愛猫との毎日のスキンシップのひとつとして、マッサージを取り入れてみてはいかがでしょうか。
飼い主さんに猫のツボに関する知識があれば、いつものように撫でてあげるとき、猫を心地よくしてあげられるだけでなく、日々元気に過ごしてもらうための体調管理にも繋げてあげることができます。
猫も「こり」を感じるって本当?
羨ましくなるほどしなやかで柔軟な身体を持っている猫。人間が悩まされるような筋肉の「こり」とは無縁なイメージがありますが、日々の生活や体調によっては、実は凝り固まってしまっていることがあります。
猫のツボはいくつ?
猫にも人間同様、身体中に沢山のツボが存在しており、その数はなんと361ヶ所以上といわれています。
本格的なマッサージといわずとも、ツボをほんの少し意識して身体を触ったり撫でてあげるだけでも、猫はうっとりと気持ちが良くなり、文字通り心身共にときほぐしてあげることができるのです。
主要なツボは9つ!
マッサージをされて「気持ちが良い」と感じるツボは個人差が大きいですよね。それは猫も同じで、その時々の体調次第でも感じ方が左右されるものです。
猫のツボをきちんと理解して、より効果的なマッサージで愛猫をリラックスさせてあげたいものですが、さすがに361ヶ所のツボ全ては把握しきれませんよね。
ここでは、愛猫家のあなたにぜひ覚えておいてもらいたい9つの主要なツボの名前とその場所、刺激することにより得られる効果をご紹介します。
愛猫とのスキンシップタイムや、マッサージをしてあげるときなどに、少し意識して刺激してあげるようにするといいでしょう。ぜひ色々試して、愛猫が喜ぶツボを探してみてくださいね。
①風池(ふうち)…耳の付け根「目・耳・鼻の不調、ストレスなど」
②百会(ひゃくえ)…頭頂部「ストレス、神経過敏など」
③印堂(いんどう)…眉間「リラックス効果など」
④睛明(せいめい)…目頭の少し上「リラックス効果、ストレス解消など」
⑤迎香(げいこう)…鼻の左右隣「鼻の不調など」
⑥督脈(とくみゃく)…背骨に沿って「腰の調子など」
⑦天枢(てんすう)…おへその両側「お腹の不調など」
⑧中脘(ちゅうかん)…おへその上「お腹の不調など」
⑨中極(ちゅうきょく)…おへその下「お腹の不調など」
猫のマッサージ 準備編
飼い主さんは、猫の肌を傷つけないためにも爪を短く切っておきましょう。手が冷えていると、猫に触れたときにびっくりさせてしまいますので、マッサージ前にしっかり温めておいてあげることもお勧めします。
また、普段から愛猫とのまめなスキンシップを意識して、身体に触れられることに慣れおいてもらうことも非常に大切です。
狙い目はこんなとき!
猫が甘えてあなたの膝の上に乗ってきたときや、お昼寝前のウトウトまったりモードのときなど、「心身共にリラックスしていることが明らかなとき」がマッサージをする最良のタイミングです。
猫のマッサージ、気を付けること
まず、猫へのマッサージの頻度ですが、週に1〜2回を目安に、一回につき10〜15分以内でおさまるように行ってあげましょう。食後すぐのマッサージは消化不良を起こす可能性があるので絶対に避けるようにしてください。そして、何といっても無理強いは禁物です。猫自身がリラックスしていない状態でのマッサージは無意味どころか逆効果ですので、少しでも嫌がる素振りを見せたときにはすぐにやめてあげましょう。
人間にとってリラックス効果の高いアロマオイルは、実は猫にとっては健康を脅かすほど有毒なものがほとんどですので、使用することはご法度といえます。人間用のマッサージ器具なども、猫には刺激が強いので使用しないでください。
また、愛猫が体調を崩していたり、いつもと様子が違うように見えるときには、普段のスキンシップ以上のマッサージは避けたほうが良いでしょう。愛猫に持病がある場合には、必ず獣医師に相談のうえ、愛猫の体調に合わせて無理なく行うようにしてあげてください。
ネット検索をすると、フォークを使ってマッサージをしている動画やブログ記事を見かけることがありますが、これは非常に危険なので止めましょう。フォークの腹部分を使っていたとしても、先端は鋭くとがっているため、マッサージ途中で猫が急に動くと、誤って皮膚や耳、最悪の場合は目などを傷つけてしまう可能性があります。うちの猫は大人しいから大丈夫、子猫の頃からフォークを使ってマッサージをしていたから大丈夫という過信はせずに、もしかしたら驚いて急に動くかもしれない、何かにビックリして飛び上がるかもしれない、という不測の事態を念頭に置いてください。
猫のマッサージ 身体編
まずは、一番とりかかりやすい身体全体のマッサージから挑戦してみましょう。いつものスキンシップの延長のつもりで、飼い主さんも力を抜いてリラックスしながら行ってください。
指を少し広げ、手グシで髪の毛を梳かすときのように毛並みに沿って背中からお尻に向かってゆっくりと優しく撫でます。猫が嫌がる素振りを見せなければ、少しずつスピードを上げてみましょう。
続いて、親指、人差し指と中指の3本で、皮膚を優しくつまみ上げたり戻したりをリズミカルに繰り返します。首のうしろや背中に行うのがお勧めですが、様子を見て可能そうであれば脇腹などもほぐしてあげましょう。
次に、人差し指、中指、薬指の3本で、筋肉に沿って円を描くようにゆっくり優しく撫でます。
もし嫌がらないようであれば、愛猫の身体をそっと仰向けにして、おへそ周りのツボを意識しながらお腹のマッサージも優しく行ってみましょう。ただし、お腹は猫にとって最大の急所ですので、喜んでマッサージを受ける子の方が珍しいともいえます。猛烈に嫌がった挙句に、飼い主さんを傷付けてしまう恐れもありますので、絶対に無理をしないようにしてください。
そして、どの猫も喜ぶといって過言でないのが、尻尾の付け根部分です。尻尾の付け根にはツボが集中しており、またフェロモンの分泌腺が集中しています。そのため、身体を触られることに慣れておらず、マッサージを嫌がる猫でも、尻尾の付け根をトントンと優しく掌で叩いてあげると喜ぶようです。
猫のマッサージ 顔周り編
猫の顔周りには、特に多くのツボが存在しています。顎や耳の付け根を撫でられて非常に気持ち良さそうに喉をゴロゴロと鳴らしている姿は、愛猫家ならきっと誰もが見たことがあるでしょう。
ここでツボをおさえたマッサージをマスターして、愛猫にもっと心地良くなってもらいましょう。
まず、目頭の少し上にそっと指先をおき、じんわりと優しく押してあげます。
次に、片手で猫の顎を支えてあげながら、目の形に添って、指先をゆっくりと目尻の方へ動かします。10回ほど繰り返したら、反対側も同様に。眼球を傷付けないよう、終始優しく慎重に行ってくださいね。
愛猫がうっとりと気持ち良さそうにしていたら、そのまま額や頭のツボマッサージにも挑戦してみましょう。
片手で顎下を支えたまま、眉間の中心から頭頂部に向かって指先で優しくなで上げます。このとき、ティースプーンを使用することもお勧めです。手で握って温めてから、裏側の丸い部分を優しく押し当てるようにして、そっと刺激するようにしてください。使うスプーンは先端がとがっていない、丸みを帯びたものを使うようにしましょう。
猫のマッサージ 脚編
筋肉が冷えて縮こまってしまうような寒い季節には、脚のマッサージもお勧めです。
特に、高齢の猫や、スコティッシュフォールドなど元々関節が弱いといわれている猫種の場合、日頃の脚の健康チェックも兼ねて、マッサージで筋肉を優しくほぐしてあげましょう。ただし、脚を触られることが嫌いな猫は決して少なくはありませんので、お腹同様、マッサージをするには少々難易度が高い箇所といえるでしょう。無理のない範囲で行うようにしてください。
まずは、ツボが集中している足先からマッサージを行っていきます。爪を一本ずつ押し出すようにゆっくりと揉んであげてください。爪が伸びすぎていないか、欠けていないかのチェックも同時にしてあげると良いでしょう。同時に肉球も優しく指圧してあげます。
続いて、腰から脚先の筋肉や腱をもみほぐしていきます。人差し指と中指の2本で「の」の字を描くように、腰から股関節、脚先へゆっくりとマッサージしてあげてください。
脚を触ったときにビクッと身体をこわばらせたり、鳴き声をあげるなど痛そうな素振りを見せた場合、関節炎を発症している可能性がありますので、マッサージはすぐに中止し、獣医師に相談するようにしてください。
特にこんな猫にはマッサージがおススメ!
猫の長引く不調の改善や病気の予防回復にも、マッサージは一役買ってくれます。以下の病気や症状にお悩みの猫がいる場合、一度マッサージを試してみてはいかがでしょうか。
ただし、マッサージは病気などを根治させるためのものではないということはご承知おきください。素人判断で過度なマッサージを行うなど、むやみやたらに愛猫の身体を刺激し続けることは、病状の悪化の恐れがありますので絶対に避けてください。
便秘症
お腹を優しくマッサージすることによって腸が刺激され、排便を促す効果が期待できます。
まず、猫の脇腹を左右から挟むように、そっと両手を添えます。そして、手を前後に動かすようにして優しく揉んであげます。お腹周りは非常にデリケートですから、力加減には十分に気をつけましょう。
猫が嫌がらずにリラックスしているようでしたら、横向きや仰向けに寝かせてあげて、指先で「の」の字を描くように、お腹を優しく時計回りに撫でます。お腹を触ることが難しいようなら、猫の背中側から後ろ足の付け根のあたりを優しく揉んであげましょう。
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膀胱炎
ストレスや加齢、その他様々な理由で排尿トラブルを起こしてしまう猫は、実は少なくありません。膀胱炎は、その中でも代表的な疾患といえるでしょう。
膀胱炎を含む排尿トラブルの多くは、膀胱にたまった温熱が原因で起こるといわれています。そのため、マッサージでお腹のツボを刺激することによって膀胱の温熱を取り除きやすくし、排尿トラブルの回復や予防の効果が期待できると考えられています。
具体的な方法としては、便秘のときと同じく「の」の字マッサージが良いとされています。おへその周りをなぞるように、ゆっくり時計周りに優しく撫でてあげてください。
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尿結石
尿結石は、おしっこの通り道である尿道に、結石と呼ばれる石のような塊ができてしまう病気で、一度発症すると繰り返し起こってしまいやすいといわれています。排尿トラブルに効くといわれているお腹のツボを刺激することで、再発の予防をも期待することができるでしょう。ただし、病気を発症している最中でのマッサージは逆効果になる可能性がありますので、絶対に避けるようにしてください。
もし、背中を触った時に痛がるような素振りを見せたら、既に尿結石や下部尿路疾患を発症している可能性がありますので、速やかに獣医師に相談するようにしましょう。
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他にもマッサージがおススメの病気はある?
流涙症や鼻詰まりに悩んでいる場合、お顔のマッサージを続けることによって鼻涙管の通りが良くなり、症状が緩和されることが期待できますので、試してみることをお勧めします。
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まとめ
繰り返しになってしまいますが、マッサージは猫と飼い主さん双方がリラックスし心地よい時間だと思えないようであれば、すぐに中止するようにしてください。まずは互いに触れあえる喜びを感じられる関係を築いていくことが最優先であるといえるでしょう。