキャリーバッグを用意しましょう。普段、動物病院へ連れて行くときなどに使用しているものがあれば、それでも構いません。

飛行機での移動の場合は、利用する航空会社のHPを確認して、持込可能なケージの規格を調べておきましょう。新しいケージを使う場合には、引っ越しの日までにケージに慣らしておきましょう。

ペットの様子が見られる開閉式の小窓付ケージも販売されていますが、そのタイプは避けた方が良いでしょう。筆者の愛猫は内側から小窓をこじ開け、体をくねらせながら脱走しました。

また、今までの家で使用していたトイレ砂は捨てずに、必ず新居に持っていくようにしてください。自分の匂いがするものが部屋にあると猫は安心するので、ストレス軽減になります。

猫はどこにいてもらう?

引っ越しの段ボールが積み上げられた、いつもと違う部屋に戸惑ってしまう猫は少なくないでしょう。お気に入りだった椅子やクッションがない、くつろげる場所がない、などいつもと違う部屋の様子に恐怖心やストレスを感じてしまうことでしょう。臆病な猫は、どこかに隠れて出てこなくなり、最悪の場合、脱走してしまう可能性もあります。

そこで、猫に安心できる場所を作ってあげましょう。部屋がいくつかある場合は、作業している部屋以外の場所を、猫の居場所として確保してあげてください。ワンルームの場合は、大きめのペットケージを用意しましょう。毛布などでケージを覆うと、猫はより安心できます。

おおらかな性格の猫の場合、蓋の開いた段ボール箱がたくさんあるので、遊び場所が増えたと勘違いする子もいます。せっかく梱包が終わったのに、猫が入ったまま段ボールの蓋を閉めてしまった等の事故がないよう、別室で待機して貰いましょう。

脱走対策はしっかりと!

猫は環境の変化に弱い生き物なので、引っ越しの作業でびっくりして脱走をしてしまう可能性があります。最も脱走の心配がないのは、ケージに入れておくことですが、引っ越し作業が長引いた場合、何日もゲージにいれておくのは、猫のストレスになります。たまにケージの外に出して遊ぶなどリフレッシュさせてあげましょう。その際、脱走しないように、猫がいる部屋の窓や扉はしっかりと閉めてください。網戸を閉めている状態でも、網戸を突き破って脱走する恐れがあるので注意が必要です。万が一、猫が脱走してしまったときのために、首輪に名前や住所などが書かれた迷子札を付けておくと安心できます。普段首輪をつけていない猫でも、引っ越しの時だけでも付けておくと良いでしょう。

預けるという選択肢も!

何日も引っ越し作業が続き、どうしても猫が安心出来る居場所を見つけられないという場合は、友人や家族、ペットホテルなどに預けることも考えましょう。

筆者は、猫2匹を連れて引っ越しをした経験がありますが、引っ越し先が実家だったので荷造りをする前に猫だけ先に連れて行きました。預けられる相手がいるのなら、預けてしまったほうが猫のストレスも少なく済むと思います。ただ、猫の性格によっては、知らない人・知らない場所に預けられるということさえストレスになる事も予想されるので、引越し前日から引越し翌日までなど、短期間にした方が良いでしょう。

引越し当日 注意点と移動手段

いよいよ引越し当日。様変わりした部屋と、自分のテリトリーに見知らぬ人がたくさん出入りすることで、猫のストレスはピークに達してしまいます。新居までの移動方法も、飼い主にとっては心配の種でしょう。どんなことに気を付ければ良いのか、詳しく解説していきます。

荷物運びだしの際に気を付けること

引越し業者の方には、猫がどこにいるのかをあらかじめ伝えておきましょう。猫がいることを知らせていないと、何も知らない引っ越し業者の方が猫がいる部屋の扉を開けてしまい、驚いた猫が脱走するという恐れがあります。

また、猫はケージにいれ、引っ越し作業とは関係のないトイレやお風呂場などの安全な場所へ移動させておきましょう。その際には、猫の好きなおもちゃなど匂いの付いているものを中に入れておくと良いでしょう。

猫は人が頻繁に出入りしたり、荷物を外に運び出したりすることにストレスを感じますので、ケージには布をかけておくなど、なるべく引っ越し作業を見せないようにしましょう。

移動手段:一緒に移動する

車での移動

車の中は安全だからフリーにしたいと思うかも知れませんが、移動中に脱走する恐れがあるので、ケージの中に入れた方が良いでしょう。いくら家族しか乗っていない車だとしても、外に出された猫は少なからずパニックを起こしています。信号待ちのちょっとした時間や、休憩で立ち寄ったファミレスの駐車場や高速のサービスエリアで、猫が脱走してしまったという事もあります。

車での移動中に食事をとる猫の方が少ないと思うので、餌は出発前に済ませておいてください。また、いつでも飲めるように飲み水の準備はしておきましょう。ケージ用の給水器も販売されていますが、始めて使う猫は警戒して飲まない可能性もあります。出来れば普段使っているウオーターカップを用意してください。

トイレが出来るようにケージの中にはペットシーツを敷いておきましょう。大きなケージを使用しているなら、ポータブルトイレを置くのも良いでしょう。

自分で運転していて、同乗者がいない場合はシートベルトでケージごと固定しましょう。同乗者がいる場合は、ケージごと抱えてもらうと安心です。また、猫は平衡感覚が優れているため、酔い止めは必要ないです。

電車での移動

電車での移動の際も、車での移動と同じように食事はなるべく事前に済ませ、ペットシーツと水を用意しましょう。長時間の移動ストレスで水を飲まなくなりトイレをしなくなるかもしれません。その際は液状タイプのおやつを与えて水分補給するようにしましょう。

また、各鉄道会社によってペットの扱い方が違うので、利用する前に確認を取りましょう。ペットを連れて行く際に料金がかかる鉄道会社もあります。

電車内には不特定多数の乗客がいます。その中には動物が苦手な方やアレルギーの方などもいらっしゃいます。駅や車内では顔や手がはみ出さないように注意しましょう。車内で猫が大声で鳴く、落ち着かずガサガサと動き回るという場合には、落ち着くまでデッキにいるということも必要になります。

飛行機での移動

飛行機での移動は、特に注意が必要です。犬の場合はパグやチャウチャウ、ブルドッグなど鼻が低い短頭種と呼ばれる犬種は、気圧の変化に弱く呼吸に異常がみられることがあるため、時期によっては、搭乗をお断りする航空会社もあります。ペルシャなど鼻が低い種類の猫では、同じように呼吸に異常がみられることがあります。また、呼吸器系の疾患がある猫も飛行機に乗せるのは危険です。飛行機に乗せる前に動物病院で診察を受け、獣医師に確認を取りましょう。

国内線の場合、ペットを座席まで連れてくることはできず、貨物室でペットケージに入れて預かってもらいます。貨物室にいる間は、食事を与えることが出来ないので、食事は飛行機に乗る前に済ましてあげましょう。気圧の変化で吐いてしまう猫もいるので食事は搭乗する3から4時間前までに済ませましょう。

移動手段:業者にお願いする

ペット輸送専門の業者に依頼するという手もあります。引っ越し業者の中には、ペット輸送を行っているところもあります。その道のプロの方たちなので、猫の状態を見ながら、最善の方法を取ってくれます。引っ越し作業で忙しく、自分たちで連れて行くのが大変だという方は、利用してみてはいかがでしょうか。

多頭飼いの場合、特に気を付けるべきこと

1匹ずつ移動させると、新居に着いた際に今までの引っ越しのストレスなどで猫同士が混乱してしまい、縄張り争いを始めてしまう可能性があります。できれば、同じペットケージに入れて移動してあげましょう。ただし、飛行機での移動では1匹につき1つのケージでないと預かってくれない航空会社もあります。

  

新居についたら 注意点と慣れさせるための工夫

引っ越し先では、今まで親しんだ家の匂いがしなくなり、猫はストレスや不満を感じます。そこで、早く順応させてあげるため、いくつか工夫をしましょう。

猫のお気に入りや使い慣れているグッズを持っていく

新居は、今までの環境と違い、猫の知っている匂いがしないのでストレスを感じやすくなります。そこで、お気に入りのおもちゃや、前の家で使っていたクッションやブランケットなどを持っていくと良いでしょう。猫は、自分の匂いがすると落ち着く傾向にありますので、すぐに新品に変えてしまうのは避けた方が良いです。

特にトイレ砂は、今までの家で使用としていた物をそのまま使うようにしましょう。自分の匂いがする=自分のテリトリーであると認識し、ストレス軽減になります。

家具の配置で気を付けること

猫は、家具の配置や種類を正確に記憶します。新居も引っ越し前の家と同じような家具の配置にすることで、前の家の雰囲気を感じ、新しい環境に慣れやすくなります。また、猫は狭い場所を好むので、隠れられるような場所を作ってあげましょう。

隠れていても無理に出さない!

引っ越してすぐに、家具の後ろなどに隠れて出てこなくなるかもしれませんが、無理矢理猫を引っ張り出すと余計にストレスになるので、絶対にやってはいけません。自ら出てくるまで放っておきましょう。

猫がにおいつけをしやすいようにする

猫は、顔のあたりからフェイシャルフェロモンというものを分泌しており、それを擦り付けることで自分の縄張りを主張します。縄張りだと認識すればリラックスできるので、猫の顔の周りを柔らかいタオルなどで撫で、それを家具や壁などに付けて縄張りを広げてあげましょう。このとき、猫のよく通る場所や高さに付けてあげるのがポイントです。

自由にお部屋の探索をさせてあげる

どこかに隠れてしまって出てこなくなっても、しばらくしたら少しずつ探索するようになります。それが、慣れてきた合図です。新居に慣れるまでは、猫に自由に部屋中を探索させてあげましょう。

脱走に気をつけて!

新居でも、脱走防止のためにペットゲートを置くのを忘れないようにしましょう。環境に慣れるまで、気が立っていることもあり、ふとした瞬間に脱走することが予想されます。窓や扉の閉め忘れにも気を付けましょう。また、万が一脱走したときに備えて、首輪に迷子札を付けておくと良いでしょう。

新居での生活スタート!ストレスや疲れに気を配る!

いよいよ新居での生活がスタートします!荷解きや役所へ行くなどやるべきことがたくさんあり、忙しい毎日を送ることになると思いますが、普段以上に愛猫の様子に目を配り、異変がないか観察をしてください。

初日に特に気を付けること

いきなり広い部屋に放ってしまうと、どこかへ逃げたり隠れてしまったりするかもしれません。新居に慣れるまで、徐々に生活範囲を広げてあげるのが良いでしょう。まずは寝床と食事ができるくらいのスペースがあるケージか、少し狭めの部屋で過ごさせてあげましょう。

猫の様子を注意深く観察して!

飼い主がいくら対策をしても、猫は少なからずストレスを受けてしまいます。猫がストレスを受けるとどのような症状が出るかを知り、すぐに対処できるようにしておきましょう。

・毛づくろいの頻度は?

綺麗好きな生き物の猫ですが、ストレスを受けると毛づくろいの頻度が低くなり、全く毛づくろいをしなくなることもあります。逆に過剰に毛づくろいをして皮膚炎になる場合もあります。

・食欲は?

ストレスが原因で、餌を食べなくなってしまうことがあります。普段通り食事はするが、食べた餌を嘔吐するという場合も注意が必要です。

他の病気が隠れている場合もあるので、出来るだけ早く病院に行くようにしてください。

・トイレの回数は?粗相していない?

排尿や排便の回数がいつもより少なかったり、全く出なかったりしたときは、ストレスが原因のことがあります。また、いつもトイレで排泄できていた猫が、トイレではないところで粗相をしてしまうことがあります。ストレスが原因の場合には、たくさん遊んであげることや、環境に慣れることで問題が解決します。

ただ、おしっこの問題は、ストレスを解消することで治る場合とストレスから何かの病気を誘発した場合があるので、気になるのであれば病院で診てもらいましょう。

・元気さは?

いつも遊び好きなやんちゃな猫がずっと動かない、元気があまりないようにみえるときは、ストレスだけではなく何か他の病気の可能性があります。動物病院で診察を受けてください

・性格に変化はない? 

環境の変化により、普段は大人しい猫なのに噛みつき、引っかき、威嚇をするようになってしまうことがあります。そういうときは、怒ったりせずにそっとしておきましょう。

どうしたら改善する?改善しない場合は?

猫が新しい環境に慣れるまでは、放っておくことです。猫にかまいすぎると、却ってストレスを感じさせてしまう恐れがあります。猫は自分のペースがある生き物なので、そのペースを保たせておくのが一番です。抱っこをしてあげることに安心感を覚える猫もいますが、基本的には放っておくのが良いです。極端に怖がっている様子ならば、ケージに布などをかけてあげて、視界を暗くして落ち着かせましょう。

まとめ

仕方ないことですが、引っ越しなど、人間の都合で猫を振り回してしまうときは、なるべく猫のためを思って、ストレスをかけないように注意しましょう。引っ越し後のケアもしっかりして、猫との新生活を無事にスタートさせましょう。

執筆者
札幌生まれ首都圏育ち。 大学で北海道に戻り、シカやキツネ、リスが身近にいる自然豊かな場所で生活していました。 大学卒業後、北海道に残り、牧場に就職。 現在は地元に戻り、北海道で拾った元野良猫2匹と生活しています。 趣味は絵を描くことで、よく動物の絵を描いています。