猫の分離不安症の症状、対応策、治療法を徹底解説

猫の健康 甘えん坊のあなたの愛猫、もしかしたら分離不安症かも?こんな症状があったら要注意!

執筆/たけのこ@猫パシリ20年

近年、猫の人気は高まっており、特に甘えん坊の猫は愛嬌いっぱいで飼い主さんにとって可愛らしい存在です。子猫から育てていると、あまりの可愛さについ溺愛し過ぎて甘やかしてしまうという方も少なくないと思います。しかし、そんな猫に対する溺愛行為が実は【分離不安症】という病気の引き金となり、飼い主さんの姿が見えないと泣き叫ぶ、暴れる、自傷行為をするなど問題行動につながってしまうかもしれません。

この記事では、気付かれにくい【猫の分離不安症】について解説していきます。せひ、この記事を参考に愛猫が分離不安症になっていないかチェックしてみてください。

猫の分離不安症とはどんな病気なの?

猫の分離不安症とはどんな病気なの

分離不安症とは、飼い主さんと離れることで極度の不安を感じてしまい、飼い主さんの留守中に精神状態が不安定となり、それに伴って「物を壊し暴れ回る」、「大声で鳴き声をあげる」、「家のあちこちで粗相をする」などの問題行動を引き起こすようになる心の病気のことを言います。特に留守番の時に症状が出ますが、留守中だけでなく、飼い主さんが違う部屋に行ってしまう、お風呂やトイレに入ってしまうだけで、不安を感じ大声で泣き叫ぶ猫もいます。

かつては犬に多く見られることが多かった分離不安症ですが、「完全室内飼いの普及」、「ワークスタイルの変化」など、人間と猫との生活に変化が生じ、それに伴い猫にも分離不安症が多く見受けられる様になりました。

また、分離不安症を抱える猫は日本だけでなく、世界中に存在します。アメリカの獣医学会誌に掲載された「separation anxiety syndrome in cats 136 cases 1991-2000」というデータによると、分離不安症と診断された猫136匹のうち、トイレ以外での排泄行為が96匹、泣き叫び続ける猫が16匹、破壊行動を見せたのは12匹、8匹が過剰なグルーミングをするという結果が報告されました。

どんな症状を猫の分離不安症というの?

猫の分離不安の症状。分離不安症の猫が見せる特異的な症状とは。

猫が強い愛着を感じている飼い主さんと同じ空間にいないことで、強いストレス反応がでることを分離不安症と言いますが、ではどのような症状、行動を取るのでしょうか。具体的に紹介していきます。

暴れる・鳴き続ける

独りぼっちになると「家の中の物を壊し暴れまわる」、「大声で鳴き続ける」ケースがあります。これを「攻撃型の分離不安症」と呼びます。

文字どおり「物を壊す」場合と、「机の上や棚の上から、手当たり次第に物を落とす」場合があります。また大声で泣き続けるパターンでは、飼い主さんの姿を見るまでは、声が涸れても鳴き叫び続けることが多くあります。

執拗なグルーミング

本来、猫にとってのグルーミング(毛繕い)は毛並みを整える以外に、精神を安定させる行為でもあるため、執拗なグルーミングは異常な行動と考えられます。

グルーミングを必要以上に行うことで脱毛を引き起こし、「ハゲ」が発生する可能性があります。ざらついた構造である猫の舌で毛が無くなった部分を舐め続けると、皮膚が傷つき炎症を引き起こしやすくなります。こうして引き起こされる皮膚炎を「舐性皮膚炎」といい、化膿や出血することがあります。またグルーミング(毛繕い)が必要以上に増えると、体内に猫自身の毛が蓄積し、毛玉を吐く回数も増えてしまいます。猫の異常に気付くために、普段から猫がグルーミングをしている様子にも気を配りましょう。

グルーミング以外にも注意をしたいのが、自傷行為です。自分の脚や尻尾を血が出るくらい噛んでしまう、被毛を噛み千切って脱毛をしてしまうなど、自らを傷つける行為をすることで、飼い主さんがいない不安やストレスを解消しようとします。

飼い主さんがいないときに執拗なグルーミングや自傷行為を行う猫は、「自己犠牲型の分離不安症」に分類されます。

トイレ以外での排泄行為

猫は本来きれい好きで、決まった場所(トイレ)で用を足す動物ですが、分離不安症の猫の場合、トイレ以外での排泄行為が見受けられます。飼い主さんが外出から帰ると、トイレはきれいなままなのに、トイレ以外の床、ベッド、ソファーの上などで排泄行為をしていたという経験があるのでしたら、分離不安症の疑いがあります。ただし、粗相の問題は分離不安症以外にも、膀胱炎などの病気の可能性もあります。粗相が何度も繰り返しあるのでしたら、かかりつけ医に相談をしてください。

体調を崩す

猫の分離不安症は問題行動だけでなく、猫の体調面にも悪影響を及ぼします。「下痢や嘔吐が多くなった」、「いつもより食欲がなく、ご飯も残す」なども症状となります。

ここで注意したいのが猫は本能的に弱っていることを隠そうとする生き物であるため、本当は体調を崩しているのに何でもない素振りをすることがあります。「吐く頻度」、「トイレチェック(回数・便の状態)」や「食事量」を日頃から飼い主さんが把握することが大切となります。

うちの猫は大丈夫?猫の分離不安症チェック項目

うちの猫は分離不安症?猫の分離不安症チェック項目

上述した分離不安症を示す症状以外に、飼い主さんが出かけようとすると落ち着きがなくなり部屋の中をうろつく、足元にすり寄ってきて離れない、などの行動パターンが見られます。下記のような行動が見られたら、分離不安症の疑いがあります。

【分離不安症チェック項目:飼い主さん不在時】

☐ トイレ以外の場所でおしっこをする。
☐ 大声で泣き叫ぶ・鳴き続ける。
☐ 執拗なグルーミング、手足や尻尾を噛む自傷行為をする。
☐ ひとりぼっちだとご飯を食べない。食べたものを吐いている。
☐ 物を壊す。
☐ 大好きな飼い主以外の人に攻撃的な態度を取る。
☐ 避妊・去勢手術後でも壁や物などに対してスプレー行為(マーキング)を行う。

飼い主さんが在宅中にも下記のような行動が見られたら、分離不安症を疑いましょう。

【分離不安症チェック項目:飼い主さん在宅時】

☐ いつも飼い主さんの行動を見つめている。
☐ 飼い主さんが見ていないと(傍にいないと)ご飯を食べない。

☐ 飼い主さんがいくところであれば、トイレ、お風呂などどこでもついて来る。
☐ 飼い主さんと同じベッドで眠り、身体の一部を飼い主さんにくっつけている。
☐ 頻繁に下痢・嘔吐する。

このような特徴的な行動を頻繁に見かけたら分離不安症の可能性がありますので、一度動物病院などに相談してみましょう。

猫の分離不安症の原因は?

猫の分離不安症の原因は?なぜ猫が分離不安症になる?

分離不安症になりやすいといわれているのは、以下のような猫です。

  • 完全室内飼いで家族が常にいる環境、もしくは多頭飼育で同居動物がそばにいる環境
  • 飼い主さんの転居、結婚や出産などの家族の増減で生活環境が変化した
  • 飼い主さんの在宅時は常に構って貰えるなど、強い愛情表現を受けている
  • ひとりでの留守番中に恐怖体験をした
  • 離乳前に親猫とはぐれた、または保護され人間によって育てられた
  • 高齢や病気で不安傾向が高まっている

詳しく解説していきます。

生活環境からくるもの

野生の猫科動物は単独で暮らし、群れを形成することはありませんが、イエネコになってからは飼い主さんや飼い主さん家族、同居動物が常にいる環境で生活を送る猫も少なくありません。常に人間や同居動物が傍にいる猫は、お腹がすいた、遊びたい、という欲求が満たされる環境に身を置いています。自由気ままに生活を送っているように見えても、誰かが傍にいるという安心感に満たされているのです。そのため、何かの理由でひとりぼっちのお留守番をせざるを得なくなると、周りに誰もいないという不安感がストレスとなり、分離不安症の引き金になることがあります。

生活習慣からくるもの

猫はストレスに弱い生き物です。普段の生活が急に変わってしまうことで心身に影響が出て、分離不安症になることがあります。代表的な原因としては「就職・転職による転居(引っ越し)」、「家族の増減」、「突然、猫に関わらなくなる」などが挙げられます。

新しく同居動物を迎え入れた際に、自分だけに向けられていた愛情が分散されることで分離不安症になる場合もあります。また、多頭飼育の場合には、仲の良い同居動物の入院や死去が分離不安症の引き金になるだけでなく、突然体調を崩してしまう、持病が進行してしまうという猫もいます。

いずれにしろ生活に大きな変化が生じてしまう際は、猫にも相当のストレスを与えてしまう危険性を考慮しなければなりません。

飼い主との距離感

日頃から猫を溺愛されている方こそ、猫の分離不安症は注意しなければなりません。本来、猫は単独で行動をする生き物です。20年程前までは、猫は自由に家の中と外を行ったり来たりして生活をしていましたが、「完全室内飼いの普及」「ワークスタイルの変化」などから、飼い主さんとの関係性が変化しました。飼い主さんと猫の関係性は、母猫と子猫の関係性に近くなっているのです。子猫は母猫がそばを離れると、パニックになって泣き叫びます。それと同じことが起こってしまうのです。

自分のことを守ってくれる母親のような存在の飼い主さんが、ある時突然いなくなってしまうことでパニックに陥ります。結果として分離不安症となり、問題行動が引き起こされてしまいます。在宅時や帰宅時の飼い主さんの猫にたいする過剰な愛情表現も、分離不安症には良くないとされています。家を出るときに「良い子にしててね」「すぐ帰ってくるよ」など声を掛けてしまうと、飼い主さんが不在になるんだということを意識させてしまい、結果として分離不安症に繋がってしまいます。帰宅時には思いきり誉めてあげたいところですが、分離不安症の兆候がある猫の場合には、出かけるときも帰宅時も、控えめにドライにふるまうことも大切になります。

基本的に母猫は子育てする際、ある程度成長したら子猫の自立を促すようになります。完全室内飼いの猫では飼い主さんが母猫のポジションとなるため、適切な距離感を意識しなければなりません。

恐怖体験からくるトラウマ

過去に痛い思い、怖い思いすることでトラウマを持ってしまった猫は、ひとりにされると同じことがおきるのではと感じ、分離不安症になってしまうことがあります。

例えば飼い主さんの留守中に地震や台風を経験した、家の前で工事が始まった、交通事故があり大きな音がしたなどの恐怖体験から、飼い主さんが留守になることで、また同じことが起きるのではないかと不安になり、分離不安症の兆候を示すことがあります。

精神的なトラウマ

猫の分離不安症は過去に経験した精神的なトラウマによっても引き起こされることがあります。飼い主さんの留守中に室内で事故が起きて怖い思いをした、ケガを負ったなどを経験していると分離不安症になるリスクが高まります。

他にも過去に虐待などの恐怖やネグレスト(育児放棄)を体験した猫や、生まれてすぐまたは離乳前に親と引き離され人間によって育てられた猫も同様に、分離不安症を引き起こしやすい傾向にあります。

年齢や病気によるもの

人間である私たちも、病気になると人恋しくなることがありますが、猫にも同じような傾向があるといわれています。また、シニア期に入った猫も、若いころのように自由に身体を動かすことができないという不安から、常に構って欲しいという欲求が強くなり、分離不安症の兆候をみせることがあるようです。

若いころは家の中で自由に過ごし、自分の気が向いたら飼い主さんに甘えていたという猫が、シニア期になって突然膝の上で寝るようになったということもあります。普段は着かず離れずの生活を送る猫が突然甘えん坊になったため、疑問を感じた飼い主さんが病院に連れて行くと病気が見つかったということもあるようです。猫の様子に変化を感じたら、念のために動物病院を受診することをお薦めします。

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猫が分離不安症だとどんな問題がある?

猫が分離不安症だとどんな問題がある?

飼い主さんベッタリの甘えん坊の猫はとても愛らしい存在ですが、気をつけなくてはならないのが、24時間365日、猫の傍にいれるわけではない、という事です。今までは在宅勤務だったが出社しなくてはいけなくなった、自分または猫が入院することになった、地震や台風で避難所に行かなくてはならないなど不測の事態は起きます。そのようなとき、分離不安症の猫は飼い主さんがそばにいないストレスで、自傷行為に及んだり、体調を崩してしまったりします。猫が病気や怪我で入院して治療が必要になったとき、分離不安症から泣き叫び続ける、自傷行為をするなどがみられると、治療途中で自宅に帰されてしまう、という事もあります。

うちの子は甘えん坊で可愛い、私がいないとダメなの、などと思わずに、大切な愛猫のためにも分離不安症と向き合い、治すためにはどうすれば良いかを考えてあげましょう。

猫の分離不安症、どうやって診断するの?

猫の分離不安症、どうやって診断するの?甘えん坊の猫と分離不安症の猫の違いは?

猫の分離不安症は心の問題のため、聴診やレントゲン、血液検査などでは診断が出来ません。そこで重要になってくるのが、飼い主さんへの問診になります。飼い主さんから聞き取った内容を元に、実際に飼い主さんが留守中に猫がどのような行動をするのか、ペットカメラなどで録画します。

分離不安症の猫の場合、問題行動を起こすのは飼い主さんが外出した30分以内といわれています。一人ぼっちになってもフードが食べられるか、泣き叫んでいないか、自傷行為はないか、暴れまわらないか、などを録画した動画でチェックします。特にフードや大好きなおやつを一人ぼっちの状態でも食べられるかは、分離不安症の重症度の判断基準になります。

分離不安症が重篤な状態の猫の場合、動物病院で飼い主さんと一緒であれば大人しくしていられるのに、自分だけが別の部屋に連れていかれると、泣き叫んだり、威嚇や暴れるといった行動を見せる猫もいます。

猫の分離不安症は治療出来るの?

猫の分離不安症は治療出来るの?猫の分離不安症、診断や治療方法を詳しく説明。

分離不安症は猫にとっても飼い主さんにとっても大きな問題です。ここでは猫の分離不安症の治療方法について触れていきます。

行動療法

猫の分離不安症の治療方法の一つに「行動療法」があります。  

行動療法では、猫と飼い主さんとの距離感を意識することが非常に重要です。飼い猫を放置せず、飼い主さんの存在に依存もしない適切な距離感が求められます。ただし、分離不安症の猫をいきなり何時間も独りぼっちにさせるのは好ましくありません。まずは数分程度、短時間の間一人でいることに慣れさせ、徐々に留守の時間を長くしていきます。留守番中に何事もなく過ごせたら、おやつや遊びというご褒美を与え、「留守番をしたら良いことがある」と覚えさせます。

猫の行動療法は複雑で、誤った行動を取ってしまうと逆に分離不安症を悪化させてしまうケースもあります。実践する際は、かかりつけの「獣医師」もしくは動物行動医学に精通した「動物病院の行動診療医」に指導を受けてから行うことを推奨致します。

環境整備

環境整備も猫の分離不安症の治療方法として有効となります。

優先して行いたいことは「猫が落ち着ける隠れ家の確保」です。隠れ家を用意する際のポイントとして「姿を隠せる」以外にも「高い位置」にあることが望ましいです。樹の上で外敵から身を隠し身体を休めていた野生の名残から、猫は高い所を好みます。高所は自分のなわばり(室内)を監視するのにも適しているため分離不安症の猫にとって安心感につながります。お薦めの隠れ家は2~3段の大き目のケージです。ケージは飼い主さんがいつもいる部屋に起き、飼い主さんの匂いがついたもの(シャツやセーター、タオルなど)を猫ベッドの中に入れておきます。ケージの中に閉じ込めるのは1日数分から始め、徐々に時間を長くしていきます。閉じ込めている時間以外はケージのドアを開放し、出入り自由にします。出来れば食事や飲水は、ケージの中で摂らせるようにしてください。ケージが自分だけの安全な隠れ家(テリトリー)と解れば、飼い主さんの留守中も安心して過ごせるようになるでしょう。

ケージに閉じ込めるのがかわいそうという方には、キャットタワーもお薦めです。猫が大好きな上下運動ができ、高い場所で身体を休めらるので安心感を得られます。しかしキャットタワーは決して安い物ではないため、すぐに用意するのが難しい方もいらっしゃると思います。その場合は、本棚や食器棚などの家具を組み合わせ、高低をつけた配置をすることで、キャットタワーの代用品になります。棚の最上段にお気に入りのベッドを設置する、棚の中段や床面に段ボールやカゴを置くなど、何かあったときに身体を隠せる場所を作ってあげると良いでしょう。

他にも、留守中にテレビを点けておく、音楽を流しておく、という方法も有効であるといわれています。猫はとても敏感な動物なので、飼い主さんのお出かけが近所のコンビニに行くのか、長時間のお出かけになるのか敏感に察すると言われています。飼い主さんといつも一緒に聞いている生活音(テレビや音楽)があれば、「ちょっとしたお買い物なんだな」「すぐに帰ってくるんだな」と思い、置いて行かれたという不安を解消できるようです。この方法を試す場合には、出かける30分から1時間前から音を出しておきましょう。飼い主さんが帰宅したときには、猫は大喜びで出迎えてくれると思いますが、相手をするのは興奮が冷めてからにしましょう。直ぐに抱き上げたり、一緒になってはしゃいだりすると、お出かけ=特別なことという意識が強くなり、分離不安症が改善しないばかりか、酷くなる可能性もあります。

また分離不安症には多頭飼いが有効なケースもあります。飼い主さんに向けられていた依存心が同居猫にも向けられることにより分離不安症の症状が緩和されます。ただし、依存する対象が飼い主さんから同居猫に移るというだけなので、根本的な解決にはなっていません。同居猫の病気や怪我での入院、死去が引き金で分離不安症が酷くなることもあります。また、多頭飼いの場合には、猫同士の相性が重要になります。分離不安症の改善に新入り猫を迎えたのに、威嚇してしまう、喧嘩が絶えないということだと、別のストレスが溜まってしまいます。分離不安症の症状が酷く、飼い主さんへの依存度が高い猫の場合、新入り猫がきたことで愛情が分散されたと感じ、執拗に新入り猫をいじめるというケースもあります。仲が悪い猫同士だとさらに問題が増えてしまう可能性も考慮してください。

環境整備に関しても「獣医師」や「動物行動診療科」に行動療法と併せて指導を受けてください。

薬物療法

上記に解説した「行動療法」、「環境整備」でも改善が見受けられない場合は「薬物療法」という選択肢も検討する必要があります。

抗不安薬などを猫に投与することで改善を図る方法になりますが、猫の分離不安症における薬物療法はあくまで「行動療法と環境整備に対する補助」に過ぎません。時間をかけてでも分離不安症に繋がる根本的な問題を解決しなければならない点は留意してください。

分離不安症が軽度の場合には、市販されているフェロモン製剤を用いて治まることもあるようですが、全ての猫に効くというものではありません。もし試してみる場合には、かかりつけの獣医師に相談してから使用するようにしましょう。

猫が分離不安症にならないための予防法

猫が分離不安症にならないための予防法

猫の分離不安症は予防対策することが可能な病気です。

猫の分離不安症と飼い主さんとの距離感は、密接な関係があります。普段の生活の中で、遊ぶ時間と離れる時間というメリハリをつけることが効果的です。毎日10分から15分程度、決まった時間帯に思い切り遊んであげるようにしてください。向き合う時間が終われば、少し距離を保つようにしましょう。時には猫がかまってほしく、鳴きながらしつこく付いて回ることもありますが、すぐに対応してしまうと「鳴いて付きまとえばかまってくれる」と勘違いしてしまう可能性があるので、猫のかまってほしいアピールには少し時間を置いてから対応しましょう。

トイレの粗相やスプレー行為も同様です。発見したときはカッと頭に来てしまうかもしれませんが、実は猫にとってはかまってほしいというSOSかもしれません。いたずらに叱っても猫の問題解決には繋がらず、逆に状況が悪化する恐れがあります。冷静に対応し、どうしても改善しない場合は上記で解説した「獣医師」や「動物行動診療医」に行動療法の相談してください。

まとめ

いかがだったでしょうか?

猫の分離不安症は外見で判断することが難しいため、飼い主さんに病気と気付かれず見過ごされてしまうケースもあります。しかし、猫の分離不安症もれっきとした猫の病気の一つです。放置すると増大した不安によるストレスで、より深刻な「免疫力の低下」や「重度のうつ病」などに繋がりかねません。基本的に猫の分離不安症は自然治癒することはなく、分離不安症の原因となる「猫の不安」が取り除かれない限り、飼い主さんと愛猫を苦しめる状況が続いてしまいます。

今回の記事で心当たりがあった方は一度、獣医師などの専門家に相談されてみることをオススメします。

執筆者
猫と暮らして20年以上。猫への無知さを獣医師に叱られ猛勉強。 猫ライターとして仕事できるまでになりました。 先代猫は20歳近くで旅立ち、現在は保護猫と一緒に暮らしています。