「愛猫の爪伸びているけど、爪とぎもしているし爪切りはしなくていいのでは?」と考える人もいるかもしれません。しかし、爪とぎだけでは、猫の爪はきれいになりません。怪我や感染症などのリスクを減らすためにも爪切りは必要です。今回は、爪切りが必要な理由やコツについて紹介します。
猫の爪切りはした方がいい?
ネコ科の動物は爪を自在に出し入れができ、爪を隠して足音を消し獲物に近付き、獲物を捕獲するときや木登りの時には爪を出します。狩りの時に重要である猫の爪は、よく見ると先端がとてもとがっています。家庭で人間と一緒に暮らす猫は狩りの必要はないため、鋭い爪は、家の中にあるものや飼い主、同居しているペットを傷つけてしまいます。そのため定期的な爪切りが必要になります。
もしも猫の爪切りをしなかったら?
猫の爪は先端が鋭く尖っているため、本猫には悪気がなくても飼い主や同居しているペットを傷つけてしまう可能性があります。また、猫の爪の先に菌が付着していた場合は、感染症である「猫引っ掻き病」や「パスツレラ症」などに感染する危険性があります。
それ以外にも、絨毯やカーテンなど家具に爪が引っかかってしまい、無理に取ろうとして爪が折れるという事故にもつながります。また、爪が伸びて鋭利な状態で目元を掻くと、眼球や瞬膜を傷つけてしまう可能性もあります。シニア猫や爪とぎを頻繁にしない猫の場合、古い爪が残ったまま爪が伸び巻き爪になってしまい、肉球に刺さって炎症や痛みが伴うこともあります。
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爪とぎをしているから爪切りをしなくても大丈夫?
猫の爪は玉ねぎのように薄い層が重なってできています。爪が生える時は、内側の層から生え外側の層が剥がれます。猫は定期的に自分で爪とぎをして、古くなった外側の爪を剥がしていますが、爪とぎを行っても先端は尖ったままであるため、爪切りの必要があるのです。
猫の爪切り、コツはある?
猫にとって大事な武器である爪なので、爪切りを嫌がる猫は多いでしょう。無理に押さえつけて爪切りをすると、次からは爪切りを見るだけで逃げてしまったり、威嚇してしまう可能性があります。そのため、爪切りは嫌な事ではない、爪切りをしたら良い事がある、と猫に思わせる事が必要です。
簡単な方法としては寝ているときやリラックスしているときに、優しく撫でながらさりげなく行うと、違和感なく爪を切らせてくれます。ただ、神経質な子は直ぐに異変を感じて起きてしまったり、嫌がって手を隠そうとするかも知れません。そのような場合は無理強いはせず、1~3本位を目安に、先端から1~2ミリ程度を少しずつ切るようにしましょう。
おとなしく良い子で爪切りをさせてくれたら、ご褒美に大好きなおやつをあげる、たくさん遊んであげる、撫でてあげるなど、猫が喜ぶことをして爪切りが嫌いにならないようにしてください。
猫の爪切りはどれくらいの頻度で行えば良い?
猫の年齢によって爪が伸びる期間が異なります。成長期にある子猫は爪が伸びるスピードも早いため、1〜2週間ごと、成猫の場合は2~3週間に1回程度、シニア猫でしたら月1回の爪きりで大丈夫です。ただ、個体差によって爪が伸びるスピードも違うため、普段からこまめにチェックをして、先端が伸びている、ヒビが入っているなどの症状を見つけたら、切ってあげるようにしてください。
血管まで切ってしまわないように気をつけて
猫の爪を良く見ると、根元がピンク色になっている部分(クイック)があります。ここは血管と神経が通っている部分なので、切らないように注意が必要です。前足の場合はクイックの少し手前(先端から3~5ミリ位)後ろ足の場合は血管が見辛いことが多いので、先端から2~3ミリ程度を切るようにしてください。
万が一、クイックの部分まで切ってしまい出血した場合は、爪の先をガーゼで押さえて止血します。また、止血パウダーを使うとより早く止血することが可能です。止血までには2分から10分程度時間がかかることもあります。しばらく経っても出血が止まらない場合は、動物病院を受診しましょう。
爪切りの時の猫の体勢は?
強く押さえつけたり、逃げ場がないように抱え込んだりすると、猫は恐怖を感じて強いストレスにさらされる事になります。猫がリラックスできる体勢で爪切りを行うようにしましょう。
抱っこが好きな猫の場合は、家族の誰かに抱っこしてもらって切る、または後ろ向きに膝の上に乗せて優しく身体をホールドしながら爪切りを行います。抱っこが嫌い、腕を触られるのが嫌、という猫の場合には、うつぶせになっている時にそっと覆いかぶさるようにして、数本の爪を切るという方法があります。
猫によってリラックスできる姿勢は異なるので、工夫して負担のない体制を探してください。
子猫の爪切り、コツはある?
爪の出し入れをする筋肉が未発達な子猫は、常に爪が出ている状態です。そのため布やカーペットに引っかかってしまう事が多く、無理に取ろうとして爪が折れる、取れる、などの事故に繋がる可能性があります。
活発でじっとしていることが苦手な子猫の場合、大人の猫以上に注意が必要です。無理に抱え込んで爪切りを行うと、「爪切りは怖い。痛い」というイメージがついてしまい、爪切りを見ただけで緊張してしまいます。遊びやスキンシップの延長で1本ずつ切る、寝ている間に切るなど、子猫に負担をかけないタイミングで爪切りをするようにしましょう。
子猫の爪切り、生後何か月からやって良いの?
生後1ヶ月が過ぎたら、こまめに爪切りをしましょう。子猫のうちに爪切りの習慣がついていると、大人になってからも大人しく爪切りをさせてくれるようになります。
猫が嫌がって爪切りをさせてくれない、どうしたらいい?
猫の性格によって足を触られるのが苦手な猫、ジッとするのが苦手な猫もいます。まずは肉球に触ることに慣れさせましょう。肉球に触られることに慣れてきたら、爪切りを試してみてください。様子を見ながら、爪切りを行う時は短時間で素早く終わらせる、タオルなどで身体を包むなど工夫をしながら切るといいでしょう。
どうしても嫌がるようでしたら、動物病院やサロンで爪切りをして貰うことをおすすめします。
身体を包む
身体が包まれていたり、狭い空間に入ると落ち着き、静かに爪切りをさせてくれる猫もいます。身体を触られるのが苦手な猫の場合は、お気に入りのタオルや洗濯ネットで全身を包み、手先だけを出して爪切りをするという方法を試してみるのもよいでしょう。ただし、それでも暴れてしまう、嫌がって手を引っ込めてしまうという場合は、お互いにケガをする可能性もあるので、無理はせずに中断してください。
猫の気をそらす
大好きなおやつで気をそらすというのも良い方法です。おやつ作戦はペースト状のおやつをお皿に入れ、猫が夢中になって食べている好きに爪切りをするという方法です。ひとりで爪切りを行うときは、抱っこの体制が取れないため猫の身体に覆いかぶさる形になります。神経質な猫や人慣れしていない猫ですと、覆い被されることに恐怖を感じるかも知れません。家族や友人に手伝ってもらい、一人が猫を抱っこして爪切りを行い、もう一人がおやつを猫あげるという方法ですと、比較的落ち着いて爪切りができます。
爪切りをしながら猫に優しく声を掛ける
音源定位(おんげんていい)という方法で、猫は物音がするとその音がどこから聞こえるのが探すため、意識が音の方向に向きます。爪切りをしているとどうしても集中してしまい、無言になってしまいますが、緊張感や圧が伝わってしまい、敏感な猫ですとそれだけで恐怖を感じてしまいます。爪を切りながら「良い子だね」「えらいね」「がんばれ」「おりこうさん」など優しく声を掛けてあげると、猫は声に集中して爪切りという行為から気がそれます。なにより猫は飼い主に褒められることが大好きです。優しい声掛けでリラックスしてくれるでしょう。
爪切りに慣らすための工夫
嫌がる素振りを見せたらすぐに止めて、また落ち着いているタイミングで数回に分けて爪切りを行うようにしましょう。可愛い猫が嫌がることは一回で済ませたいと思うかもしれませんが、長時間拘束するのではなく、猫の様子を見て無理しない程度に切ってあげましょう。毎日1本ずつ、先端を切るということを繰り返していくうちに、爪切りに慣れてくれることがあります。
猫の爪切りいろいろ…どのタイプがいいの?
猫の爪を切るとき、爪切りは専用の物を用意するのは面倒、家にあって手軽だからと、人用の爪切りを使う方もいらっしゃるかも知れませんが、止めた方が良いでしょう。人の爪は平べったい形状であるのに対して、猫の爪は円錐のような形をしています。人用の爪切りだと上手く切れない、途中で割れてしまう、切り口がギザギザになってしまうなど、猫に負担をかけてしまいます。そのため、必ず猫用の爪切りを使用するようにしてください。
猫用の爪切りも様々なタイプがあります。猫の年齢や爪の状態によって、使い分けることをおすすめします。
猫の爪切り共通の注意点
錆びた爪切りや、切れ味の悪い爪切りを使うと、爪を切るときに振動が起きたり抵抗感が大きくなるため、猫に負担をかけてしまいます。切れ味がよい状態を保つため、錆びたら新しいものに交換してください。どのタイプの爪切りを選ぶにしても、素材は錆びにくいステンレス製が良いでしょう。
ギロチンタイプの爪切りの場合
猫の爪を穴に通して切るタイプです。力をかけやすく、一瞬で爪を切ることができます。ギロチンタイプは数も多く出回っていますが、ステンレス製の切れ味の良いものを選びましょう。注意点としては、巻き爪など変形した爪は穴に通すことが難しいこと、子猫の場合は深爪になってしまう事が挙げられます。
ギロチンタイプの爪切りは主に成猫に使うのがおすすめで、ある程度爪切りに慣れてきてから使用するのがよいでしょう
ハサミタイプの爪切りの場合
ハサミタイプは先端の丸い部分に猫の爪を挟んで切ります。猫の爪切りに慣れていない人におすすめですが、ギロチンタイプに比べて力がいります。また、切る時に圧を感じてしまい嫌がる猫もいるので様子を見ながら切ってあげましょう。
ハサミタイプの爪切りは、子猫や爪が元々柔らかめの猫に使うのがおすすめです。
ニッパータイプの爪切りの場合
工具のニッパーと同じような形状で、持ちやすく少しの力でスパッと切れるのが特徴です。また、爪を切る際の音があまりなく振動も少ないので、爪切りでの猫のストレスを減らすことができます。ただし、楽に切れるということは、深爪になってしまう可能性もあります。先端の1~2ミリ程度を切るという感覚で使うと良いでしょう。
ニッパータイプの爪切りは巻き爪や太く硬い爪でも楽に切れるので、大型の猫やシニア猫で巻き爪になってしまった猫におすすめです。
ピコックタイプの爪切りの場合
あまり聞きなれないピコックタイプの爪切りですが、ハサミタイプの爪切りとギロチンタイプの爪切りの中間のようなもので、ハサミタイプのように刃に爪をあて、ギロチンタイプのようにレバーを握って一気に切れるのが特徴です。力が一定方向に加わるので、爪が割れるという事はありません。デメリットとしては正しい持ち方をしないと爪切り本体がブレてしまい、誤って爪の血管まで切ってしまう可能性があります。
ピコックタイプの爪切りは巻き爪や硬い爪の猫に使うのがおすすめです。
電動やすりタイプの爪切りの場合
爪を切るのではなく、削って短く丸くする電動やすりタイプの爪切りは、切る際の爪の飛び散りがなく、なめらかな仕上がりになります。爪切りを使うのが困難な巻き爪や硬い爪の猫におすすめですが、電動なので音や振動がかなりします。そのため、嫌がって逃げたり暴れたりすることがあります。電動やすりタイプの使用を検討しているのであれば、子猫の頃から慣らせておかないと難しいでしょう。
猫の爪切りを動画で確認する
文章の説明だと、どこまで切って良いのか解らない、と思われる方もいらっしゃるでしょう。Youtubeでは猫の爪切り動画がたくさんUPされています。猫の爪切りに慣れないかたは、動画でイメージトレーニングをしてみても良いかも知れません。
まとめ
猫の爪切りは月1〜2回程度ですが、猫の成長具合で異なります。切る時は、猫が嫌がらないように少しずつ切ってあげるのがおすすめです。爪のお手入れをすることによって、猫や私たちが怪我をしてしまうことを防ぐことができるので、定期的にチェックしましょう。