猫は種類によって性格が違う?飼いやすい猫種、人気の猫種を解説

猫の百科事典 全ての猫種いえますか?猫の種類は何種類?なぜ猫はたくさんの種類があるの?

執筆/水科希望

ウチの猫って何ていう種類なのかな?とふと疑問に思ったことはありませんか?特にMIXの子だと、何と何の血筋なのかな、と首を傾げることも多いですね。かわいいウチの子のルーツを探してみませんか?

猫の祖先は一種類

私たちが通常、猫と呼んでいる人と暮らしている猫のことを、正確にはイエネコと呼びます。イエネコは人間によって家畜化されたネコ科の小型哺乳類と定義されており、そのルーツはリビアヤマネコであると言われています。リビアヤマネコの種類はキジトラ柄のみの1種類。ネコ科の中でも人懐こい性格です。人が狩猟中心の生活スタイルから農耕中心の生活スタイルとなって定住するようになると、保管している穀物や大事な情報媒体である紙を食べてしまうネズミとの戦いが始まります。ネズミを捕って貰うために猫と手を組むことを考えた古代の人々にとって、最も一緒に過ごしやすい種だったのでしょう。

人と過ごすようになると、過酷な自然界で身を潜める必要が無くなり、本来なら自然淘汰されてしまう真っ白な毛柄などでも生き残るようになり、徐々に種類を増やしていったようです。

猫の種類は何種類?

品種登録団体に公認されているだけでも50~60種類(品種団体により異なる)公認されていないものも250種類を超え、合計で300種類以上と言われています。

なぜそんなに種類が多いの?

自然に暮らしている内に環境に適合する種が自然発生するだけでは300種類も増えるとは考えにくいです。人の手が入ることにより、好まれる品種を保護・繁殖・かけ合わせによって人為的に品種を増やしていった結果と考えられます。

猫よりも早くから人と生活していた犬の種類はなんと1000種類以上。猫の場合は「ネズミを捕って下さい!」という猫の特技に沿ったことしか頼っていませんでしたので、人為的に品種を増やす目的は好みの問題でしたが、犬の場合は「色々なところで活躍して欲しい!」と、実用性のある品種改良が行われていました。例えば、胴長短足で可愛らしいダックスフンドは、細長い洞穴に逃げ込むアナグマを捕まえるために品種改良されています。そのため、犬の品種は多岐に渡り猫よりも多いのです。

猫の原産国、第一位は?

最も多くの猫種が生まれているのは、アメリカです。アメリカンカール・アメリカンショートヘア・アメリカンボブテイルなど、名前からして出身が分かる品種もいます。

猫の分類方法はこんなにある!

300種以上もの品種をどのようにして分類しているかというと、骨格や筋肉の付き方、足の長さ、しっぽの長さ、体の細さ、長さ、厚さ、形、毛の長さなど非常に細かく分類されています。純血種と呼ばれる品種ほどその基準は厳しく、毛色や目の色が少し違うだけでも純血と認められないこともあります。

発生スタイル

様々な種類の猫種が存在していますが、冒頭の通り元は1種類のリビアヤマネコ、毛柄もキジトラ柄のみでした。そこからどのように現在の300種以上もの多様性を持っていったのか、その理由には人為的な理由以外にも、生存本能による自然発生、原因不明の突然変異なども絡んでいます。詳しく見ていきましょう。

  • 人為的発生

人間の「こういう猫が欲しい」を形にするために生み出された、交配種。純血種のシャムとペルシャをかけ合わせて生まれたヒマラヤンが分かりやすい例です。人工的にブリーダーが純血種同士をかけ合わせるなど、長い年月をかけて人工的に特徴がある猫を作った場合、その猫は人為的発生タイプと呼びます。

見た目だけでは無く、性格を好みに合わせてかけ合わせる場合もあり、ラグドール・ヒマラヤン・ペルシャなどをかけ合わせて作られたラガマフィンという猫種は、賢く適応力の高い性格です。良くも悪くも、人の手が入ることで様々な猫種が生み出されています。

また、海外でも人気の高いジャパニーズボブテイルと呼ばれるしっぽの短い品種ですが、短いしっぽが日本で多いのは人為的な理由があります。日本では、しっぽの長い猫は猫又という妖怪になってしまうと信じられていました。もちろん迷信ですが、そのせいで長いしっぽの猫より短いしっぽの猫の方が手厚く保護されてきた結果として、日本猫はしっぽが短い猫が多いのです。猫にとってはいい迷惑ですが、人の迷信が猫の種類を限定する場合もあります。

  • 突然変異的発生

厳密にいうと、キジトラ柄以外の柄も突然変異によるものです。キジトラ柄以外の猫が生まれたのは、西暦が始まった頃と言われています。キジトラ柄を作っている遺伝子をアグーチ遺伝子と言い、この遺伝子は1本の毛を層状に染める働きがあります。トラ柄の猫には同じ特徴が残っていることが多いので、猫の抜け毛を良く見てみましょう。1本の毛なのに、根元から毛先にかけてグラデーションカラーになっているのが、アグーチ遺伝子によるものです。

突然変異によりアグーチ遺伝子が働かなくなり、1本の毛が1色になったことで柄の無い単色の猫が生まれるようになりました。西暦以前にもキジトラ柄以外の猫は生まれていたようですが、特に白猫であった場合は目立ちすぎて自然淘汰されてしまったようです。人と一緒に暮らすようになった猫は、どんな柄でも(むしろ珍しい柄ほど)天敵から身を守ることができたため、徐々に増えていったと考えられます。

また、突然変異によって生まれた猫種を計画的に繁殖させて品種として固定された猫もいます。無毛の猫として有名なスフィンクスはその最たる例で、1987年カナダで突然生まれた突然変異の猫です。猫アレルギーのある人にも飼いやすい猫種とされていますが、自力で体温調節や紫外線対策ができないため、一緒に暮らす際には細心の注意が必要です。

他にも、折れ耳がかわいいスコティッシュフォールドの耳も、実は奇形による突然変異です。耳の通気性が悪いため、外耳炎などの病気にかかりやすいので常時お手入れが必要です。折れ耳の猫は骨軟骨異形症(こつなんこついけいしょう)と呼ばれる、関節を保護する軟骨が、硬くなる病気にかかっていることが多いと言われています。『スコ座り』と呼ばれている特徴的な座り方も、病気のせいであの座り方しかできない可能性があり、痛みが強くなることで歩行困難、痛みによるストレスで泌尿器系の病気も発症しやすいので注意深く様子を見てあげましょう。

スコティッシュフォールドだけでなく、純血種の猫は血統を安定させるために血が濃くなり、繁殖過程で遺伝性疾患にかかる可能性が高いため、健康状態には十分注意しながらストレスの少ない生活環境を整えてあげることが何よりも大切です。

  • 自然発生

暮らしている環境に適合するよう、変異した品種です。分かりやすいのは、寒い地方で発生した品種には長毛で体の大きな品種が多く見られます。それは生きるために必要な進化です。本来暑い地域で暮らす猫が長毛になると皮膚病にかかりやすくなるため、合理的ではありません。ですが、寒い地方では皮膚病が発生する多湿の環境は発生しにくく、むしろ寒さから身を守る必要があるため、長毛で空気の層を作り、体を大きくしてエネルギーを蓄えることが有利に働くのです。

北欧出身のノルウェージャンフォレストキャットや、極寒のロシア出身、サイベリアンなどは寒さから身を守るために進化した一例です。余談ですが、短毛種のアメリカンショートヘアも、寒い地方で暮らしていると毛がもさもさに生えてくる例もあるそうです。生きるための力は本当に計り知れないものがあります。

毛の長さ

  • 長毛種

環境適合によって生まれた、毛の長い品種です。主に寒い地方出身の猫種が多く、暑いところは苦手です。中にはブリティッシュロングヘアのように人為的に作り出された猫種もいますが(※)基本的には寒さから身を守るために生まれた品種で、比較的穏やかで大らかな性格の子が多いです。

主な猫種は、ラガマフィン・ペルシャ・メインクーン・ノルウェージャンフォレストキャットなど。

(※)第二次世界大戦後、猫の数が激減してしまった際にブリティッシュショートヘアの血筋を守るためペルシャやロシアンブルーをかけ合わせることによって偶然生まれました。

  • 短毛種

猫の基本的なスタイルです。元々暑い地域で生活していたため、毛皮で日光から皮膚を守り、体温を上げすぎないように調整しつつ、適度な通気性が必要であるため短毛が適していました。比較的活発で運動が好きな子が多いです。

主な猫種は、ブリティッシュショートヘア・ベンガル・ロシアンブルー・アメリカンショートへア・シャムなど。

ボディタイプ

骨格や筋肉の付き方、足の長さなどで6種類に分類されます。オリエンタル(最も細身)とコビー(最も丸みがある)を対極とし、この2種を分割したフォーリン・セミフォーリン・セミコビーに分かれて、それらと別にロング&サブスタンシャル(長くがっしりした、という意味)の6種類です。詳しく見ていきましょう。

  • オリエンタルタイプ

最もほっそりとした猫種です。全体的に細くしなやかで筋肉質、人でいうところのショーモデルのような体型です。逆三角形の顔に対して耳が大きく、胴・足・しっぽが長いのが特徴。

主な猫種は、オリエンタルショートヘア・シャム・バリニーズ・コーニッシュレックなどです。

  • フォーリンタイプ

オリエンタルより丸みをおび、コビーほど丸くは無く、筋肉質でスレンダー。いわゆる、細マッチョです。オリエンタルと同じく逆三角形の顔に対して耳が大きく、胴・足・しっぽが長く、口元(マズル)はやや長めで、アーモンド型の目が特徴。

主な猫種は、アビシニアン・ジャパニーズボブテイル・ロシアンブルー・ソマリ・ターキッシュアンゴラなど。暖かい地域に適応した品種が多く見られ、南方タイプとも呼ばれています。

  • セミフォーリンタイプ

中間的な体型で、オリエンタルとコビーの中間に位置します。フォーリンタイプよりずっしり重みがあり、短めでがっしりした胴体を持っています。人でいうと、がっしりした体育の先生のような体型です。フォーリンよりも胴や足が短く、顔も丸みを帯びており、耳は大きめ、口元(マズル)は短め。日本で最も多くみかける体型です。

主な猫種は、スフィンクス・ラパーマ・アメリカンカール・デボンレックス・エジプシャンマウ・ハバナブラウン・マンチカン・オシキャット・スノーシュー・トンキニーズなどです。

  • コビータイプ

全体的にずんぐりむっくりしており、筋肉質でがっしりした体つきで、胴や足は短めですが肩幅が広いです。人でいうと、「強い!」と一目で分かる柔道の選手が近いでしょう。丸い顔と小さめの耳、耳の間隔が離れており、しっぽは短めです。

主な猫種は、エキゾチックショートヘア・ヒマラヤン・ペルシャ・マンクス・バーミーズ・キムリックなどです。

  • セミコビータイプ

コビーより体や足、しっぽが長めで、重心は低くありません。顎がしっかりしており、頭が大きく筋肉質で貫禄があります。人でいうと黒帯の空手家のような漢字です。丸みを帯びた顔、丸い瞳はコビーに似ています。

主な猫種は、アメリカンショートヘア・シンガプーラ・スコティッシュフォールド・ブリティッシュショートヘア・アメリカンワイヤーヘア・ボンベイ・シャルトリュー・ミヌエット・セルカークレックスなどです。

  • ロング&サブスタンシャルタイプ

猫の体型の中で最も大きなタイプ。長い手足と胴体、大きな体で骨太、筋肉質、体重も多く、時には10キロ(米と一緒!)を超える個体もいます。人でいうと身長2メートル近くあるバスケット選手のようです。寒さの厳しい北国の環境に適応した品種に多く見られる体型です。

主な猫種は、ノルウェージャンフォレストキャット・メインクーン・ラグドール・アメリカンボブテイル・ベンガル・バーマン・ラガマフィン・サイベリアン・ターキッシュバンなどです。

まとめ

たった1種類しかいなかった猫が今や300種類以上も存在しているのは、自然適合による進化、突然変異など計り知れない部分も多いですが、人と暮らしてきた影響も大きいです。人には良くも悪くも多種族に干渉する力があります。猫と人類は狩猟スタイルから農耕による定住スタイルになった頃からの長い付き合いであり、猫は人の勝手で神様の使いにも、悪魔の手先とも呼ばれ、不遇に扱われている時代もありました。しかし、いかなる時にも揺るぎないたった一つの真実があります。猫はどんな種類であろうと、とてつもなくかわいいということ!そんなかわいい猫さまの魅力をルーツという側面から思う存分知ることができたでしょうか?その一助となれていましたら、幸いです。

執筆者
東京出身、長野県在住のアパレル勤務兼ライター。 仕事に燃えに燃えていたが、ある日ふと「人ってストレスで死ぬんだよなぁ」と思い、絶対に叶えたい夢を一つ現実のものとする。 久しぶりに猫と暮らしたい、その夢を叶えたら次々に夢という名の野望が出てきて一歩一歩叶えている最中。 現在、猫と暮らす猫のための家を建てたい、最終的に小説家兼ライターに肩書きを変えたいという野望に燃えている。