「ダニ」と聞くとあまり考えたくはありませんが、実は身の回りにも非常に多く存在しています。場合によっては大量に繁殖し人間にアレルギーを引き起こしたり、感染症を媒介したりする危険性があります。犬や猫などのペットに対しても感染症の原因となることがあるので注意が必要です。今回はダニと向き合い、正しい知識を持つことでダニから大切な猫を守りましょう。
猫に寄生するダニの種類はコレ!
ダニとはダニ目に属する節足動物の総称で、多様性に富む小型の動物です。室内では1年中繁殖することができ、約2ヶ月間成虫として活動します。ダニは温度が20〜30度、湿度が60%以上で発生しやすく、湿度の高くなる梅雨時期から晩夏まで繁殖が盛んに行われ、晩夏以降にはダニの死骸が多く残ります。ダニは4万種類以上存在すると言われていますが、中でも猫の皮膚や皮毛に寄生すると報告されている下記の4種類には注意が必要です。
マダニ
マダニは日本全国で生息が確認されており、自然が豊かな場所から市街地まで広い範囲で生息しています。マダニは成虫が肉眼で見えるほど大きいのが特徴で、吸血し満腹状態になると1〜2cmのサイズまで大きくなります。草や花に身を潜めていたマダニが、近くを通った哺乳類の体温や体臭、振動などに反応して生物に飛び乗り、特に耳の裏や目の周りなど毛の薄い場所に好んで寄生し吸血を行います。日本紅斑熱やライム症、重症熱性血小板減少症候群など様々な感染症を媒介します。
ヒゼンダニ
ヒゼンダニは肉眼では見ることができないほど小さなダニで、人間や猫に寄生すると皮膚疥癬症を引き起こします。ヒゼンダニは疥癬トンネルと呼ばれる穴を作り、そこに寄生し成長・繁殖を行います。伝染力も強く、激しい痒みや皮膚炎を引き起こします。ヒゼンダニは寄生した人間や猫から寄生していない猫へとうつります。多頭飼育している場合は、気がついた時には全頭にうつってしまっている危険性があるため、寄生の疑いがある猫がいたら直ぐに隔離し、他の子にうつらないようにしましょう。
ミミヒゼンダニ
ミミヒゼンダニは耳の間〜鼓膜の間に寄生するダニで、耳ダニとも呼ばれます。ヒゼンダニと同様に、耳ヒゼンダニも肉眼では見えないほど小さく、強い伝染力を持っています。耳に寄生すると大量の黒い耳垢が出現し、頻繁に耳をかいたり頭をふったりします。悪化すると耳の穴が赤くなることや、傷になり出血する場合があり、耳血腫を併発する危険性もあるため注意が必要です。耳ヒゼンダニは寄生した猫から猫へとうつるため、寄生の疑いがある猫との接触を防ぐことが大切です。
ツメダニ
ツメダニは他のダニとは異なり、基本的には人間や動物に寄生し吸血することはなく、ニクダニ類やチリダニ類などを捕食します。しかし大量発生してしまった場合は人間や猫と接触する機会が多くなり、その結果寄生し吸血することがあります。ツメダニは大きな爪を持っており、寄生した人間や猫の皮膚に寄生し成長・繁殖を行います。寄生すると寄生部位にかゆみやフケが発生します。
ダニが猫に寄生する方法は?
ダニはどこに生息していて、どこで寄生するのでしょうか。意外に知られていない場所もあるため確認していきましょう。
屋外
ダニは草むらや木々、花、動物など自然界の広範囲に生息しています。そのため、屋外へ自由に行き来することができる猫の場合はどこかでダニに寄生される危険があります。また、野良猫を保護した場合はすでにその猫にダニがついている可能性があるため、初めは隔離し在住猫にダニがうつらない対策を行いましょう。
家の中
気温や湿度が均一に保たれやすい住宅では、特にダニにとって良好な繁殖環境となり得る可能性が高いため注意が必要です。家の中では、例えば人間や猫の寝床がダニの繁殖場所になることがあります。布団や毛布などは繊維が多くダニが身を隠しやすい場所であり、人の寝汗や皮質、食べこぼしがついている可能性があります。それらはダニの繁殖に必要な栄養源となってしまいます。ソファーやカーペットなども同じ理由でダニが繁殖しやすい場所と言えます。特に人間が使っている布団に関しては多ければ数百万ものダニが生息しているとも言われているため、布団を干す、しっかりと乾燥させるなど日頃からダニ対策する必要があります。猫が普段使っている布団やベッドに関しても同様に、干したり乾燥させたりすることでダニの繁殖を防ぎ、寄生・感染の予防に努めましょう。
猫以外の動物から
ダニは人間や猫だけではなく、多くの動物に寄生します。例えば犬と猫を室内で一緒に飼っている場合は、犬の散歩中にダニが犬に寄生し、そのままダニが家庭に持ち込まれてしまう場合があります。散歩する際には茂みの多い道をなるべく避けるなど、ダニを家の中に持ち帰らないようにすると良いでしょう。
人から
家の中にダニを持ち込むのは動物だけでなく、人間によって持ち込まれることもあります。自然界のみならず、学校や職場などにもダニが生息している場合があり、それらを持ち帰ってしまう可能性があります。
ダニによる感染症はどんな症状が出る?
ダニの生息場所を知り、家の中に持ち込まないように努めていてもダニによる寄生を防げない場合もあります。その時どのような症状が出て、どのように治療を進めていくのでしょうか。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の症状は?
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)はマダニによって媒介されるSFTSウィルスによって引き起こされる感染症です。初めて報告されたのが2011年と比較的新しいウィルス感染症です。猫に寄生したマダニがSFTSウィルスを保有していた場合、吸血の際にウィルスが猫の体内に侵入し感染、増殖し発症します。一般的には無症状なことが多いのですが、発熱や食欲不振、白血球減少症、血小板減少症などの症状が出ることがあります。しかし、予防するためのワクチンや確立された治療法は無いため、発症した場合は対症療法が施されます。また、稀ではありますがSFTSに感染した猫から人間にうつり感染、発症し死亡した例も報告されているため注意が必要です。
ライム症の症状は?
ライム症とは細菌の1種であるボレリア菌によって引き起こされる感染症で、マダニによって媒介されます。家庭内のマダニから感染することはなく、山間部に生息するマダニによって媒介されることがほとんどです。発症すると食欲不振や歩行の異常、発熱が見られます。ライム症の治療には、その原因であるボレリア菌に対する抗生物質を投与し治療を行います。
猫ヘモプラズマ感染症の症状は?
猫ヘモプラズマ感染症とは細菌の一種であるマイコプラズマが猫の赤血球に寄生し、その結果赤血球が破壊され溶血性貧血が発症する病気です。感染経路は未だ明らかとなっていませんが、ダニによる吸血や猫同士の喧嘩、母子感染が主な経路であると考えられています。猫ヘモプラズマ感染症が発症すると、酸素を運ぶ役割を担っている赤血球が破壊されてしまうため、症状として貧血が起こったり、呼吸が速くなったりします。他にも食欲不振や脱水症状、黄疸、血色素尿などが症状として現れます。猫ヘモプラズマ感染症はネコ白血病ウィルスやネコ免疫不全ウィルスに感染している猫に感染率が高いと報告されているので、該当する猫には注意が必要です。治療はマイコプラズマに対する抗生物質を投与し治療が進められます。
愛猫をダニから守るための予防法は?
先ほど記したように、家の中には布団や毛布のようなダニの繁殖に適した場所が存在するため、日頃からダニ対策を行う必要があります。しかし、ダニが繁殖しにくい環境を維持することも大切ですが、猫にダニを寄せ付けないことや、猫についたダニを取り除くことでダニが媒介する感染症を予防することができます。
予防薬
猫からダニを遠ざけるために予防薬を用いる方法があります。猫の首元に薬剤を滴下して投与するスポットオンタイプや飲み薬のタイプ、スプレータイプなどがあります。特にダニが活発に活動する春〜秋に使用することを推奨している病院もありますので、かかりつけの獣医師さんと相談して決めるのが良いでしょう。
ブラッシング
完全に除去することは難しいですが、ブラッシングすることによって被毛に潜んでいるダニを取り除くことができます。特に、屋外から帰ってきた猫や犬に対しては家に入る前にブラッシングするのが良いでしょう。ブラッシングによって取り除かれた被毛やブラシはダニがついている可能性があるため、速やかに被毛の破棄とブラシの洗浄を行い清潔に保つことを心がけましょう。
シャンプー
基本的に猫は自分で毛繕いをするためシャンプーの必要はないのですが、汚れが気になる等の理由があれば洗ってあげましょう。しかし、猫をシャンプーする際には「皮膚に寄生しているダニの有無」に注意を払う必要があります。吸血中のダニを無理やり取り除いてしまうと、ダニの口器が皮膚の中に残ってしまい炎症や化膿を引き起こすことがあります。もし見つけたら自己判断で引っ張るのではなく、かかりつけの動物病院に診察してもらうことを推奨します。また、頻繁にシャンプーしてしまうと皮脂が不足してしまい、皮膚炎を引き起こすことがあるので注意しましょう。スポットオンタイプを使用する場合は、スポットオンタイプの薬剤は皮脂がないと十分な効果を発揮できないため、使用前のシャンプーも控えたほうが良いでしょう。また使用後にシャンプーしてしまうとその薬剤を洗い流してしまう可能性があるため、シャンプーが必要な場合は薬剤の使用日から数日明けて行いましょう。その点に関しても、かかりつけの獣医師さんに相談し、どのような予防法をとるのかを判断すると良いでしょう。
まとめ
ダニは目に見えないほど小さいがために、いろんな場所に身を隠し生息しています。湿度管理などを行いダニが生息できない環境を作り、予防薬などを使い猫にダニを寄せつかないよう努めることで、ダニが媒介する感染症を未然に防ぎましょう。野良猫を保護した際にはすでにダニがついている可能性があるため、初めは先住猫との住み分けをし、ダニの駆除が終えてから合わせると良いでしょう。