「目は口ほどに物を言う」という諺がありますが、猫の目は人間以上に沢山の情報を物語っています。
「嬉しい」「怖い」などといった、猫のその時々の気持ちの表れはもちろんですが、実は重大な病気のサインを伝えようとしていることもあります。
猫の目、こんな役割がある
多くの動物にとって、目は生活していく上でとても重要な役割を担っています。物や光の認識や色の識別など実に様々な機能を持っていますが、人間と猫とでは構造や見え方に多少の違いがあります。
①動体視力に優れている
動体視力とは、動いている物体を見分ける能力のことです。動体視力が優れているほど、素早い動きをしっかり目で追って反応することが出来るので、プロの野球選手やテニスプレイヤーは、この能力に非常に長けている人物が多いようです。
そして猫は、人間と比較するとなんと四倍ほどの動体視力を持っているといわれています。この能力は、特に遠くにいる獲物に対して威力を発揮するのですが、なんと視界の30メートル以内で動いているものであれば、例え人間には見えないような小さな虫でも発見することが出来るのです。
②暗がりでもはっきり見える
夜行性の動物である猫は、暗闇の中にいてもはっきりと周囲の状況を把握して行動することが出来ます。
これは、猫が夜行性であるが故に、夜に動いている獲物を捕らえる場面が多いことから、暗闇でも対象をしっかりと確認出来るよう視力が発達してきたためといわれています。
人間の6倍も暗闇で目が見えているとされている猫ですが、その秘訣は、光がより多く目に入るように発達している大きな水晶体にあります。猫の目を横から覗いてみると、透明のビー玉のように見えますが、その部分がレンズの役割を果たし、多くの光を取り入れることが可能になっているのです。そして、目の中に入ってきたそれらの光を眼球の中で増幅することで、暗い中でもはっきりと明るい視野を確保しています。
不思議がいっぱい、猫の目!
猫の宝石のように美しい目は、私達を魅了するチャームポイントのひとつといえるでしょう。そんな猫の目の色は、個々が持つ遺伝子により決まっているのですが、それにはいくつかの法則があることが判明しています。
目の色は何種類?
猫の目の色は大きく分けて五種類あります。
ブルー、グリーン、ヘーゼル(ブラウンやイエロー、グリーンなど二色からなるグラデーション)、アンバー(イエローやゴールド)、カッパー(銅色)の5色が、代表的なカラーといわれています。
なぜ左右非対称の目の色の猫がいるの?
左右で目の色が異なる状態であることを、私達は「オッドアイ」といいますが、正式には「虹彩異色症」と呼びます。一見すると美しく魅力的なもののように思えますが、実はこれは先天的な遺伝子異常だといわれているのです。
出現割合は猫全体の1割以下と非常に珍しいもので、オッドアイを持つ猫の特徴を挙げると、全身の毛が真っ白であることと、目の片方はブルー、もう片方はアンバーまたはカッパーであることです。
そして残念ながら、ブルーの目の方には視覚異常が現れることがほとんどです。この異常は先天的なもので、目のメラニン色素だけが少なくなるために発症してしまうといわれています。
目の色はどうやって決まるの?
前述した通り、目の色は個々が持つ遺伝子によって決定します。キトンブルーといって、虹彩内の色素が少ない子猫のうちは、皆ブルーがかった目をしていますが、成長するにつれて本来持つ目の色へと徐々に変わっていきます。同じ親から生まれた兄弟猫であっても、毛色や性格がそれぞれ違うように、目も似ているようで微妙に異なる色を持つことは珍しくありません。
ただし、成猫の目の色が急に変化したように見えたり、模様が出てきたりしたら注意が必要です。目の虹彩(黒目の周りの色が付いている部分)に、メラノーシスと呼ばれる茶色い模様を持つ猫がいますが、これは虹彩内のメラニン色素を持った細胞で、異常を起こすことはほとんどありません。しかし、稀にメラノーシスが悪性黒色腫(悪性メラノーマ)と呼ばれる悪性腫瘍、すなわち目のガンに転化してしまうことがあります。
悪性メラノーマは転移をしやすい腫瘍であるため、早期発見・治療を行うことが望ましいです。
猫の目で解る!あなたに伝えたい「気持ち」
目の開き方や瞳孔の大きさなど、猫の目は実に様々な感情を物語っています。
今はこんな目をしているからきっとこういう気持ちでいるのだろうと、猫の目について知識を持っていると、愛猫との円滑なコミュニケーションに役立てることが出来るでしょう。
上目遣いで見る
上目遣いになるということは、おそらく猫はあなたの足元に擦り寄って、下から可愛く見上げている状況でしょう。
このような時、猫は「おやつが欲しいな!」「撫でて!」など、あなたに何か求めていたり甘えていることが多いです。まん丸な可愛いお目々で見上げられると、おやつをあげる手がついつい止まらなくなってしまいそうです。
半分目を閉じている
猫が非常にリラックスしている時や、撫でてもらうなどしてウットリと気持ちが良い状態の時、まぶたがトロンと下がって半目になります。気持ち良さと安心感で、ついついそのまま眠りに落ちてしまうこともあります。
瞳孔が細くなる「猫目」
猫が心から安心している時、瞳孔が縦に細長くなりますが、この状態を私達はよく「猫目」と呼びます。
例えば、高くて優位なポジションから家族の様子を見下ろすように眺めている時など、身の回りに危険がなく体の力を抜いてリラックスしている時に多く見られます。
また、日中など周りの環境が明るい時も、瞳孔を細長くすることで目に入ってくる光の量を調節しています。
瞳孔が開いている
瞳孔がまん丸に開いている時、猫は非常に興奮している状態です。猫じゃらしなどのおもちゃで遊んでいる時に多く見られる、いわゆる「ハンター状態」にある時の目です。同じく、怖かったり緊張している時にもこのような目になります。
また、夜間など周りの環境が暗い時も、瞳孔を広げて黒目を大きくすることで、なるべく沢山の光を集めようとします。
瞬きをする
愛猫が可愛いあまりに、その綺麗な目をついジッと見つめてしまいたくなるかもしれません。しかし、猫達にとって目を凝視されることはケンカを売られていることと同じで、猫の世界ではご法度な行為なのです。そのため、猫は愛する飼い主や仲の良い他の猫と目が合ってしまった時、瞬きをすることで空気を和らげているのです。もし、愛猫と目があった時に瞬きをされたら「大好きだよ」のサインだと思っていいでしょう。
目をそらす
愛猫と目が合った時に、プイッと目をそらされて「嫌われているのかな?」とショックを受けた経験をお持ちの方は多いかもしれません。実はこの行為も、瞬きと同じように「あなたに敵意はありません」という猫の思いの表れなのです。
そらし目は、例えば猫が何か粗相をしてしまって、飼い主にお説教をされているような場面でも見られることがあります。これは「あなたとケンカをしたくないよ」という、猫の可愛い意思表示なのです。
じっと見つめてくる
本来、猫は人間のように目と目を合わせて他者と交流を図ろうとする動物ではありません。しかし、人間と共に暮らすようになり、視線を交わしてコミュニケーションをとる技術を徐々に身に付けてきているといわれています。
猫がじっとあなたを見つめてくる理由は、その時々で異なります。何か要求したいことがある時や、不満がある時、警戒している時、甘えたい時など本当に様々ですから、状況を見て愛猫の伝えようとしている思いをあなたが判断してあげる必要があります。
私の経験談になりますが、昔飼っていた猫は「トイレが汚れている時」「ご飯が食べたい時」「かまって欲しい時」などに、私の前に立ちはだかり、目を真っ直ぐに見つめながら「ニャー!」とアピールしてくれていました。
顎をひいて睨む
「睨み」は、主に猫同士のケンカの際に見られる行為です。野良猫の縄張り争いで相手にケンカを売る時や、多頭飼いをしているご家庭で猫同士のちょっとしたトラブルの際にも見られることがあります。
顎をひき、おでこを見せて目を逆三角形にしてにらみつける様子は、さながらファイティングポーズをとっているボクサーのようです。
病気のサインかも?目の状態に気を付けて!
目は、皮膚と同じように、目視で異常がわかる臓器の一つです。
目にゴミが入るような些細なことがきっかけで痛々しい炎症を起こしてしまったり、白目に黄疸が出るなど全身を脅かすような重大な病気のサインが見られる場合もあります。
どんな症状でも決して軽視することなく、少しでも異常を感じたら速やかに動物病院を受診するようにしましょう。
ドロッとした目ヤニが出ている
「結膜炎」の代表的な症状であるといえます。これは、目の結膜に炎症が起こる病気で、他にも、涙が止まらない、目の充血、目の上の皮膚が赤く腫れたり毛がはげる、などといった症状が見られます。猫カゼなどウイルス性の病気と併発することが多いです。
涙目になっている
「流涙症」の疑いがあります。
涙が過剰に作られたり、作られた涙がうまく排泄されなくなったりすると、常に目が潤んでいたり、涙が流れている状態になってしまいます。
結膜炎や角膜炎、ブドウ膜炎などといった目の疾患が原因であったり、目にゴミが入るなど、何らかの刺激によって涙が過剰に増え、流涙症を引き起こすこともあります。
また、涙がうまく排泄されない排泄障害を起こしている可能性も考えられます。「鼻涙管狭窄」といって、目と鼻を繋いでいる鼻涙管と呼ばれる管が詰まる、或いは狭くなる疾患です。
いずれにせよ、速やかに動物病院を受診し、流涙症の原因となる疾患を突き止めてもらう必要があります。
目が開けにくそう・ショボショボしている
角膜と呼ばれる目の表面を覆っている透明の膜に傷が付き、炎症を起こしている可能性があります。この病気を「角膜炎」と呼びますが、結膜炎と併発して起こることも多く、症状としては、涙が出る、痛みから目を細めショボショボさせる、角膜が白く濁って見える、などがあります。
また「角膜穿孔」である可能性も考えられます。これは、角膜に穴(穿孔)が開いている状態で、主に猫同士のケンカなどによる外傷が原因で起こりますが、角膜炎の悪化により発症することもあります。症状は角膜炎と似ていますが、更に強い痛みを伴い、目の充血や腫れ、むくみ、涙が止まらなくなるなどの症状が見られます。
目の大きさが違う
片側の目だけ異様に大きく見えるような場合「緑内障」という病気が疑われます。
眼球内には房水と呼ばれる液体が流れていて、つねに循環・生産・排出されています。この房水の流れが阻害されたり排出が悪くなると、眼圧が上がってしまいます。この病気が緑内障です。
強い痛み、目の表面が白濁して見える、目全体が大きくなる、などといった症状が現れます。病状が進むと、網膜や視神経が圧迫され、最悪の場合失明することもある恐ろしい病気です。
白っぽく濁っている
「白内障」という病気が疑われます。
これは、水晶体の一部または全部が白濁し、視力が低下してしまう病気です。猫ではそう多く見られる病気ではありませんが、生後数ヶ月~2才くらいの若い猫が稀に発症することがあります。先天性や遺伝性である場合がほとんどですが、外傷が原因で引き起こされるケースも確認されています。進行すると、緑内障を併発し失明することもあるので、適切な治療が必要です。
黒っぽく濁っている
「角膜分離症」と呼ばれる、代謝障害が原因で目の表面が黒く濁ってしまう病気が疑われます。
黒く濁ってしまった部分は、やがてかさぶたのようになるため、角膜分離症と呼ばれています。残念ながら発症の原因は解明されていませんが、猫カゼなどのウイルス感染症と何らかの関係があるといわれています。
充血している
「ブドウ膜炎」という病気が疑われます。
眼球は、虹彩・毛様体・脈絡膜と呼ばれる膜状組織にグルッととりまかれているのですが、これら三つの組織をまとめてブドウ膜と呼びます。そして、そこに炎症が起こってしまう病気が、ブドウ膜炎です。目の充血、目が白っぽく見えるなどといった症状が出ます。猫エイズ、猫白血病ウイルス感染症、猫伝染性腹膜炎などが主な原因で発症します。白内障と併発して起こることもあります。
目の周りが赤くなっている
結膜炎、角膜炎などといった目の疾患による症状のひとつとして見られることもありますが、目にゴミなどが入ったことによる刺激や、猫同士のケンカによる外傷、花粉やハウスダストによるアレルギー反応など、様々な原因が考えられます。
目頭に突起や膜がでている
目頭にある瞬膜と呼ばれる白い膜の下に、瞬膜線という充血した組織があるのですが、これが目の外側に飛び出してしまう病気を「チェリーアイ」といいます。
先天性のものであるほか、加齢が原因で発症することもあります。
外側に飛び出した部分をそのままにしておくと、傷が付いてしまったり、感染を起こして結膜炎や角膜炎の原因にもなり得るので、手術をして元の位置に戻してあげる必要があります。
まとめ
猫は何を考えているか分からないという世間の声もありますが、私達愛猫家からすれば、猫の目の美しさや表情の豊かさは、永遠に眺めていられるほど魅力的なものです。猫の目のことをよく理解し、愛猫とより仲良く健康的な毎日を過ごしていきましょう。