猫の多頭飼い、気になる費用や注意点を徹底解説

猫との暮らし 愛猫に友達を作ってあげたい!猫の多頭飼い、成功の秘訣は?

執筆/ごまさば

猫と一緒に暮らしていて、ひとりで留守番させるのは寂しそう、遊び相手がいたほうが良いのかもしれないと思う方も多いのではないでしょうか。

多頭飼いを始める理由はさまざまですが、猫同士の顔合わせに失敗してしまったり、後悔しないためにも、多頭飼いを始めるときのコツや注意点を解説していきます。

猫の多頭飼いのメリットとデメリット

多頭飼いにはそれぞれメリットとデメリットがあります。

・メリット

多頭飼いのメリットとしては、留守番のときの寂しさによるストレスが緩和されることや、猫同士で遊ぶことにより運動不足が解消されることが挙げられます。また、猫同士で噛んでじゃれ合うことで痛みを覚えるため、人間に対してもけがをしない加減でじゃれるようになります。

飼い主側のメリットとしては、猫同士毛づくろいする姿やじゃれ合う姿を見て癒される効果があります。

・デメリット

猫は基本的に環境の変化をあまり好まず、単独行動を好む性質を持っています。そのため、新入り猫が来たことによりさまざまなストレスを感じてしまい、このストレスが原因でトイレ以外での排尿などの問題行動、食欲低下、膀胱炎や腎不全など健康に影響をおよぼす深刻な病気を引き起こすことがあります。ただ、家猫として生活をする中で、孤独を愛する子、仲間と上手く接することが出来る子など、性格は様々なので一概にはいえません。

飼い主側の負担としては、猫が増えることで餌代などの飼育費、予防接種などの医療費がかかり、経済的負担が増えることが挙げられます。また、頭数分のトイレや食器を置くスペース確保の問題や、トイレの排泄物の世話や管理も倍になるので、どちらかが病気になり特別な管理が必要になったとき、対応が難しくなることもあります。

相性編

新入り猫を迎えたとき、先住猫との相性が良ければ仲良くなれますが、万が一相性が悪くケンカが絶えないと、どちらの猫にとってもストレスがかかってしまいます。猫同士の相性は多頭飼いを実際に始めてみなければ解らないこともありますが、先住猫との相性を考えて新入り猫を選ぶことも大切です。

相性の良い組み合わせとは?

多頭飼いの相性には、年齢、性別、去勢・避妊の有無によって、ある程度良し悪しの傾向があります。ですが、猫それぞれ性格や個性があり、すべてに当てはまるとは言えないので、ここでは参考として紹介します。

  • 子猫×子猫の場合

子猫の時期は柔軟性があり、他の猫を受け入れやすく、新しい環境に慣れるのが早いと言われています。子猫同士の場合は兄弟猫でなくても、性別が違っても遊び相手として仲良くできる可能性が高いといえます。

  • 子猫(男の子)×成猫(男の子)の場合

オス猫は縄張り意識が強いものです。特に先住猫が成猫で去勢していない場合は、子猫であっても縄張り争いの相手として本能的に攻撃してしまい、お互いケンカが絶えなくなることもあります。成猫が去勢済みであれば仲良くなるケースもあります。

  • 子猫(女の子)×成猫(女の子)の場合

メスの先住猫の場合は性格が合えば関係がうまくいきやすいです。ただしメス猫の中には神経質な性格の猫もいるので、新入り猫を拒絶することがあります。先住猫の性格をしっかり見極めることが大切です。

  • 成猫(男の子)×成猫(女の子)の場合

オスとメスの成猫同士は比較的仲良くなりやすい組み合わせです。ただし繁殖を望まないなら去勢・避妊手術は必ず行ってください。また、メスが神経質で、オスが遊びたがる性格など相性が合わない場合もあります。

先住猫の年齢も関係があるの?

成猫になるにつれ性格や個性が確立されてくるので、新入り猫との相性が合うかどうかの判断も難しくなります。先住猫が高齢猫の場合には、子猫や若い新入り猫のパワーについていけず、引きこもってしまったり、ストレスが原因で病気を引き起こすこともあります。出来れば先住猫が7歳くらいまでに新入り猫を迎えるか、あまり猫同士の年齢差がないようにする方が無難です。

準備編

多頭飼いを決めたら、頭数分のトイレや食器などの準備と、先住猫が今まで通り落ち着いてすごせる生活環境を整えてあげることが必要です。

新入り猫が来る前にしておくべきことは?

新入り猫が来る前に準備を万端に整えておくことも、先住猫との良い関係を築くために大切なことです。最低でも下記にあげることは、新入り猫が来る前に準備しておくとよいでしょう。

環境作り

多頭飼いで重要なことのひとつに、まずは猫が快適に過ごせるスペース確保や環境作りがあります。先住猫も新入り猫も安心してそれぞれがくつろげる場所や、十分な運動ができるようなスペースを作ってあげましょう。

特にキャットタワーは運動の道具と、避難場所としての道具のふたつの意味を持ちます。猫同士が喧嘩をしてしまったときなど、キャットタワーに逃げて心を落ち着かせることができます。キャットタワーを置く場所がない場合は、家具の配置に高低差をつけることで代替えになります。

先住猫の健康管理

新入り猫を迎え入れる前に、必ず先住猫の健康チェックを行ってください。先住猫の体調に問題があれば、新入り猫を迎え入れる時期を見直したり、環境を整えることが必要になります。また、新入り猫に万が一病気を移さないためにも、ワクチン接種や健康診断は必ず行いましょう。

トイレ数はいくつ必要?共用はダメ?

トイレは共用でも構いませんが、「猫の数+1個」が望ましいといわれています。最低でも1頭につき1個は用意してください。スペースの問題もありますが、先住猫が使っているトイレと新しいトイレの二つを用意するようにしてください。また、今まで以上にこまめに掃除をし、猫が快適に使えるようにトイレは清潔に保ちましょう。

ごはんはみんな同じものでいいの?

猫種や年齢や体重差、持病の有無によりさまざまな場合が想定されるので、それぞれの猫の体調や状態に合わせた餌を用意する必要があります。特に差がなければ同じ餌を与えても構いませんが、猫の個体差によって量をかえる工夫は必要となります。

ごはんをあげるタイミングはみんな同じでいいの?

ごはんをあげるタイミングは同じでも大丈夫ですが、一番最初に先住猫にあげてください。そうすることで、新入り猫がきても先住猫は大切にされていることを理解し、新入り猫と良い関係を保つことができます。

例外があるのはこんなとき

他の猫の餌を横取りしてしまう場合や、一方が療法食を食べている場合は、同じ場所や同じタイミングで食べることが必ずしも良いとは言えません。その場合は、他の猫が食べているところを見えないように仕切りを設置したり、別の場所で与えるなどの工夫が必要です。個体認証でふたが開くタイプの給餌機を導入するのも良いでしょう。他の子の餌を横取りしないように、なるべく満腹感を得られるフードを与えることも効果的です。どんなに工夫しても他の子のご飯を横取りするようでしたら、食事はケージの中で与え、同居猫全員のご飯が済んでからケージから出すという方法もあります。

また、先住猫が成猫で新入り猫が子猫の場合は、成猫と子猫の栄養の必要摂取量が違うため、餌を分けることが望ましいです。子猫の餌は高カロリー高たんぱくで栄養価が高いものが多く、成猫は成長維持のために子猫の餌より栄養価を抑えたものとなり、高齢猫では低カロリー低たんぱくの餌に変わります。猫同士が餌を横取りしてしまうと自分に合っていない餌を食べてしまうことがあるので、成猫が子猫の餌を食べて肥満になってしまったり、子猫が成猫の餌を食べて成長に必要な栄養が足りなくなるなど、それぞれの健康や成長に影響を与えてしまい、病気にかかりやすくなることがあるので気を付けてください。

食器の共有はダメ?

食器の数は、猫の頭数分用意して、それぞれの器にいれてあげてください。個別の食器にすることで猫も安心して自分の分の餌を食べられる認識をもつので、猫同士のケンカの防止にもなります。また、猫によって必要な量を与えて食事量を把握することにも繋がります。

顔合わせ編

先住猫と新入り猫の初顔合わせは、猫同士が仲良くできるかどうかにも大きく影響します。新入り猫が来た初日から、手順に従って慎重に顔合わせを行ってください。

ステップ1:最初は別々の部屋で生活

新入り猫はケージなどに入れ、先住猫からは見えない場所におきます。ケージが先住猫に見えてしまう場合は、新入り猫が入っているケージを布などで覆い、気配だけを感じとれる状態で1週間ほど過ごします。先住猫が普段と変わらない落ち着いた生活をはじめたら次のステップに移ります。

ステップ2:お互いの存在を意識させる

先住猫が普段と変わらず落ち着いた生活を始めたら、先住猫と新入り猫のお互いの匂いがする布や猫おもちゃをそれぞれの近くに置いてみたり、匂いをかがせたりします。この匂いの交換でお互いの存在を認識できるようにすると、次のステップの対面もスムーズに進みます。

ステップ3:ケージ越しでの対面から

お互いを匂いで認識できたら、ケージが置いてある場所を開放して新入り猫を見ることができる状態にし、先住猫がケージに近づくまで待ちます。このとき猫たちだけにせず、必ずそばで見守ってください。猫同士が触れ合ったり、鼻をくっつけて嗅ぎあう行動が見られたら初顔合わせは成功です。ここでどちらかに威嚇や怖がる様子がみられたら、無理はせずに匂いの交換からもう一度やりなおしてください。

ステップ4:ケージなしでの対面は注意深く様子を見守りながら

ステップ3を何度か行い、先住猫がケージの近くでくつろいだり、威嚇しなくなったら、新入り猫をケージから出すタイミングです。先住猫が近くにいる状態でケージのドアを開け、新入り猫が自分から出てくるのを待ちましょう。最初は短時間にし、お互いの存在に慣れてきたら、徐々に一緒にすごす時間を増やしていきます。一緒の時間が増えてきたら、じゃれ合ったり追いかけっこをして遊ぶようになる日も近いかもしれません。

もしどちらか威嚇する、逃げる、怖がって固まってしまうなどの様子が見られたら、無理をせずにその日は中断してください。

先住猫が威嚇をして困るときは

先住猫が新入り猫を威嚇することもありますが、時間が経つにつれて少なくなってくるでしょう。しばらく様子を見て、それでも威嚇を繰り返すようであれば、先住猫に優しく声をかけ落ち着かせ、一番は自分だということを解らせてあげてください。また、縄張りを取られたと思い新入り猫に敵意や恐怖を感じている様子がみられる場合は、先住猫がリラックスして眠れる場所や、安心して餌を食べられる場所、トイレの場所を作ってあげるなど生活環境を見直して、ストレスを少しでも軽減してあげる工夫をしてください。

ケンカをしたら止めるべき?

猫同士がケンカしていると思っても、じゃれ合っているだけの場合もあるのでしばらく様子を見てください。ケガをしない程度であれば無理に止めず、猫同士の判断に任せることも大切です。もしケガをするようであれば、飼い主がいないときは部屋を別にするなど、猫同士が会わないよう気を付けてください。

どうしても相性が悪いときは

あまりにもケンカが頻繁におき、ケガをしてしまったりストレスで病気になってしまった場合は、まずは猫同士が顔を合わせないように部屋を別にし、トイレや食事も分けてください。少し日にちをおいて再度顔合わせを行い、それでも相性が合わずケンカを繰り返してしまい同居が難しい場合は、部屋に余裕があれば完全に居住スペースを分ける必要があります。

先住猫への接し方で気をつけることはある?

顔合わせが成功してからも、飼い主は先住猫を優先することが大切です。先住猫がストレスなく過ごすことは、新入り猫と仲良くしたり、多頭飼いを成功させるため重要なこととなります。

ストレスを与えないためには

先住猫にストレスを与えないためには、新入り猫が来ても生活環境がなるべく変化しないようにしてあげることが大切です。

先住猫にとったら、ある日突然見知らぬ猫が勝手に自分のテリトリーに入ってきたのですから、緊張やストレスを感じています。ストレスを感じると突然体調を崩したり、新入り猫を避けたり威嚇するような行動が見られます。その場合は部屋を別にするなど、なるべくストレスが軽減できるようにしてください。威嚇行動がない、仲良く遊んだりしているという場合でも、新入り猫が出入り出来る部屋を増やすのは、先住猫の様子を見ながら行うようにしてください。

先住猫を優先してあげよう

飼い主さんが新入り猫にかかりっきりになってしまうと、先住猫がやきもちをやいてしまうことがあります。食事や遊び、お世話の順番も、まずは住猫から先にすることが重要です。また、多頭飼いになっても今まで通り、1対1のスキンシップの時間を確保してください。

新入り猫に対して気をつけることはある?

新入り猫も、今までの環境と変わるので当然ながらストレスを感じます。子猫の場合は新しい環境に慣れやすいですが、体力が少なく疲れやすいので、慣れるまではケージの中で安心して過ごせるように工夫してください。

新入り猫が成猫の場合は、新しい環境に慣れるまでに時間がかかることがあります。落ち着ける場所を確保し、しばらく様子を見守ってあげてください。新入り猫が子猫でも成猫でもどちらにしても、猫のペースに合わせて徐々に環境に慣らすようにしてください。

ウイルス検査を必ずする

多頭飼いで注意しなければならないのは、感染症や伝染病のリスクです。先住猫に病気をうつすおそれがないかの健康診断、ウイルス検査は必ず行ってください。何も問題がなく健康であることが解っても、予防のためのワクチン接種は行うようにしてください。

環境に慣れるまではケージで生活を

新入り猫は新しい環境でストレスを感じることがあるので、周りの環境に慣れるまでは、安心して過ごせるようにケージでの生活をさせましょう。ケージは静かな場所に置き、毛布や布をかけて暗くしてあげると、なお落ち着きます。

早く先住猫と会わせた方が良いのではと思いがちですが、新入り猫が生活環境に慣れてリラックスするようになってから、顔合わせのステップに進んでください。

多頭飼育で猫が感じるストレス・病気はある?

猫同士の相性が悪かったり、生活環境で満たされない部分があると、猫にとって非常に大きなストレスとなります。ストレスがたまると、下痢や食欲不振、嘔吐などがおきます。また、狭い場所に隠れる、夜鳴きをする、スプレー行為や粗相をするようになるなどの問題行動がみられることもあります。ストレス要因で悪化する特発性膀胱炎や猫伝染性腹膜炎(FIP)などの病気になってしまうこともあるので注意が必要です。

両方の猫がストレスを感じる場合も

多頭飼いのタイミングや環境、また初顔合わせがうまくいかなかった場合、先住猫も新入り猫も両方がストレスを感じてしまうことがあります。強いストレスから、気持ちを落ち着かせるために体毛が抜けるほどグルーミングをして皮膚炎になってしまったり、手足やしっぽを血が出るほど噛む自傷行為に出る場合があります。また他の猫の匂いがついたトイレを使うのが嫌で、トイレ以外で排泄したり、我慢しすぎて膀胱炎になることもあります。

このような体調や行動の変化以外にも、食事や飲水の量に変化が出る場合もあります。ちゃんと水は飲んでいるか、食欲は落ちていないか、逆に過食になっていなかなど、決まった時間にチェックをし、いつもと違う場合にはかかりつけの獣医さんに相談しましょう。

病気になる可能性はある?

多頭飼いをしたからといって猫が病気になるとは言えませんが、ストレスによる病気や伝染病にかかる可能性は少なからずあります。慢性疾患がある猫はストレスによって病気が悪化することもあるので、体調の変化には気を付けてあげてください。

ストレスによる病気や問題行動として挙げられるのは、心因性脱毛、粗相、自傷行為、特発性膀胱炎、腎不全、猫伝染性腹膜炎(FIP)があります。ストレス要因を取り除けば改善するものから、いちどかかると完治が難しい病気もあるので、猫がストレスを感じていないか常に気をつけてください。少しでもストレスの兆候がみえたら、猫同士を別の部屋にし、症状によっては早めに病院に連れていきましょう。

まとめ

猫の多頭飼いについて解説してきましたが、猫同士が仲良く暮らすためにも飼い主が気を付けてあげる点はいくつかあります。筆者も多頭飼いですが、初顔合わせをうまくしてあげられず、猫同士の仲は悪くないものの微妙な距離感になってしまいました。現在、ストレスによる病気のため闘病中です。

これから多頭飼いをはじめる方は、準備段階から多頭飼いを始めたあとも、猫たちが快適に暮らせる環境であるか、常にチェックをしてください。また、現在多頭飼いをしている方も、猫たちの生活環境に不備はないか、ストレスを感じている子はいないか、こまめに確認をするようにしましょう。もし少しでも猫たちに変化があれば、より良い環境になるよう工夫をしてあげてください。

執筆者
猫飼い歴6年。 ブリショとマンチカン2匹の猫とドタバタでモフモフの日常を過ごしています。 キャットケアスペシャリスト資格あり。 いつか猫さまに関わる仕事にどっぷり浸かりたいので日々勉強中です。