子猫や猫のサイレントニャーには意味がある!

猫の豆知識 猫が声をださずに鳴く「サイレントニャー」には理由があった!

執筆/水科希望

猫と暮らす人にとって永遠の憧れ、サイレントニャー。猫から選ばれた特別な人への最大級の愛情表現です!サイレントニャーだけでなく、猫は多様な鳴き声や表情を使い分けて人とのコミュニケーションを取ります。言葉のように分かりやすいものではありませんが、一緒に暮らしている内に何を求めているか分かるようになっていくのは、嬉しく誇らしいものです。猫は何を私たちに伝えたいのか?今回はその秘密に迫ります!

猫の「サイレントニャー」ってなに?

ニャーと言っている口の開け方なのに、鳴き声が聞こえず、あくびでは無い状態のことです。鳴いている時のように、お腹が動いていることもあります。正式な名称が無いため、サイレントニャーと呼ばれており、英語でもSilent Meow(サイレントミャウ)と全く同じ名称で呼ばれています。知らずに初めて見ると、鳴いているのに声が出ていない、喉がかれて声が出ないのかもと焦る方もいるようですが、食欲が無いなど猫風邪を疑う症状が出ていなければサイレントニャーなので心配ありません。

「サイレントニャー」の意味は?

猫が鳴いている時の状況や仕草、表情によっても意味は異なります。前後の状況や様子も見て、推察していきましょう。一緒に暮らす内に少しずつお互いのことが分かっていくのも、猫と暮らす醍醐味です。

コミュニケーションの手段として用いる

猫は単独で生きる動物ですが、猫同士でのコミュニケーションも必要です。その場合は匂いで情報交換することが多いですが、人は猫ほど優れた嗅覚を持っていないため「察しが悪いな」と感じた猫の方でコミュニケーション手段を『鳴き声』に変えたと考えられています。その中にサイレントニャーが含まれています。

挨拶・呼びかけ

猫は犬のように上下関係が無い動物ですが、社会生活を円滑にするために挨拶は欠かせません。人と同じできちんと挨拶ができない猫は信頼関係を構築するのが難しいのでしょう。朝起きて直ぐにする、お迎えする時に必ずする場合は挨拶や呼びかけの可能性が高いです。

甘えたい

サイレントニャーは主に子猫が母猫に対して発することが多い鳴き声です。特別に甘える鳴き声で母猫の気を引き、いっぱいミルクを飲みたい、うんと甘えたい、こっちを見て欲しいなど叶えて欲しいことをアピールしています。飼い主に対して行うことは、完全に母猫と思って甘えている証です。信頼度がゴロゴロよりも更に高く、最高の甘え方であると猫好きの間では勲章のように扱われています。

信頼している

母猫のように思っている相手にする鳴き方なので、その信頼度は莫大です。本気で心を許している人にしかしませんが、「ウチはして貰ったことがない」とガッカリしなくても大丈夫です。猫の性格にもよるので、その子なりに甘え方が違うだけで、信頼が低い訳では無いのです。特に子猫の内に保護して育ててきた場合は、飼い主のことを母猫代わりと思っているので、目撃する機会が多いでしょう。

不安

子猫が行うことの多いサイレントニャーは、身を守る手段として使われる場合もあります。例えば親からはぐれてしまった、身の危険が迫っている時に「たすけて!」と母猫を呼ぶために使われることがあります。

飼い主に向けて不安そうにしている時は、知らないものがある、飼い主が見当たらない、雷が怖いなど助けて欲しくて鳴いているかも知れません。不安な時は瞳孔が大きくなり、落ち着きが無く、尻尾は垂れ下がってお腹の下に巻き込んでいることもあります。こういう時は少しの物音にも過敏に驚いてしまうため、そっと近づいて安心して貰えるように行動しましょう。不安の原因(不審な物音など)を探りたいと言うなら一緒に見に行ってあげたり、側にいて撫でて欲しいと言うなら寄り添って撫でてあげたりしましょう。

眠い

眠くてウトウトしている時にサイレントニャーをすることもあります。あくびは大きく口を開けますが、小さく口を動かしている時はサイレントニャーをしているかも知れません。眠気が襲ってくると人も色々億劫になるものです。猫も何か伝えたいけど鳴くほど気力が無くてむにゃむにゃ口が動いただけで終わってしまったのかも知れません。ゆっくり眠らせてあげましょう。

要求

猫は、自分のして欲しいことを鳴き声でアピールしてきます。たまたまサイレントニャーをしたら、面白いくらい飼い主が反応しておやつが出てきた、など成功体験を元に要求を伝えている子もいます。相手の望むことを言われる前にやる、高度なテクニックを要求してくる王様・女王様気質の子なのかも知れません。

面倒くさい

ちょっと面相くさい時にも使うこともあるようです。猫も個性が色々で、強烈に鳴いて構って欲しいとアピールする子もいれば、鳴かずに尻尾の振り方や瞬きで代用している子もいます。それは別に相手を軽んじている訳では無く「ちょっとの挨拶でも気づくし、これで良い」という信頼の証。そういう子は小悪魔的な駆け引き上手と言えるかも知れません。

なぜ声を出さずに鳴くの?

実は猫がなぜサイレントニャーをするのか、本当の意味での解明はされていません。前後の行動などから推測されている仮説があるだけなのです。そして、人の耳には聞こえていないだけで実は高音域の声を発していると言われています。

実は声が出ている?

サイレントと呼ばれていますが、実は高音域の声が出ています。猫が聞き取れる音域は25~75,000ヘルツ、人が聞き取れる音域は20~20,000ヘルツまでと、特に高音域に55,000と大きく差が開いています。サイレントニャーの音域はどの程度か判明していませんが、猫同士であれば分かり合える内緒話に最適な鳴き方です。

聞こえないのは人間だけ?

前述通り聞き取れる音域に差があるため、人には聞き取ることができません。子猫がその声で鳴くのは、外敵から身を守るためと考えられています。身の危険を感じた時に母猫を呼ぶ際、その鳴き声で他の外敵まで呼び寄せてしまっては更に窮地に追い込まれてしまいます。母猫だけに聞こえるSOS信号を送り、子猫なりに必死で命を守ろうとする、生きるための大事な手段なのでしょう。

「サイレントニャー」を行う猫はこんな子たち

年代・性別も関係無くサイレントニャーをしますが、特に鳴きやすい傾向のある子がいます。中には「こうしたらカンタンに言うことを聞いて便利」と学習した賢い子が使うこともあり、シニア世代でする子は、その傾向が強いようです。

子猫

2才未満の幼い猫がサイレントニャーしやすい傾向があります。子猫は母猫の庇護が無ければ生きていけません。自分で体温を保持することもままならず、思い通りに動き回ることもできない上に、大好きな母猫を慕う兄弟達はたくさんいます。その中でも自分のやって欲しいことを通すためには母猫の気を引く特別な行動をしなければなりません。そんな子猫気分から抜け出せない、甘えん坊な猫は大人になってもすることがあります。

女の子

女の子は男の子よりも体が小さいため、声も小さく控えめです。大きな声でアピールできないので、手段を変えてサイレントニャーを使うことがあります。逆に男の子はハッキリと大声で要望を伝えてくる子が多いです。

身体の小さな子

スレンダーで体の小さな子は鳴き声も小さいため、サイレントニャーでこっそり気づいて貰おうとします。野生で生きていると兄弟よりもひ弱な体格は生きていく上で危険が多く、慎重に行動する必要があったため、敵に聞こえない声で自分の存在を知らせていると考えられます。

愛猫の「サイレントニャー」どう対応する?

何も知らずに初めてサイレントニャーを見ると「声が出ていない、どうしたんだろう」と心配になって焦るかも知れませんが、病気の症状では無いので心配いりません。甘えているのに飼い主が焦っていると猫も不安になってしまうので、穏やかに接してあげましょう。

接し方

穏やかに、優しく接してあげましょう。猫は非常に繊細な動物でもあります。こちらが「なんで声が出てないんだろう、病気かな」と不安に思っていると、それを察知して猫も不安になってしまいます。猫がサイレントニャーをしてくれたら、優しく微笑んであげましょう。逆に、してくれたのが嬉しすぎて興奮し過ぎないように注意も必要です。

撫で方

優しく頭を撫でてあげて下さい。存在をアピールしたい、甘えたい、何か不安に感じているなど、猫は飼い主を頼りにしています。母(または父)猫になった気持ちでゆっくりと撫でてあげましょう。安心して貰えるように優しく声をかけてあげるのも良いです。猫は高めの声が好きなので、少し高めの声を意識し「かわいいね、大好きだよ」などの言葉をかけてあげると喜びます。猫の気が済むまで寄り添ってあげましょう。

スキンシップの取り方

猫が落ち着いてきたら、抱っこする、膝に乗せてあげるなど、その子の好きなリラックス方法でスキンシップを取りましょう。ゴロゴロと目を細めて気持ち良さそうにしていたら満足の証です。

ご飯やおやつが欲しいときも?

お腹が減っている、おやつが欲しいときにサイレントニャーすることもあります。同じくらいの時間に繰り返し鳴くようなら、毎日その時間にごはんを用意してあげましょう。猫は自由きままに見えて規則正しい動物なので、いつも同じ時間にごはんがあると安心して暮らすことができます。

もしかしたら…「サイレントニャー」ではなく病気かも?

サイレントニャーは猫が使い分ける鳴き方の1つですが、まれに猫の意思に関係無く、病気などの不調でうまく声が出ていない可能性があります。また、サイレントニャーはずっと行う鳴き方ではありません。ずっと鳴き声が出ない他、下記のような症状が一緒に表れたら早めに獣医師に相談しましょう。

声が涸れている場合

人と同じように、猫も鳴きすぎると声が涸れてしまいます。うがいをしてのど飴をなめて様子を見る対応はできないので、大きな声で何かを要求しているなら早めに解消してあげましょう。大声で鳴く理由の中には、体調が悪い、体のどこかが痛むなど不調を訴えている場合もありますので、合わせて猫の様子をよく確認しましょう。

猫風邪

喉からくる風邪を引くと、人も声が涸れてしまうことがありますが、猫も風邪を引いて声がかすれる症状が出ます。サイレントニャーはその名の通り、完全に無音の鳴き声です。かすれたような声で鳴いている時は、大声で鳴き続けたので無ければ猫風邪にかかっている可能性が高いです。他に、咳、くしゃみ、鼻水、目やに、涙が多い、食欲が無い、だるそうにしているなどの症状も見られたら早めに病院へ連れて行きましょう。

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喘息(慢性気管支炎・アレルギー性気管支炎)

猫が喘息になると、ゼエゼエと息をして咳が出ます。悪化すると気管支が炎症を起こして突然狭くなってくるため、息が荒くなり、呼吸が苦しそうになります。猫は興奮状態で無ければほとんど無音の呼吸なので、激しく動いてもいないのに息が荒く、苦しそうな時は喘息にかかっているかも知れません。早めに病院へ連れて行きましょう。

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ストレス

強いストレスを感じることで、鳴き声が出なくなってしまうことがあります。人も強いストレスが原因で声が出なくなることがありますが、猫は人以上にストレスを感じやすい繊細な動物です。室内の模様替え、引っ越し、同居猫や人の家族が増えたなど、ストレスの原因は様々。できるだけストレスを感じないように、模様替えは一気に変えずに少しずつ実施する、引っ越しの際も猫が気に入っているベッドやトイレ、匂いが付いているブランケットなどは必ず持って行って早めに荷物から出す、家族が増える場合はお互いの存在に慣れるよう少しずつ紹介するなど、工夫しましょう。

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まとめ

人には聞こえない、サイレントニャー。いったいどんなかわいい声なのかと、いつか人の耳で聞き取れない高音域の音を聞くことができる機械が手に入ったら絶対に聞いてみたい音No.1です。猫と人が一緒に暮らすようになって1万年以上が経っていますが、まだまだ分からない所も多く、神秘的な一面も隠し持っています。「ウチの子はサイレントニャーしてくれないな」とガッカリしなくても、違う形で大好きな家族に愛を伝えているはずですから、サインを見逃さないようにしましょう。こちらからも大好きな気持ちを素直に伝えていきたいですね!

執筆者
東京出身、長野県在住のアパレル勤務兼ライター。 仕事に燃えに燃えていたが、ある日ふと「人ってストレスで死ぬんだよなぁ」と思い、絶対に叶えたい夢を一つ現実のものとする。 久しぶりに猫と暮らしたい、その夢を叶えたら次々に夢という名の野望が出てきて一歩一歩叶えている最中。 現在、猫と暮らす猫のための家を建てたい、最終的に小説家兼ライターに肩書きを変えたいという野望に燃えている。