たいていは親猫の元で生きるためのイロハを教わる子猫。悲しいことに、一部はなんらかの理由で生まれてまもなく親猫と引き離されることがあります。
この記事の読者さんはきっとそんな子猫を近所で見かけ、可哀想で放っておけず家に連れて帰ったのだと思います。
- 生まれたばかりの子猫に必要なお世話ってなに?
- 気をつけるべき病気は?
- 子猫はどのような成長過程を踏んでいくの?
- 必要な費用やグッズは?
- 育て方のポイントはある?
このようなお悩みをお持ちの方は、記事を読みながら今すぐにできそうなことは試してください。お世話をしてくれる飼い主さんだけが頼りですので、頑張ってマスターしていきましょう!
生まれたばかりの子猫に必要なお世話とは?
生まれたばかりの子猫にとって、必要なお世話は基本的に3つです。
- 体温確保
- ミルクを与える
- 排泄を促す
この3つは子猫が十分に育つまで、飼い主さんが面倒をみてあげましょう。特に体温確保は最優先に行うようにしてください。
それぞれに必要な道具や費用は以下のようになります。
体温確保 | タオル2〜3枚毛布使い捨てカイロまたは、湯たんぽなど | タオルや毛布は家にあるものでOK。 カイロ・湯たんぽ:100〜200円程度 |
ミルクを与える | 子猫用粉ミルクまたは、子猫用液状ミルク子猫用哺乳瓶,シリンジ,スポイト | 粉ミルク:2,000〜3,000円程度 液状ミルク:1パック200円程度 子猫用哺乳瓶:1,000〜2,000円 シリンジ,スポイト:100〜2,000円程度 |
排泄を促す | ガーゼ,ティッシュ,コットン | それぞれ100円程度 |
ほとんどがスーパーや100円均一などで手に入ります。ひとまずはそこで必要な物品を購入しましょう。落ち着いたら、ペットショップや動物病院などで揃えてあげてください。
体温確保をする
子猫の体温確保は最優先に行ってください。
生まれたばかりの子猫は、体温の調節を自分でできません。そのため、子猫のからだよりも少しだけ温かく温度を調整したカイロまたは湯たんぽをタオルや毛布に仕込んで、体温を維持できるように手伝ってください。カイロや湯たんぽをすぐに用意できない場合は、ペットボトルにお湯を入れたものでも代用できます。
あまり熱すぎたり、子猫のからだに直接カイロや湯たんぽを当てると低温やけどの原因になりますので注意が必要です。
ミルクを与える
体温を確保することができたら、次はミルクをあげましょう。用意するミルクは、必ず「子猫用」と記載されているものを選んでください。子猫用ミルクはお湯に溶かして飲ませる粉ミルクと、そのまま飲ませることができる液体ミルクがあります。いずれも人肌より少し温かくなるよう、38〜40℃を目安にお湯の温度を調整したり、温めたりしてください。
ミルクを飲ませる時に気をつけたいのは、子猫の姿勢です。子猫を仰向けにしてミルクを飲ませることは絶対にしてはいけません。仰向けにして飲ませると、気管に入ってしまう危険性があります。
子猫はうつ伏せに寝かせ、あごに手を添えて頭を少し上向きにしましょう。一度に大量のミルクを飲むことはできないので、哺乳瓶やシリンジで少しずつ子猫のペースに合わせて飲ませてください。口からミルクが溢れていたり、子猫が苦しそうにしていたら飲ませるペースを遅くしてみてください。
ミルクを飲ませる時のチェックリスト
ミルクの消費期限は切れていませんか? (粉ミルクの場合)パケージの表記にしたがってミルクを作りましたか? 温度は38〜40℃(人肌より少し温かい)に調整できていますか? 子猫を仰向けにしていませんか? 子猫がミルクを飲みやすい姿勢(うつ伏せで頭を少し上向きに)をとれていますか? 子猫の口からミルクが溢れていませんか?(溢れていたらもう少しゆっくり飲ませましょう。) |
粉ミルクは都度お湯を沸かせて溶かす必要があります。手間がかかりますが、液体ミルクと比べて安価です。液体ミルクは一度開封するとすぐに劣化してしまうので、子猫が飲みきれなかった分は破棄しなければいけません。とは言え、時間がない時や災害などでお湯が沸かせないときはとても便利なので数本備蓄しておくと良いでしょう。どちらも一長一短ありますが、無理なくお世話を続けるために、飼い主さんと子猫に合ったミルクを選んでください。
ミルクを飲ませる頻度は、発育段階によって異なります。200グラム未満の子猫には、2〜3時間に一度ミルクを飲ませてください。夜も飼い主さんは眠る時間を確保できず大変ですが、等間隔で飲ませましょう。そのうち子猫は一度に飲める量が増えていきます。
目が開いて、ちょこんと歯が生えてきた頃。250〜400グラムほどに子猫が成長したら、4〜6時間おきに間隔を空けてみましょう。
ミルクを飲ませる頻度は一般的にはこのように言われていますが、子猫がもっと飲みたがったり、逆に吐き戻したりする場合はミルクの量を調整して大丈夫です。
排泄できるようお手伝いする
ミルクを飲ませる前と後に、子猫が排泄できるようにお手伝いしましょう。
生まれたばかりの子猫は、自力で排泄できません。濡らしたティッシュやコットンで、子猫の肛門をちょんちょんと触れて刺激してあげましょう。自分で毛づくろいすることもまだできないので、排泄をしたあとは優しくお尻の周りや排泄物がついた部分を清潔なティッシュやコットンで拭きとってあげましょう。
ミルクを飲む前と後、必ず排泄するとは限りませんが、もし1日中排泄をしないことがあれば、獣医師に相談してください。
野良猫が生んだ赤ちゃんだった!気を付けることはある?
拾ってきたのが野良猫の赤ちゃんだった場合は特に、ノミやダニがからだについていたり、感染症に罹っていることがあります。そのため、タオルや毛布にくるんだまま、動物病院へ検査をしに行くことをおすすめします。先住猫がいる場合は、この検査が済むまで会わせないでください。
動物病院でのノミ・ダニ駆除と感染症抗体検査費用、加えて初診料金を準備しましょう。病院によって治療費や初診料金、診察日が異なります。出発する前に近くの動物病院を調べることをおすすめします。
ノミ・ダニの駆除
野良猫にはノミやダニがついていることが多いです。ノミやダニが寄生すると、かゆみで掻きむしってしまい、その傷が化膿してしまったり、傷から細菌が入ってしまい病気になります。ノミを媒介する寄生虫・瓜実条虫に寄生されることで起きる「条虫症」、マダニによって感染する「ヘモプラズマ感染症」にかかってしまうと、下痢や発熱などの症状がでます。体力のない子猫が感染症にかかってしまうと、命が危険にさらされます。
また、人間にも寄生して、肌のかゆみやアレルギーを引き起こす可能性があるので、これから子猫との生活を始めるなら必ず駆除・予防をしておきましょう。もし先住猫や犬がいる場合には、念のため彼らの分のノミ・ダニの駆除薬を貰うようにしましょう。
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感染症の確認をする
感染症検査でわかるのは、猫免疫不全ウィルス(FIV)と猫白血病(FelV)という病気の有無です。これらの感染症に罹っている子猫は、いろいろな病気に罹りやすいです。感染症検査を受けると、こういった病気のリスクを知ることや猫エイズ・猫白血病のキャリアを持つ子猫の生活を考える機会になるので、必ず受けましょう。
陽性という検査結果がでたら、先住猫や一緒に拾ってきた子猫と隔離をしてください。
ただし、生まれたばかりの子猫の場合、正しい検査結果が出ない事もあります。検査の結果がどうであれ、生後3か月位になったら再度検査を受けるのをおすすめします。
目が開いて歯が生え始めたら?
目が開いて歯が生え始めたら、離乳食を準備しましょう。離乳食の期間はお湯でふやかしたドライフード、またはウエットフード与えます。この頃には哺乳瓶やシリンジからではなく、フードをお皿から食べられます。
猫用のお皿はいずれ用意する必要がありますが、はじめは深さのある小皿で代用しても良いでしょう。
生後約10日~目が開く
生後10日くらい経つと、閉じられていた子猫の目が開きます。とは言っても、まだまだ目としての機能は未熟です。強い光などに弱いので、カメラのフラッシュ設定は常にオフにしましょう。
また、今まで子猫を包んでいたタオルとダンボールなどで、光を遮れるような寝床を作ると良いです。小さなからだを一生懸命動かして、てちてちと歩く姿が見られるのもこの頃からです。
生後3週齢~歯が生え始める
子猫はすくすくと成長し、生後21日頃には小さな歯が生えてきます。歯が数本生えてきた頃合いを見計らって、離乳食に切り替えて行きましょう。
離乳食に切り替える方法は?
はじめのうちは、いつも飲ませているミルクと離乳食を混ぜて与えてみましょう。いきなりたくさんの固形物をお腹に入れると、消化不良や下痢を起こすためミルクの割合を多くしてください。子猫がミルクと離乳食が混ざったご飯に慣れて、よく食べるようになったら少しずつミルクを減らして、離乳食を増やします。ご飯の回数は、1日に3〜4回です。
子猫は生まれてからずっとミルクしか口にしたことがないので、最初は離乳食に興味を示さないかもしれません。その場合は、少量を上顎の裏に付けて見てください。食べ物と認識して、直ぐに食べ始めるでしょう。
生後1か月~3か月、育て方のポイントは?
ここまでの飼い主さんの懸命なお世話のおかげで、子猫が生まれて1ヶ月経つ頃には随分と生命力が溢れる存在になっていると思います。この期間は子猫にとって、人間と暮らしていくことに慣れさせるのが重要です。トイレを覚えさせたり、ワクチンを接種したりと子猫が社会性を学ぶ期間でもあるので、飼い主さんも手助けしてください。
生後4週齢~
生後4週齢からは、いよいよ本格的な離乳期に入ります。
この頃には子猫のだいたいの歯が生え揃っているでしょう。フードに混ぜていたミルクを少しずつ減らし、ふやかすための時間や水分も段階的に減らしてください。これは子猫に噛んで食べる練習をさせるためです。
生後4週齢になると、排泄も自分で行うようになります。子猫が排泄しそうな素振りをしたら、猫トイレに連れていき、その場所で排泄することを覚えさせましょう。子猫のうちは、子猫用トイレを用意しましょう。成猫用トイレでは段差が高すぎて、子猫の力では登れません。しかし、子猫用のトイレを使う期間はそんなに長くはないため、子猫のからだが成長するまではダンボールやお菓子の箱などで代用してもよいでしょう。もしもトイレではない場所で排泄をしてしまっても、大きな声で叱ってはいけません。排泄したことに対して叱られていると勘違いしてしまう可能性があります。上手にトイレができたらたくさん褒めてあげてください。
また、よちよちと自分で歩きはじめた子猫にとって家の中は危険だらけです。飼い主さんが予想もしない動きをするので、割れやすいインテリアや落ちてきそうな位置にある重い物は、なるべく片付けておくのがおすすめです。飼い主さんが子猫を見れない時間は、猫用のケージやサークルの中で生活してもらうのも子猫の安全対策の1つです。子猫がケガをしない安全な環境づくりをしましょう。
生後8週齢~
生後8週齢からは、フードをふやかさずに硬いまま与えます。多くの子猫は8週齢で歯が生え揃ってくるので、問題なく食べられるでしょう。
7〜8週齢は、子猫が社会的な成長をする最後の期間です。野生の子猫は母猫に狩りの仕方を教わります。ですので、おうちの子猫には猫じゃらしなどでたくさん遊んであげましょう。そして、人間の社会のなかでも暮らしていけるように、手足や耳、口、目元、尻尾などに触れられることに慣らしてください。たくさんスキンシップをとってあげるだけで十分です。
- 爪を切る
- 動物病院で検診を受ける
- 病気をしたときに薬を飲ませる
こんなとき、触られるのに慣れていると飼い主さんと猫、双方にとってストレスがかかりません。
また、ノミ・ダニ予防と1回目のワクチン接種ができるようになる時期でもあるので、獣医さんに相談してください。キャリーバックなどに入ることにも慣れさせましょう。
生後12週齢~
生後12週齢は、2回目のワクチンを接種する時期です。ワクチンは2回目以降、1年に1回の接種となります。健やかに過ごすために、必ず受けるようにしましょう。
子猫を育てるならかかりやすい病気を知っておこう
子猫は母親の初乳に含まれる免疫(移行抗体)によって、生後2~3ヶ月位までは感染症から守られます。しかし、生まれたばかりの子猫はとても小さく、栄養が足りていないと病気にかかってしまう可能性もあります。
◆免疫性溶血症
正式な病名は「新生子同種溶血現象」(しんせいしどうしゅ ようけつげんしょう)で、母猫の初乳が子猫の血液中にある赤血球を破壊してしまい、貧血症状になる病気です。原因は母猫と父猫の血液型の組み合わせによるものと考えられています。
◆子猫衰弱症候群
特定の病名ではなく、何らかの理由で生後まもなく死んでしまった子猫に対する総合診断名です。特に低体温症になると子猫はすぐに弱ってしまい、すこしの遅れが命を奪う結果になりかねません。。
◆低血糖
生まれたばかりの子猫が24時間以上母親のお乳を飲まないでいると、低血糖に陥る危険性があります。生まれたばかりの子猫は肝臓の機能が弱く、グリコーゲンと呼ばれるエネルギーの塊を体内に貯蔵することができないためです。
◆感染症
感染症にかかっている母猫が産んだ子猫は、血液や胎盤を通してウイルスに感染することがあります。
◆寄生虫症
感染症と同様に、寄生虫を持つ母猫が産んだ子猫は、血液や胎盤を経由して寄生虫感染する可能性があります。
他にも、下痢、発熱、嘔吐、低体温症など、気を付けるべき症状はたくさんあります。生命力にあふれた若猫であれば、一過性の症状で終わるような場合でも、体力のない子猫は命を脅かされる可能性があります。「今日一日様子を見て…」「明日の朝、病院に連れて行こう」という少しの判断の遅れが、子猫の命を奪うきっかけにならないよう、少しでも様子がおかしいと感じたら、様子見はせずに直ぐに動物病院を受診するようにしましょう。
まとめ
今回の記事では、生まれたばかりの子猫に必要なお世話についてお伝えしました。生まれたばかりの子猫は生命力が弱いので、適切なお世話をしてあげないとどんどんからだが弱ってしまいます。
1.体温を確保する (1)タオルや毛布にカイロなどを仕込む (2)子猫を包んで体温を逃さないようにする 2.ミルクを与える (1)ミルクの温度を38〜40℃に調整する (2)うつ伏せで寝かせ、シリンジや哺乳瓶で少しずつ飲ませる 3.排泄できるようにお手伝いする (1)ティッシュや脱脂綿を濡らす (2)濡れたティッシュや脱脂綿で、子猫の肛門の周りを刺激する (3)汚れた部分を拭き取る |
最初の章でお伝えした3つは、子猫を拾ったら迅速に行うようにしてください。
生まれたばかりの子猫をお世話は1人だと大変なことも多いです。獣医さんや専門書の知識も借りながら発育段階に応じた適切なお世話を心がけましょう!