猫のしっぽ(尻尾)の形状やふり方の感情表現を解説

猫の豆知識 しっぽは口ほどにモノをいう!?しっぽの動きで読み取る猫の気持ち

執筆/佐藤 華

猫の尻尾は、体全体のバランスを保つだけでなく、感情を表す手段でもあるとても大事な部分です。リラックスしている時に尻尾をゆらゆら揺らしていたり、急に膨らませて威嚇するなど、尻尾と感情の変化に気づいた人も多いのではないでしょうか。今回は、尻尾の動きによる猫の気持ちなどを詳しく解説します。種類についても説明するので、愛猫家のみなさんは必見ですよ。

猫のしっぽの役割とは?

猫の尻尾は、「体のバランスを保つ」「寒さから防ぐ」「感情表現」など、大きく分けて3つの役割があります。どれも生きていくうえでとても重要な役割なので、覚えておきましょう。

  • 体のバランスを保つ役割

狭い通路を歩く時やキャットタワーに登る時、良く見てみると尻尾でバランスをとっています。左右に揺らしたり、ピンと伸ばすことで平衡感覚を保っているのです。バランス感覚に優れた尻尾があるからこそ、運動神経にも恵まれているのでしょう。

  • 寒さから防ぐ役割

マフラーのように長い尻尾は、丸くなって眠る時、首に巻いて防寒代わりに使うこともあります。丸まった姿は「アンモニャイト」とも呼ばれ、寒い時期に良く見られる寝姿勢です。特に長毛種でフサフサの尻尾は寒さ対策にもぴったりでしょう。多頭飼いの場合は、他の猫の尻尾で暖まることもあります。

  • 感情表現の役割

嬉しい時や機嫌の悪い時など、猫の感情は尻尾に現れることが多いです。思わぬケガやトラブルを防ぐためにも、感情による尻尾の動きを知っておくようにしましょう。

太い、細い、長い、短い……しっぽの種類は何種類?

猫の尻尾といえば、ピンと伸びた長い尾を想像する人が多いのではないでしょうか。一般的には体長よりも長いフルテイルタイプが多いですが、実は大きく分けて8タイプの尻尾が存在します。長さだけでなく、豚のようなクルッと巻かれた尾が可愛いコークスクリュータイプや、尻尾が完全に無いランピーマンクスタイプまで、種類はさまざまです。普段見慣れないタイプの尻尾も存在するので、新しく猫を飼う際や、保護猫を迎え入れる際は知っておくと良いでしょう。

  • フルテイル

「長尾」とも呼ばれ、ピンと伸びた長い尻尾が特徴的です。体長と同じ25~30cmほどの長さで、比較的真っ直ぐな形です。一般的な猫はこのフルテイルタイプが多いでしょう。

  • エアリアルカールドテイル

フルテイルよりも長く、30cm以上の長さになることもあります。名前の通り、空中(エアリアル)でカールしているタイプの尻尾で、先端がクルッと巻かれています。

  • フランクカールドテイル

エアリアルカールドテイルと同じように、尻尾がクルッとカールしていることが特徴的ですが、カールする部位がやや下の位置になります。フランク(脇腹)にカールするという意味で、カールした尻尾は猫の脇腹あたりに当たるようになります。

  • フラットトゥバックテイル

バック(背中)に向かってフラット(水平)な尻尾という意味で、長さは長いですが、上や下に向かうのではなく、胴体に向けて水平に沿っているタイプの尻尾です。毛が長い猫だと背中との境目が分かりづらく、尻尾が背中の上に乗っかっているように見えることもあります。

  • キンクドテイル

20~30cm前後の長さで、先端がグニャッとねじれているのが特徴的です。見慣れない形で不思議に感じるかもしれませんが、元々の尾椎の形態なので、無理に触ったりせずそのままにしておきましょう。

  • コークスクリューテイル

まるで豚のようにクルッと巻かれた形が可愛らしい巻き尻尾タイプです。ボブテイルより長く、子豚の尻尾のような見た目から「ピギーテイル」と言われることもあります。

  • ボブテイル

6~7cm程の短い尻尾で、キンクドテイルのように先端が折れ曲がっているのが特徴的です。長さが短いため、折れ曲がっているというより、巻き尻尾に見える場合もあります。筋肉質で引き締まった体が特徴的な「ジャパニーズボブテイル」という種類の猫も存在しています。

  • ランピーマンクス

マンクスと呼ばれる猫は、短毛で尻尾が短い品種です。マンクスの中でも種類によって尻尾の長さは変わりますが、ランピーと呼ばれる種類は完全に尻尾が無いタイプになります。

ランピーマンクスの猫は、尻尾の付け根あたりを触られることを嫌がる傾向があるので、スキンシップをとる際は気を付けましょう。

しっぽが短い猫の代表は?

種類の章でも説明した通り、ボブテイルやコークスクリューテイルは6~7cm前後の短い尻尾が特徴です。ジャパニーズボブテイルという品種が代表的で、短くてフサフサした尻尾をもちます。また、マンクスは尻尾がほとんどなく、全体的に丸いフォルムが特徴的です。

しっぽが長い猫の代表は?

代表的な種類として、シンガプーラやシャム、アビシニアンなどが挙げられます。短毛で肌触りの良いシンガプーラは、大きな耳と小柄な体格が特徴的です。シャムとアビシニアンも短毛種で、体重は2.6kgから4.5kg前後です。長い尻尾で全体的なバランスも良く、高貴な見た目が人気です。

しっぽが太い猫の代表は?

代表的な猫として、ヒマラヤンやラグドールなどが挙げられます。尻尾の骨格が太いのではなく、毛が長くてフサフサとしていることから尻尾が太く見えます。どちらとも長毛種ならではの、ゴージャスな雰囲気が人気です。毛のお手入れは大変ですが、人懐こい性格ですよ。

「世界一しっぽの長い猫」ギネス記録は?

アメリカのミシガン州に暮らす猫が、「世界一しっぽの長い猫」としてギネス記録に認定されました。メインクーンのシグナスちゃんという猫で、尻尾の長さはなんと44.66cmある巨大サイズです。自宅の火災により亡くなってしまいましたが、長毛種ならではのボリュームのある尻尾と、気品溢れる見た目が素敵な猫でした。

かぎしっぽの正体は?なぜかぎしっぽになるの?

かぎしっぽとは、ボブテイルやキンクドテイルのように、尻尾がねじれていたり折れ曲がっている状態を指します。尾椎の一部分が変形したり結合することで折れ曲がったような見た目になると言われ、東アジアなどに良く見られる「HES7」という遺伝子が関係していると考えられています。

元々そのような形をしている先天性のものであれば問題ないのですが、事故などによる後天性のものもあります。保護猫や、拾ってきた猫の尻尾が折れ曲がっている場合は、ケガをしていないか観察するようにしましょう。

また、日本にはかぎしっぽの猫が多いといわれており、特に長崎県で暮らす野良猫の多くがかぎしっぽです。その理由のひとつが、江戸時代に貿易の拠点が長崎だったことが挙げられます。長崎県の出島にはオランダからの商船が多数出入りしていましたが、それらの船には積み荷をネズミの被害から守るために猫が乗っていました。オランダ船の拠点がインドネシアにあり、「HES7遺伝子」を持つ猫が乗船、そのまま長崎に住み着いたからと言われています。また、江戸時代の都市伝説に尻尾の長い猫が高齢になると「猫又」という妖怪になるというものがあり、それを恐れた当時の日本人がかぎしっぽの猫を積極的に増やしたからだともいわれています。

しっぽの動きで読み取る猫の気持ち

  • しっぽをくねくねさせる

何かを楽しみにしている時や、機嫌の良い時が多いです。美味しそうにご飯を食べている時など、良く見てみると尻尾がくねくねしていることもあります。また、「もっと遊びたい」という気持ちで人間に寄ってくる時も、尻尾に現れることがありますよ。

  • しっぽを膨らませている

尻尾が膨らむというのは、正確には尻尾の毛が逆立って大きくなっている状態を表します。何かに遭遇して驚いている時や恐怖におびえている時、興奮している時などにそのような状態になることが多いでしょう。尻尾の毛を膨らませることで全身を大きく見せ、相手を威嚇しようとしている場合もあります。その際、「シャー」という声を同時にあげることがあります。

  • しっぽを体に巻き付けている

尻尾を体に巻き付けて座っている姿は、猫好きの間では「しっぽマフラー」と呼ぶことがあります。しっぽマフラーという呼び名の通り、寒くなると見られる座り方です。

また、不快な時、警戒している時にもこのような座り方をすることがあります。ただ尻尾を身体に巻き付けているので、とっさに動くことは出来ません。そのため、「逃げるほどではないけれど、一応警戒しておこうかな」という心理状態なのかも知れません。尻尾の長さゆえに飼い主に踏まれたことがあるという猫も、人の近くでは尻尾を巻きつけて座るようです。特に神経質な猫には良く見られます。

ただ、このしっぽマフラーにはリラックスしているなど諸説あります。しっぽマフラーの猫を見かけたら、部屋が寒くないか、何かストレスになっていることがあるのか、もともとの性格が神経質な子なのか等、見極めることも重要です。

  • しっぽを震わせる

尻尾をくねくねさせている時はご機嫌の状態でしたが、尻尾をピンと伸ばして震わせている時は、上機嫌な状態です。その状態で近づいてきた時は、飼い主さんのことが大好きという意思表示なので、たくさん構ってあげると良いでしょう。仲の良い猫同士で挨拶する時などにも見られます。

  • ピンと立っているしっぽ

尻尾をピンと立てている時は、大好きという気持ちの愛情表現であったり、甘えたい時などが多いです。また、お腹が空いた時などに、尻尾をピンと立てながら近寄ってくることもあります。ご飯の時間でもないのに尻尾を立てている時は、ただ可愛がってほしい可能性もあるので、猫の状態を良く観察してあげると良いでしょう。

  • だらんと下げているしっぽ

尻尾が少しだけ下がっている状態なら落ち着いている状態ですが、下に向かってだらんと下がっている場合は、体力や元気がなくなっている可能性もあります。ずっとその状態だと体調不良なども疑われるので、動物病院に相談してみましょう。猫同士の喧嘩や飼い主からの叱責により、ただ気分が落ち込んでいるということもあるので、観察が必要です。

  • しっぽをバタバタ大きく動かす

嬉しい時に尻尾を大きく動かす犬と違い、猫の場合はイライラしている時が多いです。特に動物病院の診察中など、飼い主以外の人から体を触られたり、緊張状態が続くことでそのような状態になることもあります。無理に近づくと噛まれることもあるため、そっとしておきましょう。

  • しっぽをゆっくり大きく振る

リラックスして心が穏やかな状態のときに、ゆっくり大きく尻尾を振ることがあります。毛布やベッドの上でくつろいでいる時や、機嫌の良い状態ということなので、そのままにしておくと良いでしょう。

  • しっぽを後ろ足の間に隠す

後ろの足と足の間に尻尾をしまって隠している場合、何かに怯えたり恐怖を感じて自分を守っています。台風や雷など、大きな音に驚いている可能性もあるので、家の中でこのような姿勢をとった時には優しく声をかけてあげると良いでしょう。

  • しっぽを振って山を描く

尻尾を立てた状態で半分折り曲げ、山のような状態で振っている場合は、警戒心が最高潮に達した状態であることが多いです。攻撃に入る姿勢でもあるので、むやみに近寄らない方が良いでしょう。特に、同時に毛が逆立っている場合には注意が必要です。

  • しっぽの先をピクピクさせている

尻尾全体ではなく先端だけピクピクさせている場合は、何かを真剣に考えていたり、少し神経質になっていることがあります。また、何か興味を惹かれるものに出会った時、ピクピクすることもあります。邪魔をせずにそっとしておくようにしましょう。

  • 睡眠中しっぽの先だけ小さく振っている

寝ている時やまどろんでいる時、飼い主に話しかけられて、尻尾の先だけ小さく振ることがあります。話しかけられたことは理解しているけど、急に起きることが面倒な場合、尻尾を動かすことで聞こえていることをアピールしたり、返事をしているのです。

  • 座ってしっぽをパタパタ上下に動かしている

深くものを考えている時、座りながら上下にパタパタと動かすことがあります。同居猫と戯れている時やご飯が食べ終わった時など、この後の行動について考えている時などに見られます。ストレスを感じている時と違い、上下にゆっくり動かすのが特徴です。

  • 抱っこすると、しっぽをおなかにくっつける

抱っこした時に尻尾をお腹につけている時は、緊張しているサインです。お腹は動物の急所なので、尻尾をくっつけることで守ろうとしているのです。この場合、尻尾以外にも手足や体全体が緊張し、こわばっていることが多いでしょう。

  • 抱っこすると、しっぽをバタバタ激しく振る

抱っこを嫌がり、降ろしてほしい時に尻尾をバタバタとさせます。尻尾をお腹にくっつける時の緊張感とは違い、抱っこしてほしくないという意思表示に近いでしょう。無理に抱っこを続けると、引っかかれたり噛みつかれる恐れもあります。ケガにつながることもあるので注意が必要です。

猫のしっぽ、触っても良い?

猫の尻尾さまざまな形に動いたり手触りが良くて、思わず触りたくなってしまうこともあるでしょう。ですが、猫の尻尾は尾椎という骨と複数の筋肉で出来ており、尾骨神経が様々な動きを司っています。猫の身体の中でもとてもデリケートな部位なので、むやみに触ることはストレスを与えることになります。

猫のしっぽ、扱うときの注意点はある?

上述したとおり、尻尾には尾椎のほかにも神経が集まっているため、触りすぎたり乱暴に扱うことはやめましょう。特に、赤ちゃんや小さい子供がいる家庭は注意が必要です。ゆらゆらと動く尻尾を触ったり引っ張ったりしてしまう恐れがあるので、子供と接触させる時は気を付けましょう。

人の全体重をかけて踏む、力任せに引っ張るなど強い力を加えると、足に障害が出て歩けなくなるという最悪の事態になることもあります。特に長い尻尾の猫を飼っている方は、誤って踏まないように注意してください。

しっぽの付け根を触ると?

尻尾の付け根をマッサージしたり軽く触ってあげると、気持ちよさそうにお尻を上げることがあります。人間のツボ押しと同じように、神経の集まった場所を刺激されると猫も喜びます。猫の反応を見ながら、軽く指先で叩いたり触ってあげると良いでしょう。

まとめ

猫の尻尾には、さまざまな長さや形があり、種類も豊富です。また、感情を読み取ったりバランスを保つ上でとても大事な部位でもあるので、丁寧に扱ってあげることが大切です。尻尾の特性を良く理解することで、愛猫との関係もさらに深まるでしょう。

執筆者
会社員を経て、念願叶いライターとしてデビューしました。 猫4匹、犬1匹、人間ふたりの大家族なので、笑いと事件が絶えない毎日です。 読者の皆さまのお役に立てるような記事を執筆出来るよう、日々精進してまいります!