猫の尿毒症の原因、症状、治療法を知り正しくケアしよう

猫の健康 死に至ることもある危険な病気、猫の「尿毒症」とは?尿毒症は治る?

執筆/神木詩野

尿毒症とは、通常、尿から排泄される老廃物が、腎臓の機能の低下により排出できずに体内に溜まってしまう病気です。尿毒症は全身に悪影響を与え、最悪の場合は死に至ります。それでは、詳しく見ていきましょう。

猫の「尿毒症」とは?

猫の「尿毒症」とは?

猫や人間、それ以外の動物も、食物から必要な栄養素を摂取しています。生きるために必要な栄養素は体内で吸収され利用されますが、最後に残った老廃物は便や尿、汗として体外に排出されます。腎臓は老廃物をろ過し、体内に老廃物や代謝産物などの毒を尿の中に排出する重要な役割をもつ臓器です。しかし、腎臓に何らかの異常が起き、腎臓の働きが低下すると、尿の中に老廃物や代謝産物を排出できなくなります。腎臓でろ過できなかった老廃物は血液中に溜まり、血液の循環と共に脳や消化器など体内の様々な臓器に害を及ぼします。これが尿毒症で、命が危険にさらされる病気です。

猫が尿毒症になったときの症状は?

猫が尿毒症になったときの症状とは?

尿毒症は、老廃物が血液の循環と共に体内を巡り、様々な臓器に重篤な機能障害を起こすため、どの臓器が機能障害を起こしたかによって現れる症状が異なります。尿毒症は時間が経つと取り返しのない状態になることもあるため、下記のような症状が見られたら様子見はせず、直ぐに動物病院を受診することをおすすめします。

食欲低下

慢性腎臓病(慢性腎不全)は徐々に腎臓の機能が低下する病気です。慢性腎臓病(慢性腎不全)では食欲低下、体重減少、多飲多尿といった症状が見られ、末期になって尿毒症を発症すると、食べ物を一切受け付けなくなります。

中毒や尿結石などで急激に腎臓の機能が低下する急性腎臓病(急性腎不全)の場合では、突然食欲がなくなる、痙攣、嘔吐、おしっこが出なくなる、突然元気がなくなる、といった症状が出ます。急性腎臓病(急性腎不全)は慢性腎臓病(慢性腎不全)とは異なり、突然腎臓の機能が低下する病気なので、病気に気付いたときには尿毒症も発症しており手遅れになってしまうこともあります。

嘔吐や下痢

尿毒症により、消化器官で機能障害が起きた場合には、胃腸の動きが弱くなり、嘔吐や下痢などの症状が出ます。

強い口臭

尿毒症では、アンモニア臭と呼ばれる強い口臭がすることがあります。また、口の中に、細胞壊死(さいぼうえし:細胞の一部が死んでしまうこと)や潰瘍(かいよう)ができることがあります。

神経症状

尿毒症が更に進行すると脳に毒素がまわり、意識低下、けいれんなどの神経症状が出ます。けいれんから呼吸困難になることもあるため、直ぐに動物病院を受診しましょう。

猫の尿毒症、原因は何?

猫の尿毒症、原因は何?

尿毒症は腎臓の著しい機能の低下によりおきますが、ゆっくりと機能低下する慢性腎臓病(慢性腎不全)から、突然起こる急性腎臓病(急性腎不全)まで原因は様々です。

腎機能の低下が原因

尿毒症の原因となる腎臓の機能低下には、大きく分けて3つの理由があるといわれています。

  • 腎臓そのものに異常がある

慢性腎臓病(慢性腎不全)は猫にとって不治の病といわれており、末期症状が尿毒症です。慢性腎臓病(慢性腎不全)は完治しない病気ですが、食餌療法や投薬で進行を遅らせることができます。

薬物やユリ科の植物の誤飲による中毒、細菌感染やウイルス感染、腎臓に出来た腫瘍で腎臓に障害が起こり、尿毒症になる場合もあります。特に誤飲による中毒は急性腎臓病(急性腎不全)を引き起こし、重篤な状態になることもあります。誤飲が疑われる場合には、直ぐに動物病院を受診してください。

あわせて読みたい:猫にとって不治の病「腎臓病(腎不全)」ステージごとの治療法は?予防は可能?

  • 尿石症を放置

尿道に詰まった結石が原因で、腎臓で作られた尿が排出困難になり、体内に老廃物が溜まってしまい尿毒症になることがあります。尿が出ない状態が1~2日程度続くと、あっという間に症状が進行してしまいます。トイレに行っているのに尿が出ていない、少ししか出ていないということがあれば、早めに動物病院で診てもらいましょう。

あわせて読みたい:猫の「尿結石(尿路結石症)」こんな症状に気をつけて!原因は?どんな治療をするの?

  • 心不全

熱中症、事故や怪我による大量出血でのショック状態で心不全を起こすと、全身の血液循環が滞り、腎臓に血液が行きわたらなくなります。それにより、腎臓の濾過機能が低下し、尿素などの老廃物を濾過しきれなくなり、尿毒症を発症してしまいます。心不全からくる尿毒症は、数分から数時間で症状が急変することもあります。暑い室内で猫がぐったりしていた、大量に出血していたという事があれば、直ぐに動物病院に連れていってください。

猫の尿毒症、どんな治療するの?

猫の尿毒症、どんな治療するの?

尿毒症の治療では、腎臓の機能の低下を及ぼす原因の治療と、体内に蓄積された老廃物を体外へ排出させる治療を行っていきます。

尿道結石による尿毒症の場合には、結石の除去を行います。急性腎臓病(急性腎不全)や心不全が原因の急性の尿毒症では、原因になった病気にアプローチを積極的に行います。慢性腎臓病(慢性腎不全)が進行して尿毒症になった場合は、腎臓の残存機能が少なく回復が見込めない可能性もあることから、猫が苦しまないよう制吐剤や抗けいれん薬、痛み止めなどの緩和ケアを行います。

身体の水分量を補充

体内の老廃物を除去するには、水分や電解質などを点滴で投与することによって尿の量を増やし、尿から老廃物を排出するための治療を行います。点滴で治療しても腎臓の機能回復が弱く、尿が作られないという場合には、利尿剤を投与することもあります。これらの治療は集中的に行うため、入院する必要があります。

症状が重い場合には、腹膜透析や血液透析などの人工透析を行う必要がありますが、猫の透析が可能な病院は専門的にな二次診療施設のみのため、かかりつけ医に紹介して貰う必要があります。

猫を尿毒症から守る予防法とは?

猫を尿毒症から守る予防法とは?

尿毒症は、治療を行っても、なかなか完治するのが難しい病気です。そのため尿毒症の原因となる腎臓病などの泌尿器系の疾患に注意し、早期発見し即座に治療を行うことが大事です。

急性腎臓病(急性腎不全)の原因となるユリ科の植物など、中毒の原因となるものを猫に近づけないように注意しましょう。

健康診断で早期発見

尿毒症の原因となる慢性腎臓病(慢性腎不全)は、7歳以上の猫のおよそ30%〜40%が罹患していると考えられていますが、初期段階では顕著な症状が少ないのが特徴です。加齢に伴い増加していく傾向があるので、特にシニア期である10歳以上の猫は半年に1回のペースで、定期的な健康診断で血液検査や尿検査を受けると良いとされています。早期発見が出来れば、食餌療法で進行を遅らせることも可能です。

尿石症は年齢や性差に関係なく、猫が発症しやすい病気のひとつです。尿石症も早期発見が可能な病気なので、若い猫でも年に1回の定期健康診断で尿検査をすることをお薦めします。他にも、自宅で尿のph値を調べることのできるチェッカーやキットが市販されていますので、これらも使うとより安心といえます。

あわせて読みたい:猫に健康診断は必要?定期的な健康診断で病気の早期発見を!

猫の飲水量やおしっこの様子をチェック!

尿毒症になる前段階である腎機能の低下では、多飲多尿の症状がみられることが多くあります。さらに腎臓の機能が低下して尿毒症になると、乏尿や無尿状態になります。飲水量やおしっこの色、量を日々観察することで、腎臓の機能低下に気付くことができます。

尿石症の場合は、茶色い尿や血尿を出したり、尿に結晶が混ざりキラキラとしていたり、何度もトイレに行くけれどおしっこが少ししか出ていないなどの症状が出ます。また、おしっこが全く出ていない場合には、尿道閉塞になっている可能性ががあります。このような症状が見られたら、早めに動物病院に連れていってください。

まとめ

猫は腎臓や泌尿器系の病気にかかりやすい動物です。尿毒症になってしまうと、最悪の場合には命を落としてしまう可能性もあります。日頃から愛猫の様子を気にかけて、少しでも異変を感じたら、様子見はせずに動物病院を受診しましょう。

執筆者
札幌生まれ首都圏育ち。 大学で北海道に戻り、シカやキツネ、リスが身近にいる自然豊かな場所で生活していました。 大学卒業後、北海道に残り、牧場に就職。 現在は地元に戻り、北海道で拾った元野良猫2匹と生活しています。 趣味は絵を描くことで、よく動物の絵を描いています。