最近、愛猫がカリカリを食べにくそうにしている、あくびしたときの口が臭い!そんな気になる症状はありませんか?猫の口内炎は人とは違い、最悪の場合命に関わることも。早めに気づくことが何より大切です!
口内炎を起こす原因とは?
口内炎の根本的な原因はまだ完全に解明されていませんが、ウイルスや細菌によって引き起こされていると考えられています。ウイルスに感染することで免疫力が低下し、口腔内のバリア機能も低下することで発症したり、歯周病を引き起こす細菌が歯茎を攻撃することで炎症が起こったりします。詳しく見ていきましょう。
感染症が原因の場合
上部気道ウイルス(猫カリシウイルス・猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス)感染症によって引き起こされるものが多いです。いわゆる、猫風邪と呼ばれるウイルスを持っている子は発症しやすくなります。特に外で暮らしていて保護された子猫のほとんどが猫風邪を保持しており、1才未満の歯も生えてない子猫でも歯茎が赤く炎症を起こすことがあります。早めに気づいて治療をすると、治りも早いため、保護猫を迎えた時には1度健康診断で口内の健康状態も把握しておくと良いでしょう。
免疫低下が原因の場合
猫白血病・猫エイズに感染している、糖尿病・副腎皮質機能亢進症(糖尿病と併発することの多いホルモンバランスが崩れてしまう病気)・腎不全など免疫力が低下してしまう病気を持っていると、それが原因で口内炎を発症することがあります。
歯周病が原因の場合
歯にたまった歯垢や歯石の中に含まれる細菌によって歯茎などの歯の周りが炎症を起こして、歯肉炎と共に口内炎を発症します。口の中を確認するのは難しいかも知れませんが、あくびをしている時に覗き込んで歯茎が赤いことに気づく場合もあります。犬歯を含む前歯よりも、奥歯の方が歯周病にかかりやすいため、大きく口を開けている時は確認をしてみましょう。
猫の口内炎で見られる主な症状は4つ
口内のトラブルなのでフードを食べている時や、毛づくろい、食べた直後でも無いのに口臭がする、などで気づくことが多いです。症状を知り、早めに気づけるように日頃から気にかけてあげましょう。
よだれが多くなる
よだれには粘膜を保護する、という役割もあります。口の中が炎症を起こしていると、炎症部分を何とか助けようと唾液がいつも以上に作られるため、口内炎の猫は健康な猫より、よだれが多くなります。更に、
- 口の中が痛くてよだれを飲み込めない
- 痛みを気にして口の周りを前足でこすり、前足もよだれでベタベタになっている
- フードを食べた後の皿によだれが過剰に付いてベタベタしている
- ブルブルと顔を振っただけでよだれが飛んでくる
などが見られると、よだれが過剰に分泌されています。
食欲減少
口内炎になると、とにかく口の中が痛くて堪らない状態になります。人がちょっと口の中を噛んでしまってできた口内炎でも、とてつもなく水などがしみて痛みますが、その何十倍も痛みを感じているでしょう。お腹が空いているのに食べられない、頑張って食べるけれど、食べるたびに痛いのでフードをこぼしてしまう、食べる時に痛くて奇声を上げるなど食事がストレスになり食べる気を無くしてしまいます。更に重症になると、水すらも飲めなくなってしまいます。明らかに出されたものを全く食べないだけでなく、少しずつ食べる量が減っていく子もいますので、1日食べた量は必ず記録するなどして早めに気付けるようにしましょう。
いつもより口臭が強くなる
特に、歯周病が原因の場合、口臭が強くなります。あくびの時、なめられた後など普段と違って明らかに臭いと感じたら何らかの疾患が隠れている可能性が高いです。口内炎だけでなく、内臓疾患で口臭が強くなる場合もありますので、気になったら早めに受診しましょう。
毛づくろいをしない
猫は1日に何度も丁寧に毛づくろい(グルーミング)をします。毛づくろいが苦手な子もいますが、全くしなくなることはありません。口の中が痛い、又は舌にまで炎症が及んでしまうと、とても毛づくろいなどしていられません。毛並みが悪くなった、毛艶が悪くなったと感じたら猫の様子をよく見て毛づくろいできているか確認しましょう。
治してあげたい愛猫の口内炎、治療法はある?
治療法は現在、口内炎の原因となっているものを除去するのが最も効果的と言われています。他、症状に合わせて様々な治療法がありますので、詳しく見ていきましょう。
投薬による治療
原因・症状によりますが、猫風邪が原因の場合は感染に対するインターフェロンの投与で風邪を起こすウイルスの働きを抑制します(猫風邪は1度かかってしまうと、生涯体内にウイルスが残存します)他、細菌の働きを抑制するための抗生剤、炎症や痛みを抑えるステロイド剤、消炎鎮痛剤、免疫抑制剤など、原因に合わせて処方されます。
レーザーによる治療
弱いレーザーを照射し、自然治癒力を高めることで痛みなどの症状を軽減する治療法です。猫にとっては、痛くない・無麻酔・出血が少ないと体への負担が少なく、投薬と併用して行うことで内服薬の間隔を長くすることができます。特にステロイド剤は長期間の投与による副作用が心配されますが、レーザー治療の併用によって薬を減らすことができます。レーザーによる治療は徐々に一般化されつつありますが、まだ導入している動物病院は少ないです。
歯石除去
歯周病が原因の場合、細菌の温床である歯石を除去して口腔内環境を整えることで口内炎の治療を行います。ただし、歯石除去をするためには全身麻酔が必要です。健康な子でも全身麻酔にはリスクが伴いますが、持病を持っている子の場合、そのリスクは更に高まります。しかし、歯周病は口内炎だけでなく全身にも影響を及ぼしていく怖い病気ですので、そのまま放置しておく訳にもいきません。まずは心配な体の状態を事前検査などで確認をし、不安なことを全て獣医師と相談して手術に臨みましょう。
悪くなった歯を抜く
歯周病が進行し過ぎている場合は抜歯を提案されます。歯を抜くなんて大変なことだ、とショックを受けるかも知れません。獣医師からも説明があるかと思いますが、猫は基本的にフードを丸飲みにしており、市販されているフードは丸飲みしても消化できる作りになっていますので、食生活は心配ありません。むしろ、口の中が痛くて食事ができない今の状態の方が猫にとっては辛いのです。
歯石除去同様、全身麻酔が必要なので不安なことは全て聞きましょう。また、抜歯後の経過観察のため1日入院が必要な場合もありますので、そちらも合わせて確認をしておきましょう。持病があるなど術後経過が心配な子は、入院日数が伸びる場合もあります。
また、一大決心をして抜歯を行っても口内炎が治らない場合もあります。その場合は慢性の口内炎、難治性口内炎と診断され、長期間または生涯、薬で炎症を抑える治療を行います。
口内炎の対処療法とは
口内炎による食欲低下であまりにも体重が減少し、痩せると病状が悪化してしまうため、栄養補給の対処療法を行います。美味しくて嗜好性の高いフードや柔らかくて食べやすいフードなど自ら食べて貰う工夫をする、水分が取れなくて脱水症状を起こしている場合は点滴を行うなどの対処をします。応急処置のようなもので改善はありませんが、治療のために必要な体力回復を目的に行われます。
新しい取り組み・再生治療
今までの治療法ですと、悪いところを取って改善するか、酷くならないように薬などで抑えて対処するしか選択肢はありませんでしたが、新たに『自己治癒力を高めて病気を治す』という選択肢が生まれました。それが、再生治療という選択肢です。体への負担や副作用が少ないので、全ての歯を抜いたのに口内炎が解消されない難治性口内炎の子や、持病があって長時間の麻酔に耐えられない子にも、効果が期待できます。
専門的な話になるので難しいのですが簡単にまとめると、幹細胞という修復機能を持っている細胞を投与・移植して、体内の弱っている細胞を助け、代わりに働いて貰って治癒力を高める方法です。炎症や病気にかかって長期化すると、体内の免疫細胞達はとてつもなくブラックな環境で働くことになります。当然のことながらヘトヘトで、もう働くのも嫌になってしまうでしょう。そこへ、増援が到着することで休憩が取れたり、リフレッシュする時間がとれたりする感覚です。
自己治癒力を高めて病気を治す、という治療法は、口内炎だけでなく免疫・臓器疾患に対しても効果が期待できるでしょう。まだまだ一般的な治療ではありませんが、再生医療を中心に行っている病院もありますので、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。
愛猫を口内炎から守るための予防法は?
原因となる病気の予防や、口腔内を清潔に保つなど様々な予防法がありますので、症状や環境に合わせて行いましょう。特に人と同じで歯磨きが大切です!
ワクチン接種で予防
猫エイズ・猫白血病・猫風邪など、ワクチンで予防できる病気は接種することで抑えられます。すでに猫風邪キャリアの子でも、ワクチンを接種することで体内に抗体が増えるので有効です。ワクチンの種類については生活環境によって異なるため、かかりつけの獣医師と相談しましょう。
フードで予防
歯石が付きにくいドライフード中心の食生活の方が、予防効果は高いです。更にドライフードの中には歯の健康状態に特化したものもあり、「ごはんは、なんでも美味しい!」とフードを切り替えることにストレスのない子なら、そちらに変更すると予防効果は更に高まります。筆者がお世話になっている先生によると、やはり歯の健康状態に特化したフードを食べている子は歯がキレイだとのことです。
フードを切り替えるのが難しい場合でも、噛むことで歯磨き効果が期待できるおやつなどもありますので、歯磨きの補助として取り入れるのも良いでしょう。ただし、おやつは1日のカロリー範囲内に留めて下さい。
マウスケアで予防
歯石になる前に直接、歯垢を取り除く歯磨きが最も効果的です。ですが、猫は口の周りを触られるのを嫌がることが多いです。子猫の内から顔周りを触られるのに慣らしておくのが一番ですが、子猫の頃からトレーニングができず成猫になっていても諦めずにトライしましょう。根気強く少しずつ慣らせば受け入れる子もいます。歯磨きに慣らすまで時間がかかってしまうので、補助として水に混ぜるタイプや口の中に数滴垂らすだけで良いタイプなどを併用しましょう。
筆者が試した方法を全て書いておきます。子猫からトレーニングできず、抜歯に至ってから必死で獣医師に相談し、歯磨きの動画を見ながらトレーニングを致しました。
- まずは、シートで試す(指に巻き付けてこする。力加減が分かりやすいため、口の中を傷つける心配が無い)
- シートで慣らしつつ、最も小さな歯ブラシを試す(歯ブラシを完全拒否されたため、別の手段を探す)
- 嗜好性の高い歯磨きジェルを使用する(チキン味を試しました)
- 綿棒にジェルを付けて磨く(綿棒は細く小さいので口の中に入れやすい、食いちぎられないように注意!)
- もう少し慣れてきたら、歯ブラシでも奥歯を磨く
以上を水に入れるタイプの歯磨きを併用して実際にやってみた結果、前歯と犬歯を磨く際には指サック型の歯ブラシが、奥歯は綿棒がやりやすいです。猫によっても受け入れる範囲が異なるため、獣医師にやり方を相談しながら一番ストレス無くできて効果的な方法でケアしてあげましょう。
サプリメントは与えてもいい?
特に持病があって薬を継続している場合は、まず獣医師に相談してから与えましょう。免疫力が落ちると口内炎ができやすいため、免疫力向上・栄養補助のサプリメントは予防効果が期待できます。過剰に期待し過ぎるのは良くないですが(薬のように効果が保証されていないため)副作用が無く継続しやすいため、その子に合っているようなら続けて様子を見るのも良いでしょう。
まとめ
猫の1日は、食う・寝る・遊ぶ、の羨ましい生活です。食べることは人生においても楽しみの1つであり、猫にとっても食べることは猫生の楽しみ。その楽しみが口内炎によって奪われてしまったら、つまらない日々となるでしょう。口内炎が治ったことで性格が穏やかになったと症例があるほど、痛みが辛い病気です。全ての病気に言えることですが、早期発見、早期治療が最も大切です。日頃のコミュニケーションの中で、いつもとの違いに気づけるよう、心がけましょう。