ウチの猫が、最近涙をポロポロこぼして泣いている。目の上が痒いのか勢い良く掻き始めたけれど、大丈夫かな?
そんな心配事はありませんか?もしも猫が涙をこぼしていたら、それは悲しい訳では無くて、流涙症(りゅうるいしょう)かも知れません。
猫の「流涙症」とは?
猫の流涙症とは、その名の通り涙が止まらない病気です。それ自体が命に関わる病気ではありませんが、
- 目の付近が痒くて血が滲むほど掻く
- 目元や鼻筋が茶色く変色し涙やけを起こす
- 常に涙でぬれているため細菌が増えやすくなり、皮膚炎になってしまう
などの症状があります。違う病気の症状の1つとして発生している場合もありますので、いつも目元がぬれている、拭いてあげても又ぬれている時は早めに病院へ連れて行きましょう。
猫の「流涙症」原因はある?
流涙症の原因は、大きく分けて2つです。
- 涙が過剰に作られる状態
- 涙の排泄障害が起きている
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
涙が過剰に作られる状態
人も目にゴミが入ると涙が出てゴミを出す反応が起こりますよね。猫も同じように、外部からの刺激などによって、過剰に涙が出て目を守ろうとします。涙が過剰に作られる原因としては、
- 結膜炎、角膜炎、目の炎症
- 異物や刺激物、煙などが目に入った
- 眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)→分かりやすく言うと、逆さまつげ
などが挙げられます。目そのものへの刺激や病気などから目を守るために、たくさんの涙が作られて排泄が追いつかなくなり、泣いているようにこぼれてしまいます。
涙の排泄障害が起きている
涙はまぶたの裏で作られて目頭の涙点(るいてん)と呼ばれているところに入り、鼻涙管(びるいかん)を通って鼻から出て行きます。この流れが何らかの原因で滞ると、行き場を失った涙がこぼれてしまうのです。原因には先天性のものと後天性のものがありますので、それぞれ見て行きましょう。
- 先天性の原因
品種改良により、鼻が潰れている、鼻が短い品種(ヒマラヤン、ペルシャ、エキゾチック、スコティッシュフォールドなど)は鼻涙管の流れが悪い又は構造が正常ではないため、生まれつき発症しやすい品種です。また、生まれつき鼻涙管の入り口が閉じている奇形を起こしている場合もあります。
- 後天性の原因
後天性の原因は様々ですが、主に以下の原因が考えられます。
- 鼻炎が酷くなって鼻涙管が腫れ、涙の通り道が詰まる
- ウィルスが関連した猫風邪などの感染症
- 鼻涙管または鼻の周辺に、腫瘍ができている
- 外傷によって鼻涙管が傷付いた
特に、子猫のときにかかった猫風邪が原因で完全に鼻涙管の入り口が癒着して、閉じてしまうこともあります。猫風邪は早く治療してあげましょう。
猫の「流涙症」の症状とは?
流涙症の症状は涙がこぼれて止まらないことで、
- ぬれた所に細菌が繁殖して皮膚炎を起こす
- 目ヤニが増える(黄色っぽいネバネバしたもの、匂いの強いものなど)
- 涙やけができる
- 鼻の横に湿疹ができる
湿疹部や目の周りが痒くて、掻き過ぎて怪我をすることもあります。詳しい治療方法を見ていきましょう。
猫の「流涙症」に気づくのは難しい?
猫はグルーミングできれいにしてしまうため、気づかないことも多いです。白猫など、毛色の薄い子は涙やけによって目頭や鼻筋が茶色くなるタイミングで気づけますが、黒猫など毛色の濃い子は涙やけも分かりにくく、気づくのが遅れることも。
目の周りを気にしている、何だかぬれているように見える、目ヤニが多い気がする時には、湿らせたコットンなどで拭いてみて下さい。コットンが赤茶色になっていたら、涙やけを起こしています。元気そうにしていても別の病気が隠れていることが多いので、早めに病院へ連れて行きましょう。
猫の「流涙症」治療はできるの?
治療すれば治るか?と言われると難しいのですが、原因によって異なりますので、1つ1つ見ていきましょう。
- 先天性原因の場合
生まれつき鼻が潰れている、鼻が短いなど、鼻涙管が詰まりやすい子の場合、外科的な形成手術によって鼻通りを改善する方法がありますが、非常に繊細な技術を要する手術で、完全に治すことは困難です。全身麻酔が必要となりますが、健康な状態の猫でも危険を伴うので、手術を考える際には十分に獣医師と相談しましょう。
涙が零れているけれど日常生活に支障が無い程度でしたら、日々のケアでサポートするようアドバイスを貰うことが多いです。
- 後天性原因の場合
後天性の原因の場合は、それぞれの病気や外傷の治療によって、症状の改善が期待できます。
目や鼻の病気が原因の場合
原因となっている病気の治療を最優先で行います。
結膜炎、角膜炎などの目の炎症
病院で検査をしてもらい、炎症の原因に合った抗生剤や消炎剤の点眼治療
鼻炎
鼻炎の原因に沿った抗ウィルス剤の内服、点鼻薬治療
腫瘍
手術や化学療法(抗がん剤治療)
原因となっている病気が治れば、流涙症も改善されます。
異物が原因の場合
目の中に入りこんだ異物の除去を行い、目薬などで洗浄、または逆さまつげなど目に当たる毛をカットして、目に異物が入るのを防ぎます。
異物が原因の場合は原因を取り除けば心配ないですが、長毛の猫の場合、抜け毛が原因となることもありますので、小まめにブラッシングをしてあげましょう。
愛猫を「流涙症」から守る予防法はある?
原因が先天性、後天性どちらの場合でも完全な予防方法は残念ながらありません。ですが、日々の細かなケアをしてあげることで、流涙症による皮膚炎などの病気を予防することはできます。ケアのポイントは以下の通りです。
- 拭き取るときは優しく、毛の流れに沿って拭く
- ぬるま湯(38度くらい、人肌程度)に浸して絞った化粧用コットンや、ペット専用のウェットティッシュ、柔らかいガーゼやタオルなどを使う
- ティッシュペーパーは使用しない(繊維が荒く、眼球を傷つけてしまい、目の周りにくっつくこともあります)
- 涙が乾いてしまう前に、気づいたら即拭く
- 気構えると察して逃げるので、気軽にケアする
筆者の猫は慢性鼻炎と目の奇形による流涙症です。気づいた時に拭くものをモタモタ用意していると、さーっと逃げて行って目元をカピカピに乾かして戻ってくるので、家中にウェットティッシュを置いて、気づいたら即拭いています。「私が鼻をかむだけよ」くらいの気楽な雰囲気が肝心ですよ。
まとめ
繰り返しになりますが、流涙症は、それ自体が命に関わる重病ではありません。ですが、流涙症の原因の中には腫瘍などの重篤な病気が隠れている場合や、細菌の繁殖による皮膚炎を発症してしまう場合もあり、注意が必要です。日頃からの観察と、日常のケアが何よりも肝心です!
- いつもと違うな、と感じたら、すぐに獣医師に相談しましょう
- 毎日のケアは気負いすぎず、やりやすい方法で続けましょう
- できるだけ、涙が乾く前に拭き取りましょう
人もそうですが、涙を放置してしまうと目の周りが大変痒くなります。人なら顔を洗ってサッパリすれば大丈夫ですが、猫は痒いとなると血がにじむほど後ろ足で掻いてしまうこともあるので、軽度であっても早めのケアを心がけましょう。